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24 騙す者、騙される者
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「やったのか? 動かんぞ」
「いや、油断するな。うかつに近づくなよ」
「アイン、わずかな動きも見逃すな」
三人の盗賊は慎重だ。近づこうとしない。
どうする? まだ相手全員の能力は謎だが……シエラとイルネージュは安全な場所まで運んだから、もう遠慮は必要ない。向こうから近づかないなら、こちらから仕掛けてみるか?
ぐっ、と起き上がろうとして、違和感。身体が……ゆっくりとしか動かない。
超加速を解除しているからといっても、これはおかしい。なんらかのステータス異常を引き起こされている。
「動いている! アイツ、ヤベーぞっ!」
アインの声に、アーロンとディランが動いた。
ディランの複数の矢、アーロンの魔法による火球がこちらに放たれた。これはかわすのは無理だ。
ドガガガッ、と全て被弾。
物理、魔法防御ともに最高値の為にダメージはないが、なんかムカつく。
超加速を発動。それでも、やっと普通の速度で動けるぐらいだ。
「野郎、俺の覚えたての強力な魔法、減速を喰らってまともに動いてやがる」
アーロンがさらに願望の力を高める。普通に動けていた身体が……グググ、と鈍くなる。ヤツの能力……超加速を押さえ込むほどのモノなのか? もしや、チートスキルの一種か。
「おい、効いてるぞっ、今だ!」
アーロンの号令にディランがさらに矢を放ち、アインが背に担いであった大剣を抜いて向かってきた。
ドドドッ、と矢が眉間、喉、心臓に命中。まったく効かないが、俺はダメージを負ったかのように膝をつく。
「見たかよっ、俺の新能力、追尾をよっ! 今度こそやったぜ!」
弓使いディランの声に張り合うように、戦士アインも走りながら叫ぶ。
「いいや、トドメを刺すのはこの俺だぜ! どんな動きもスキも見逃さない鷹の目の能力を手に入れた俺がな! コイツの弱点も丸わかりだぜっ!」
アインの大剣が屈んでいる俺の首にドキャッ、と打ち込まれた。
まあ、たしかに首と胴体がオサラバすれば超回復といえど再生出来ないかもしれない。しかし、凡庸な使い手の一撃など丸めた新聞紙で叩かれたよりも軽い。
アインの斬撃で殺せたと思ったのだろう。減速の効果が消えた。今だ──。
何事もなかったかのように立ち上がり、驚愕するアインの首をへし折った。
指先から電撃を放ち、魔法使いアーロンの動きを止める。
ウソだろっ、と矢を放つディラン。俺は走りながら矢の一本を掴む。
ひいっ、と逃げ出したディランに追いつき、その後頭部に矢を突き刺した。
電撃で痺れたアーロンは震えながら、怯えた目で命乞いをする。
「た、助けてくれ。命だけは……アンタ、一体何者なんだ……」
アインとディランから光る球体が飛び出し、俺の胸に吸い込まれた。やはりチートスキルの持ち主だったか。そしてコイツも。
「俺っスか? 勇者っスよ。ツイてないっスね、襲ったのが勇者一行だなんて」
「ゆ、勇者様、許してくれ。もう二度と盗賊なんかしない──命だけはどうか。勇者様は降参した者の命は奪わないのでしょう」
「そいつは……ちょいと虫が良すぎるっスねえ。散々人殺したんスよね、アンタ。今はシエラも見てないし……ホント、ツイてないっスねえ」
俺はハハハ、と笑いながら動けないアーロンに近づき、その胸を足で蹴り潰した。ゴキゴキッ、と骨の砕ける感触。アーロンは血を吐いて絶命した。
アーロンのチートスキルも手に入れ、俺は残るひとりに目を向ける。人の良い馬車屋の御者を装い、盗賊に旅人を差し出していた男──マテオだ。
マテオは逃げ出していなかった。
腰を抜かしたのか尻餅をつき、歯をガチガチ鳴らし、涙目であわあわ言っている。
