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63 狡猾
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飛べと言ったり、速すぎると言ったり……本当にわがままだ。
ぬあああ、と地面でバタついているシエラは放ってほこう。
ビュカッ、と飛んできた何かを無造作につかんだ。これは……鞭の先端だ。
「バカな……我がクシエルの断罪の鞭を素手でつかむだと……いくら勇者といえど、そんな真似が出来るとは信じられない」
「神父のクセに不意討ちっスか。クシエルってのは、そのヘンなヤツの名前なんスね」
「これはわたしの分身であり、守護天使なのだ。荒木を倒して図に乗っているようだが……わたしを甘く見ないほうがいい」
「へえ、逃げ出したわりに強気っスねぇ。そのスタ○ドかペル○ナだが知らないっスけど、まあ通用するかやってみればいいっスよ」
俺は鞭の先端を離す。
ヒュッ、と戻った先端はすぐさまバシバシィッ、と俺の身体を打つ。
さすがは超越者。俺の物理無効、魔法無効を無視してダメージを与えてくる。だが──。
スキル、紫電一閃。
バチンッ、と鍔鳴りの音とともにクシエルの鞭はバラバラに。いや、鞭だけではない。
そのクシエルの身体も首、胴の部分が両断されて地面を転がる。
「溢忌っ、気をつけろ。妙な動きをしてるぞ、そいつ」
シエラがクシエルを指さす。
クシエルはさらに腕や足の部分までバカァッ、と分離し宙に浮く。
それはヨハンに引き寄せられ、周囲をグルグルと回りだした。そして──。
ガイン、ゴワン、ゴッ、ゴッ、ガシィ~ン。
派手な音を響かせながらヨハンの身体に装着され、鎧と化した。そして白かったクシエルのパーツは黄金色に輝きだす。
「この我が身にまとった黄金のクシエルは、たとえ超級魔物の一撃でさえ傷ひとつつけることは出来ない。たとえ《女神》の加護を受けた勇者でも」
願望の力を闘気として立ち昇らせ、ヨハンが自信たっぷりに歩き出す。
「うおお、やべえぞ溢忌。黄金○闘士の登場だ。おまえも小○宙を高めてセブンセンシズに目覚めるんだっ」
「いや、ムチャ言わないでくださいっスよ──っと危ない」
衝撃波のようなものが飛んできたのを、自分の背を盾にしてシエラをかばう。
ズドドドッ、と背中に打撃。
これはなかなか痛い。かわさないようにシエラを狙ったのだろう。さっきの不意討ちといい、ムカつくヤツだ。
「うおー、シエラは感動したぞ。なんかア○ナを守る泥臭い青銅○闘士みたいだった!」
シエラははしゃいでいるが……ヨハンの手元がボッ、と光った。
ゴガガガガッ、と超高速の飛ぶ打撃。よろめき、数歩退がった。ヨハンがニタリと笑う。
減速をかけるか、超加速を使えばこんな技、どうということはない。
よし、反撃──と思ったところでガクン、とヒザをついた。後ろからはシエラのああっ、という声。
これは……いつの間にかあの十字架が首にかけられている。さっきの攻撃はこれを狙っていたのか。とっさに外すが、身体の気だるさは抜けない。
しまった……完全に油断していた。シエラにも十字架がかけられている。せっかく元に戻したのに、また敵に操られてしまうのか。
「ククク……これがわたしが得たチートスキル、洗脳だ。自分の念を込めたアイテムを相手に身に付けさせれば、意のままに操ることが出来る。キミに対しては洗脳とまではいかないが、大幅なパワーダウンの効果があるようだな。そしてそれは一定時間続く」
ヨハンが中指で丸メガネをクイと上げながら高らかに笑う。
俺は舌打ちしながらステータスウインドウを開く。
たしかに大半のスキルは使用不能状態。基本ステータスも軒並み低下。だが、それでも超越者だろうと超級魔物だろうと2、3体は余裕で倒せる戦力はある。
俺は立ち上がり──。
「ふンぐぅッッ!」
肛門に激痛。俺はたまらず前のめりに倒れる。
痛みに呻きながら振り向くと、やはり……洗脳されたシエラ。
カンチョーのポーズで指先からシュウウウ、と煙が出ている。
「超秘技、極三年殺し……いや、三年どころではない。お前はもう死んでいる」
シブイ声で決めポーズを取るシエラ。
たしかに度重なる攻撃で死んだかもしれない。俺の肛門は。
「どうやらキミの物語はここで終わりのようだ。葉桜溢忌……残念だよ。荒木ではなく、キミに最初に出会っていれば、わたし達は良い友になれたかもしれないのに」
見下ろしながらヨハンは願望の力を高めている。これはいかん……至近距離で超高速打撃を見舞うつもりだ。
今の俺は超再生も身代わりも自動復活も使えない。耐えられるか──。
急に寒気。いや、これは……冷気か。
周囲には雪がちらついている。
ヨハンも異変に気付き、空を見上げる。
ズキュウウンッ、と銃声。シエラの十字架が撃ち抜かれていた。
フッ、と倒れるシエラを受け止める。気を失っているだけのようだ。
この十字架を狙撃したのは……シトライゼだ。
狙撃銃に変形した右腕をこちらに向けながらローラーブレイドで疾走。近づいてくる。そしてその背にはイルネージュの姿が見えた。
