SRPG転生王女 〜お気に入りキャラの中から結婚相手を選びます~

みくもっち

文字の大きさ
19 / 50

19 クラスチェンジ

しおりを挟む
 ジリジリと距離を詰める盗賊たち。
 ヴィリはわたしをかばうように短剣を構える。

 うう、情けない。年下の男の子に守ってもらうなんて。
 仕方がないといえば仕方ないのだけど。身体はさっきの剣の稽古でガタガタだし、ただの買い物に出かけただけだったからロクな装備もしてない。
 ヴィリを助けるつもりでついてきたのに、逆に足を引っ張っているなんて。

「姫様、これ使えるよね。なんとかそれでしのいで」

 ヴィリが後ろ手に何か渡してきた。
 先がねじれている見たことない杖。これは……盗賊たちの戦利品の中にあったひとつか。いつの間にかすめ盗っていたのだろうか。

 エイナルからもらった回復の杖じゃないけど、これでなんとかサポートはできるかもしれない。どんな効果を発揮するのかまだ分からないんだけど。

 まずは3人の盗賊が風のようにヴィリへ迫る。
 盗賊シーフの恐ろしさはなんといってもこの素早さだ。並みのユニットなら簡単に連続攻撃を受けてしまう。
 だがレベルならヴィリのほうが上。3人の攻撃を巧みにかわし、反撃を加える。3人の盗賊はそれぞれ負傷し、うしろへ退がった。
 
 敵の数はまだ多い。入れ替わるように今度は4人の盗賊が襲いかかってきた。
 最初のひとりの攻撃をかわし、蹴りで昏倒させるヴィリ。続くふたりの盗賊が交差するように短剣を突き出す。
 これはかわすのがやっと。ここでわたしとヴィリの間に距離ができてしまった。

 ひとりがわたしを捕えようと腕を伸ばす。わたしはヴィリから渡された杖でそれを払おうとしたけど……ダメ、杖の先をつかまれてしまった。

「姫様っ!」

 ヴィリが助けようとしてくれるけど、ふたりの盗賊がそれを阻止する。
 杖をつかんだ盗賊は力まかせに引き寄せようとしている。わたしはとっさに集中して杖から魔力を放った。

 杖をつかんでいた盗賊がぐにゃりとヒザから崩れ落ちる。これって……高位の神聖魔法、睡眠スリープじゃん。かけられた相手は数ターン行動不能ってやつ。

 いつの間に高位の神聖魔法使えるようになってたんだろ。やっぱりわたしってレベルアップしてたんだね。おっと、そんなことよりヴィリを助けないと。

 ヴィリと戦闘中の盗賊ふたりに杖を向ける。
 ふたりは一瞬で倒れ、地面で寝息をかいてる状態に。おおー、これルクスより使えるね。かなり強力だ。

 とはいえわたし自身もくらっと眩暈を覚える。高位の魔法だから消耗が激しいのかな。連続での使用は注意したほうがよさそうだ。

「その女、魔法が使えんのか。おい、お前らもっと下がれ」

 ギオルグの指示ではじめに負傷した3人の盗賊は傷薬を使って回復し、今度は遠巻きにわたしたちを包囲する。わたしの魔法を警戒してのことだろうけど、そんなに離れていてはそっちも攻撃のしようがない。

「俺に任せておけ」

 盗賊団の首領ギオルグが自ら前進してきた。
 バーカ。さっきの見てなかったのかな。お前みたいな脳筋キャラはこういう状態変化魔法に弱いって相場が決まってるんだよ。

 突っ込んでくるギオルグ。盗賊団の首領だが、コイツ自身のクラスは狂戦士バーサーカー
 わたしは杖の先を向ける。さあ、お前もコンニャクみたいにぐにゃんとなって眠っちゃえよ。

 だけど魔法が届いた瞬間、白い壁みたいなのにバチンと弾かれた。あの見覚えのあるエフェクト……魔法無効マジックバリアだ! 
 一回だけ魔法を完全に遮断する高位の神聖魔法。なんでこんな脳筋キャラが……って、こないだクラーアが使ったようなアイテム持ってたに違いない。きっと盗んだ戦利品の中にあったんだ。
 
