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39 神剣ゲフィオン
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神竜の巫女。
神剣ゲフィオンを彫像から取り出し、セヴェリン王子に渡すと思いきや──。
長い白髪をはためかせ、踏み込んでの正拳突き。
セヴェリン王子は腕を十字にしてなんとか受けたが、その衝撃で数メートルも階段を滑り落ちる。
受け止めた小手の部分にはくっきりと拳の形がついていた。
「神竜の巫女! なにをっ」
セヴェリン王子が驚いて聞く。
神竜の巫女は見下ろしながら静かに階段を下りていく。
「大方の理由はわかった。お主のまっすぐな気持ちも嘘ではなかろう。さりとて、それだけではこのゲフィオンを預けるわけにはいかぬ。どうしてもというなら、このわたしを打ち負かして持っていくがいい」
ひえー、いきなりのバトル展開!
さすがにここまではセヴェリン王子も予想していなかったか。
神竜の巫女って身長高いけど細身。あんな鎧つけた男性ひとりを素手で吹っ飛ばすなんて、普通の人間じゃないのかも。
セヴェリン王子の左右にアウネータとカルステンが守るようにつく。
わたしも支援するために杖を構えた。4対1の状況だけど、神竜の巫女は構わず階段を下りてくる。
完全に下りきる前に跳躍。ブワッと白のドレスが舞う。
セヴェリン王子を狙った飛び蹴り。
だが老紳士カルステンも同時に跳んでいた。
ガカッ、と空中で交差するふたり。
着地してよろめいたのはカルステン。ダメージは少ないようだが、あの武術の達人相手に……。やっぱりあの女性はタダ者じゃない。
神竜の巫女めがけ、セヴェリン王子が剣の刺突。
ヒュオッ、と回転するように避ける。
アウネータも仕掛けていた。上段から斬りつける。だがこれもかわされ、ふたりは近距離から掌打を喰らって吹っ飛ばされた。
甲冑ごしじゃなかったら、骨を砕かれそうな威力……。おっと、ビビッてる場合じゃない。わたしも攻撃に参加しないと。
まずは睡眠。これが効けば楽勝なんだけど……やっぱダメか。
状態異常に耐性あるみたい。平気な顔でこっち睨んでるもん。
んあ? 離れたところから右手を上げてるけど、なにするつもりかな。
わたしが首をかしげていると、いきなりゴッ、と炎の塊が飛んできた。
「あっちぃ! あちちっ!」
とっさにジャンプしてかわしたけど、熱っ……なにアレ。杖も無しに手から魔法出しやがった。そんなのクヌーズ先生にだって無理だろうに。
離れてたら安心かと思ってたわたしは慌てる。
次は電撃。神竜の巫女の指先から放たれたものだが、それは大きく上に外れた。
飛び込んだカルステンが蹴りで腕を跳ね上げていた。
「やるな」
神竜の巫女が笑いながら拳を突き出す。
紙一重で避けながらカルステンの肘打ち。
ザザーッ、と彼女の身体が後退した。あのお爺ちゃんもスゴい……しかもそこにはセヴェリン王子とアウネータが待ち構えていた。
ふたりの斬撃。それぞれ肩と腰に入ったが、ふたりとも刃でなく平の部分で叩いている。
それでも相当な威力なはずだが、神竜の巫女は応えたふうもなくその場で回転蹴り。またもふたりを弾き飛ばした。
「いらぬ気遣いは無用。斬り殺すつもりで打ち込むがよい。この肌にはいかなる刃物も通じぬがな」
なんて強さだ。わたしなんかが立ち向かったところでどうにもならない。
わたしは回復に徹しようと杖を回復のものへと替え、セヴェリン王子たちのほうに向ける。
しかし、すでにアウネータの手には回復の杖が握られていた。
「わたくしの職業は戦乙女。回復も可能なのです。わたくし達に構わず、姫も攻撃を」
アウネータは固有の職業だったのか。回復も使えるなんてわたしと役目かぶってんじゃん。こりゃ、わたしの出番減るな。
なんてことを考えてる場合じゃない。
神竜の巫女はカルステンを片手で軽々投げ飛ばしたあと、わたしにズンズン向かってきている。
セヴェリン王子たちは回復の途中。
ひええ、わたしがやるしかないのか。
ここは──得意の不意打ち。閃光で目くらましからの、剣の打ち込み。
思ったよりスムーズにいった! わたしの剣は右の肩へまともに入った……あら、素手で受け止められている!
ヒョイと剣を取り上げられ、わたしのボディーに強烈なパンチ。
「ぶげぇっ」
甲冑ごしでも痛い。超痛い。鼻水とヨダレを垂らしながらわたしはその場で悶絶する。
「……これは、お主はもしや……」
戸惑うように神竜の巫女の動きが止まった。
「アネリーゼ姫ーーっ!」
セヴェリン王子の怒号。あのカルステンよりも速く接近していた。
そして跳躍。空中で回転し、落下しながらの渾身の一撃。
セヴェリン王子固有の必殺技【旋空】だ。
これは決まったか。いや、ヒットはしたがセヴェリン王子の剣が折れている。まさかあれが効かないなんて。
だけど神竜の巫女は反撃のチャンスに動かない。
ゆっくりとその場に片膝をついた。
「ふむ、今のはなかなか。……良かろう、合格だ。イェリングの王子よ。お主を認め、ゲフィオンを持ち出すことを許そう」
神竜の巫女の突然の降参。
ヒザをついたとはいえ、ダメージを負ったようには見えないし、さっきまでの戦いもあちらが圧倒的に優勢だった。
うずくまっているわたしも、肩で息をしているセヴェリン王子も呆気に取られていた。
神剣ゲフィオンを彫像から取り出し、セヴェリン王子に渡すと思いきや──。
長い白髪をはためかせ、踏み込んでの正拳突き。
セヴェリン王子は腕を十字にしてなんとか受けたが、その衝撃で数メートルも階段を滑り落ちる。
受け止めた小手の部分にはくっきりと拳の形がついていた。
「神竜の巫女! なにをっ」
セヴェリン王子が驚いて聞く。
神竜の巫女は見下ろしながら静かに階段を下りていく。
「大方の理由はわかった。お主のまっすぐな気持ちも嘘ではなかろう。さりとて、それだけではこのゲフィオンを預けるわけにはいかぬ。どうしてもというなら、このわたしを打ち負かして持っていくがいい」
ひえー、いきなりのバトル展開!
さすがにここまではセヴェリン王子も予想していなかったか。
神竜の巫女って身長高いけど細身。あんな鎧つけた男性ひとりを素手で吹っ飛ばすなんて、普通の人間じゃないのかも。
セヴェリン王子の左右にアウネータとカルステンが守るようにつく。
わたしも支援するために杖を構えた。4対1の状況だけど、神竜の巫女は構わず階段を下りてくる。
完全に下りきる前に跳躍。ブワッと白のドレスが舞う。
セヴェリン王子を狙った飛び蹴り。
だが老紳士カルステンも同時に跳んでいた。
ガカッ、と空中で交差するふたり。
着地してよろめいたのはカルステン。ダメージは少ないようだが、あの武術の達人相手に……。やっぱりあの女性はタダ者じゃない。
神竜の巫女めがけ、セヴェリン王子が剣の刺突。
ヒュオッ、と回転するように避ける。
アウネータも仕掛けていた。上段から斬りつける。だがこれもかわされ、ふたりは近距離から掌打を喰らって吹っ飛ばされた。
甲冑ごしじゃなかったら、骨を砕かれそうな威力……。おっと、ビビッてる場合じゃない。わたしも攻撃に参加しないと。
まずは睡眠。これが効けば楽勝なんだけど……やっぱダメか。
状態異常に耐性あるみたい。平気な顔でこっち睨んでるもん。
んあ? 離れたところから右手を上げてるけど、なにするつもりかな。
わたしが首をかしげていると、いきなりゴッ、と炎の塊が飛んできた。
「あっちぃ! あちちっ!」
とっさにジャンプしてかわしたけど、熱っ……なにアレ。杖も無しに手から魔法出しやがった。そんなのクヌーズ先生にだって無理だろうに。
離れてたら安心かと思ってたわたしは慌てる。
次は電撃。神竜の巫女の指先から放たれたものだが、それは大きく上に外れた。
飛び込んだカルステンが蹴りで腕を跳ね上げていた。
「やるな」
神竜の巫女が笑いながら拳を突き出す。
紙一重で避けながらカルステンの肘打ち。
ザザーッ、と彼女の身体が後退した。あのお爺ちゃんもスゴい……しかもそこにはセヴェリン王子とアウネータが待ち構えていた。
ふたりの斬撃。それぞれ肩と腰に入ったが、ふたりとも刃でなく平の部分で叩いている。
それでも相当な威力なはずだが、神竜の巫女は応えたふうもなくその場で回転蹴り。またもふたりを弾き飛ばした。
「いらぬ気遣いは無用。斬り殺すつもりで打ち込むがよい。この肌にはいかなる刃物も通じぬがな」
なんて強さだ。わたしなんかが立ち向かったところでどうにもならない。
わたしは回復に徹しようと杖を回復のものへと替え、セヴェリン王子たちのほうに向ける。
しかし、すでにアウネータの手には回復の杖が握られていた。
「わたくしの職業は戦乙女。回復も可能なのです。わたくし達に構わず、姫も攻撃を」
アウネータは固有の職業だったのか。回復も使えるなんてわたしと役目かぶってんじゃん。こりゃ、わたしの出番減るな。
なんてことを考えてる場合じゃない。
神竜の巫女はカルステンを片手で軽々投げ飛ばしたあと、わたしにズンズン向かってきている。
セヴェリン王子たちは回復の途中。
ひええ、わたしがやるしかないのか。
ここは──得意の不意打ち。閃光で目くらましからの、剣の打ち込み。
思ったよりスムーズにいった! わたしの剣は右の肩へまともに入った……あら、素手で受け止められている!
ヒョイと剣を取り上げられ、わたしのボディーに強烈なパンチ。
「ぶげぇっ」
甲冑ごしでも痛い。超痛い。鼻水とヨダレを垂らしながらわたしはその場で悶絶する。
「……これは、お主はもしや……」
戸惑うように神竜の巫女の動きが止まった。
「アネリーゼ姫ーーっ!」
セヴェリン王子の怒号。あのカルステンよりも速く接近していた。
そして跳躍。空中で回転し、落下しながらの渾身の一撃。
セヴェリン王子固有の必殺技【旋空】だ。
これは決まったか。いや、ヒットはしたがセヴェリン王子の剣が折れている。まさかあれが効かないなんて。
だけど神竜の巫女は反撃のチャンスに動かない。
ゆっくりとその場に片膝をついた。
「ふむ、今のはなかなか。……良かろう、合格だ。イェリングの王子よ。お主を認め、ゲフィオンを持ち出すことを許そう」
神竜の巫女の突然の降参。
ヒザをついたとはいえ、ダメージを負ったようには見えないし、さっきまでの戦いもあちらが圧倒的に優勢だった。
うずくまっているわたしも、肩で息をしているセヴェリン王子も呆気に取られていた。
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