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好きだと言わないなら惚れさせるまで
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「いらっしゃい、可愛い僕のシータ。ずっとこの日を待ちわびていたよ」
屋敷のエントランスに入る。
まず、視界に広がったのは、百合の模様が描かれた赤いカーペット、ピカピカに磨かれた金色の手すりと大階段、そして、階段の中央で、優雅に立つルイス。
「その呼び方辞めていただけませんか?」
「おや、何を言っているのでしょうか。どんな形であれ婚約したことに変わりはありません。つまり、君は『僕のシータ』ですよ」
「一見、理論的に見える屁理屈で説明しようとしないで下さい!」
反射的に大声でツッコミを入れてしまい焦る。ここに居るのは、これからお世話になる使用人達だ。
嫁入り初日から変なヤツだとは思われたくない。まぁ――小麦粉で洗髪をしていれば、『変なヤツ』として認識される事も時間の問題だと思うが……。
「では、早速、僕――いや、僕たちの屋敷を案内しよう」
「この広いお屋敷を全部ですか?」
「そうですよ。ちなみに、この屋敷はまだ小さい方ですね」
「これより大きい屋敷があるの?」
「当然でしょう?」
「冗談ですよね……?」
***
「ここは僕の曾祖父が建てた屋敷で、セシル家が持つ屋敷の中で一番古い物です。ノックス家の人間は新しい物ばかり好むそうですから、君からしてみれば古くさいかもしれませんが」
「家族はそうかもしれませんが、少なくとも私は長く大切に使われてきた物は大好きですよ」
「そうですか。なら、今度は王都の博物館にでも行きましょう」
金色に輝く手すりに、ブルーの絨毯がひかれたた階段を上りながら、ルイスは、屋敷の壁に施された彫刻や、飾られた絵画についてアレコレ紹介してくれた。
古い物が好きという彼の主張は本当らしい。
並べられた絵画や装飾品を見ていると、一つ疑問が浮かぶ。
「先ほどから気になっていましたが、この屋敷には百合をモチーフとした作品が多いですね」
そう。彫刻から絵画、さらに階段の手すりや壁紙にまで、この屋敷には百合をモチーフとした物が多くあった。
「曾祖父の趣味ですよ。百合の花言葉は『純粋』と『無垢』。ただし、色によって、花言葉はいくらでも変わります。例えばね――真っ赤に染まると『虚栄心』ですね」
その話なら聞いたことがある。
確か黄色で『偽り』、オレンジが『憎悪』。
それにしても、ニコニコしながら「真っ赤に染まる」とか「偽り」などと言わないで欲しい。
「そういえば、ルイス……旦那様。どうして、この屋敷に私を招いたのですか?」
「あぁ、呼び方は君が決めていいよ。僕は旦那様の方が嬉しいですが。それにしても、どうして、そんなことを聞くのですか?」
「大した理由はありませんよ。ただ数ある屋敷の中で、どうして。ここを選んだのか、気になっただけです」
「あぁ、それはですね、君が疲れているように見えたから――ですよ」
階段を上りきり、最上階の廊下へ出ると、ルイスは使用人に廊下の窓を開けさせた。工場の煙に染まった王都の空気と違い、木々に包まれた新鮮な空気が室内に入ってくる。
「この屋敷付近に大きな街は無いので、この場所で娯楽を求めるとなると、乗馬や狩猟になってしまいますが――それでも、ここで流れる時間は王都で流れる時間よりも、ずっとゆっくりに感じませんか?」
言わんとすることは分かる。
ここには、結婚をせかしてくる両親も居ないし、スラム街から来たであろう人々が騒動を起すこともない。ただ、ゆっくりと時間が流れている。
「分かります。なんというか、ここに居ると心が穏やかになります」
「そうでしょう? 俗世のあれこれに疲れ切ってしまっている君には、ここがピッタリだと思い、ここに招きました」
「感謝します。旦那様。見直しましたよ」
「あぁ。それ良かった……待て、君は今まで僕を何だと思っていたのですか?」
『黒幕』ですが。何か?
