【R18】虐げられ皇女は冷帝陛下の腕に捕らわれる

紅城えりす☆VTuber

文字の大きさ
10 / 11

これは報いか?

しおりを挟む
「お前がリズベッタの杯に毒を盛ったという事実に変わりはないか?」
 
「はい……」
 
「どうして否定しない?」
 
「これは私が望んでやったことだからです。初めから報いを受ける覚悟はできていました」
 

 真っ赤な玉座に座るクラウスに跪くルシア。
 クラウスは玉座から立ち上がり、剣を鞘から抜く。
 今から目の前に広がるであろう惨状に目をそらすべく、男女問わず臣下の者は皆、顔を伏せたり、目を閉じた。

「ルシア・アンドレーゼ。お前には長い間世話になった。潔く罪を認めたことも考慮して、さらし首と父親の爵位剥奪だけはやめてやる――しかし、罪は血で洗い流さなければならん」
 
 鋭利な鉄剣が少女を貫き、真っ赤な花が乱れようとした瞬間――。
 
「待ってください!」

 玉座の間にエリシアが飛び込んでくる。

「エリシア、こっちに来ちゃダメ!」

 クラウスが剣をピタリと止め、エリシアの方を見る。

「エリシア・アインベル。友人と共に我が剣に貫かれたくなければ下がれ」

「陛下、罰なら後で受けます。ですから、どうか……最後に友人と話す時間をください」

「俺の邪魔をした対価は重いぞ。それでも構わないか?」

「はい!」

 エリシアはほんの刹那ためらったが、すぐに覚悟を決めて頷いた。クラウスが剣を鞘に収めると、エリシアはすぐさまルシアに抱きつく。

「ルシア……どうか嘘だって言ってよ」
「ごめん……」
「なんで、こんなことしたの?」
「エリシアのためだよ」
「馬鹿言わないでよ。私はこんなこと望んでない!」
「魔女のせいで、エリシアの場所が無くなるのが嫌だった」
「魔女って……魔法使いが不吉なのはルシアの故郷での話でしょ。カルロッタでは関係ないわよ!」
「だって、エリシア寵をうけられないのは魔女のせいだって、あの人が……」

 二人が話していると再び、鞘から剣を抜かれる音が響く。

「その魔女とはリズベッタのことか?」

 顔を上げたエリシアは、全身を恐怖で震わせた。
 光が背後から当たっているせいで顔が見えないクラウスであったが、どのような表情をしているのか見なくとも分かる。

「エリシア・アインベル。いますぐ、その女から離れろ。俺はもう待てそうにはない」

 怒りに囚われたクラウスがエリシアもろとも切り伏せられそうになった、刹那――。

「待って、やめて!」
 
 二人の間に入ったのは――リズベッタであった。
 周囲からはリズベッタを止めようと声を上げながら手を伸ばす人々。

「リズッ!」

 クラウスは手を止めたが、もう既に遅い。
 リズベッタの衣服が剣に貫かれ、赤い飛沫がはとばしった。


***


 カルロッタ王国から遠く離れたロスティヤ帝国の宮廷ではパーティが開かれていた上位貴族から男爵、国境を守護する辺境伯まで数多の貴族が並ぶ会場の中でナナは客人たちの視線を一身に集めていた。

「グレイ王子、私たちの婚礼はいつにしますの?」

「いや、ナナ皇女。悪いが私は君との婚約を解消させて貰うつもりだ」
 
「なによそれ……いったい、どういうことよ?」

「君が犯してきた蛮行を私が知らないとでも思っているのか?」

「はぁ……?」

 グレイは冷ややかかな目でナナを見下ろしながら婚約の破棄を宣言する。
 状況を飲み込めていないらしいナナは眉を八の字にしながら、眉間にシワを寄せた。

「この私が蛮行? そんなわけないでしょ。お姉様の間違いじゃないの?」

 両手を胸に当て、助けを乞うような視線でグレイを見つめる。

「婚約者についてはよく知っておくべきだと思い、以前からお前について調べていたんだ。そうしたら、どうだ。ロスティヤの宮廷に仕える使用人から、各国を旅している吟遊詩人まで、口揃えてお前のろくでもない噂を話すではないか」

「なんだね、騒がしい」

 パーティ会場にゆっくりとした足取りで入ってきたのはロスティヤ帝国の皇帝だ。

「お父様、助けてください。グレイ王子が婚約破棄するとおっしゃっているのです」
 
「王子、これはどういいことかね?」
 
「陛下、ナナ皇女は今まで宝石と男を求めて散々愚行を働いてきたと聞いております。カルロッタ王国に送った使者の話によれば、今度は外国に嫁いだ姉を毒殺するよう現地の使用人を唆していたそうではないですか」

「そのような噂は全て私を陥れるための偽りよ、グレイ王子。ねぇ、私たちは将来を誓い合った仲でしょう?」

 話を遮るように、ナナが叫ぶとグレイ王子は冷ややかな視線で見下ろした。

「悪いが、私はお前のような名誉と財を食い潰すような女を妻に迎えるつもりはない」

「はぁ? 私は現地の使用人がお姉様の魔法で苦しめられていたから助言してやっただけよ。ねぇ、お父様?」

 グレイ王子からの慈悲は期待できないと判断したのか、ナナは父に助けを求めようと駆け寄る。
 
「なるほど、たとえ家族であれ未知なる力を持つ者は虐げるのがロスティヤの習わしなのか? そのような国と我が王国は外交関係を続けるつもりはない」

 グレイが低い声で告げると、皇帝はナナの手を振り払った。

「王子のおっしゃる通りだ。ナナ、お前はしばらく謹慎していなさい」

「うそ……そんな……」

 ナナは泣きじゃくりながら父に向かって叫ぶ、

「嘘よ、嘘よ。お父様、今まで私のお願いなんでも聞いてくれてたじゃない!」

「政略結婚の役にも立たないお前一人と、外交関係、どちらが大切か明白だろう?」

 産まれてから親に甘やかされ続けてきたナナにとってこれは衝撃的な出来事であったのだろう。
 ナナは地べたに座り込む。

「お姉様のせいだ……私悪くないもん……」

「さぁ、皆の者。邪魔をしてしまい済まない。パーティの続きといこうではないか」
 
 再びパーティ会場にざわめき声が戻る。
 貴族たちのナナに向ける視線は”侮蔑”と”嘲笑”で満ちていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...