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1 プロローグ
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ズシン、ズシン、と地響き。
気持ちよく原っぱに仰向けに寝ていたが、その揺れで目を覚ます──が、面倒になり、またゴロンと横に寝返りをうつ。
なんだかぎゃあぎゃあと怒る少女の声が聞こえるが、関係ない。
ぬうっ、と黒い影があたりを暗くした。薄目で確認。バカでかい魔物だ。たしかギガオーガとかいう超級魔物。
コイツは肌の色が赤っぽいから亜種か……。
山のような図体と橋桁ほどもある棍棒。そいつをぐわっ、とふりあげた。お、来るか?
ゴウンッ、と衝撃。視界が真っ暗になる。
明るくなった。ゴバア、と棍棒が再度振り上げられ、パラパラと大小の土砂が降ってくる。
また少女の叫び声。わかった、わかった。真面目にやるよ。
再び振り下ろされた棍棒。バチンッ、と鍔鳴りの音が先だった。
覚えたてのチートスキル、紫電一閃──。
斬られて上半分は後ろに落ちる棍棒。ズズン、とまた地面が揺れる。
いきなり半分になった己の得物を見て不思議そうに首を傾げるギガオーガ。いや、もう終わっているから。
巨人の首筋に赤い線がにじみ出てくる。異変に気づいて首に手をやろうとする前に、その頭は落下していた。
首が落ち、身体が地面に倒れてまた派手な地響き。
向こうから、白いワンピースの裾をたくしあげながらひとりの少女が駆けてくるのが見えた。
「こらあぁぁーーっっ! いつきぃーーっ!」
なんか怒っている。予定通り魔物は倒したのに……なんでだ?
ハアハア息を切らせながら、少女は腰以上もある長い赤髪を振り乱し、叫んだ。
「その顔っ! やめろって言ったでしょ! 俺、なんかしましたか~? みたいなの! あのね、最初から本気出せっての! 魔物ナメンなよ! 超級魔物、ナメンなよっ! いくら強いっつっても、不測の事態もあり得るんだからさっ! アンタが棍棒まともに喰らったとき、マジ死んだかと思ったわ。コイツ、避けもしないでバカ、ホントバカ、マジ死ねと思ったわ!」
信じられないかもしれないが、この十四、五歳くらいの少女はこの世界──いわゆる異世界の《女神》だそうだが……俺自身、まだ納得してない。
《女神》というのは普通、慈愛に満ちて叡知に溢れ、その美しさと気高さで誰しもがひれ伏してしまうものだ。
この口の悪い自称《女神》は、非力なのはまだいいとしても治癒魔法のひとつも使えない、頭も良いとはいえないし、セクシーでもグラマーでもない。
ぎゃあぎゃあとひとしきり罵倒を終えた少女は肩で息をしながらも、やや落ち着いたようだ。
「……まったく。魔王を倒せる《勇者》はアンタだけなんだから。もう少し慎重になってよね。ほら、街に戻るわよ」
「あ、コイツ、超級っスよね。素材剥いでいくっスよ。なんか使えるかも」
俺はそう言って魔物の死骸から短剣で素材を剥ぎ取っていく。
牙に毛髪、爪、肉……。荷袋へ詰め込む。
「分かってんじゃん。そうやって魔物倒して地道にアイテムやら素材集めて、少しずつ強い武器なんかを作るの。そんで仲間になりそうな願望者探しも忘れないこと。これが魔王を倒す道なんだから!」
いや、実を言うとこれ以上強くなるつもりなんてない。たいていの魔物は撫でるだけで死ぬし、俺と同じような能力者──願望者相手でも、実力の千分の一すら出さずに勝てている。
アイテムを集めているのはただ、アイテム収集率を100パーにしたいだけだ。そう言ったらまた怒りだすから、言わないけど。
ピピッ、とステータスウインドウを開いて確認。アイテム収集率13パーセント。まだまだ先は長そうだ……。
「じゃあ、戻るっスか」
荷袋を背負い、街へと続く街道へと戻る。赤髪の少女もついてくる。
この異世界、シエラ=イデアルに来てからまだ一ヶ月ほど。
元の世界では想像もつかなかった、刺激的な世界。
ゲームによくあるような中世ヨーロッパぐらいの文明世界。
魔物が襲ってくる。願望者とかいう、転移者も襲ってくる。盗賊やら山賊やら、とにかく襲ってくる。
《女神》の祝福とやらではじめからバカ強い能力を得たらしいが、それでも魔王には勝てないらしい。
だから魔物を倒したり、仲間を見つけたり、ライバルを倒したりして名声を得て、世界中から認識? される事が大事だそうだ。面倒だが……しばらくは付き合ってやろう。
どうせ自分には帰る場所などない。
もう元の世界では死んでしまっているから。
一ヶ月前、自分はただの平凡な高校生だった。
気持ちよく原っぱに仰向けに寝ていたが、その揺れで目を覚ます──が、面倒になり、またゴロンと横に寝返りをうつ。
なんだかぎゃあぎゃあと怒る少女の声が聞こえるが、関係ない。
ぬうっ、と黒い影があたりを暗くした。薄目で確認。バカでかい魔物だ。たしかギガオーガとかいう超級魔物。
コイツは肌の色が赤っぽいから亜種か……。
山のような図体と橋桁ほどもある棍棒。そいつをぐわっ、とふりあげた。お、来るか?
