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重要なお話
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「はぁ、終わったぁ!!」
ルインはまだ明るい執務室で、すっかり片付いた執務机に寝そべりながら、喜びを噛み締めていた。
引越し直後からの周辺国の挨拶状とお伺い、そして中身のない要望書の山。
それらを捌きつつ少しずつ数が減っていく封書と戦いながら、一月、なんとか未確認の書類箱の中が空になったのだ。
「お~」
傍では、最後の要望書を先ほど持ってきたばかりの、従兄のトロン。
パチパチと手を合わせて労いを示していた。
「トロンもほんっとありがとう!封書を取りに行くのと封を切るだけでもかなりの時間が節約できた」
「ま、その分ちょこっとお小遣いも出てるし、そんで、このあとは本読むの?」
「うん!」
ルインの満面の笑みを眺めて、トロンも嬉しそうに微笑んだ。
「じゃぁさ、俺は邪魔にならないように出るから、後でちょっと時間くれない?」
「いいけど、用事なら今言ってくれたって……」
「ちょっと準備がいるからさ、じゃ、また後で来るね」
トロンの背中を見送りつつ、ルインは溜め込んでいた宝物へとようやく手を伸ばした。
---
夕方が過ぎ、空が闇を呼び込み始めた頃、執務室のドアが静かに開いた。
ルインはチラリと確認したが、入ってきたのがトロンだとわかるとそのまま本へと目を落とす。
「はぁ、やっぱり、晩御飯持ってきた、一回本置いて一緒に食べるよ」
「ん……後ちょっと、キリがいいとこまで……」
トロンはささっと執務室の上に軽い食事を広げていく。
ベーコンと根菜のスープのカップ。冷めにくいようにと少し油を垂らしてもらってある。
パンの籠、朝に焼かれたパンは、一度落ち火のかまどで温めてから、一口で食べられる大きさまで、四角く切ってきた。
そして干果物とナッツの入った小皿。
食堂で食べるのではなく、夜食として作ってもらうのだから、せいぜいがこのくらいだ。
配膳を終えて、ルインを伺うと、キリのいいところどころか、最後の頁をめくり切り、パタンと閉じたところだった。
そしてそっと隣の本の上に積み上げると、次の本へと手が伸ばされ、
「ほら、読み終わったんならご飯だよ」
トロンに掴み上げられた。
「あ、え?トロン!?あ……なんか、わざわざ運んできてくれたの?ありがと」
---
「でさ、用事って何?」
食事を終え、部屋のカーテンを引きながらルインが尋ねた。
「うん、落ち着いてから話すよ」
トロンも反対側のカーテンを引き、最後に執務室のドアへと向かう。
ルインは休憩用の長椅子へと腰掛けて従兄の背中を見送った。
カチリ
響いたのは鍵の回る音。
「あれ、結構重要な話?」
「うん、他の人が来たら困っちゃうから、閉めていいよね?」
「いいよ、あ、ならさ、そこの板引っ張ると、外の表示、中に誰もいないって色になるから、引いといて」
「へぇ、そんな仕組みあったんだ。わかった」
トロンが正しく外への表示を変えたのを見て、ルインは今度は姿勢を正し、相談相手を迎える。
一族の中では珍しく、普段から執務の手助けをしてくれる従兄、悩み事があるなら力になりたかった。
---
向かいの椅子へと腰掛けて、トロンはすぐに本題へと入った。
「あのな、俺、ルインが好きだ」
「はぇ?……ありがと?」
ルインの方はというと、深刻な相談の前の前振りなのかもしれないと、首を傾げながらも礼を言った。
「で、さ、ルインはそういう感情じゃないと思うんだけど」
「え、いや、僕も結構好きだよ?」
「……うん、だよなぁ」
軽いため息。
なんだか子供扱いされた気分になり、ルインは強めに言い返す。
「あのさぁ、僕、これでも成人して五年経ってるんだけど?なんでみんないつまで経っても、何も知らない子扱いするのかなぁ!?」
少し口を尖らせた姿に、トロンは苦笑して、乗り出したルインの額をつついた。
「ごめんごめん、さっき言ってた話ってのも、今日はやめとく、また今度、頃合いを見て話すから」
「重要な話なんでしょ!今聞くから!早く言って!」
その手首を掴み、トロンの体を引き寄せて、ルインは互いに瞳を見つめ合いながら詰め寄った。
「………やりたいことがあるんだけど」
「なに?やったらいいんじゃない?」
パチクリと瞬く瞳、これを、泣かせて、溶けさせて……。
トロンの内側にどろりとした欲望が、わずかに湧き上がる。
「ルイン、少し口開けてみて」
「こう?……んぅ!?」
なんの疑いも抱かずに開かれた唇、トロンはそこへ被せるように口付け、驚いて縮こまった舌を絡め取った。
すぐに解放して、ぺろりと自身の口周りを舐める。ルインの味が残っている気がした。
「は?え?なに?」
混乱しているルイン、解放された手でその項を引き寄せて、耳元に囁く。
「こういうことしたいの、大人扱い、してもいい?」
ルインはまだ明るい執務室で、すっかり片付いた執務机に寝そべりながら、喜びを噛み締めていた。
