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43 待ち受けていたもの
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森の廃城で仲間に加わったのはアグナーとクラーアのふたり。
戦力としては申し分ないふたりだけど、帝国や従っているロスキレに対抗するにはまだまだ数が足りない。
頼りのクヌーズ先生や他の仲間たちは王都に連れて行かれたってことだし。
今、この国でわたしたちの味方になってくれる組織なんていないんじゃないのか? ロスキレの兵もわたしを見たって平気で襲ってきた。
アネリーゼ姫って、この国じゃ女神のように慕われていたはずだけど。戴冠式でちょいと失敗したからって、あんまりじゃないだろうか。
「あの村の農民たちのように帝国や今のロスキレに不満を持っている者たちは多いはずです。アネリーゼ姫が呼びかけて民兵を蜂起させ、それを各地で取り込んでいけば大きな軍を作る事ができるでしょう」
わたしの不安そうな顔を見て進言してくれたのはセヴェリン王子。
うん……たしかに民衆を利用して反乱軍を作るって事も出来るかもしれない。ロスキレが一度滅びた時も、クヌーズ先生がレジスタンス軍を組織して活動していた。
レジスタンス軍がいなければわたし達主力軍が勝ち進めなかっただろうし、王都だって取り戻せなかったはずだ。
でも先の戦いで多くの街や村が破壊され、民衆たちは傷ついた。
なんとか少数で王都に乗り込んで皇帝を倒す方法はないのか。民衆を巻き込んだ大きな戦争は起こしたくないし、双方の犠牲も最小限にしたい。
わたしがそう言おうとした時、諜報兵からの報告。
「追っ手が近づいています。今のところ数は30。これよりさらに増えると思われます」
早い。もうここの居場所がバレたのか。
アグナーやセヴェリン王子は武器を手に迎撃の準備をはじめるが、いくらなんでも多勢に無勢だ。
「皆さん、ここは退却します。こんな所で消耗するわけにはいきません」
✳ ✳ ✳
急いで森を抜け、街道を避けたルートから王都方面へ。
先々での待ち伏せがないか、諜報兵が逐一報告してくれている。
無事に追っ手からは逃げられたようだ。
だけど前みたいにのんびりしていられない。レジスタンス軍はいないし、周りは敵だらけ。ぐずぐずしてたら包囲されて一巻の終わりだ。
立ち寄る村や町の人々は好意的で、食料や物資を分けてくれる。
帝国兵やロスキレ兵の姿も見えない。わたし達は順調に、拍子抜けするぐらいあっという間に王都フレゼリシアの前に広がる草原、フレゼリクハウンに到着する。
王都を取り戻す際の戦いでは最大の激戦地。そして宿敵ともいえる駐屯軍最高司令官フェルディナン将軍とも戦った。
わたしは改めて草原を見渡す。今の状況──不自然だ。王都前だというのに敵兵は見当たらない。
王城の門も開いた状態だ。不用心すぎる。わたし達の存在はとっくに知っているはずだ。
少数すぎて脅威と思われていないのか。それにしたって──。
ここで諜報兵の報告。王都までに繋がるルートが全て突然封鎖されたとの事。まるでわたし達がここに到着するのを待っていたかのように。
ここまで簡単に来れたのは罠だった⁉ でも王城は目の前。大軍だっていやしない。
城に突入して中にいるだろう皇帝を倒しさえすればわたし達の勝ちだ。突き進むしか他に方法はない。
わたし達は覚悟を決めて進軍。王城に近づいたところで、変化があった。
門から数人の兵が出てくる。さすがに何もしないで入れるわけないかと思ったけど、数は多くない。
だけどどこかで見たような顔……あれ、先頭にいる騎馬ユニットのふたりは聖騎士ラグンフリズとウルリクじゃん!
うしろに続くのは弓猟兵エイナルに鉄甲兵ホルガー。
城壁からバッサバッサと現れたのは鷲獅子猟兵フリーダ。
そして最後尾に高魔術師のクヌーズ先生。その隣にいるのは……司祭ミアだ! なんでアイツがみんなと一緒に?
