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21 超高速バトル
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李秀雅が突進。足元の氷を吹っ飛ばす勢い。スキル、過強化を使っている。
俺も超加速を使い、対抗。
砕けた氷がゆっっくりと落ちてくる。
素手の攻防──イ・スアの連続蹴りから右の手刀。
ガードして反撃。ステータスで確認済みだが、俺の体術レベルも最初から最高値だ。このまま打ち負けるはずはない。
左の牽制のジャブ三連発。そして右ストレート。かわしたが、イ・スアの表情が変わった。
次は下段回し蹴り。イ・スアの足元をすくい、体勢を崩した。いまだ──。
右拳を打ち下ろす。イ・スアは右腕一本でギャッ、と体勢を整え、左の手刀で迎撃。
ドドッ、とお互いの胸に命中。ふたりとも吹っ飛び、能力も解除された。
砕けた氷がガシャガシャと床へ落ちる。
俺とイ・スアはすぐに起き上がった。
イ・スアは口からブハッ、と血を吐いた。あまり打たれ強くはないようだ。対して俺はノーダメージ……いや、なんかおかしい。手足が……痺れる。
ガクッ、と膝をついた。呼吸も苦しい。頭もぼんやりしてきた。
「溢忌っ! クロハチは毒手の使い手だ! 気をつけろっ!」
シエラの声。またか、そういう事は先に……。
ゴフゴフと血を吐きながらイ・スアが笑い、向かってくる。ステータスウインドウを開く。マズイ、間に合わない──。
イ・スアは俺を飛び越えていった。
目的は、あの小太り男だ。耳障りな悲鳴をあげている。だが、その前にイルネージュが果敢に立ちはだかった。
アイスブランドをブンッ、と横に振る。
小範囲の吹雪が巻き起こり、イ・スアに氷や雪が叩きつけられる──が、姿が消えた。
ヤバい──! 超加速を発動し、さらに状態異常回復で解毒。
剣を振り切ったイルネージュの懐にイ・スアが潜り込もうとしている。間に合うか──。
手の平を突き出す。ゴッ、と衝撃波が飛び、ふたりもろとも弾き飛ばした。
イルネージュはスローモーションのように宙を舞うが、イ・スアは飛ばされた勢いのまま壁を伝うようにダダダと走る。そして小太り男に接近、手にはいつの間にか銃が握られていた。
ダンダンダンッ、と眉間に銃口を押し付けて三発。
ぶわあっ、と血と脳漿がゆるやかに飛び散る中、イ・スアの狂気の目はこちらに向けられた。
ブンッ、と銃がそのまま飛んできた。
盾で弾く。接近──ズガガッ、と拳の応酬。
お互いに能力が解除され、バッ、と飛び退く。
イルネージュが壁に衝突し、小太り男がグシャア、と床に倒れる。
俺の身体に何かくっついている。三つほど。卵大の、映画とかで見たことあるが……ワイヤーが繋がっており、ピンがピピピンッ、と引き抜かれた。
「え、これ、手榴弾……」
ガカアッ、と熱と衝撃が俺の身体を襲う。
意識を失うことなく、俺は自身の身体が吹っ飛ぶのを確認していた。チートスキル、身代わりは使っていなかった。
ドシャドシャッ、と床に散らばる俺の身体の破片。
しかしチートスキル、超再生によりすでに肉片がぞぞぞ、と集まって再生を開始している。
「やっぱりな……その化け物っぷり。お前、勇者だろ。相手するだけ面倒だ」
イ・スアは血をベエッ、と吐き、それから金切り声をあげる。
「オメーらっっ! いつまで寝てるんだっ! さっさと起きろっ、引き上げるぞっ!」
ジャケットの男たちはフラフラと起き上がり、小太り男の持っていた袋と武器を拾い上げて出口よりぞろぞろと出ていく。
その最後尾──イ・スアは前髪をかき上げ、下唇のピアスを舐めてから言った。
「今日は時間がねえからこれぐらいにしてやる……おい、赤髪のガキ。前と同じようにジャマすんなら、勇者だろうがマジで潰すぞ」
イ・スアの一味が去り、シエラがふい~っ、と安堵のため息をつく。
「ヤバかった……この世界で一番危険な願望者といわれてるアイツと戦って無事だったんだから……」
イルネージュも無事だ。身体に軽い打撲があるだけのようだ。
シュルルル、と俺の身体が再生が完了。しかし驚いた。あそこまでバラバラになっても再生可能だなんて。
「超再生の力に驚いているようだな。でも即死攻撃には耐性ないから、常に身代わりは準備しとけって言ったじゃん。油断しすぎだ」
口を尖らせてシエラが肘打ち。
俺は反省するっス、と謝った。自分だけならどうにでもなるが、イルネージュやシエラがいるのだから慎重にならなければ。
チートスキル、超加速を手に入れたはいいが、このままこの街に滞在するのはどうかという話になった。
またイ・スアの一味に遭遇する可能性もあるし、紹介所なら別の街にもある。シエラの話によると、もっと大きな街ならギルドという願望者が集まる場所があるらしい。
「少し遠いけど、この国を抜けてセペノイアという街に行こう。どこの国にも所属していない、商業自治都市。きっとチートスキルの情報も多く得られるよ」
