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20 ゲームと違う
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剣を振り上げるウルリク。
だがそれはギオルグの首へとは落ちず、鞘の中に収まった。
なぜだ、と顔を上げるギオルグ。
わたしも意外だと思った。
厳格なウルリクはアネリーゼ姫に危害を加えようとした相手に恩情をかけたりはしない。
実際にゲームでもトドメを刺したのはウルリクだった。
こんなイベントは予想外だ。
ギオルグの側にはヴィリが寄り添い、その背をポンポンと叩いている。
それを見ながらウルリクは静かに息を吐き、言った。
「……盗賊とはいえ、たしかに凶悪な事件は起こしていないし、帝国の占領下では困窮した市民を援助していたとも聞く。何よりヴィリの頼みでもあったからな。その命、今は預けておく」
「ぐっ……情けのつもりかよ。あの時と同じだな。お前ら騎士だの貴族だのは俺らを見下してよ」
「違うよ、ギオルグの兄貴。この街を解放したときからウルリクは兄貴に会うつもりでいたのさ。帝国にも反抗して弱い者を守ってたって知ってたからね」
おんや、おかしいな。たしかゲームじゃギオルグ盗賊団は帝国に通じていたはず。
帝国占領下の街でも黙認をいいことに好き勝手やってた極悪非道の集団だったはずだ。
わたしが首をひねりながら様子を見ていると、さらに話はおかしな方向に進んでいく。
「だからさ、これからは俺らレジスタンス軍に力を貸してよ。他の仲間も一緒にさ。力を合わせてこの国から帝国を追い出そう」
んなムチャな。こんなイベント起きるなんて情報どこにも載ってなかったよ。
それにその狂戦士って敵固有のユニットで絶対こっちの仲間になんないやつなんだけど。
わたしが軽く混乱している間に、ギオルグは無言でうなずいた。
ウソ、マジでか。あり得ない現象が起きちゃったよ。
死ぬはずの敵が死ななくて、それどころか仲間になっちゃったよ。
これ絶対にバグじゃん。なんか急にフリーズしたりするんじゃないの。
わたしの心配をよそにギオルグは正式な仲間のひとりに。
部下の盗賊たちもヴィリの諜報活動を手伝う人員となった。
✳ ✳ ✳
宿に戻ったわたしは部屋でひとり考える。
第3章に入ってから予想外の出来事ばかりだ。
この世界ってゲームのストーリーを忠実になぞったものじゃないの?
1章や2章でもゲームで語られなかった部分とかはあったけども。今回のはゲームのストーリーを根底から覆すようなもんだ。
このゲームは【アネリーゼ戦記】……。この世界はアネリーゼ姫を中心に語られ、進行しているはずなんだ。
だからアネリーゼ姫の中身が違うから起きてしまった現象とか。でもわたし自身にストーリーを強制的に変更できる力なんてない。
みんなお姫様だってことで大事にしてくれるけど。肝心なことはセヴェリン王子とかクヌーズ先生が決めてるもの。
心配なのは、これからこんな予想外のことが起きたらゲームの予備知識が役に立たないってこと。
わたしがゲームを進めていたのは第3章の最終マップだ。なんとかそこまでは対応できると思ってたんだけど。
セヴェリン王子やウルリクの話からすると、まだ数日はこの街に滞在する予定らしい。
ここを出発する前にいろいろと準備しといたほうがよさそうだ。
わたしは諜報活動を行うヴィリと部下になったばかりの盗賊たちを部屋に呼び寄せ、しばらく話し合った。
✳ ✳ ✳
商業都市グラッドサクセを出発したレジスタンス軍。
目指すは王都フレゼリシア。グラッドサクセを落としたことでレジスタンス軍の戦意は上がっている。
国の各所に潜んでいた同士も一斉に蜂起。クヌーズ先生の指揮のもと、王都へ集結しそうな勢いだという。
もちろん帝国の駐屯軍も黙っていない。王都フレゼリシアから掃討軍を各地へ派遣。だけどこれってクヌーズ先生の作戦通りなんだよね。
各地に散っているレジスタンス軍って規模は小さいし、王都まで攻め込むほどの力もない。
掃討軍を引き付けるだけ引き付けて逃げ回る予定だ。その間の王都の守りは薄くなる。そこをわたしたち主力軍が攻めるってやつ。
ところがだ、今度はグラッドサクセをまだしつこく狙って帝国本国から部隊が近づいてきているという情報が入った。
しかも同時期に北方からも敵部隊が接近。グラッドサクセは挟撃される形になる。
北方はセヴェリン王子の祖国イェリング。帝国の命令で援軍を派遣したというのだ。
レジスタンス軍にしてはかつての同盟国に裏切られた形になる。帝国に従属しているイェリングに拒否する権利がないとはわかっているけど。
ともかく王都へと向かう途中だったけど、わたしたちはグラッドサクセの防衛を優先することになる。
あそこがまた帝国の手に落ちたら王都へ攻めるどころじゃなくなるもんね。
問題は2方向からの敵にどう対処するか。
ここはセヴェリン王子が素早く決断した。
北方のイェリング軍には自ら説得に向かうという。失敗すれば味方と戦うことになるかもしれないのに。
って、これはゲームのシナリオ通りなんだけどね。
セヴェリン王子はグラッドサクセの守備兵と合流して北へ向かう。
