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36 馬上アクション
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追跡を振り切れないと判断したのか、セヴェリン王子を乗せた騎馬以外の2騎が反転してこちらに向かってきた。
「足止めしてセヴェリン様だけはなんとしても連れ去るつもりのようです。アネリーゼ姫、ここは我らに任せて後を追ってください」
スラッと腰の剣を抜きながらアウネータが言った。老紳士カルステンも頷いている。
いやいや、セヴェリン王子救出が最優先なのはわかるけど、ロリお嬢様とお爺ちゃんがあの2騎にかなうわけないじゃん。矢は射ち尽くしてもうないみたいだけどさ。どう見ても手練れの暗殺者じゃん。
ひとまずここは3人で協力して──とわたしが言う前にふたりはまっすぐに2騎に突っ込んでいく。
相手もすでに剣を抜いている。まず先頭の暗殺者が鋭い刺突をすれ違いざまに繰り出す。
あぶないっ、て叫ぼうとしたけどアウネータは難なくそれを剣ではね上げる。
そこで2騎は足を止めて騎上での斬り合いに。
ひええ、あぶなっかしい……と思ったけど、アウネータは暗殺者相手に全然負けていない。むしろ押してるぐらいだ。
これは意外。うちの正規ユニットにもひけを取らない剣さばきやんけ。と感心してる場合じゃなかった。
老紳士カルステンのほうに加勢しなきゃ。
カルステンももう1騎の暗殺者と対峙している。
しかしなぜか馬から降りた状態で。それも素手だ。ああ、こんな時にボケちゃったんだろうか。やばい、魔法か何かで助けないと。
わたしが杖を向けて集中する前に敵が剣を振り下ろす。あっ、間に合わない!
と思った瞬間、カルステンが軽く腕を振ると暗殺者の剣が逸れて空振りになる。
なんだ、偶然か……? いや、そのあとも暗殺者の剣はことごとくカルステンに触れることなく空を切っている。カルステン自身はそこからほとんど動いてないというのに。
これは信じられないことだけど、素手であの斬撃をさばいているようだった。
攻撃を瞬時に見切り、刃ではない剣の腹を拳や手刀を当てて軌道を変えているのだ。
とんでもない高等技術。って、そんなことできるユニットなんか存在したっけ?
「アネリーゼ姫! 今のうちに早くっ!」
アウネータの声にはっと我に返る。ふたりの意外な強さに呆気に取られている場合じゃなかった。
この調子ならふたりは大丈夫だ。わたしはすぐに追跡を再開。セヴェリン王子を乗せたもう1騎を追った。
✳ ✳ ✳
けっこう離れたかと思ったけど5分程で敵に追いついた。
一本道だし、むこうはセヴェリン王子を乗せてるからね。さあ観念してセヴェリン王子をこっちに渡すのだ。
フッフッフ、と笑いながら馬を近づける。アネリーゼ姫の身体といえど乗馬も随分上手くなったものだ。
相手ももう気づいている。馬を走らせながら剣を抜いた。
ここでわたしは重大な事に気づく。あれ、これって……わたしひとりで戦って勝たないとダメなやつじゃん。
肝心なときは仲間たちが助けてくれたけど今はいない。セヴェリン王子も相手に捕らえられて身動き取れない状態だ。
相手が速度を落とし、わたしの馬と並走する形に。やっば、近い。わたしひとりだって気づいてここで仕留めるつもりだ。
わたしのバカ。追いつく前に遠間から睡眠かなんか使ってれば良かったのに。
調子に乗って近づきすぎたせいだ。相手の一撃目──鋭い突きはなんとか剣で受け止めることには成功したけど。
ここはいったん離れたい……と思ったけど、むこうがどんどん幅寄せしてくる。
2騎の鐙がぶつかりそうな距離だ。くっそ、ここは剣でやっつけるしかない。
また相手の突き。わたしの脇腹の辺りを狙っている。
これも剣で払う。けど次は連撃だ。ううっ、暗殺者だから力はそんなに無いけど速い……。さばききれなくて小手や鎧に喰らった。まずいよ、鎧の隙間とかにもらってたら死んでたところだ。
上手くなったとはいえ騎馬ユニットじゃないんだから馬上の戦いには無理がある。でもここでわたしがなんとかしないとセヴェリン王子が……。
わたしの技量がたいした事ないと判断したのか、敵の大振りな一撃。剣を一文字にしてやっと受け止めた。
