SRPG転生王女 〜お気に入りキャラの中から結婚相手を選びます~

みくもっち

文字の大きさ
20 / 50

20 ゲームと違う

しおりを挟む
 剣を振り上げるウルリク。
 だがそれはギオルグの首へとは落ちず、鞘の中に収まった。

 なぜだ、と顔を上げるギオルグ。
 わたしも意外だと思った。
 
 厳格なウルリクはアネリーゼ姫に危害を加えようとした相手に恩情をかけたりはしない。
 実際にゲームでもトドメを刺したのはウルリクだった。

 こんなイベントは予想外だ。
 ギオルグの側にはヴィリが寄り添い、その背をポンポンと叩いている。
 それを見ながらウルリクは静かに息を吐き、言った。

「……盗賊とはいえ、たしかに凶悪な事件は起こしていないし、帝国の占領下では困窮した市民を援助していたとも聞く。何よりヴィリの頼みでもあったからな。その命、今は預けておく」

「ぐっ……情けのつもりかよ。あの時と同じだな。お前ら騎士だの貴族だのは俺らを見下してよ」

「違うよ、ギオルグの兄貴。この街を解放したときからウルリクは兄貴に会うつもりでいたのさ。帝国にも反抗して弱い者を守ってたって知ってたからね」

 おんや、おかしいな。たしかゲームじゃギオルグ盗賊団は帝国に通じていたはず。
 帝国占領下の街でも黙認をいいことに好き勝手やってた極悪非道の集団だったはずだ。
 
 わたしが首をひねりながら様子を見ていると、さらに話はおかしな方向に進んでいく。

「だからさ、これからは俺らレジスタンス軍に力を貸してよ。他の仲間も一緒にさ。力を合わせてこの国から帝国を追い出そう」

 んなムチャな。こんなイベント起きるなんて情報どこにも載ってなかったよ。
 それにその狂戦士バーサーカーって敵固有のユニットで絶対こっちの仲間になんないやつなんだけど。

 わたしが軽く混乱している間に、ギオルグは無言でうなずいた。
 ウソ、マジでか。あり得ない現象が起きちゃったよ。
 死ぬはずの敵が死ななくて、それどころか仲間になっちゃったよ。
 これ絶対にバグじゃん。なんか急にフリーズしたりするんじゃないの。

 わたしの心配をよそにギオルグは正式な仲間のひとりに。
 部下の盗賊たちもヴィリの諜報活動を手伝う人員となった。


 ✳ ✳ ✳

 
 宿に戻ったわたしは部屋でひとり考える。
 第3章に入ってから予想外の出来事ばかりだ。

 この世界ってゲームのストーリーを忠実になぞったものじゃないの?
 1章や2章でもゲームで語られなかった部分とかはあったけども。今回のはゲームのストーリーを根底から覆すようなもんだ。

 このゲームは【アネリーゼ戦記】……。この世界はアネリーゼ姫を中心に語られ、進行しているはずなんだ。
 だからアネリーゼ姫の中身が違うから起きてしまった現象とか。でもわたし自身にストーリーを強制的に変更できる力なんてない。

 みんなお姫様だってことで大事にしてくれるけど。肝心なことはセヴェリン王子とかクヌーズ先生が決めてるもの。
 心配なのは、これからこんな予想外のことが起きたらゲームの予備知識が役に立たないってこと。

 わたしがゲームを進めていたのは第3章の最終マップだ。なんとかそこまでは対応できると思ってたんだけど。

 セヴェリン王子やウルリクの話からすると、まだ数日はこの街に滞在する予定らしい。
 ここを出発する前にいろいろと準備しといたほうがよさそうだ。

 わたしは諜報活動を行うヴィリと部下になったばかりの盗賊たちを部屋に呼び寄せ、しばらく話し合った。

 
 ✳ ✳ ✳


 商業都市グラッドサクセを出発したレジスタンス軍。
 目指すは王都フレゼリシア。グラッドサクセを落としたことでレジスタンス軍の戦意は上がっている。
 
 国の各所に潜んでいた同士も一斉に蜂起。クヌーズ先生の指揮のもと、王都へ集結しそうな勢いだという。
 もちろん帝国の駐屯軍も黙っていない。王都フレゼリシアから掃討軍を各地へ派遣。だけどこれってクヌーズ先生の作戦通りなんだよね。

 各地に散っているレジスタンス軍って規模は小さいし、王都まで攻め込むほどの力もない。 
 掃討軍を引き付けるだけ引き付けて逃げ回る予定だ。その間の王都の守りは薄くなる。そこをわたしたち主力軍が攻めるってやつ。

 ところがだ、今度はグラッドサクセをまだしつこく狙って帝国本国から部隊が近づいてきているという情報が入った。
 しかも同時期に北方からも敵部隊が接近。グラッドサクセは挟撃される形になる。

 北方はセヴェリン王子の祖国イェリング。帝国の命令で援軍を派遣したというのだ。
 レジスタンス軍にしてはかつての同盟国に裏切られた形になる。帝国に従属しているイェリングに拒否する権利がないとはわかっているけど。

 ともかく王都へと向かう途中だったけど、わたしたちはグラッドサクセの防衛を優先することになる。
 あそこがまた帝国の手に落ちたら王都へ攻めるどころじゃなくなるもんね。

 問題は2方向からの敵にどう対処するか。
 ここはセヴェリン王子が素早く決断した。

 北方のイェリング軍には自ら説得に向かうという。失敗すれば味方と戦うことになるかもしれないのに。
 って、これはゲームのシナリオ通りなんだけどね。
 
 セヴェリン王子はグラッドサクセの守備兵と合流して北へ向かう。
 わたしたちは東へ直進。帝国からの正規兵が相手だ。セヴェリン王子が抜けた状態だし、気を引き締めないと。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

優しい雨が降る夜は

葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン 無自覚にモテる地味子に 余裕もなく翻弄されるイケメン 二人の恋は一筋縄ではいかなくて…… 雨降る夜に心に届いた 優しい恋の物語 ⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡ 風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格 雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...