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64 ヨハンVSイルネージュ
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ギャアアア、と走りながらシトライゼの狙撃。
ガイン、ギィンッ、とヨハンに命中するが、その強固な鎧は撃ち抜けないようだ。
「フン、ムダな事を」
ボッ、とヨハンの超高速拳打。
脚に命中し、シトライゼは勢いがついたまま倒れ──いや、背のイルネージュを巻き込まないように放り投げてから倒れた。
「シトライゼさんっ!」
「イルネージュ様、わたしに構わず、敵を」
空中へ投げ出されたイルネージュはアイスブランドを抜き、着地点でヨハンに斬りつけた。
ヨハンはそれを左腕で軽々と受け止める。
シトライゼはヨハンの攻撃と倒れた衝撃で手足を損壊。これ以上戦うのはムリのようだ。
俺もヨハンの十字架……というよりシエラのカンチョーのせいで足腰が立たない。
情けないが、今まともに戦えるのはイルネージュだけだ。
「《アイシクルフェンサー》イルネージュ・ソレル。キミごときが超越者であるわたしに勝てるワケがないでしょう。そんなに死にたいのですか」
ボゥッ、と至近距離からヨハンの超高速拳打。
シエラは、わわっと後退しながら剣で防いだ。
「わ、わたしだって戦えるんです! 溢忌さんの足を引っ張ってばかりじゃないんです!」
「健気ですねぇ。まぐれでわたしの攻撃は何度も防げませんよ」
「イルネージュ、逃げろっ!」
ヨハンの言う通り、イルネージュでは勝ち目はない。このままでは──殺される。
「わたしは逃げませんっ! この世界でも逃げ出したら、もうわたしの居場所はないんですっ!」
ビュオッ、とアイスブランドを横に薙ぐイルネージュ。
小規模の吹雪が発生。氷や雪がヨハンに叩きつけられる。
「ハハハハッ、なんですかコレは。心地よいぐらいですよ」
まったく効いていない。今度は両手から飛ぶ拳打を繰り出すヨハン。
ゴバッ、とイルネージュの足元から氷柱が出現。うまい、その勢いでかわした。
氷柱はヨハンの攻撃によってバラバラに砕かれたが──それがいい具合に目眩ましになった。
氷の破片が飛び散る中、イルネージュの斬撃。
胴を薙ぎ、袈裟懸け、逆袈裟。
ヨハンは身じろぎもしない。
ズオッ、とヨハンは腕を伸ばし、イルネージュの首をつかんで片手で持ち上げる。
「いい加減になさい。神の加護を受けたわたしに勝てる道理など無いのです」
「か、神様、は……この世界の《女神》は、シ、シエラさん、です」
「あんな小娘が本物の《女神》だと信じているのですか? アレはそう思い込んでいるただの願望者ですよ。言葉巧みに優秀な若者をたぶらかし、勇者などと持ち上げて死地へ赴かせる。アレはそういった類いの人間です。知っているんですよ、わたしは」
「ち、ちが、う。シエラさん、は、本当の《女神》……」
「まだ言いますか。いいでしょう、そう信じながら死になさい。神を冒涜する者のふさわしい最期ですね」
ヨハンが拳を振り上げる。
俺が叫ぼうとするより速く、その拳がイルネージュの顔面に──。
いや、動かない。静止したままだ。よく見れば、先ほどイルネージュが斬りつけた部分から腕の辺りまで凍りついている。
「なにィ、この鎧が凍りつくだと……!? それほどの凍気を発したというのか、この娘が」
驚いたヨハンがギシッ、ギシッ、と身体を揺らす。つかんだ手が離れ、イルネージュはその場にヒザをついた。が、キッ、と顔を上げる。
「アイスブランドッ! 力を貸してぇっ!」
イルネージュの叫びとともにアイスブランドの形状が変化。刃の両端から新たな刃が枝のようにゾゾゾ、と生えてきて剣自体の長さも伸びる。
ドッ、とヨハンの胸に命中。鎧の中心にビキビキと亀裂が入った。
「そんなっ、あり得んっ! 普通の願望者の攻撃でこの鎧がっ!」
鎧にヒビを入れたが、覆っていた氷も砕けヨハンは動けるようになった。バッ、と飛び退いて距離を取り、胸の前で大きく十字を切る。
「遊びはここまでです。キミの──いや、その氷の剣の性能を少々侮っていた。だがこれで終わりだ」
身長ほどの光る十字架。願望の力で作られた闘気の塊だ。ヨハンがそれに触れると、十字型のエネルギー波がゴウッ、と放たれた。
周囲が光に包まれ、爆発が起こった──が、その爆煙を切り裂くようにイルネージュは飛び出してきた。
氷雪剣アイスブランドはさらに形状を変化させている。先端が半月状に膨らんだ形。驚いているヨハンに向け、一閃──。
バキバキバキィッ、と足元から一気に凍りつくヨハン。
イルネージュはさらに振りかぶり、唐竹割り。
ヨハンのまとっている鎧が、氷とともに粉砕された。
バカな、まさか……と呻きながら崩れ落ちるヨハン。トドメを刺すこともなく、イルネージュはこちらに走り寄る。
「溢忌さんっ、シエラさんっ、大丈夫ですか!?」
「シエラは気を失ってるだけっス。俺も肛も……大丈夫っス。それよりシトライゼをまた診てやってくださいっス」
「あ、そうでした。シトライゼさん、治ったばかりなのにまた無理して……」
動けないシトライゼのもとへ急ぐイルネージュ。
う、ん……とシエラが目を覚ました。