けど手綱からも手を離した状態。バランスを崩してわたしは落馬しそうになる。
足に力入れてなんとか踏ん張る。敵はチャンスとばかりにトドメの一撃を狙っている。
だけどバランス崩したことで相手との距離が開いた。わたしは体勢を立て直しながら剣から杖に持ち替え、突き出す。
敵の剣と交差するけどわたしのほうが速い。
閃光の魔法を真正面から喰らった暗殺者は剣を手放し、顔を手で覆う。
でやあっ、と杖のまま横殴りに叩くと、敵は落馬して横の藪の中に突っ込んでいった。
やった、倒せた! と、喜んでいる場合じゃない。相手の馬はまだ走り続けている。背には縄で縛られたセヴェリン王子が乗せられたまま。
ぐったりしていて、やっぱり気を失っているみたい。呼びかけても全然反応がない。
並走しながら相手の手綱に手を伸ばすけど……届かない。いや、届いたところであの勢いの馬の勢いは止められそうにない。わたしの腕ごともっていかれるだけだ。
ここはかなり危険だけどアレをやるしかない。
むこうの馬に飛び移って馬を制御するんだ。テレビとかマンガで見たことある。
わたしは意を決し、鐙から足を外し、慎重に鞍の上に膝立ちになる。
うおお、怖え。この揺れの中、バランスを保っていられるのは成長したアネリーゼ姫の身体能力のおかげだろうけど……失敗して地面に叩きつけられたら死んじゃうかもしれない。
いや、失敗したことなんて考えちゃダメだ。
セヴェリン王子だっていつ振り落とされるかもしれないのに。今のわたしはこの世界の主人公アネリーゼ姫なんだ。知らないイベントだろうがなんだろうが全部乗り越えてやる。
タイミングを見計らって、跳躍──。
馬の首にしがみつくようになんとか飛び移ることに成功した。心臓が信じられないぐらいバクバクいってる。
「や、やった。あとはこの馬を止めれば」
手綱を引いて意思を伝える。少しづつスピードを落とすつもりだったけど、馬のほうもわたしが飛び乗ったことで動揺していたのか、その場で急ブレーキ。
後ろ足が突っ張った状態でズザァ―ッ、と滑る。馬のお尻なんてもう地面につきそう。
うわあーっと、わたしはなんとか振り落とされずに済んだけど……やべ。
セヴェリン王子……今のでだいぶ後ろのほうに転がり落ちちゃってる。大丈夫だよね? 頭なんか打ってないよね?
「足止めしてセヴェリン様だけはなんとしても連れ去るつもりのようです。アネリーゼ姫、ここは我らに任せて後を追ってください」
スラッと腰の剣を抜きながらアウネータが言った。老紳士カルステンも頷いている。
いやいや、セヴェリン王子救出が最優先なのはわかるけど、ロリお嬢様とお爺ちゃんがあの2騎にかなうわけないじゃん。矢は射ち尽くしてもうないみたいだけどさ。どう見ても手練れの暗殺者じゃん。
ひとまずここは3人で協力して──とわたしが言う前にふたりはまっすぐに2騎に突っ込んでいく。
相手もすでに剣を抜いている。まず先頭の暗殺者が鋭い刺突をすれ違いざまに繰り出す。
あぶないっ、て叫ぼうとしたけどアウネータは難なくそれを剣ではね上げる。
そこで2騎は足を止めて騎上での斬り合いに。
ひええ、あぶなっかしい……と思ったけど、アウネータは暗殺者相手に全然負けていない。むしろ押してるぐらいだ。
これは意外。うちの正規ユニットにもひけを取らない剣さばきやんけ。と感心してる場合じゃなかった。
老紳士カルステンのほうに加勢しなきゃ。
カルステンももう1騎の暗殺者と対峙している。
しかしなぜか馬から降りた状態で。それも素手だ。ああ、こんな時にボケちゃったんだろうか。やばい、魔法か何かで助けないと。
わたしが杖を向けて集中する前に敵が剣を振り下ろす。あっ、間に合わない!
と思った瞬間、カルステンが軽く腕を振ると暗殺者の剣が逸れて空振りになる。
なんだ、偶然か……? いや、そのあとも暗殺者の剣はことごとくカルステンに触れることなく空を切っている。カルステン自身はそこからほとんど動いてないというのに。
これは信じられないことだけど、素手であの斬撃をさばいているようだった。
攻撃を瞬時に見切り、刃ではない剣の腹を拳や手刀を当てて軌道を変えているのだ。
とんでもない高等技術。って、そんなことできるユニットなんか存在したっけ?
「アネリーゼ姫! 今のうちに早くっ!」
アウネータの声にはっと我に返る。ふたりの意外な強さに呆気に取られている場合じゃなかった。
この調子ならふたりは大丈夫だ。わたしはすぐに追跡を再開。セヴェリン王子を乗せたもう1騎を追った。
✳ ✳ ✳
けっこう離れたかと思ったけど5分程で敵に追いついた。
一本道だし、むこうはセヴェリン王子を乗せてるからね。さあ観念してセヴェリン王子をこっちに渡すのだ。
フッフッフ、と笑いながら馬を近づける。アネリーゼ姫の身体といえど乗馬も随分上手くなったものだ。
相手ももう気づいている。馬を走らせながら剣を抜いた。
ここでわたしは重大な事に気づく。あれ、これって……わたしひとりで戦って勝たないとダメなやつじゃん。
肝心なときは仲間たちが助けてくれたけど今はいない。セヴェリン王子も相手に捕らえられて身動き取れない状態だ。
相手が速度を落とし、わたしの馬と並走する形に。やっば、近い。わたしひとりだって気づいてここで仕留めるつもりだ。
わたしのバカ。追いつく前に遠間から睡眠かなんか使ってれば良かったのに。
調子に乗って近づきすぎたせいだ。相手の一撃目──鋭い突きはなんとか剣で受け止めることには成功したけど。
ここはいったん離れたい……と思ったけど、むこうがどんどん幅寄せしてくる。
2騎の鐙がぶつかりそうな距離だ。くっそ、ここは剣でやっつけるしかない。
また相手の突き。わたしの脇腹の辺りを狙っている。
これも剣で払う。けど次は連撃だ。ううっ、暗殺者だから力はそんなに無いけど速い……。さばききれなくて小手や鎧に喰らった。まずいよ、鎧の隙間とかにもらってたら死んでたところだ。
上手くなったとはいえ騎馬ユニットじゃないんだから馬上の戦いには無理がある。でもここでわたしがなんとかしないとセヴェリン王子が……。
わたしの技量がたいした事ないと判断したのか、敵の大振りな一撃。剣を一文字にしてやっと受け止めた。
けど手綱からも手を離した状態。バランスを崩してわたしは落馬しそうになる。
足に力入れてなんとか踏ん張る。敵はチャンスとばかりにトドメの一撃を狙っている。
だけどバランス崩したことで相手との距離が開いた。わたしは体勢を立て直しながら剣から杖に持ち替え、突き出す。
敵の剣と交差するけどわたしのほうが速い。
閃光の魔法を真正面から喰らった暗殺者は剣を手放し、顔を手で覆う。
でやあっ、と杖のまま横殴りに叩くと、敵は落馬して横の藪の中に突っ込んでいった。
やった、倒せた! と、喜んでいる場合じゃない。相手の馬はまだ走り続けている。背には縄で縛られたセヴェリン王子が乗せられたまま。
ぐったりしていて、やっぱり気を失っているみたい。呼びかけても全然反応がない。
並走しながら相手の手綱に手を伸ばすけど……届かない。いや、届いたところであの勢いの馬の勢いは止められそうにない。わたしの腕ごともっていかれるだけだ。
ここはかなり危険だけどアレをやるしかない。
むこうの馬に飛び移って馬を制御するんだ。テレビとかマンガで見たことある。
わたしは意を決し、鐙から足を外し、慎重に鞍の上に膝立ちになる。
うおお、怖え。この揺れの中、バランスを保っていられるのは成長したアネリーゼ姫の身体能力のおかげだろうけど……失敗して地面に叩きつけられたら死んじゃうかもしれない。
いや、失敗したことなんて考えちゃダメだ。
セヴェリン王子だっていつ振り落とされるかもしれないのに。今のわたしはこの世界の主人公アネリーゼ姫なんだ。知らないイベントだろうがなんだろうが全部乗り越えてやる。
タイミングを見計らって、跳躍──。
馬の首にしがみつくようになんとか飛び移ることに成功した。心臓が信じられないぐらいバクバクいってる。
「や、やった。あとはこの馬を止めれば」
手綱を引いて意思を伝える。少しづつスピードを落とすつもりだったけど、馬のほうもわたしが飛び乗ったことで動揺していたのか、その場で急ブレーキ。
後ろ足が突っ張った状態でズザァ―ッ、と滑る。馬のお尻なんてもう地面につきそう。
うわあーっと、わたしはなんとか振り落とされずに済んだけど……やべ。
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