「ああ、心配しなくてもアンタは殺さないっスよ。まだセペノイアに着いてないし。案内は必要っスよね。それにアンタ自身は人、殺してなさそうだし」
これを聞いて少しは安心したのか、マテオはうんうん、と素早く頷く。
「あ、その代わり死体と血の痕隠すの手伝うっス。シエラとイルネージュには、俺が殺したのは秘密っスよ」
朝を迎え、シエラとイルネージュが寝床からもそもそと這い出してくる。昨夜のうちに馬車からまた移動しておいたのだ。
「うう~ん、よく寝た。あ、溢忌さん、マテオさん、おはようございます」
「ふああ、《女神》の起床であるぞ。皆の者、平伏して崇めよ。そしてシエラの良いところをひとり十個ずつ言え」
俺はふたりにマテオと見張りを交代した後、盗賊に襲われたと説明した。
三人組の願望者で、偶然にもチートスキルの所持者だったと。
そして無事に撃退し、チートスキルを手に入れた事とその能力についても話した。
ちらとマテオのほうを見る。
マテオは青ざめた顔をしながら朝食の用意をしていた。
「ええっ、わたし達が寝ている間にそんな事が……大丈夫だったんですか? ごめんなさい、そんな大変なときに役に立てなくて」
俺はいいっスよ、と手を振る。イルネージュはこんなんだからいくらでもごまかせるが、用心しなければならないのは《女神》シエラだ。
変なところでカンが良いし、たまに鋭いときがある。伏し目がちにその反応を待つ。
「ふーん、大変だったねえ。でも良かったじゃん。チートスキル手に入ってさあ。やっぱ引き寄せられるのかなあ、勇者に」
寝ぼけまなこで喋るシエラ。この調子なら大丈夫か……と思っていたが、シエラの目が急にくわっと見開く。
「イルネージュッ! まだシエラの良いところを二つしか言ってねーぞっ! なんだ、二つって! もっとあるだろっ、ほら言え、すぐ言え!」
「ま、待ってください~。今考えてたんですよ、あ、ダメ、胸を乱暴に掴まないで」
やれやれ……心配する必要なかったみたいだ。
朝食をとり、しばらく休憩してから廃城を出発。
昼前には商業自治都市、セペノイアに到着した。
「いや、油断するな。うかつに近づくなよ」
「アイン、わずかな動きも見逃すな」
三人の盗賊は慎重だ。近づこうとしない。
どうする? まだ相手全員の能力は謎だが……シエラとイルネージュは安全な場所まで運んだから、もう遠慮は必要ない。向こうから近づかないなら、こちらから仕掛けてみるか?
ぐっ、と起き上がろうとして、違和感。身体が……ゆっくりとしか動かない。
超加速を解除しているからといっても、これはおかしい。なんらかのステータス異常を引き起こされている。
「動いている! アイツ、ヤベーぞっ!」
アインの声に、アーロンとディランが動いた。
ディランの複数の矢、アーロンの魔法による火球がこちらに放たれた。これはかわすのは無理だ。
ドガガガッ、と全て被弾。
物理、魔法防御ともに最高値の為にダメージはないが、なんかムカつく。
超加速を発動。それでも、やっと普通の速度で動けるぐらいだ。
「野郎、俺の覚えたての強力な魔法、減速を喰らってまともに動いてやがる」
アーロンがさらに願望の力を高める。普通に動けていた身体が……グググ、と鈍くなる。ヤツの能力……超加速を押さえ込むほどのモノなのか? もしや、チートスキルの一種か。
「おい、効いてるぞっ、今だ!」
アーロンの号令にディランがさらに矢を放ち、アインが背に担いであった大剣を抜いて向かってきた。
ドドドッ、と矢が眉間、喉、心臓に命中。まったく効かないが、俺はダメージを負ったかのように膝をつく。
「見たかよっ、俺の新能力、追尾をよっ! 今度こそやったぜ!」
弓使いディランの声に張り合うように、戦士アインも走りながら叫ぶ。
「いいや、トドメを刺すのはこの俺だぜ! どんな動きもスキも見逃さない鷹の目の能力を手に入れた俺がな! コイツの弱点も丸わかりだぜっ!」
アインの大剣が屈んでいる俺の首にドキャッ、と打ち込まれた。
