13 / 50
13 休息
しおりを挟む
やっと休息となったわけだけど、セヴェリン王子と騎士ウルリクは休む間もなく都市防衛の配置やら準備でまだ打ち合わせがあるって。
真面目だねー。もうクタクタだからわたしたちは先に宿に行ってるよ。
ふおー、さすがは大陸屈指の商業都市の宿は違うね。2階建の宿なんてこの世界に来てはじめて見たよ。
外観も立派な石造りだしさー。うおー、内装も立派。絨毯敷いてるし、高そうな壺やら絵やら飾ってるじゃん。どうやら宿は宿でもファンタジーに出てくる冒険者が泊まる普通の宿じゃなくて貴族とか金持ち商人が泊まる場所みたい。
みんなも驚いてる。今回はだいぶレジスタンス軍も奮発したもんだ。あ、わたしはお姫様で宮廷の暮らしには慣れてるからこの程度でキョロキョロするのもおかしいよね。
高級宿ってことで、ちょっと行儀よくしとかなきゃいけない雰囲気。使用人もピシッとした服装してるしさ、こっちはアグナーとかホルガーとか鎧外したら裸に近い恰好だから恥ずかしいよ。あいつらとは他人のフリしとこう。
1階は大きなホールで、それこそ高級レストランにあるようなながーいテーブルについてコース料理を堪能。っていってもテーブルマナーちゃんとしとかなきゃって緊張しててあんま食べた気がしない。せっかく鶏や鹿の豪勢な料理出てきたのに。あわわ、アグナーは食べた肉の骨を床に放り投げてるよ。あらら、美少年のヴィリまで……。そんな悪い大人のマネしてはいけません。
飲み物はワインが出てきたけど、さすがにハーブティーに変えてもらった。わたし中身は中学生だからね。アネリーゼ姫も16歳だし。そういや同い年のセヴェリン王子はアルコール飲んでたけど、そこんとこどうなんだろ。
あ、酒グセの悪いアグナーにからまれないうちに避難しよう。
わたしはこっそり席を外し、2階へ。宿泊する部屋に入り、着替えを用意して別の階段から1階へと戻った。
宿の楽しみは料理だけじゃない。ゆっくり入れるお風呂なのだ。なんとこの宿には大浴場まであるという。
みんなが食事に夢中になってる間にこっそりひとりで入っちゃうもんね。どっちにしろ女性が先に入れる時間だってのは使用人から聞いていた。
おおー、大浴場って健康ランドの露天の岩風呂みたいなとこじゃん。星空の下であったかいお風呂に浸かれるってサイコー。
月明りで十分足元は見えるしさ。どれどれ、さっそく……。
わたしがタオルで身体を隠しつつ、浴場へと足を踏み入れたときだった。
背後から異様な気配。すさまじい鼻息。わたしは瞬時に動けなくなった。動いたらやられる──。
「ひ、ひひひ姫様っ! おおおお、おふっ、おふおっ! お風呂ですか! どうせなら一緒にと誘ってくれればいいのに! おお、同じ女性同士なんででですからっ!」
声をかけてきたのは鷲獅子騎兵のフリーダだ。
まず落ち着け。目が超怖い。
同性とはいえ、この姫様大好きっ娘とはあんまり関わりたくないんだけど。いや、同性だからこそか。せっかくイケメンと仲良くなれそうな世界で百合ルートだけはゴメンだ。しかもこのフリーダ、ネットの情報だけど他の男性キャラとくっつくところが確認されていない。
どんだけアネリーゼ姫に一途なんだ。この状況だってコイツ待ち伏せしてやがったな。ここは下手に逆らうと何しでかすか分からん。
わたしは姫様スマイルで「ええ、ご一緒しましょう」と答えた。内心ビクビクだけどね。押し倒されたりしないだろうか。
「それならば、わたしが姫様の背中を流してさしあげますからっ! さささ、どうぞこちらへ」
ちょ、ちょっと強引にタオル引っ張らないでほしい。わたしは仕方なく洗い場の椅子に腰かけ、小さくなるように背を向ける。