***
三十部屋目、最後に案内されたのは私の部屋だった。
暖炉にベッド、それからドレッサーまで。
内装はノックス家にあった物とそんなに変わらなかったが、こちらの自室は窓が大きく、部屋全体が暖かい陽光に包まれたいた。
「ここにベッドがあることから察するに、形式上の夫婦だという約束は守っていただけるようですね」
「もちろん、君が望むなら、いつでも僕の部屋で一緒に眠りましょう――その場合、朝まで寝かすことが出来なくなるかもしれませんが」
「夜通しゲームでも、させられるのでしょうか?」
ルイスは、こちらのサイドヘアーをつまむ。そして、そのまま毛先まで、ゆっくりと指を滑らせた。
「さぁ、なぜでしょう?」
この話題についてこれ以上言及してはいけない。本能がそう言っている。
「私と貴方は形式上の夫婦。そうですよね?」
こちらが、できるだけ冷たく言い放つと、ルイスが背後まで、歩み寄り。髪にキスされる。
「おや、確かに婚約自体は形式上の物だと言いましたが、今後、夫婦として愛し合う予定が無いとは言っていませんよ」
「そっ……そんな予定存在しませんよ!」
背後からルイスのささやき声。
「無いなら作るまで。もし僕を愛して下さらないというのなら惚れさせるまでですよ」
屋敷のエントランスに入る。
まず、視界に広がったのは、百合の模様が描かれた赤いカーペット、ピカピカに磨かれた金色の手すりと大階段、そして、階段の中央で、優雅に立つルイス。
「その呼び方辞めていただけませんか?」
「おや、何を言っているのでしょうか。どんな形であれ婚約したことに変わりはありません。つまり、君は『僕のシータ』ですよ」
「一見、理論的に見える屁理屈で説明しようとしないで下さい!」
反射的に大声でツッコミを入れてしまい焦る。ここに居るのは、これからお世話になる使用人達だ。
嫁入り初日から変なヤツだとは思われたくない。まぁ――小麦粉で洗髪をしていれば、『変なヤツ』として認識される事も時間の問題だと思うが……。
「では、早速、僕――いや、僕たちの屋敷を案内しよう」
「この広いお屋敷を全部ですか?」
「そうですよ。ちなみに、この屋敷はまだ小さい方ですね」
「これより大きい屋敷があるの?」
「当然でしょう?」
「冗談ですよね……?」
***
「ここは僕の曾祖父が建てた屋敷で、セシル家が持つ屋敷の中で一番古い物です。ノックス家の人間は新しい物ばかり好むそうですから、君からしてみれば古くさいかもしれませんが」
「家族はそうかもしれませんが、少なくとも私は長く大切に使われてきた物は大好きですよ」
「そうですか。なら、今度は王都の博物館にでも行きましょう」
金色に輝く手すりに、ブルーの絨毯がひかれたた階段を上りながら、ルイスは、屋敷の壁に施された彫刻や、飾られた絵画についてアレコレ紹介してくれた。
古い物が好きという彼の主張は本当らしい。
並べられた絵画や装飾品を見ていると、一つ疑問が浮かぶ。
「先ほどから気になっていましたが、この屋敷には百合をモチーフとした作品が多いですね」
そう。彫刻から絵画、さらに階段の手すりや壁紙にまで、この屋敷には百合をモチーフとした物が多くあった。
「曾祖父の趣味ですよ。百合の花言葉は『純粋』と『無垢』。ただし、色によって、花言葉はいくらでも変わります。例えばね――真っ赤に染まると『虚栄心』ですね」
その話なら聞いたことがある。
確か黄色で『偽り』、オレンジが『憎悪』。
それにしても、ニコニコしながら「真っ赤に染まる」とか「偽り」などと言わないで欲しい。
「そういえば、ルイス……旦那様。どうして、この屋敷に私を招いたのですか?」
「あぁ、呼び方は君が決めていいよ。僕は旦那様の方が嬉しいですが。それにしても、どうして、そんなことを聞くのですか?」
「大した理由はありませんよ。ただ数ある屋敷の中で、どうして。ここを選んだのか、気になっただけです」
「あぁ、それはですね、君が疲れているように見えたから――ですよ」
階段を上りきり、最上階の廊下へ出ると、ルイスは使用人に廊下の窓を開けさせた。工場の煙に染まった王都の空気と違い、木々に包まれた新鮮な空気が室内に入ってくる。
「この屋敷付近に大きな街は無いので、この場所で娯楽を求めるとなると、乗馬や狩猟になってしまいますが――それでも、ここで流れる時間は王都で流れる時間よりも、ずっとゆっくりに感じませんか?」
言わんとすることは分かる。
ここには、結婚をせかしてくる両親も居ないし、スラム街から来たであろう人々が騒動を起すこともない。ただ、ゆっくりと時間が流れている。
「分かります。なんというか、ここに居ると心が穏やかになります」
「そうでしょう? 俗世のあれこれに疲れ切ってしまっている君には、ここがピッタリだと思い、ここに招きました」
「感謝します。旦那様。見直しましたよ」
「あぁ。それ良かった……待て、君は今まで僕を何だと思っていたのですか?」
『黒幕』ですが。何か?
***
三十部屋目、最後に案内されたのは私の部屋だった。
暖炉にベッド、それからドレッサーまで。
内装はノックス家にあった物とそんなに変わらなかったが、こちらの自室は窓が大きく、部屋全体が暖かい陽光に包まれたいた。
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「もちろん、君が望むなら、いつでも僕の部屋で一緒に眠りましょう――その場合、朝まで寝かすことが出来なくなるかもしれませんが」
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ルイスは、こちらのサイドヘアーをつまむ。そして、そのまま毛先まで、ゆっくりと指を滑らせた。
「さぁ、なぜでしょう?」
この話題についてこれ以上言及してはいけない。本能がそう言っている。
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