わたしたちは東へ直進。帝国からの正規兵が相手だ。セヴェリン王子が抜けた状態だし、気を引き締めないと。
だがそれはギオルグの首へとは落ちず、鞘の中に収まった。
なぜだ、と顔を上げるギオルグ。
わたしも意外だと思った。
厳格なウルリクはアネリーゼ姫に危害を加えようとした相手に恩情をかけたりはしない。
実際にゲームでもトドメを刺したのはウルリクだった。
こんなイベントは予想外だ。
ギオルグの側にはヴィリが寄り添い、その背をポンポンと叩いている。
それを見ながらウルリクは静かに息を吐き、言った。
「……盗賊とはいえ、たしかに凶悪な事件は起こしていないし、帝国の占領下では困窮した市民を援助していたとも聞く。何よりヴィリの頼みでもあったからな。その命、今は預けておく」
「ぐっ……情けのつもりかよ。あの時と同じだな。お前ら騎士だの貴族だのは俺らを見下してよ」
「違うよ、ギオルグの兄貴。この街を解放したときからウルリクは兄貴に会うつもりでいたのさ。帝国にも反抗して弱い者を守ってたって知ってたからね」
おんや、おかしいな。たしかゲームじゃギオルグ盗賊団は帝国に通じていたはず。
帝国占領下の街でも黙認をいいことに好き勝手やってた極悪非道の集団だったはずだ。
わたしが首をひねりながら様子を見ていると、さらに話はおかしな方向に進んでいく。
「だからさ、これからは俺らレジスタンス軍に力を貸してよ。他の仲間も一緒にさ。力を合わせてこの国から帝国を追い出そう」
んなムチャな。こんなイベント起きるなんて情報どこにも載ってなかったよ。
それにその狂戦士って敵固有のユニットで絶対こっちの仲間になんないやつなんだけど。
わたしが軽く混乱している間に、ギオルグは無言でうなずいた。
ウソ、マジでか。あり得ない現象が起きちゃったよ。
死ぬはずの敵が死ななくて、それどころか仲間になっちゃったよ。
これ絶対にバグじゃん。なんか急にフリーズしたりするんじゃないの。
わたしの心配をよそにギオルグは正式な仲間のひとりに。
部下の盗賊たちもヴィリの諜報活動を手伝う人員となった。
✳ ✳ ✳
宿に戻ったわたしは部屋でひとり考える。
第3章に入ってから予想外の出来事ばかりだ。
この世界ってゲームのストーリーを忠実になぞったものじゃないの?
1章や2章でもゲームで語られなかった部分とかはあったけども。今回のはゲームのストーリーを根底から覆すようなもんだ。
このゲームは【アネリーゼ戦記】……。この世界はアネリーゼ姫を中心に語られ、進行しているはずなんだ。
だからアネリーゼ姫の中身が違うから起きてしまった現象とか。でもわたし自身にストーリーを強制的に変更できる力なんてない。
みんなお姫様だってことで大事にしてくれるけど。肝心なことはセヴェリン王子とかクヌーズ先生が決めてるもの。
心配なのは、これからこんな予想外のことが起きたらゲームの予備知識が役に立たないってこと。
わたしがゲームを進めていたのは第3章の最終マップだ。なんとかそこまでは対応できると思ってたんだけど。
セヴェリン王子やウルリクの話からすると、まだ数日はこの街に滞在する予定らしい。
ここを出発する前にいろいろと準備しといたほうがよさそうだ。
わたしは諜報活動を行うヴィリと部下になったばかりの盗賊たちを部屋に呼び寄せ、しばらく話し合った。
✳ ✳ ✳
商業都市グラッドサクセを出発したレジスタンス軍。
目指すは王都フレゼリシア。グラッドサクセを落としたことでレジスタンス軍の戦意は上がっている。
国の各所に潜んでいた同士も一斉に蜂起。クヌーズ先生の指揮のもと、王都へ集結しそうな勢いだという。
もちろん帝国の駐屯軍も黙っていない。王都フレゼリシアから掃討軍を各地へ派遣。だけどこれってクヌーズ先生の作戦通りなんだよね。
各地に散っているレジスタンス軍って規模は小さいし、王都まで攻め込むほどの力もない。
掃討軍を引き付けるだけ引き付けて逃げ回る予定だ。その間の王都の守りは薄くなる。そこをわたしたち主力軍が攻めるってやつ。
ところがだ、今度はグラッドサクセをまだしつこく狙って帝国本国から部隊が近づいてきているという情報が入った。
しかも同時期に北方からも敵部隊が接近。グラッドサクセは挟撃される形になる。
北方はセヴェリン王子の祖国イェリング。帝国の命令で援軍を派遣したというのだ。
レジスタンス軍にしてはかつての同盟国に裏切られた形になる。帝国に従属しているイェリングに拒否する権利がないとはわかっているけど。
ともかく王都へと向かう途中だったけど、わたしたちはグラッドサクセの防衛を優先することになる。
あそこがまた帝国の手に落ちたら王都へ攻めるどころじゃなくなるもんね。
問題は2方向からの敵にどう対処するか。
ここはセヴェリン王子が素早く決断した。
北方のイェリング軍には自ら説得に向かうという。失敗すれば味方と戦うことになるかもしれないのに。
って、これはゲームのシナリオ通りなんだけどね。
セヴェリン王子はグラッドサクセの守備兵と合流して北へ向かう。
わたしたちは東へ直進。帝国からの正規兵が相手だ。セヴェリン王子が抜けた状態だし、気を引き締めないと。
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