そのシエラに助け起こされながら、俺もなんとか立ち上がる。
そしてふたりでヨハンが倒れている場所まで──。
ガイン、ギィンッ、とヨハンに命中するが、その強固な鎧は撃ち抜けないようだ。
「フン、ムダな事を」
ボッ、とヨハンの超高速拳打。
脚に命中し、シトライゼは勢いがついたまま倒れ──いや、背のイルネージュを巻き込まないように放り投げてから倒れた。
「シトライゼさんっ!」
「イルネージュ様、わたしに構わず、敵を」
空中へ投げ出されたイルネージュはアイスブランドを抜き、着地点でヨハンに斬りつけた。
ヨハンはそれを左腕で軽々と受け止める。
シトライゼはヨハンの攻撃と倒れた衝撃で手足を損壊。これ以上戦うのはムリのようだ。
俺もヨハンの十字架……というよりシエラのカンチョーのせいで足腰が立たない。
情けないが、今まともに戦えるのはイルネージュだけだ。
「《アイシクルフェンサー》イルネージュ・ソレル。キミごときが超越者であるわたしに勝てるワケがないでしょう。そんなに死にたいのですか」
ボゥッ、と至近距離からヨハンの超高速拳打。
シエラは、わわっと後退しながら剣で防いだ。
「わ、わたしだって戦えるんです! 溢忌さんの足を引っ張ってばかりじゃないんです!」
「健気ですねぇ。まぐれでわたしの攻撃は何度も防げませんよ」
「イルネージュ、逃げろっ!」
ヨハンの言う通り、イルネージュでは勝ち目はない。このままでは──殺される。
「わたしは逃げませんっ! この世界でも逃げ出したら、もうわたしの居場所はないんですっ!」
ビュオッ、とアイスブランドを横に薙ぐイルネージュ。
小規模の吹雪が発生。氷や雪がヨハンに叩きつけられる。
「ハハハハッ、なんですかコレは。心地よいぐらいですよ」
まったく効いていない。今度は両手から飛ぶ拳打を繰り出すヨハン。
ゴバッ、とイルネージュの足元から氷柱が出現。うまい、その勢いでかわした。
氷柱はヨハンの攻撃によってバラバラに砕かれたが──それがいい具合に目眩ましになった。
氷の破片が飛び散る中、イルネージュの斬撃。
胴を薙ぎ、袈裟懸け、逆袈裟。
ヨハンは身じろぎもしない。
ズオッ、とヨハンは腕を伸ばし、イルネージュの首をつかんで片手で持ち上げる。
「いい加減になさい。神の加護を受けたわたしに勝てる道理など無いのです」
「か、神様、は……この世界の《女神》は、シ、シエラさん、です」
「あんな小娘が本物の《女神》だと信じているのですか? アレはそう思い込んでいるただの願望者ですよ。言葉巧みに優秀な若者をたぶらかし、勇者などと持ち上げて死地へ赴かせる。アレはそういった類いの人間です。知っているんですよ、わたしは」
「ち、ちが、う。シエラさん、は、本当の《女神》……」
「まだ言いますか。いいでしょう、そう信じながら死になさい。神を冒涜する者のふさわしい最期ですね」
ヨハンが拳を振り上げる。
俺が叫ぼうとするより速く、その拳がイルネージュの顔面に──。
いや、動かない。静止したままだ。よく見れば、先ほどイルネージュが斬りつけた部分から腕の辺りまで凍りついている。
「なにィ、この鎧が凍りつくだと……!? それほどの凍気を発したというのか、この娘が」
驚いたヨハンがギシッ、ギシッ、と身体を揺らす。つかんだ手が離れ、イルネージュはその場にヒザをついた。が、キッ、と顔を上げる。
「アイスブランドッ! 力を貸してぇっ!」
イルネージュの叫びとともにアイスブランドの形状が変化。刃の両端から新たな刃が枝のようにゾゾゾ、と生えてきて剣自体の長さも伸びる。
ドッ、とヨハンの胸に命中。鎧の中心にビキビキと亀裂が入った。
「そんなっ、あり得んっ! 普通の願望者の攻撃でこの鎧がっ!」
鎧にヒビを入れたが、覆っていた氷も砕けヨハンは動けるようになった。バッ、と飛び退いて距離を取り、胸の前で大きく十字を切る。
「遊びはここまでです。キミの──いや、その氷の剣の性能を少々侮っていた。だがこれで終わりだ」
身長ほどの光る十字架。願望の力で作られた闘気の塊だ。ヨハンがそれに触れると、十字型のエネルギー波がゴウッ、と放たれた。
周囲が光に包まれ、爆発が起こった──が、その爆煙を切り裂くようにイルネージュは飛び出してきた。
氷雪剣アイスブランドはさらに形状を変化させている。先端が半月状に膨らんだ形。驚いているヨハンに向け、一閃──。
バキバキバキィッ、と足元から一気に凍りつくヨハン。
イルネージュはさらに振りかぶり、唐竹割り。
ヨハンのまとっている鎧が、氷とともに粉砕された。
バカな、まさか……と呻きながら崩れ落ちるヨハン。トドメを刺すこともなく、イルネージュはこちらに走り寄る。
「溢忌さんっ、シエラさんっ、大丈夫ですか!?」
「シエラは気を失ってるだけっス。俺も肛も……大丈夫っス。それよりシトライゼをまた診てやってくださいっス」
「あ、そうでした。シトライゼさん、治ったばかりなのにまた無理して……」
動けないシトライゼのもとへ急ぐイルネージュ。
う、ん……とシエラが目を覚ました。
そのシエラに助け起こされながら、俺もなんとか立ち上がる。
そしてふたりでヨハンが倒れている場所まで──。
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