5 / 7
過去と現在
現在
しおりを挟む
ミルドレッド・ダンヴァーズ
こちらでの自分の名前だ。
こちらの世界はノベルやアニメの様なファンタジーの世界だった。
魔法が存在し、騎士や魔法使い、聖女等が存在する。
そして、エルフやドワーフ等の人間以外の種族も存在する。
本来、貴族の子息、子女はアカデミーに通うのだが……母からの強い拒否の元、通うことはかなわなかった。
いわく、嫡男である兄が行きたくても行けないアカデミーに、何故お前が行かなければならないーーとの事だ。
なので、執事長が見つけてきた家庭教師が色々教えてくれた。
家庭教師のお陰で魔法は一通り使えるようにはなった。本当に基礎だが……
初級の攻撃魔法に防御魔法。付与魔法。
どれも及第点と言われたのを覚えている。
唯一誉められたのは、魔力授受だけ。
魔力授受はそのままの意味で、魔力を誰かに分け与えたり、受け取ったり、魔法石に魔力を封じてみたりといった魔力操作系魔法だ。
せっかく魔法のある世界にいるのなら、やはりド派手な攻撃魔法とか防御魔法とか使ってみたかった………
マンガやノベルだと、転生者ってチートじみてたりするけど、そうでもないらしい……
まぁ、使えないよりはマシだが………
こちらでの家族は母が一人と兄が一人。
父は居たが、馬車の事故で父は死に、兄は意識の無い寝たきり状態となった。
現代で言えば、脳死状態なのだろうか?
現代にあるような医療機器が無いこの世界では、目が覚めるのか、目覚める可能性が無いのかすらわからない。
母は兄が目を覚ますと信じ、治療魔法士を毎週招いている。
そんな母も、あの事故で片足が不自由になり、杖が手放せない体となった。
ちなみに、自分が前世の記憶を思い出したのもこの事故だ。
夫と死に別れ、大事な跡取りは意識不明の寝たきり。
自身の体も儘ならないなか、兄への看病。
看病と言えど、殆どの事はメイド達がしてくれているので、母は指示を出したり側に付き添ったりなのだが……それでも高貴な貴族のお嬢様である母にはとてつもない心労の様だ。
そして、兄の看病と領地管理の両立は、母には難しいらしく、
「この子が目覚めるまで、あなたがこの家の管理をなさい…。嫡男…代行です…。ですが!あくまでも代行ですよ!!領地は……嫡男、代行である以上あなたも管理に関わりなさい。ただし、南の領地は私の弟に領主代行を頼みます。その代わり、あなたには北の大地をあげます。そこからの収入はあなたの好きにして構いません…ですが…それ以外は許しません!この家の存続と大事な嫡男の治療費なのですから!」
と言われ…嫡男代行&北領主に就任。
そんな事情もあり、自分が父や兄の代わりに公爵としての公務を代行する事となったのだ。
ただし、給料はマイナスからという、ブラック状態。
父が健在だった頃は、王宮勤めでの高額の給金と領地からの税金があっただろうが、父が事故死後は領地からの税金のみ。
生命保険や退職金などの制度はこの世界には無いのだ。
唯一、宰相閣下のお心遣いで、見舞金として給金半年分のお金をいただいたらしいが、母が自身と兄の治療費に当ててしまったのは言うまでもない……
当時、まだ幼くはあったが、中身は大人なので、何とか仕事はこなせた。
まぁ、それが、母には癪に障ったのだろう…
あれ以来、顔を会わせば長男から家督を奪おうとする簒奪者、と、罵られるようになった……
酷いときは杖で殴られる。
一度、思わず避けてしまった後の荒れっぷりが凄まじく……使用人達にかなり迷惑をかけた……あの一度以来なるべく我慢するようにしている。
母は、あの事故で唯一五体満足な自分をストレスの捌け口にしてしまっている様だ……
色々と精神面が追い付かず、荒れてしまうのは仕方がないような気もする……
それも、自分が成人に近づくにつれ少なくなってきた…
自分個人にあてがわれた北の大地は、母と南領主、叔父に頭を下げてお金を借り受け、荒れた土地でも育つ作物等を厳選し栽培。
他国からの輸入に頼っていた作物ばかりだったこともあり、今では特産となり、マイナスだった収入は格段に跳ね上がった。
お陰で借りたお金も還せた……
だが、問題が全て解決したわけではない。
領民が極端に少ない領地だからこそ、事業が拡大するにつれ人手が足りなくなってくる。
そして、その足りない人手を補うための、ある意味簡単な解決策ーー奴隷を買うーー
荒れた大地に辛い農作業。近くには魔獣の森。
まだまだ収入の少ない北の領地では出せる給金も少ない……。
そんな状態の土地にワザワザ住み着く人間は居らず……
手っ取り早いのは、買ってしまえば一生働かせられる奴隷ーー
これが……奴隷競り場に足を踏み入れる最初の理由だった。
それ以来、何かに理由をつけて奴隷を買いにきているうちに、どんどん奴隷売買業界でのステータスと知名度は上がり、不本意なあだ名までつけられてしまった。
奴隷狂いの公爵ーーと……
あながち、間違っていないのが悔しいが……
こちらでの自分の名前だ。
こちらの世界はノベルやアニメの様なファンタジーの世界だった。
魔法が存在し、騎士や魔法使い、聖女等が存在する。
そして、エルフやドワーフ等の人間以外の種族も存在する。
本来、貴族の子息、子女はアカデミーに通うのだが……母からの強い拒否の元、通うことはかなわなかった。
いわく、嫡男である兄が行きたくても行けないアカデミーに、何故お前が行かなければならないーーとの事だ。
なので、執事長が見つけてきた家庭教師が色々教えてくれた。
家庭教師のお陰で魔法は一通り使えるようにはなった。本当に基礎だが……
初級の攻撃魔法に防御魔法。付与魔法。
どれも及第点と言われたのを覚えている。
唯一誉められたのは、魔力授受だけ。
魔力授受はそのままの意味で、魔力を誰かに分け与えたり、受け取ったり、魔法石に魔力を封じてみたりといった魔力操作系魔法だ。
せっかく魔法のある世界にいるのなら、やはりド派手な攻撃魔法とか防御魔法とか使ってみたかった………
マンガやノベルだと、転生者ってチートじみてたりするけど、そうでもないらしい……
まぁ、使えないよりはマシだが………
こちらでの家族は母が一人と兄が一人。
父は居たが、馬車の事故で父は死に、兄は意識の無い寝たきり状態となった。
現代で言えば、脳死状態なのだろうか?