引越し直後からの周辺国の挨拶状とお伺い、そして中身のない要望書の山。
それらを捌きつつ少しずつ数が減っていく封書と戦いながら、一月、なんとか未確認の書類箱の中が空になったのだ。
「お~」
傍では、最後の要望書を先ほど持ってきたばかりの、従兄のトロン。
パチパチと手を合わせて労いを示していた。
「トロンもほんっとありがとう!封書を取りに行くのと封を切るだけでもかなりの時間が節約できた」
「ま、その分ちょこっとお小遣いも出てるし、そんで、このあとは本読むの?」
「うん!」
ルインの満面の笑みを眺めて、トロンも嬉しそうに微笑んだ。
「じゃぁさ、俺は邪魔にならないように出るから、後でちょっと時間くれない?」
「いいけど、用事なら今言ってくれたって……」
「ちょっと準備がいるからさ、じゃ、また後で来るね」
トロンの背中を見送りつつ、ルインは溜め込んでいた宝物へとようやく手を伸ばした。
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夕方が過ぎ、空が闇を呼び込み始めた頃、執務室のドアが静かに開いた。
ルインはチラリと確認したが、入ってきたのがトロンだとわかるとそのまま本へと目を落とす。
「はぁ、やっぱり、晩御飯持ってきた、一回本置いて一緒に食べるよ」
「ん……後ちょっと、キリがいいとこまで……」
トロンはささっと執務室の上に軽い食事を広げていく。
ベーコンと根菜のスープのカップ。冷めにくいようにと少し油を垂らしてもらってある。
パンの籠、朝に焼かれたパンは、一度落ち火のかまどで温めてから、一口で食べられる大きさまで、四角く切ってきた。
そして干果物とナッツの入った小皿。
食堂で食べるのではなく、夜食として作ってもらうのだから、せいぜいがこのくらいだ。
配膳を終えて、ルインを伺うと、キリのいいところどころか、最後の頁をめくり切り、パタンと閉じたところだった。
そしてそっと隣の本の上に積み上げると、次の本へと手が伸ばされ、
「ほら、読み終わったんならご飯だよ」
トロンに掴み上げられた。
「あ、え?トロン!?あ……なんか、わざわざ運んできてくれたの?ありがと」
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「でさ、用事って何?」
食事を終え、部屋のカーテンを引きながらルインが尋ねた。
「うん、落ち着いてから話すよ」
トロンも反対側のカーテンを引き、最後に執務室のドアへと向かう。
ルインは休憩用の長椅子へと腰掛けて従兄の背中を見送った。
カチリ
響いたのは鍵の回る音。
「あれ、結構重要な話?」
「うん、他の人が来たら困っちゃうから、閉めていいよね?」
「いいよ、あ、ならさ、そこの板引っ張ると、外の表示、中に誰もいないって色になるから、引いといて」
「へぇ、そんな仕組みあったんだ。わかった」
トロンが正しく外への表示を変えたのを見て、ルインは今度は姿勢を正し、相談相手を迎える。
一族の中では珍しく、普段から執務の手助けをしてくれる従兄、悩み事があるなら力になりたかった。
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向かいの椅子へと腰掛けて、トロンはすぐに本題へと入った。
「あのな、俺、ルインが好きだ」
「はぇ?……ありがと?」
ルインの方はというと、深刻な相談の前の前振りなのかもしれないと、首を傾げながらも礼を言った。
「で、さ、ルインはそういう感情じゃないと思うんだけど」
「え、いや、僕も結構好きだよ?」
「……うん、だよなぁ」
軽いため息。
なんだか子供扱いされた気分になり、ルインは強めに言い返す。
「あのさぁ、僕、これでも成人して五年経ってるんだけど?なんでみんないつまで経っても、何も知らない子扱いするのかなぁ!?」
少し口を尖らせた姿に、トロンは苦笑して、乗り出したルインの額をつついた。
「ごめんごめん、さっき言ってた話ってのも、今日はやめとく、また今度、頃合いを見て話すから」
「重要な話なんでしょ!今聞くから!早く言って!」
その手首を掴み、トロンの体を引き寄せて、ルインは互いに瞳を見つめ合いながら詰め寄った。
「………やりたいことがあるんだけど」
「なに?やったらいいんじゃない?」
パチクリと瞬く瞳、これを、泣かせて、溶けさせて……。
トロンの内側にどろりとした欲望が、わずかに湧き上がる。
「ルイン、少し口開けてみて」
「こう?……んぅ!?」
なんの疑いも抱かずに開かれた唇、トロンはそこへ被せるように口付け、驚いて縮こまった舌を絡め取った。
すぐに解放して、ぺろりと自身の口周りを舐める。ルインの味が残っている気がした。
「は?え?なに?」
混乱しているルイン、解放された手でその項を引き寄せて、耳元に囁く。
「こういうことしたいの、大人扱い、してもいい?」
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