 でもその効果は一回こっきりだし、同じアイテムを複数持ってるとは考えにくい。それ非売品で宝箱からしかゲットできないアイテムだからね。
 わたしは再度集中しながら杖を向ける。けどブブブンッ、と投げ斧トマホークが飛んできてわたしは悲鳴を上げながらうずくまる。

 相手も間接攻撃できる武器持ってるの忘れてた。わわ、まずい。もう近接攻撃できる距離まで近づいてきている。
 近距離で狂戦士バーサーカーの斧なんか喰らったら一発でアジの開きみたいになっちゃうよ。

 わたしのピンチにギオルグの目の前に立ちはだかるのはヴィリ。
 嬉しいけど、体格差は歴然だ。正面からまともにやって勝てるわけない。

 ギオルグの振り下ろした一撃を横にかわすヴィリ。次は刈るように薙いできたのを跳躍してかわす。
 ひええ、見ているだけでひやひやする。さすがに回避率は高いけど、あんな猛攻いつまでも防げるはずない。

 ここはわたしが支援してやんないと……ダメだ、回復した3人の盗賊がわたしに向かってきている。まずはあれをどうにかしないと。

 その時だ。離れた位置にある扉が突然バンと開いた。そこから入ってくるのは──待ちに待った味方の増援。騎士ウルリクをはじめとするレジスタンス軍の面々だ。急いでその場にいた者を引き連れてきたんだろう。人数自体は少ないけど、それでも百人力だ。
 
 突入してすぐにエイナルの弓射、クラーアの魔法、フリーダの投げ斧トマホークが3人の盗賊にヒット。命までは奪わなかったがこれで敵は戦意喪失したようだ。

 残る敵は首領のギオルグのみ。もう勝ち目はないはずだが、ウルリクの姿を見て激昂したヤツはそちらへ走りだした。

「クソ騎士があっ! この傷の恨み、ここで晴らさせてもらうぜえっっ!」

 対するウルリクは屋内なので騎乗していない。能力的にはややダウンしているはずだが、真っ向から剣で立ち向かった。
 力任せに叩きつけてくる斧を剣で受け流し、しかも反撃している。すごい、馬に乗ってなくても十分強いんだね。

 だけどちょっとずつ後退している。やっぱりあのパワーに押されてるんだ。
 わたしと他のメンバーが助太刀に入ろうとするけど、ウルリクがそれを拒否した。

「ここはわたしが決着をつけます! 騎士としてひとりで──!」

 うーむ、因縁の相手だし、ウルリクの頑固な性格だ。こう言いだしたら意地でも退かないだろう。でもこのままじゃやられないまでも大怪我するかもしれない。
 わたしがハラハラしながら見ていると、すばしこく走るひとつの影。

 ヴィリだ。盗賊どもが集めた戦利品の所へいくと、何やらゴソゴソ探し出し、ひとつのアイテムを手に取る。

「ウルリク! これをっ!」

 おお、なんかデジャヴ。つい最近もこんなことあったね。でもヴィリが投げたのは全然武器っぽくない。あれはなんだろう。大きめのメダルみたいな勲章みたいな……あっ、あれはたしか。
 
 それを受け取ったウルリクの身体がパアアッ、と光りだす。
 その光にギオルグもたじろいだ。

 光が収まり、ウルリクの姿に変化が。
 身に着けていた軽鎧ライトアーマーが鈍色から白銀色に。ふちに装飾が入ってなんだかとても高価そう。

 うお、ウルリク自身の動きも段違いになった。
 素早く踏み込んで斬り込む。ギオルグは防戦一方になり、ついには斧を叩き落とされた。

 観念したのかその場にヒザをつくギオルグ。目を閉じ、「殺せ」とだけ言ってうなだれる。

 ヴィリがウルリクに渡したのはクラスチェンジアイテム【マスターメダル】だ。
 騎兵トルーパーから聖騎士パラディンになれるだけのレベルに達していたみたいだった。元々強かったけどクラスチェンジしたウルリクは圧倒的だった。

 そのウルリクは無言でギオルグの首筋に刃を近づける。うう、降参した相手を殺しちゃうってなんだかアレだけど仕方ないよね。ゲームじゃここの盗賊全滅させてマップクリアだったからさ。それでこの街の治安も良くなるし。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...