俺もイルネージュもまだこの世界に詳しくはない。とりあえずはこの《女神》の言う通りに動くほかなかった。
俺も超加速を使い、対抗。
砕けた氷がゆっっくりと落ちてくる。
素手の攻防──イ・スアの連続蹴りから右の手刀。
ガードして反撃。ステータスで確認済みだが、俺の体術レベルも最初から最高値だ。このまま打ち負けるはずはない。
左の牽制のジャブ三連発。そして右ストレート。かわしたが、イ・スアの表情が変わった。
次は下段回し蹴り。イ・スアの足元をすくい、体勢を崩した。いまだ──。
右拳を打ち下ろす。イ・スアは右腕一本でギャッ、と体勢を整え、左の手刀で迎撃。
ドドッ、とお互いの胸に命中。ふたりとも吹っ飛び、能力も解除された。
砕けた氷がガシャガシャと床へ落ちる。
俺とイ・スアはすぐに起き上がった。
イ・スアは口からブハッ、と血を吐いた。あまり打たれ強くはないようだ。対して俺はノーダメージ……いや、なんかおかしい。手足が……痺れる。
ガクッ、と膝をついた。呼吸も苦しい。頭もぼんやりしてきた。
「溢忌っ! クロハチは毒手の使い手だ! 気をつけろっ!」
シエラの声。またか、そういう事は先に……。
ゴフゴフと血を吐きながらイ・スアが笑い、向かってくる。ステータスウインドウを開く。マズイ、間に合わない──。
イ・スアは俺を飛び越えていった。
目的は、あの小太り男だ。耳障りな悲鳴をあげている。だが、その前にイルネージュが果敢に立ちはだかった。
アイスブランドをブンッ、と横に振る。
小範囲の吹雪が巻き起こり、イ・スアに氷や雪が叩きつけられる──が、姿が消えた。
ヤバい──! 超加速を発動し、さらに状態異常回復で解毒。
剣を振り切ったイルネージュの懐にイ・スアが潜り込もうとしている。間に合うか──。
手の平を突き出す。ゴッ、と衝撃波が飛び、ふたりもろとも弾き飛ばした。
イルネージュはスローモーションのように宙を舞うが、イ・スアは飛ばされた勢いのまま壁を伝うようにダダダと走る。そして小太り男に接近、手にはいつの間にか銃が握られていた。
ダンダンダンッ、と眉間に銃口を押し付けて三発。
ぶわあっ、と血と脳漿がゆるやかに飛び散る中、イ・スアの狂気の目はこちらに向けられた。
ブンッ、と銃がそのまま飛んできた。
盾で弾く。接近──ズガガッ、と拳の応酬。
お互いに能力が解除され、バッ、と飛び退く。
イルネージュが壁に衝突し、小太り男がグシャア、と床に倒れる。
俺の身体に何かくっついている。三つほど。卵大の、映画とかで見たことあるが……ワイヤーが繋がっており、ピンがピピピンッ、と引き抜かれた。
「え、これ、手榴弾……」
ガカアッ、と熱と衝撃が俺の身体を襲う。
意識を失うことなく、俺は自身の身体が吹っ飛ぶのを確認していた。チートスキル、身代わりは使っていなかった。
ドシャドシャッ、と床に散らばる俺の身体の破片。
しかしチートスキル、超再生によりすでに肉片がぞぞぞ、と集まって再生を開始している。
「やっぱりな……その化け物っぷり。お前、勇者だろ。相手するだけ面倒だ」
イ・スアは血をベエッ、と吐き、それから金切り声をあげる。
「オメーらっっ! いつまで寝てるんだっ! さっさと起きろっ、引き上げるぞっ!」
ジャケットの男たちはフラフラと起き上がり、小太り男の持っていた袋と武器を拾い上げて出口よりぞろぞろと出ていく。
その最後尾──イ・スアは前髪をかき上げ、下唇のピアスを舐めてから言った。
「今日は時間がねえからこれぐらいにしてやる……おい、赤髪のガキ。前と同じようにジャマすんなら、勇者だろうがマジで潰すぞ」
イ・スアの一味が去り、シエラがふい~っ、と安堵のため息をつく。
「ヤバかった……この世界で一番危険な願望者といわれてるアイツと戦って無事だったんだから……」
イルネージュも無事だ。身体に軽い打撲があるだけのようだ。
シュルルル、と俺の身体が再生が完了。しかし驚いた。あそこまでバラバラになっても再生可能だなんて。
「超再生の力に驚いているようだな。でも即死攻撃には耐性ないから、常に身代わりは準備しとけって言ったじゃん。油断しすぎだ」
口を尖らせてシエラが肘打ち。
俺は反省するっス、と謝った。自分だけならどうにでもなるが、イルネージュやシエラがいるのだから慎重にならなければ。
チートスキル、超加速を手に入れたはいいが、このままこの街に滞在するのはどうかという話になった。
またイ・スアの一味に遭遇する可能性もあるし、紹介所なら別の街にもある。シエラの話によると、もっと大きな街ならギルドという願望者が集まる場所があるらしい。
「少し遠いけど、この国を抜けてセペノイアという街に行こう。どこの国にも所属していない、商業自治都市。きっとチートスキルの情報も多く得られるよ」
俺もイルネージュもまだこの世界に詳しくはない。とりあえずはこの《女神》の言う通りに動くほかなかった。
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