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42 不安
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他にわたしに力を貸してくれる味方が……? それはありがたい話だ。
帝国からの監視を逃れたあとヴィリ達とは別行動をしていたようだが、連絡は取り合っていたらしい。
詳しい話やこれからの事は合流してから話そう、とヴィリが急かす。
たしかにグズグズしてたら帝国やロスキレの追っ手が来るかもしれない。でも……。
「この村の住民たちが気になるのでしょう。いくばくかの金を渡して、ほとぼりが冷めるまでは他の街や村に身を潜めるようにさせるので安心してください」
そう言ってくれたのはセヴェリン王子。
おお、わたしが気にかけてる事を先読みして対策を打ってくれてるなんて。
脱走した兵を匿った上に反乱なんて、この先どんな目にあうか分からないからね。わたしや仲間たちの為に無関係な人々が傷つくのは耐えられない。
「ありがとうございます、セヴェリン王子。彼らがまたこの村に戻れるよう、一刻も早く皇帝を倒さないと」
✳ ✳ ✳
仲間たちがいるという場所は以前わたしが帝国から脱出し、ロスキレ国内に入ってすぐに夜営した所。
小さな森の廃城だ。あの時はゴリ……ホルガーとふたりきりで留守番させられたり、エイナルが美味しいオートミール作ってくれたり。朝には賞金稼ぎに囲まれりしたっけ、なんて考えているうちに到着した。
国境近くという事でだいぶ近かったようだ。
ここまでの道中で誰が待っているということはヴィリは教えてくれなかった。会ってからのお楽しみ、とイタズラっ子みたいに笑うばかりだ。カワイイなあ、もう。
ギオルグのほうはムッツリとしててほとんど喋らない。
元は商業都市グラッドサクセの盗賊団の親玉。ゲームでは仲間にならないはずのイレギュラーな存在。まあそれはアウネータやカルステンも同じなんだけどね。
この人も盗賊から王女の配下って無類の出世だったわけだけど、あっという間に追われる身というか罪人扱いになっちゃったわけで。気の毒っちゃ気の毒だよね。でも本来ゲームでは殺されてたんだからね。
わたしがジッと見てると、ギオルグがな、なんだよと顔を赤らめてうつむく。
やべえ、もしかしたらコイツも結婚相手攻略対象なのか。こんなゴリゴリの凶悪顔はさすがに無理だ。わたしは慌てて目をそらす。
そんな事より新しい仲間、仲間。
四面楚歌の大ピンチの状況で、ひとりでも多く仲間が欲しいところ。
もっと欲を言うなら強キャラが良い。クヌーズ先生とか騎士団長ラグンフリズとか。さらに贅沢叶うならばウルリクのようなイケメンが良い。さすがにこんな局面でゴリラは来ないだろう。
さっそく廃城から出てきてわたし達を出迎えたのは──。
逆立った短い金髪に長剣を背負った剣豪。アグナーだ。
ワイルド系イケメンで強さも申し分ない。わたしはホッと安心する。
アグナーも元は傭兵で騎士団の一員ではない。だから監視から抜け出せたのだろう。
「まあよくとっ捕まったり追い回されるヤツだな。お前の側にいりゃあ退屈しねーがよ」
相変わらず口も悪いが、今は頼もしい限りだ。さてさて、次に出てくるのは誰かな?
次に廃城から窺うように出てきたのは紅いツインテールの少女。これは意外。高魔術師のクラーアだ。
宮廷魔術師だから王国直属の人物。個人的にもアネリーゼ姫と幼なじみだし、厳重に見張られていたはずだけど。
クラーアは不満そうな表情でこっちに向かってくる。
「な、なによ。わたしがここにいちゃおかしいっていうの? せっかく先生が魔法を使って逃げさせてくれたのに」
なるほど、クヌーズ先生のおかげだったわけか。だけど、どうせならクヌーズ先生本人がここに来てくれないかな。
レジスタンス軍に指示を出していた時からそうだけど、あんまり直接的に関わらないんだよね。
「急に王都に移動ってなって……大勢の兵に囲まれて。あれは移動というか連行よ。先生はもしもの時のためにわたしだけは逃がしてくれたんだけど。先生自身はこの機会に王都で確かめてみたい事があるって」
泣きそうな顔でクラーアはうつむく。
急に王都へ連れて行かれるなんて普通じゃない。無事だとは思うけど、やっぱりのんびりしてる場合じゃない。
クヌーズ先生が確かめてみたい事ってなんだろうか。戴冠式での出来事は知ってるから、皇帝やミアについて何か疑問を持ったのかも。
クヌーズ先生なら皇帝の中に本物のアネリーゼ姫が宿っているって見破れるかもしれない。
ん、それはわたしにとっていい事なのか? ロスキレ古参の面々は本物のアネリーゼ姫に忠誠を誓っている。
わたしが外面だけアネリーゼ姫で、中身はなんの変哲もない女子中学生って分かったら、絶対むこうのほうについちゃうよね。
ここにいるヴィリやクラーアだって。たくさんの戦いをくぐり抜けてきた仲間だけど、わたしはずっとみんなを騙していたようなものだ。
セヴェリン王子だって本物のアネリーゼ姫だと思ってるから助けてくれたんだ。本当の事が分かったらみんな離れていってしまうんだ。
ここからまた帝国打倒の戦意を上げないといけないのに、わたしの心は不安で押し潰されそうになっていた。
帝国からの監視を逃れたあとヴィリ達とは別行動をしていたようだが、連絡は取り合っていたらしい。
詳しい話やこれからの事は合流してから話そう、とヴィリが急かす。
たしかにグズグズしてたら帝国やロスキレの追っ手が来るかもしれない。でも……。
「この村の住民たちが気になるのでしょう。いくばくかの金を渡して、ほとぼりが冷めるまでは他の街や村に身を潜めるようにさせるので安心してください」
そう言ってくれたのはセヴェリン王子。
おお、わたしが気にかけてる事を先読みして対策を打ってくれてるなんて。
脱走した兵を匿った上に反乱なんて、この先どんな目にあうか分からないからね。わたしや仲間たちの為に無関係な人々が傷つくのは耐えられない。
「ありがとうございます、セヴェリン王子。彼らがまたこの村に戻れるよう、一刻も早く皇帝を倒さないと」
✳ ✳ ✳
仲間たちがいるという場所は以前わたしが帝国から脱出し、ロスキレ国内に入ってすぐに夜営した所。
小さな森の廃城だ。あの時はゴリ……ホルガーとふたりきりで留守番させられたり、エイナルが美味しいオートミール作ってくれたり。朝には賞金稼ぎに囲まれりしたっけ、なんて考えているうちに到着した。
国境近くという事でだいぶ近かったようだ。
ここまでの道中で誰が待っているということはヴィリは教えてくれなかった。会ってからのお楽しみ、とイタズラっ子みたいに笑うばかりだ。カワイイなあ、もう。
ギオルグのほうはムッツリとしててほとんど喋らない。
元は商業都市グラッドサクセの盗賊団の親玉。ゲームでは仲間にならないはずのイレギュラーな存在。まあそれはアウネータやカルステンも同じなんだけどね。
この人も盗賊から王女の配下って無類の出世だったわけだけど、あっという間に追われる身というか罪人扱いになっちゃったわけで。気の毒っちゃ気の毒だよね。でも本来ゲームでは殺されてたんだからね。
わたしがジッと見てると、ギオルグがな、なんだよと顔を赤らめてうつむく。
やべえ、もしかしたらコイツも結婚相手攻略対象なのか。こんなゴリゴリの凶悪顔はさすがに無理だ。わたしは慌てて目をそらす。
そんな事より新しい仲間、仲間。
四面楚歌の大ピンチの状況で、ひとりでも多く仲間が欲しいところ。
もっと欲を言うなら強キャラが良い。クヌーズ先生とか騎士団長ラグンフリズとか。さらに贅沢叶うならばウルリクのようなイケメンが良い。さすがにこんな局面でゴリラは来ないだろう。
さっそく廃城から出てきてわたし達を出迎えたのは──。
逆立った短い金髪に長剣を背負った剣豪。アグナーだ。
ワイルド系イケメンで強さも申し分ない。わたしはホッと安心する。
アグナーも元は傭兵で騎士団の一員ではない。だから監視から抜け出せたのだろう。
「まあよくとっ捕まったり追い回されるヤツだな。お前の側にいりゃあ退屈しねーがよ」
相変わらず口も悪いが、今は頼もしい限りだ。さてさて、次に出てくるのは誰かな?
次に廃城から窺うように出てきたのは紅いツインテールの少女。これは意外。高魔術師のクラーアだ。
宮廷魔術師だから王国直属の人物。個人的にもアネリーゼ姫と幼なじみだし、厳重に見張られていたはずだけど。
クラーアは不満そうな表情でこっちに向かってくる。
「な、なによ。わたしがここにいちゃおかしいっていうの? せっかく先生が魔法を使って逃げさせてくれたのに」
なるほど、クヌーズ先生のおかげだったわけか。だけど、どうせならクヌーズ先生本人がここに来てくれないかな。
レジスタンス軍に指示を出していた時からそうだけど、あんまり直接的に関わらないんだよね。
「急に王都に移動ってなって……大勢の兵に囲まれて。あれは移動というか連行よ。先生はもしもの時のためにわたしだけは逃がしてくれたんだけど。先生自身はこの機会に王都で確かめてみたい事があるって」
泣きそうな顔でクラーアはうつむく。
急に王都へ連れて行かれるなんて普通じゃない。無事だとは思うけど、やっぱりのんびりしてる場合じゃない。
クヌーズ先生が確かめてみたい事ってなんだろうか。戴冠式での出来事は知ってるから、皇帝やミアについて何か疑問を持ったのかも。
クヌーズ先生なら皇帝の中に本物のアネリーゼ姫が宿っているって見破れるかもしれない。
ん、それはわたしにとっていい事なのか? ロスキレ古参の面々は本物のアネリーゼ姫に忠誠を誓っている。
わたしが外面だけアネリーゼ姫で、中身はなんの変哲もない女子中学生って分かったら、絶対むこうのほうについちゃうよね。
ここにいるヴィリやクラーアだって。たくさんの戦いをくぐり抜けてきた仲間だけど、わたしはずっとみんなを騙していたようなものだ。
セヴェリン王子だって本物のアネリーゼ姫だと思ってるから助けてくれたんだ。本当の事が分かったらみんな離れていってしまうんだ。
ここからまた帝国打倒の戦意を上げないといけないのに、わたしの心は不安で押し潰されそうになっていた。
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