ゴウンッ、と衝撃。視界が真っ暗になる。
明るくなった。ゴバア、と棍棒が再度振り上げられ、パラパラと大小の土砂が降ってくる。
また少女の叫び声。わかった、わかった。真面目にやるよ。
再び振り下ろされた棍棒。バチンッ、と鍔鳴りの音が先だった。
覚えたてのチートスキル、紫電一閃──。
斬られて上半分は後ろに落ちる棍棒。ズズン、とまた地面が揺れる。
いきなり半分になった己の得物を見て不思議そうに首を傾げるギガオーガ。いや、もう終わっているから。
巨人の首筋に赤い線がにじみ出てくる。異変に気づいて首に手をやろうとする前に、その頭は落下していた。
首が落ち、身体が地面に倒れてまた派手な地響き。
向こうから、白いワンピースの裾をたくしあげながらひとりの少女が駆けてくるのが見えた。
「こらあぁぁーーっっ! いつきぃーーっ!」
なんか怒っている。予定通り魔物は倒したのに……なんでだ?
ハアハア息を切らせながら、少女は腰以上もある長い赤髪を振り乱し、叫んだ。
「その顔っ! やめろって言ったでしょ! 俺、なんかしましたか~? みたいなの! あのね、最初から本気出せっての! 魔物ナメンなよ! 超級魔物、ナメンなよっ! いくら強いっつっても、不測の事態もあり得るんだからさっ! アンタが棍棒まともに喰らったとき、マジ死んだかと思ったわ。コイツ、避けもしないでバカ、ホントバカ、マジ死ねと思ったわ!」
信じられないかもしれないが、この十四、五歳くらいの少女はこの世界──いわゆる異世界の《女神》だそうだが……俺自身、まだ納得してない。
《女神》というのは普通、慈愛に満ちて叡知に溢れ、その美しさと気高さで誰しもがひれ伏してしまうものだ。
この口の悪い自称《女神》は、非力なのはまだいいとしても治癒魔法のひとつも使えない、頭も良いとはいえないし、セクシーでもグラマーでもない。
ぎゃあぎゃあとひとしきり罵倒を終えた少女は肩で息をしながらも、やや落ち着いたようだ。
「……まったく。魔王を倒せる《勇者》はアンタだけなんだから。もう少し慎重になってよね。ほら、街に戻るわよ」
「あ、コイツ、超級っスよね。素材剥いでいくっスよ。なんか使えるかも」
俺はそう言って魔物の死骸から短剣で素材を剥ぎ取っていく。
牙に毛髪、爪、肉……。荷袋へ詰め込む。
「分かってんじゃん。そうやって魔物倒して地道にアイテムやら素材集めて、少しずつ強い武器なんかを作るの。そんで仲間になりそうな願望者探しも忘れないこと。これが魔王を倒す道なんだから!」
いや、実を言うとこれ以上強くなるつもりなんてない。たいていの魔物は撫でるだけで死ぬし、俺と同じような能力者──願望者相手でも、実力の千分の一すら出さずに勝てている。
アイテムを集めているのはただ、アイテム収集率を100パーにしたいだけだ。そう言ったらまた怒りだすから、言わないけど。
ピピッ、とステータスウインドウを開いて確認。アイテム収集率13パーセント。まだまだ先は長そうだ……。
「じゃあ、戻るっスか」
荷袋を背負い、街へと続く街道へと戻る。赤髪の少女もついてくる。
この異世界、シエラ=イデアルに来てからまだ一ヶ月ほど。
元の世界では想像もつかなかった、刺激的な世界。
ゲームによくあるような中世ヨーロッパぐらいの文明世界。
魔物が襲ってくる。願望者とかいう、転移者も襲ってくる。盗賊やら山賊やら、とにかく襲ってくる。
《女神》の祝福とやらではじめからバカ強い能力を得たらしいが、それでも魔王には勝てないらしい。
だから魔物を倒したり、仲間を見つけたり、ライバルを倒したりして名声を得て、世界中から認識? される事が大事だそうだ。面倒だが……しばらくは付き合ってやろう。
どうせ自分には帰る場所などない。
もう元の世界では死んでしまっているから。
一ヶ月前、自分はただの平凡な高校生だった。
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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