アイツがいるのは気に入らないけど、みんな無事だった。そしてわたしに力を貸してくれるためにここで待ってたんだ。
みんな、と駆け寄って行こうとしたけど、セヴェリン王子が止めた。
「なにか様子がおかしい。アネリーゼ姫、近づいてはいけない」
「え、でも、みんなが……」
ここで耳障りな笑い声が聞こえてくる。
悠然と前に出てきたミアがわたしに杖を向ける。
「よくもまあ、こんな所まで顔が出せたものね。偽のアネリーゼ姫。離宮でずうっと死ぬまでおとなしくしておけばいいものを。心優しい皇帝陛下の慈悲も分からぬ大馬鹿者……。ああ、ここにいる者たちには説明済ですよ。あなたがアネリーゼ姫ではないこと、真に忠誠を誓うべき相手が誰かという事も」
「そ、それはどういう……」
わたしは反論できない。やっぱりコイツ、わたしの正体を知っている。
そしてウルリク達にその事を話したってことは。
「我々を騙していたという事か」
険しい顔つきでウルリクが槍を構える。ちがう、騙すつもりなんてなかった。ただわたしは元の世界でゲームしてて、気づいたらこの世界でアネリーゼ姫の姿になってて。
「皇帝陛下の身体に真のアネリーゼ姫の魂が宿っているのを我々は確認した。わけあってあのような状態になったのも姫の意思……我々はそれに従わなければならない」
イケオジのラグンフリズもコワい顔をしている。エイナルとホルガーは複雑な表情。
戴冠式でわたしが見た、皇帝の背後にアネリーゼ姫のオーラのような姿。あれをみんなも見たんだ。
そして神剣グルヴェイグを抜いたという事実。そりゃあ、みんなあっちを信じるよね。いや、あっちが本物だけどさ。
ウルリク達が王都に連れて行かれたのって、これが目的だったんだ。
そしてミアの狙いはわたし達の同士討ち。なんてイヤな事を考えつくヤツなんだ。
ここはどうにかして戦闘は絶対に避けないと。でも殺気立つウルリク達に対し、こっちもわたしを守るために戦闘態勢に入っている。
戦力としては申し分ないふたりだけど、帝国や従っているロスキレに対抗するにはまだまだ数が足りない。
頼りのクヌーズ先生や他の仲間たちは王都に連れて行かれたってことだし。
今、この国でわたしたちの味方になってくれる組織なんていないんじゃないのか? ロスキレの兵もわたしを見たって平気で襲ってきた。
アネリーゼ姫って、この国じゃ女神のように慕われていたはずだけど。戴冠式でちょいと失敗したからって、あんまりじゃないだろうか。
「あの村の農民たちのように帝国や今のロスキレに不満を持っている者たちは多いはずです。アネリーゼ姫が呼びかけて民兵を蜂起させ、それを各地で取り込んでいけば大きな軍を作る事ができるでしょう」
わたしの不安そうな顔を見て進言してくれたのはセヴェリン王子。
うん……たしかに民衆を利用して反乱軍を作るって事も出来るかもしれない。ロスキレが一度滅びた時も、クヌーズ先生がレジスタンス軍を組織して活動していた。
レジスタンス軍がいなければわたし達主力軍が勝ち進めなかっただろうし、王都だって取り戻せなかったはずだ。
でも先の戦いで多くの街や村が破壊され、民衆たちは傷ついた。
なんとか少数で王都に乗り込んで皇帝を倒す方法はないのか。民衆を巻き込んだ大きな戦争は起こしたくないし、双方の犠牲も最小限にしたい。
わたしがそう言おうとした時、諜報兵からの報告。
「追っ手が近づいています。今のところ数は30。これよりさらに増えると思われます」
早い。もうここの居場所がバレたのか。
アグナーやセヴェリン王子は武器を手に迎撃の準備をはじめるが、いくらなんでも多勢に無勢だ。
「皆さん、ここは退却します。こんな所で消耗するわけにはいきません」
✳ ✳ ✳
急いで森を抜け、街道を避けたルートから王都方面へ。
先々での待ち伏せがないか、諜報兵が逐一報告してくれている。
無事に追っ手からは逃げられたようだ。
だけど前みたいにのんびりしていられない。レジスタンス軍はいないし、周りは敵だらけ。ぐずぐずしてたら包囲されて一巻の終わりだ。
立ち寄る村や町の人々は好意的で、食料や物資を分けてくれる。
帝国兵やロスキレ兵の姿も見えない。わたし達は順調に、拍子抜けするぐらいあっという間に王都フレゼリシアの前に広がる草原、フレゼリクハウンに到着する。
王都を取り戻す際の戦いでは最大の激戦地。そして宿敵ともいえる駐屯軍最高司令官フェルディナン将軍とも戦った。
わたしは改めて草原を見渡す。今の状況──不自然だ。王都前だというのに敵兵は見当たらない。
王城の門も開いた状態だ。不用心すぎる。わたし達の存在はとっくに知っているはずだ。
少数すぎて脅威と思われていないのか。それにしたって──。
ここで諜報兵の報告。王都までに繋がるルートが全て突然封鎖されたとの事。まるでわたし達がここに到着するのを待っていたかのように。
ここまで簡単に来れたのは罠だった⁉ でも王城は目の前。大軍だっていやしない。
城に突入して中にいるだろう皇帝を倒しさえすればわたし達の勝ちだ。突き進むしか他に方法はない。
わたし達は覚悟を決めて進軍。王城に近づいたところで、変化があった。
門から数人の兵が出てくる。さすがに何もしないで入れるわけないかと思ったけど、数は多くない。
だけどどこかで見たような顔……あれ、先頭にいる騎馬ユニットのふたりは聖騎士ラグンフリズとウルリクじゃん!
うしろに続くのは弓猟兵エイナルに鉄甲兵ホルガー。
城壁からバッサバッサと現れたのは鷲獅子猟兵フリーダ。
そして最後尾に高魔術師のクヌーズ先生。その隣にいるのは……司祭ミアだ! なんでアイツがみんなと一緒に?
アイツがいるのは気に入らないけど、みんな無事だった。そしてわたしに力を貸してくれるためにここで待ってたんだ。
みんな、と駆け寄って行こうとしたけど、セヴェリン王子が止めた。
「なにか様子がおかしい。アネリーゼ姫、近づいてはいけない」
「え、でも、みんなが……」
ここで耳障りな笑い声が聞こえてくる。
悠然と前に出てきたミアがわたしに杖を向ける。
「よくもまあ、こんな所まで顔が出せたものね。偽のアネリーゼ姫。離宮でずうっと死ぬまでおとなしくしておけばいいものを。心優しい皇帝陛下の慈悲も分からぬ大馬鹿者……。ああ、ここにいる者たちには説明済ですよ。あなたがアネリーゼ姫ではないこと、真に忠誠を誓うべき相手が誰かという事も」
「そ、それはどういう……」
わたしは反論できない。やっぱりコイツ、わたしの正体を知っている。
そしてウルリク達にその事を話したってことは。
「我々を騙していたという事か」
険しい顔つきでウルリクが槍を構える。ちがう、騙すつもりなんてなかった。ただわたしは元の世界でゲームしてて、気づいたらこの世界でアネリーゼ姫の姿になってて。
「皇帝陛下の身体に真のアネリーゼ姫の魂が宿っているのを我々は確認した。わけあってあのような状態になったのも姫の意思……我々はそれに従わなければならない」
イケオジのラグンフリズもコワい顔をしている。エイナルとホルガーは複雑な表情。
戴冠式でわたしが見た、皇帝の背後にアネリーゼ姫のオーラのような姿。あれをみんなも見たんだ。
そして神剣グルヴェイグを抜いたという事実。そりゃあ、みんなあっちを信じるよね。いや、あっちが本物だけどさ。
ウルリク達が王都に連れて行かれたのって、これが目的だったんだ。
そしてミアの狙いはわたし達の同士討ち。なんてイヤな事を考えつくヤツなんだ。
ここはどうにかして戦闘は絶対に避けないと。でも殺気立つウルリク達に対し、こっちもわたしを守るために戦闘態勢に入っている。
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