奴隷狂公爵の秘密

猫科 類

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ミルドレッド・ダンヴァーズ

こちらでの自分の名前だ。

こちらの世界はノベルやアニメの様なファンタジーの世界だった。

魔法が存在し、騎士や魔法使い、聖女等が存在する。
そして、エルフやドワーフ等の人間以外の種族も存在する。

本来、貴族の子息、子女はアカデミーに通うのだが……母からの強い拒否の元、通うことはかなわなかった。
いわく、嫡男である兄が行きたくても行けないアカデミーに、何故お前が行かなければならないーーとの事だ。
なので、執事長が見つけてきた家庭教師が色々教えてくれた。
家庭教師のお陰で魔法は一通り使えるようにはなった。本当に基礎だが……
初級の攻撃魔法に防御魔法。付与魔法。
どれも及第点と言われたのを覚えている。
唯一誉められたのは、魔力授受だけ。
魔力授受はそのままの意味で、魔力を誰かに分け与えたり、受け取ったり、魔法石に魔力を封じてみたりといった魔力操作系魔法だ。

せっかく魔法のある世界にいるのなら、やはりド派手な攻撃魔法とか防御魔法とか使ってみたかった………
マンガやノベルだと、転生者ってチートじみてたりするけど、そうでもないらしい……

まぁ、使えないよりはマシだが………




こちらでの家族は母が一人と兄が一人。

父は居たが、馬車の事故で父は死に、兄は意識の無い寝たきり状態となった。
現代で言えば、脳死状態なのだろうか?
現代にあるような医療機器が無いこの世界では、目が覚めるのか、目覚める可能性が無いのかすらわからない。
母は兄が目を覚ますと信じ、治療魔法士を毎週招いている。
そんな母も、あの事故で片足が不自由になり、杖が手放せない体となった。


ちなみに、自分が前世の記憶を思い出したのもこの事故だ。


夫と死に別れ、大事な跡取りは意識不明の寝たきり。
自身の体も儘ならないなか、兄への看病。
看病と言えど、殆どの事はメイド達がしてくれているので、母は指示を出したり側に付き添ったりなのだが……それでも高貴な貴族のお嬢様である母にはとてつもない心労の様だ。

そして、兄の看病と領地管理の両立は、母には難しいらしく、

「この子が目覚めるまで、あなたがこの家の管理をなさい…。嫡男…代行です…。ですが!あくまでも代行ですよ!!領地は……嫡男、代行である以上あなたも管理に関わりなさい。ただし、南の領地は私の弟に領主代行を頼みます。その代わり、あなたには北の大地をあげます。そこからの収入はあなたの好きにして構いません…ですが…それ以外は許しません!この家の存続と大事な嫡男の治療費なのですから!」


と言われ…嫡男代行&北領主に就任。


そんな事情もあり、自分が父や兄の代わりに公爵としての公務を代行する事となったのだ。

ただし、給料はマイナスからという、ブラック状態。


父が健在だった頃は、王宮勤めでの高額の給金と領地からの税金があっただろうが、父が事故死後は領地からの税金のみ。
生命保険や退職金などの制度はこの世界には無いのだ。
唯一、宰相閣下のお心遣いで、見舞金として給金半年分のお金をいただいたらしいが、母が自身と兄の治療費に当ててしまったのは言うまでもない……


当時、まだ幼くはあったが、中身は大人なので、何とか仕事はこなせた。


まぁ、それが、母には癪に障ったのだろう…
あれ以来、顔を会わせば長男から家督を奪おうとする簒奪者、と、罵られるようになった……
酷いときは杖で殴られる。
一度、思わず避けてしまった後の荒れっぷりが凄まじく……使用人達にかなり迷惑をかけた……あの一度以来なるべく我慢するようにしている。

母は、あの事故で唯一五体満足な自分をストレスの捌け口にしてしまっている様だ……
色々と精神面が追い付かず、荒れてしまうのは仕方がないような気もする……

それも、自分が成人に近づくにつれ少なくなってきた…


自分個人にあてがわれた北の大地は、母と南領主、叔父に頭を下げてお金を借り受け、荒れた土地でも育つ作物等を厳選し栽培。
他国からの輸入に頼っていた作物ばかりだったこともあり、今では特産となり、マイナスだった収入は格段に跳ね上がった。
お陰で借りたお金も還せた……


だが、問題が全て解決したわけではない。
領民が極端に少ない領地だからこそ、事業が拡大するにつれ人手が足りなくなってくる。
そして、その足りない人手を補うための、ある意味簡単な解決策ーー奴隷を買う・・・・・ーー

荒れた大地に辛い農作業。近くには魔獣の森。
まだまだ収入の少ない北の領地では出せる給金も少ない……。
そんな状態の土地にワザワザ住み着く人間は居らず……
手っ取り早いのは、買ってしまえば一生働かせられる奴隷ーー

これが……奴隷競り場に足を踏み入れる最初の理由だった。

それ以来、何かに理由をつけて奴隷を買いにきているうちに、どんどん奴隷売買業界でのステータスと知名度は上がり、不本意なあだ名までつけられてしまった。

奴隷狂いの公爵ーーと……


あながち、間違っていないのが悔しいが……


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