ぬあああ、と地面でバタついているシエラは放ってほこう。
ビュカッ、と飛んできた何かを無造作につかんだ。これは……鞭の先端だ。
「バカな……我がクシエルの断罪の鞭を素手でつかむだと……いくら勇者といえど、そんな真似が出来るとは信じられない」
「神父のクセに不意討ちっスか。クシエルってのは、そのヘンなヤツの名前なんスね」
「これはわたしの分身であり、守護天使なのだ。荒木を倒して図に乗っているようだが……わたしを甘く見ないほうがいい」
「へえ、逃げ出したわりに強気っスねぇ。そのスタ○ドかペル○ナだが知らないっスけど、まあ通用するかやってみればいいっスよ」
俺は鞭の先端を離す。
ヒュッ、と戻った先端はすぐさまバシバシィッ、と俺の身体を打つ。
さすがは超越者。俺の物理無効、魔法無効を無視してダメージを与えてくる。だが──。
スキル、紫電一閃。
バチンッ、と鍔鳴りの音とともにクシエルの鞭はバラバラに。いや、鞭だけではない。
そのクシエルの身体も首、胴の部分が両断されて地面を転がる。
「溢忌っ、気をつけろ。妙な動きをしてるぞ、そいつ」
シエラがクシエルを指さす。
クシエルはさらに腕や足の部分までバカァッ、と分離し宙に浮く。
それはヨハンに引き寄せられ、周囲をグルグルと回りだした。そして──。
ガイン、ゴワン、ゴッ、ゴッ、ガシィ~ン。
派手な音を響かせながらヨハンの身体に装着され、鎧と化した。そして白かったクシエルのパーツは黄金色に輝きだす。
「この我が身にまとった黄金のクシエルは、たとえ超級魔物の一撃でさえ傷ひとつつけることは出来ない。たとえ《女神》の加護を受けた勇者でも」
願望の力を闘気として立ち昇らせ、ヨハンが自信たっぷりに歩き出す。
「うおお、やべえぞ溢忌。黄金○闘士の登場だ。おまえも小○宙を高めてセブンセンシズに目覚めるんだっ」
「いや、ムチャ言わないでくださいっスよ──っと危ない」
衝撃波のようなものが飛んできたのを、自分の背を盾にしてシエラをかばう。
ズドドドッ、と背中に打撃。
これはなかなか痛い。かわさないようにシエラを狙ったのだろう。さっきの不意討ちといい、ムカつくヤツだ。
「うおー、シエラは感動したぞ。なんかア○ナを守る泥臭い青銅○闘士みたいだった!」
シエラははしゃいでいるが……ヨハンの手元がボッ、と光った。
ゴガガガガッ、と超高速の飛ぶ打撃。よろめき、数歩退がった。ヨハンがニタリと笑う。
減速をかけるか、超加速を使えばこんな技、どうということはない。
よし、反撃──と思ったところでガクン、とヒザをついた。後ろからはシエラのああっ、という声。
これは……いつの間にかあの十字架が首にかけられている。さっきの攻撃はこれを狙っていたのか。とっさに外すが、身体の気だるさは抜けない。
しまった……完全に油断していた。シエラにも十字架がかけられている。せっかく元に戻したのに、また敵に操られてしまうのか。
「ククク……これがわたしが得たチートスキル、洗脳だ。自分の念を込めたアイテムを相手に身に付けさせれば、意のままに操ることが出来る。キミに対しては洗脳とまではいかないが、大幅なパワーダウンの効果があるようだな。そしてそれは一定時間続く」
ヨハンが中指で丸メガネをクイと上げながら高らかに笑う。
俺は舌打ちしながらステータスウインドウを開く。
たしかに大半のスキルは使用不能状態。基本ステータスも軒並み低下。だが、それでも超越者だろうと超級魔物だろうと2、3体は余裕で倒せる戦力はある。
俺は立ち上がり──。
「ふンぐぅッッ!」
肛門に激痛。俺はたまらず前のめりに倒れる。
痛みに呻きながら振り向くと、やはり……洗脳されたシエラ。
カンチョーのポーズで指先からシュウウウ、と煙が出ている。
「超秘技、極三年殺し……いや、三年どころではない。お前はもう死んでいる」
シブイ声で決めポーズを取るシエラ。
たしかに度重なる攻撃で死んだかもしれない。俺の肛門は。
「どうやらキミの物語はここで終わりのようだ。葉桜溢忌……残念だよ。荒木ではなく、キミに最初に出会っていれば、わたし達は良い友になれたかもしれないのに」
見下ろしながらヨハンは願望の力を高めている。これはいかん……至近距離で超高速打撃を見舞うつもりだ。
今の俺は超再生も身代わりも自動復活も使えない。耐えられるか──。
急に寒気。いや、これは……冷気か。
周囲には雪がちらついている。
ヨハンも異変に気付き、空を見上げる。
ズキュウウンッ、と銃声。シエラの十字架が撃ち抜かれていた。
フッ、と倒れるシエラを受け止める。気を失っているだけのようだ。
この十字架を狙撃したのは……シトライゼだ。
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今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
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