奴隷狂公爵の秘密

猫科 類

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過去と現在

競り場

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穏やかな日差しと爽やかな風。
木漏れ陽の指す、緑の木々に覆われ、囲まれた美しく整えられた敷地。
その広大な庭園と称される敷地の中を多くの馬車が進む。
どの馬車も豪華な作りで、名家貴族の家紋が並び、王族の物まで有る。

多くの馬車が向かうのは敷地の中央に有る大きな建物。
高い外壁や大きな扉は重厚で、神々や精霊の美しいレリーフで飾られ、多くある窓は季節の美しく咲く花々が重厚な鉄格子を隠している。
外壁の中央近く、一番目立つ外壁に飛び出した台座に、人類英雄の石像が神々しく立っている。

建物の前では着飾った人々が馬車を降り、微笑み、談笑しながら中へと入って行く。


そんな光景を見つめているうちに、自身が乗る馬車も建物の前に停まる。

同行していたメイドが恭しく馬車の扉を開ける。

「行ってらっしゃいませ。」

御者が言い、馬車は馬車停めに向かって離れていく。


建物の中は外観に見合う豪華な造りとなっている。

廊下の壁一面に飾られた英雄や神々、精霊の絵画。
所々に美しい花瓶に生けられた花々。
金銀が眩しい調度品の数々。
廊下は広く長く、一面に敷き詰められた毛足の長い高級絨毯。
途中にある階段も一段一段に絨毯が敷き詰められ、艶光する手摺が目を引く。


階段を使用せず、廊下を突き進むと、扉があり、控えていた館の使用人が恭しく扉を開ける。


扉を潜ると、すり鉢状になった会場が現れる。

高い天井は英雄と神々がの絵画が見下ろし、中央には大きなシャンデリア。
天井の所々には金銀で細工も施されている。

最奥の一番下のスペースには広い舞台。

出た扉から背後を見れば、区切られたカウンターと高級な椅子が並べられている。

視線を戻し、出た扉から少し離れた階段を降りる。
出た扉から下は上段とは比べものにならない程豪華。
飴色が美しい半円の猫足テーブルにビロードのソファーが装飾の美しい飴色の木柵に囲まれている。
テーブルには銀の燭台に炎が灯り、季節のフルーツが盛られ、ワイン等もグラスと共にセッティングされている。


「6番のお席にございます。」


メイドに言われ、6番の席を目指す。

舞台に近い席は、それなりの地位のある者や金の有る者が優先的に座ることを許されている。


「あれが、奴隷狂いか……」

先に席に着いていた者達がヒソヒソと囁くのが聴こえてくる。

「誉れ高き公爵家の子息が、夫人を娶らず、奴隷遊びばかりとは………」

「前回買った奴隷は、ひと月ともたずに処分したとか……」

「金にモノを言わせる小僧が……」

等々…デップリ太った金持ち男達の声ーー

自分が稼いだ金を何に使おうが勝手だ。
地位に胡座をかいた老害め…


「素晴らしい銀の髪に琥珀のような瞳…背は…男性にしては低いですが、地位も財産もおありだわ……」

「奴隷遊びなど、誰でもしているもの……背丈は……でも、お気に召していただければ………」

「背丈など気にしないわ…お父様にお見合いの席を………」


等々……着飾ったご婦人達。
地位と金と背丈にしか興味ないのか?
見合い、絶対断るっっ!


「女が嫌いなのかなぁ?ボクと一緒かなぁ?だったら仲良くなれるかなぁぁ………」

「ふむ。なかなか美しいね。私の好みの美少年だ。」


普通にキモ………いや……怖い……


そんな声を聞こえない振りをして、無表情で席に着く。


すかさずメイドがカットされたフルーツをグラスに入れ、水を注いでくれる。


開催までにはまだ少し時間が有る。
テーブルに置かれている本日の商品一覧を手にとる。



~本日の出品~

      ~奴隷~

1万ギルから
     人獣              オス 2
                           メス 1

     獣人               メス1
     
10万ギルから
    リザードマン  オス5
                              メス2

    ケンタウルス  オス2

100万ギルから

    ケンタウルス  オス5
                              メス3
    人獣                  オス5
                              メス7

    獣人              オス5

500万ギルから
    エルフ              オス1
                              メス2

    人獣                  メス1
    獣人                  メス1

シークレット      オス1
                              メス2



この、お品書きでお気づきだろう。
ここは、奴隷の競り場なのだ。
それも、国公認のーー


    
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