まあ、たしかに首と胴体がオサラバすれば超回復といえど再生出来ないかもしれない。しかし、凡庸な使い手の一撃など丸めた新聞紙で叩かれたよりも軽い。
アインの斬撃で殺せたと思ったのだろう。減速の効果が消えた。今だ──。
何事もなかったかのように立ち上がり、驚愕するアインの首をへし折った。
指先から電撃を放ち、魔法使いアーロンの動きを止める。
ウソだろっ、と矢を放つディラン。俺は走りながら矢の一本を掴む。
ひいっ、と逃げ出したディランに追いつき、その後頭部に矢を突き刺した。
電撃で痺れたアーロンは震えながら、怯えた目で命乞いをする。
「た、助けてくれ。命だけは……アンタ、一体何者なんだ……」
アインとディランから光る球体が飛び出し、俺の胸に吸い込まれた。やはりチートスキルの持ち主だったか。そしてコイツも。
「俺っスか? 勇者っスよ。ツイてないっスね、襲ったのが勇者一行だなんて」
「ゆ、勇者様、許してくれ。もう二度と盗賊なんかしない──命だけはどうか。勇者様は降参した者の命は奪わないのでしょう」
「そいつは……ちょいと虫が良すぎるっスねえ。散々人殺したんスよね、アンタ。今はシエラも見てないし……ホント、ツイてないっスねえ」
俺はハハハ、と笑いながら動けないアーロンに近づき、その胸を足で蹴り潰した。ゴキゴキッ、と骨の砕ける感触。アーロンは血を吐いて絶命した。
アーロンのチートスキルも手に入れ、俺は残るひとりに目を向ける。人の良い馬車屋の御者を装い、盗賊に旅人を差し出していた男──マテオだ。
マテオは逃げ出していなかった。
腰を抜かしたのか尻餅をつき、歯をガチガチ鳴らし、涙目であわあわ言っている。
「ああ、心配しなくてもアンタは殺さないっスよ。まだセペノイアに着いてないし。案内は必要っスよね。それにアンタ自身は人、殺してなさそうだし」
これを聞いて少しは安心したのか、マテオはうんうん、と素早く頷く。
「あ、その代わり死体と血の痕隠すの手伝うっス。シエラとイルネージュには、俺が殺したのは秘密っスよ」
朝を迎え、シエラとイルネージュが寝床からもそもそと這い出してくる。昨夜のうちに馬車からまた移動しておいたのだ。
「うう~ん、よく寝た。あ、溢忌さん、マテオさん、おはようございます」
「ふああ、《女神》の起床であるぞ。皆の者、平伏して崇めよ。そしてシエラの良いところをひとり十個ずつ言え」
俺はふたりにマテオと見張りを交代した後、盗賊に襲われたと説明した。
三人組の願望者で、偶然にもチートスキルの所持者だったと。
そして無事に撃退し、チートスキルを手に入れた事とその能力についても話した。
ちらとマテオのほうを見る。
マテオは青ざめた顔をしながら朝食の用意をしていた。
「ええっ、わたし達が寝ている間にそんな事が……大丈夫だったんですか? ごめんなさい、そんな大変なときに役に立てなくて」
俺はいいっスよ、と手を振る。イルネージュはこんなんだからいくらでもごまかせるが、用心しなければならないのは《女神》シエラだ。
変なところでカンが良いし、たまに鋭いときがある。伏し目がちにその反応を待つ。
「ふーん、大変だったねえ。でも良かったじゃん。チートスキル手に入ってさあ。やっぱ引き寄せられるのかなあ、勇者に」
寝ぼけまなこで喋るシエラ。この調子なら大丈夫か……と思っていたが、シエラの目が急にくわっと見開く。
「イルネージュッ! まだシエラの良いところを二つしか言ってねーぞっ! なんだ、二つって! もっとあるだろっ、ほら言え、すぐ言え!」
「ま、待ってください~。今考えてたんですよ、あ、ダメ、胸を乱暴に掴まないで」
やれやれ……心配する必要なかったみたいだ。
朝食をとり、しばらく休憩してから廃城を出発。
昼前には商業自治都市、セペノイアに到着した。
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