「はあ、きめ細やかでキレイな肌……。そしてこの手に伝わる柔らかさ。それでいて力強く押し返す弾力……! さらにこの鼻腔をくすぐる高貴なかほり……! 姫様、フリーダは感激しております!」
ハアハア言いながら背中を洗うフリーダ。大丈夫なの、この人……。
それにどさくさに紛れてバインバインと背中に当たるふたつの塊。このフリーダ、着瘦せするタイプだったのか。イヤミったらしく胸を押し付けやがって。
「あの、フリーダ。洗うのはもう大丈夫。あとはひとりで出来ますので。少し離れてもらえませんか」
「何を言ってるんですか、姫様! 姫様ほどの高貴な御方は自分で洗いなどしません! 身体の隅々までこのフリーダにお任せください!」
わわわ、ヤバイ。やっぱりこの人おかしい。無理やり前を向かせようとしている。わたしはそうはさせじと足を踏ん張ってそれに耐える。
何が悲しくてこんなところで同性相手に貞操の危機に見舞われないといけないんだ。
洗い場でわけの分からん攻防を繰り広げていると、突然湯煙の中から咳払いがひとつ。
わたしとフリーダがぎょっとして目を凝らすと、湯の中央に大きな岩があるのだが、その下でムスッとした顔でにらんでいるひとりの少女。
あの紅い髪……魔術士のクラーアだ。
いつものツインテールじゃなくてお団子にしてるからぱっと見、わからなかった。
「せっかく広いお風呂でゆっくりしようとしてたのに騒がしいわね。こんなところではしゃぐなんて子供みたい。恥ずかしくないのかしら」
不機嫌そうに悪態つかれたがこの際なんでもいい。ひとまずは助かった。
背後のフリーダは舌打ちしながら引き下がったし。
ここでわたしたち3人は仲良く? 湯に入って女子トークにでも花を咲かせる──となるところだが。
このメンバーでそんな穏やかで微笑ましい展開が待っているわけでもなく。お風呂に関わる受難はさらに続くのであった。
真面目だねー。もうクタクタだからわたしたちは先に宿に行ってるよ。
ふおー、さすがは大陸屈指の商業都市の宿は違うね。2階建の宿なんてこの世界に来てはじめて見たよ。
外観も立派な石造りだしさー。うおー、内装も立派。絨毯敷いてるし、高そうな壺やら絵やら飾ってるじゃん。どうやら宿は宿でもファンタジーに出てくる冒険者が泊まる普通の宿じゃなくて貴族とか金持ち商人が泊まる場所みたい。
みんなも驚いてる。今回はだいぶレジスタンス軍も奮発したもんだ。あ、わたしはお姫様で宮廷の暮らしには慣れてるからこの程度でキョロキョロするのもおかしいよね。
高級宿ってことで、ちょっと行儀よくしとかなきゃいけない雰囲気。使用人もピシッとした服装してるしさ、こっちはアグナーとかホルガーとか鎧外したら裸に近い恰好だから恥ずかしいよ。あいつらとは他人のフリしとこう。
1階は大きなホールで、それこそ高級レストランにあるようなながーいテーブルについてコース料理を堪能。っていってもテーブルマナーちゃんとしとかなきゃって緊張しててあんま食べた気がしない。せっかく鶏や鹿の豪勢な料理出てきたのに。あわわ、アグナーは食べた肉の骨を床に放り投げてるよ。あらら、美少年のヴィリまで……。そんな悪い大人のマネしてはいけません。
飲み物はワインが出てきたけど、さすがにハーブティーに変えてもらった。わたし中身は中学生だからね。アネリーゼ姫も16歳だし。そういや同い年のセヴェリン王子はアルコール飲んでたけど、そこんとこどうなんだろ。
あ、酒グセの悪いアグナーにからまれないうちに避難しよう。
わたしはこっそり席を外し、2階へ。宿泊する部屋に入り、着替えを用意して別の階段から1階へと戻った。
宿の楽しみは料理だけじゃない。ゆっくり入れるお風呂なのだ。なんとこの宿には大浴場まであるという。