現代にあるような医療機器が無いこの世界では、目が覚めるのか、目覚める可能性が無いのかすらわからない。
母は兄が目を覚ますと信じ、治療魔法士を毎週招いている。
そんな母も、あの事故で片足が不自由になり、杖が手放せない体となった。
ちなみに、自分が前世の記憶を思い出したのもこの事故だ。
夫と死に別れ、大事な跡取りは意識不明の寝たきり。
自身の体も儘ならないなか、兄への看病。
看病と言えど、殆どの事はメイド達がしてくれているので、母は指示を出したり側に付き添ったりなのだが……それでも高貴な貴族のお嬢様である母にはとてつもない心労の様だ。
そして、兄の看病と領地管理の両立は、母には難しいらしく、
「この子が目覚めるまで、あなたがこの家の管理をなさい…。嫡男…代行です…。ですが!あくまでも代行ですよ!!領地は……嫡男、代行である以上あなたも管理に関わりなさい。ただし、南の領地は私の弟に領主代行を頼みます。その代わり、あなたには北の大地をあげます。そこからの収入はあなたの好きにして構いません…ですが…それ以外は許しません!この家の存続と大事な嫡男の治療費なのですから!」
と言われ…嫡男代行&北領主に就任。
そんな事情もあり、自分が父や兄の代わりに公爵としての公務を代行する事となったのだ。
ただし、給料はマイナスからという、ブラック状態。
父が健在だった頃は、王宮勤めでの高額の給金と領地からの税金があっただろうが、父が事故死後は領地からの税金のみ。
生命保険や退職金などの制度はこの世界には無いのだ。
唯一、宰相閣下のお心遣いで、見舞金として給金半年分のお金をいただいたらしいが、母が自身と兄の治療費に当ててしまったのは言うまでもない……
当時、まだ幼くはあったが、中身は大人なので、何とか仕事はこなせた。
まぁ、それが、母には癪に障ったのだろう…
あれ以来、顔を会わせば長男から家督を奪おうとする簒奪者、と、罵られるようになった……
酷いときは杖で殴られる。
一度、思わず避けてしまった後の荒れっぷりが凄まじく……使用人達にかなり迷惑をかけた……あの一度以来なるべく我慢するようにしている。
母は、あの事故で唯一五体満足な自分をストレスの捌け口にしてしまっている様だ……
色々と精神面が追い付かず、荒れてしまうのは仕方がないような気もする……
それも、自分が成人に近づくにつれ少なくなってきた…
自分個人にあてがわれた北の大地は、母と南領主、叔父に頭を下げてお金を借り受け、荒れた土地でも育つ作物等を厳選し栽培。
他国からの輸入に頼っていた作物ばかりだったこともあり、今では特産となり、マイナスだった収入は格段に跳ね上がった。
お陰で借りたお金も還せた……
だが、問題が全て解決したわけではない。
領民が極端に少ない領地だからこそ、事業が拡大するにつれ人手が足りなくなってくる。
そして、その足りない人手を補うための、ある意味簡単な解決策ーー奴隷を買うーー
荒れた大地に辛い農作業。近くには魔獣の森。
まだまだ収入の少ない北の領地では出せる給金も少ない……。
そんな状態の土地にワザワザ住み着く人間は居らず……
手っ取り早いのは、買ってしまえば一生働かせられる奴隷ーー
これが……奴隷競り場に足を踏み入れる最初の理由だった。
それ以来、何かに理由をつけて奴隷を買いにきているうちに、どんどん奴隷売買業界でのステータスと知名度は上がり、不本意なあだ名までつけられてしまった。
奴隷狂いの公爵ーーと……
あながち、間違っていないのが悔しいが……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる