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38 神竜の巫女
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翌朝から出発し、半日程で神殿に到着。
途中で追っ手やら野盗にも遭遇しなかったのはラッキーだった。
「この神殿のある付近は普段禁足地となっているので誰も近づかないのです。王族でも正統な理由なく踏み入れば、神龍から罰を受けると言い伝えられています」
白い大理石造りの壮麗な神殿を見上げながらセヴェリン王子が説明する。
なるほど。ここなら敵に襲われないってことも計算に入れてたわけね。
でも、神竜からの罰ってのは気になる……まあ、そんなの迷信だよね。ここの世界の人たちは信心深そうだからアレだけど。実際近くまで来たけど天罰も祟りもないし。ちゃちゃっと国宝を手に入れてこの国を脱出したい。
神域ということで内部にはごく少人数で入ることになった。
わたしとセヴェリン王子、アウネータとカルステンの4人だ。
諜報兵たちは外で待機。何かあればすぐに報せてくれる。
長い間、誰も入ってないという割に神殿内は荒れた様子もなく、綺麗に清掃されている。
不思議に思いながら大きな鋼鉄製の扉のある場所まで辿り着く。
でけえ……ロスキレの地下にある扉の何倍もでかい。巨人でも住んでんのか。
他に入り口は見当たらないし、この扉の奥に国宝の武器がありそうだけど。でもこんなん、どうやって開けろってんだ。鍵かかってなくても重機使わないと開きそうにないんだけど。
「ここへ来るのは僕は初めてだけど、父上が剣を受け継いだ時の話は聞いている。僕ならここを開けられるはず」
セヴェリン王子が前に出て扉に描かれている竜の形を模した紋章に手を触れる。
おお、あれはイェリング国の紋章。で、あれが国を守護してる神竜ってわけね。
セヴェリン王子が触れた紋章の部分が光りだし、回転する。
そしてゴゴ、ゴ、と目の前の巨大扉が左右に開いていく。
イェリングの王族じゃないと開けられない仕組みか。まあだからこそ盗掘とかされてないんだよねー。
今のところ罰とかも起きそうもないし、意外と簡単に手に入れられそう……。
セヴェリン王子を先頭に部屋の中へ。
中はかなりの広さ。奥には階段があり、その上には巨大な竜の彫像があった。
ロスキレの地下にも女神像があったけど、似たようなもんだね。本物の竜がいるんじゃないかってビビっちゃったけどさ。
「あそこにあるのがゲフィオン。あれさえ手に入れれば」
セヴェリン王子が指さす先。竜の彫像の口が咥えている剣。あれがイェリングの国宝ゲフィオンか。
「セヴェリン様、お気をつけて」
竜の彫像へ近づくセヴェリン王子にアウネータが心配そうに声をかける。カルステンも用心深く周囲を警戒している。
いやいや、ここまで来たら余裕っしょ。ゲフィオンを手に入れるイベントのことはよく知らないけどさ。あの作り物の竜が本物の竜になって襲ってくるわけでもなさそうだし、敵もいないし。
重要な場面なんだろーけどバトル無しの楽チンな会話イベントだったってことじゃん。ゲームならボタン連打でスキップしちゃうとこだね。
「そこまでで止まれ、イェリングの王子よ」
突然の凛とした女性の声。
竜の彫像からだ。げ、まさかこの竜は本物だった……⁉ とビビったけど、声の主は彫像の陰から姿を現した女性だった。
白の長いドレスに腰まである白髪。だけど年寄りというわけではない。つり目の美人顔で二十代前半といったところか。
うお、近づいてきたけど……えらい身長高いな。180センチ以上あるんじゃないのか。
白髪の女性はゲフィオンとセヴェリン王子の間に入り、冷徹な表情で見下ろす。だけどセヴェリン王子は怯んだり驚いている様子はない。
「……父から聞いています。あなたが神竜の巫女なのですね」
「左様。この剣は王族といえど王位継承時と有事の際にしか持ち出せぬと知ってここに来たのか」
新竜の巫女だって。この神殿は完全な無人じゃなくて、ちゃんと管理者がいた。セヴェリン王子は父親から聞いてたから冷静なわけだね。
「今、この大陸は帝国の侵攻によって多くの命が失われ、三国の力の均衡が崩れた状態にあります。先の戦争によってロスキレは事実上、帝国の支配下に。表面上友好関係にあるとはいえ、このイェリングもいつ同じ運命を辿るかもわかりません。あの帝国を……皇帝を倒さねば真の平和が訪れることはないでしょう」
セヴェリン王子の真摯な眼差しと言葉。神龍の巫女はしばらく無表情で聞いてたけど、突然わたしのほうを見た。
「大陸に争乱ある時、神剣を求むる者現る……。理由はわかったが、それだけか? 国を想い、民を想う気持ち以外に私情はないと誓えるか? 例えばそこの女……ロスキレの王女を個人的に助けたいという気持ちがあるのではないか?」
うえ、なんかあのビッチ司祭のミラと同じこと言ってるよ。
それに誰も説明してないのにわたしがロスキレの王女ってよくわかったね。だてに神竜の巫女を名乗ってないわけか。
でもそのこと婚約者のアウネータの前で聞くかね。ほら、ロリお嬢様が不安げな表情でセヴェリン王子を見つめてるじゃないか。
「神に……神竜に誓います。彼女を助けるのはロスキレ再興と、共に帝国打倒を目指すため。そこにやましい気持ちなど微塵もありません」
セヴェリン王子のはっきりとした宣言にアウネータはほっとした表情。逆にわたしは少なからず精神的ダメージを負った。
むむむ、結婚相手候補のひとりにそんなはっきり言われたらなあ。いや、難しいのはわかってるよ? でも、もうちょっとオブラートに包んで言ってほしいなあ。
神竜の巫女はうむ、と納得した顔。お、ついにゲフィオンを手に入れることが出来るのか。
途中で追っ手やら野盗にも遭遇しなかったのはラッキーだった。
「この神殿のある付近は普段禁足地となっているので誰も近づかないのです。王族でも正統な理由なく踏み入れば、神龍から罰を受けると言い伝えられています」
白い大理石造りの壮麗な神殿を見上げながらセヴェリン王子が説明する。
なるほど。ここなら敵に襲われないってことも計算に入れてたわけね。
でも、神竜からの罰ってのは気になる……まあ、そんなの迷信だよね。ここの世界の人たちは信心深そうだからアレだけど。実際近くまで来たけど天罰も祟りもないし。ちゃちゃっと国宝を手に入れてこの国を脱出したい。
神域ということで内部にはごく少人数で入ることになった。
わたしとセヴェリン王子、アウネータとカルステンの4人だ。
諜報兵たちは外で待機。何かあればすぐに報せてくれる。
長い間、誰も入ってないという割に神殿内は荒れた様子もなく、綺麗に清掃されている。
不思議に思いながら大きな鋼鉄製の扉のある場所まで辿り着く。
でけえ……ロスキレの地下にある扉の何倍もでかい。巨人でも住んでんのか。
他に入り口は見当たらないし、この扉の奥に国宝の武器がありそうだけど。でもこんなん、どうやって開けろってんだ。鍵かかってなくても重機使わないと開きそうにないんだけど。
「ここへ来るのは僕は初めてだけど、父上が剣を受け継いだ時の話は聞いている。僕ならここを開けられるはず」
セヴェリン王子が前に出て扉に描かれている竜の形を模した紋章に手を触れる。
おお、あれはイェリング国の紋章。で、あれが国を守護してる神竜ってわけね。
セヴェリン王子が触れた紋章の部分が光りだし、回転する。
そしてゴゴ、ゴ、と目の前の巨大扉が左右に開いていく。
イェリングの王族じゃないと開けられない仕組みか。まあだからこそ盗掘とかされてないんだよねー。
今のところ罰とかも起きそうもないし、意外と簡単に手に入れられそう……。
セヴェリン王子を先頭に部屋の中へ。
中はかなりの広さ。奥には階段があり、その上には巨大な竜の彫像があった。
ロスキレの地下にも女神像があったけど、似たようなもんだね。本物の竜がいるんじゃないかってビビっちゃったけどさ。
「あそこにあるのがゲフィオン。あれさえ手に入れれば」
セヴェリン王子が指さす先。竜の彫像の口が咥えている剣。あれがイェリングの国宝ゲフィオンか。
「セヴェリン様、お気をつけて」
竜の彫像へ近づくセヴェリン王子にアウネータが心配そうに声をかける。カルステンも用心深く周囲を警戒している。
いやいや、ここまで来たら余裕っしょ。ゲフィオンを手に入れるイベントのことはよく知らないけどさ。あの作り物の竜が本物の竜になって襲ってくるわけでもなさそうだし、敵もいないし。
重要な場面なんだろーけどバトル無しの楽チンな会話イベントだったってことじゃん。ゲームならボタン連打でスキップしちゃうとこだね。
「そこまでで止まれ、イェリングの王子よ」
突然の凛とした女性の声。
竜の彫像からだ。げ、まさかこの竜は本物だった……⁉ とビビったけど、声の主は彫像の陰から姿を現した女性だった。
白の長いドレスに腰まである白髪。だけど年寄りというわけではない。つり目の美人顔で二十代前半といったところか。
うお、近づいてきたけど……えらい身長高いな。180センチ以上あるんじゃないのか。
白髪の女性はゲフィオンとセヴェリン王子の間に入り、冷徹な表情で見下ろす。だけどセヴェリン王子は怯んだり驚いている様子はない。
「……父から聞いています。あなたが神竜の巫女なのですね」
「左様。この剣は王族といえど王位継承時と有事の際にしか持ち出せぬと知ってここに来たのか」
新竜の巫女だって。この神殿は完全な無人じゃなくて、ちゃんと管理者がいた。セヴェリン王子は父親から聞いてたから冷静なわけだね。
「今、この大陸は帝国の侵攻によって多くの命が失われ、三国の力の均衡が崩れた状態にあります。先の戦争によってロスキレは事実上、帝国の支配下に。表面上友好関係にあるとはいえ、このイェリングもいつ同じ運命を辿るかもわかりません。あの帝国を……皇帝を倒さねば真の平和が訪れることはないでしょう」
セヴェリン王子の真摯な眼差しと言葉。神龍の巫女はしばらく無表情で聞いてたけど、突然わたしのほうを見た。
「大陸に争乱ある時、神剣を求むる者現る……。理由はわかったが、それだけか? 国を想い、民を想う気持ち以外に私情はないと誓えるか? 例えばそこの女……ロスキレの王女を個人的に助けたいという気持ちがあるのではないか?」
うえ、なんかあのビッチ司祭のミラと同じこと言ってるよ。
それに誰も説明してないのにわたしがロスキレの王女ってよくわかったね。だてに神竜の巫女を名乗ってないわけか。
でもそのこと婚約者のアウネータの前で聞くかね。ほら、ロリお嬢様が不安げな表情でセヴェリン王子を見つめてるじゃないか。
「神に……神竜に誓います。彼女を助けるのはロスキレ再興と、共に帝国打倒を目指すため。そこにやましい気持ちなど微塵もありません」
セヴェリン王子のはっきりとした宣言にアウネータはほっとした表情。逆にわたしは少なからず精神的ダメージを負った。
むむむ、結婚相手候補のひとりにそんなはっきり言われたらなあ。いや、難しいのはわかってるよ? でも、もうちょっとオブラートに包んで言ってほしいなあ。
神竜の巫女はうむ、と納得した顔。お、ついにゲフィオンを手に入れることが出来るのか。
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