みんなが食事に夢中になってる間にこっそりひとりで入っちゃうもんね。どっちにしろ女性が先に入れる時間だってのは使用人から聞いていた。
おおー、大浴場って健康ランドの露天の岩風呂みたいなとこじゃん。星空の下であったかいお風呂に浸かれるってサイコー。
月明りで十分足元は見えるしさ。どれどれ、さっそく……。
わたしがタオルで身体を隠しつつ、浴場へと足を踏み入れたときだった。
背後から異様な気配。すさまじい鼻息。わたしは瞬時に動けなくなった。動いたらやられる──。
「ひ、ひひひ姫様っ! おおおお、おふっ、おふおっ! お風呂ですか! どうせなら一緒にと誘ってくれればいいのに! おお、同じ女性同士なんででですからっ!」
声をかけてきたのは鷲獅子騎兵のフリーダだ。
まず落ち着け。目が超怖い。
同性とはいえ、この姫様大好きっ娘とはあんまり関わりたくないんだけど。いや、同性だからこそか。せっかくイケメンと仲良くなれそうな世界で百合ルートだけはゴメンだ。しかもこのフリーダ、ネットの情報だけど他の男性キャラとくっつくところが確認されていない。
どんだけアネリーゼ姫に一途なんだ。この状況だってコイツ待ち伏せしてやがったな。ここは下手に逆らうと何しでかすか分からん。
わたしは姫様スマイルで「ええ、ご一緒しましょう」と答えた。内心ビクビクだけどね。押し倒されたりしないだろうか。
「それならば、わたしが姫様の背中を流してさしあげますからっ! さささ、どうぞこちらへ」
ちょ、ちょっと強引にタオル引っ張らないでほしい。わたしは仕方なく洗い場の椅子に腰かけ、小さくなるように背を向ける。
「はあ、きめ細やかでキレイな肌……。そしてこの手に伝わる柔らかさ。それでいて力強く押し返す弾力……! さらにこの鼻腔をくすぐる高貴なかほり……! 姫様、フリーダは感激しております!」
ハアハア言いながら背中を洗うフリーダ。大丈夫なの、この人……。
それにどさくさに紛れてバインバインと背中に当たるふたつの塊。このフリーダ、着瘦せするタイプだったのか。イヤミったらしく胸を押し付けやがって。
「あの、フリーダ。洗うのはもう大丈夫。あとはひとりで出来ますので。少し離れてもらえませんか」
「何を言ってるんですか、姫様! 姫様ほどの高貴な御方は自分で洗いなどしません! 身体の隅々までこのフリーダにお任せください!」
わわわ、ヤバイ。やっぱりこの人おかしい。無理やり前を向かせようとしている。わたしはそうはさせじと足を踏ん張ってそれに耐える。
何が悲しくてこんなところで同性相手に貞操の危機に見舞われないといけないんだ。
洗い場でわけの分からん攻防を繰り広げていると、突然湯煙の中から咳払いがひとつ。
わたしとフリーダがぎょっとして目を凝らすと、湯の中央に大きな岩があるのだが、その下でムスッとした顔でにらんでいるひとりの少女。
あの紅い髪……魔術士のクラーアだ。
いつものツインテールじゃなくてお団子にしてるからぱっと見、わからなかった。
「せっかく広いお風呂でゆっくりしようとしてたのに騒がしいわね。こんなところではしゃぐなんて子供みたい。恥ずかしくないのかしら」
不機嫌そうに悪態つかれたがこの際なんでもいい。ひとまずは助かった。
背後のフリーダは舌打ちしながら引き下がったし。
ここでわたしたち3人は仲良く? 湯に入って女子トークにでも花を咲かせる──となるところだが。
このメンバーでそんな穏やかで微笑ましい展開が待っているわけでもなく。お風呂に関わる受難はさらに続くのであった。
0
あなたにおすすめの小説
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる