4 / 66
第1章 留学生
3 わたしのために小説を
しおりを挟む
「どういうことだよ! 父さん! 母さん!」
夕食を囲むテーブルの上で葵は両親に向かって疑問をぶつける。
今日来たばかりの海外の留学生がいきなり自分の家にホームステイだなんてどう考えてもおかしい。
シノは素知らぬ顔でハンバーグを頬ばり、はあ、美味しいデス~と満面の笑み。
母はおかわりもあるからね~、となんら違和感なく対応。
まあ落ち着けと父が口を開いた。
「前から言ってただろう。海外からの留学生がうちに来るって。今さら何を慌ててるんだ」
「聞いてねえし……! おかしいんじゃないのか、ふたりとも。大体、泊まる部屋だって──」
「お前の隣の部屋。物置になってたのを片付けたじゃないか、先週一緒に。お前こそ何言ってるんだ」
「隣の部屋?」
葵は席を立ち、あわただしく2階へ駆け上がる。
自室の隣。父の趣味の釣り道具や母の通販で買った数々の健康器具が押し込まれていたはずだ。
だが、ドアを開けた先には──。
パステルピンクに彩られた壁、天井。床。
壁際に白のコンソールデスク。同じく白のフリル付きカバーのベッド。
照明やタンス、カーテン。その他のインテリアもすべてカワイイで統一されている。
「そんな……こんなことが」
葵には父と一緒に片付けた記憶などない。こんな家具類も今日はじめて見たものだ。
「葵サン、ダメですよ。勝手に女の子の部屋を覗いテハ」
シノがまた急にうしろから話しかけてきた。葵は振り向きながら尻もちをつく。
「おかしい……! なんなんだ、お前は!? 一体なんでこんな事が……!」
理解できない。自分がおかしくなってしまったのか。学校から不可思議なことが続いている。
シノがしゃがみ、小声でこう言った。
「だから、運命だって言ったでショウ? あなたとわたしが出会うために人の記憶も歴史も変わってしまったのでスヨ。わたしがこっちに来た反動デ」
「……どういう意味だ? お前のせいだっていうのか? このおかしな現象は」
「受け入れるしかないでスヨ、葵サン。そうじゃないとこの世界まで滅びてしマウ」
「やめてくれ、変なことを言うのは。本当におかしくなりそうだ──」
葵は逃げるように下の階へ。
リビングでは父がのんきにテレビを見ており、母は夕食の片付けをしている。
テレビを見ながら父は思いだしたように言った。
「ああ、葵。そういや言うの忘れていた。わたしと母さんは明日から海外へ旅行に行くから。あとのことは任せたぞ」
「は……はあっ!? 旅行!? なんで急に? 頭おかしいんじゃないのか、こんなときに! それに仕事はっ」
「そのために長期休暇取ったんじゃないか。ここのところずっと忙しかったからな。たまにはいいだろ、夫婦水いらずで」
「どうかしてるよ……頭痛くなってきた。ほら、ニュースでもやってるだろ、海外で行方不明者が多発してるって。バケモノ見たって噂もあるし……旅行も自粛しろっていってなかったっけ」
これには母がフフフと笑い、反論してきた。
「あら、わたしたちの心配するなんてめずらしいわね。大丈夫よ、その事件も都市部で起きてるんでしょ? わたしたちが行く所はのんびりした田舎のほうだから」
ここで葵の背後をシノが通りすぎる。
「おフロ、いただいてきマス~」
父と母がどうぞ~、と返事をし、その話題はそこで終わってしまった。
📖 📖 📖
「くそっ、どうなってる! おかしなことだらけだ! 旅行ってなんだよ、俺はあの女とふたりきりで生活しろってのか、これから……」
葵はベッドにうつ伏せになり、頭を抱えた。
しばらくしてコンコンとノックの音。葵が無言で無視すると、ガチャリと勝手に開けて誰かが入ってきた。
父さんか母さんか。なんの用だよ、まったく──。
葵は起き上がって文句を言おうとしたが、驚きのあまり声が出せなかった。
目の前にはバスタオル1枚だけのシノの姿。
きわどい……上も下も。葵は枕を盾のようにしてやっとのことで声をしぼり出す。
「な、なにやってんだ、そんなカッコで。おい、親に見られたら勘違いされるだろ、服を着ろ、服を……」
「着替えを部屋に忘れてたのデス。その前にお願いしたいことがあるのを思いだシテ」
「な、なんだよ。お願いって」
「あなたの小説のことなのデス。webで投稿している8作品の主人公たちが勢揃いしてあなたを守る、という新作を書いてほしいのでスガ」
「は? な、なんで? なんで俺がそんなこと……」
「お願いなのデス。そうすれば、あなたはもっと面白い作品が書ケル。わたしはあなたの作品がもっと読みタイ……ダメでスカ? わたしのためニ……」
ギシィッ、とベッドのきしむ音。
枕の横からのぞいてみると、シノが四つんばいになって顔を近づけている。
豊満な胸の谷間が……それに今にもタオルがはだけそうだ。
葵はのぼせそうになりながらわかった、わかったと返事をする。
「わかったから──はなれてくれ! か、書けばいいんだろ。ちょうど新作を書こうとしてたところだし。その……俺が今まで書いた小説のキャラクターが出てくる話。オールスターってことだろ」
「そうデス。それと、もうひとつお願いガ。このお話はwebでは投稿しないでくだサイ」
「ど、どういうことだよ。じゃあどうやって書けっていうんだ」
聞くと、シノの両手の上にいつの間にか一冊の本があった。
分厚い革の装丁の立派な本だ。アンティークブックというヤツか。本の表紙には魔法陣のような模様が型押しされている。
「この本は中は白紙デス。この本に手書きで書いてほしいのデス」
「手書きって、そんな……メチャ大変そうじゃないか。ヤダよ、そんなの」
「この本はわたしの宝物。これにはわたしの好きな物語を書いてもらって、好きなときに読めるようにしたいのデス。わたしのために……どうかお願いしマス」
シノがさらに顔を近づけ、耳元でささやく。
葵はふわわ、とベッドから落ちながら了承せざるを得なかった。
シノが礼を言って部屋を出ていったあと、葵はため息をつきながら机に座り、本を開く。
「はあ……手書きで小説書くなんていつ以来だよ。なんで俺がこんなこと……」
夕食を囲むテーブルの上で葵は両親に向かって疑問をぶつける。
今日来たばかりの海外の留学生がいきなり自分の家にホームステイだなんてどう考えてもおかしい。
シノは素知らぬ顔でハンバーグを頬ばり、はあ、美味しいデス~と満面の笑み。
母はおかわりもあるからね~、となんら違和感なく対応。
まあ落ち着けと父が口を開いた。
「前から言ってただろう。海外からの留学生がうちに来るって。今さら何を慌ててるんだ」
「聞いてねえし……! おかしいんじゃないのか、ふたりとも。大体、泊まる部屋だって──」
「お前の隣の部屋。物置になってたのを片付けたじゃないか、先週一緒に。お前こそ何言ってるんだ」
「隣の部屋?」
葵は席を立ち、あわただしく2階へ駆け上がる。
自室の隣。父の趣味の釣り道具や母の通販で買った数々の健康器具が押し込まれていたはずだ。
だが、ドアを開けた先には──。
パステルピンクに彩られた壁、天井。床。
壁際に白のコンソールデスク。同じく白のフリル付きカバーのベッド。
照明やタンス、カーテン。その他のインテリアもすべてカワイイで統一されている。
「そんな……こんなことが」
葵には父と一緒に片付けた記憶などない。こんな家具類も今日はじめて見たものだ。
「葵サン、ダメですよ。勝手に女の子の部屋を覗いテハ」
シノがまた急にうしろから話しかけてきた。葵は振り向きながら尻もちをつく。
「おかしい……! なんなんだ、お前は!? 一体なんでこんな事が……!」
理解できない。自分がおかしくなってしまったのか。学校から不可思議なことが続いている。
シノがしゃがみ、小声でこう言った。
「だから、運命だって言ったでショウ? あなたとわたしが出会うために人の記憶も歴史も変わってしまったのでスヨ。わたしがこっちに来た反動デ」
「……どういう意味だ? お前のせいだっていうのか? このおかしな現象は」
「受け入れるしかないでスヨ、葵サン。そうじゃないとこの世界まで滅びてしマウ」
「やめてくれ、変なことを言うのは。本当におかしくなりそうだ──」
葵は逃げるように下の階へ。
リビングでは父がのんきにテレビを見ており、母は夕食の片付けをしている。
テレビを見ながら父は思いだしたように言った。
「ああ、葵。そういや言うの忘れていた。わたしと母さんは明日から海外へ旅行に行くから。あとのことは任せたぞ」
「は……はあっ!? 旅行!? なんで急に? 頭おかしいんじゃないのか、こんなときに! それに仕事はっ」
「そのために長期休暇取ったんじゃないか。ここのところずっと忙しかったからな。たまにはいいだろ、夫婦水いらずで」
「どうかしてるよ……頭痛くなってきた。ほら、ニュースでもやってるだろ、海外で行方不明者が多発してるって。バケモノ見たって噂もあるし……旅行も自粛しろっていってなかったっけ」
これには母がフフフと笑い、反論してきた。
「あら、わたしたちの心配するなんてめずらしいわね。大丈夫よ、その事件も都市部で起きてるんでしょ? わたしたちが行く所はのんびりした田舎のほうだから」
ここで葵の背後をシノが通りすぎる。
「おフロ、いただいてきマス~」
父と母がどうぞ~、と返事をし、その話題はそこで終わってしまった。
📖 📖 📖
「くそっ、どうなってる! おかしなことだらけだ! 旅行ってなんだよ、俺はあの女とふたりきりで生活しろってのか、これから……」
葵はベッドにうつ伏せになり、頭を抱えた。
しばらくしてコンコンとノックの音。葵が無言で無視すると、ガチャリと勝手に開けて誰かが入ってきた。
父さんか母さんか。なんの用だよ、まったく──。
葵は起き上がって文句を言おうとしたが、驚きのあまり声が出せなかった。
目の前にはバスタオル1枚だけのシノの姿。
きわどい……上も下も。葵は枕を盾のようにしてやっとのことで声をしぼり出す。
「な、なにやってんだ、そんなカッコで。おい、親に見られたら勘違いされるだろ、服を着ろ、服を……」
「着替えを部屋に忘れてたのデス。その前にお願いしたいことがあるのを思いだシテ」
「な、なんだよ。お願いって」
「あなたの小説のことなのデス。webで投稿している8作品の主人公たちが勢揃いしてあなたを守る、という新作を書いてほしいのでスガ」
「は? な、なんで? なんで俺がそんなこと……」
「お願いなのデス。そうすれば、あなたはもっと面白い作品が書ケル。わたしはあなたの作品がもっと読みタイ……ダメでスカ? わたしのためニ……」
ギシィッ、とベッドのきしむ音。
枕の横からのぞいてみると、シノが四つんばいになって顔を近づけている。
豊満な胸の谷間が……それに今にもタオルがはだけそうだ。
葵はのぼせそうになりながらわかった、わかったと返事をする。
「わかったから──はなれてくれ! か、書けばいいんだろ。ちょうど新作を書こうとしてたところだし。その……俺が今まで書いた小説のキャラクターが出てくる話。オールスターってことだろ」
「そうデス。それと、もうひとつお願いガ。このお話はwebでは投稿しないでくだサイ」
「ど、どういうことだよ。じゃあどうやって書けっていうんだ」
聞くと、シノの両手の上にいつの間にか一冊の本があった。
分厚い革の装丁の立派な本だ。アンティークブックというヤツか。本の表紙には魔法陣のような模様が型押しされている。
「この本は中は白紙デス。この本に手書きで書いてほしいのデス」
「手書きって、そんな……メチャ大変そうじゃないか。ヤダよ、そんなの」
「この本はわたしの宝物。これにはわたしの好きな物語を書いてもらって、好きなときに読めるようにしたいのデス。わたしのために……どうかお願いしマス」
シノがさらに顔を近づけ、耳元でささやく。
葵はふわわ、とベッドから落ちながら了承せざるを得なかった。
シノが礼を言って部屋を出ていったあと、葵はため息をつきながら机に座り、本を開く。
「はあ……手書きで小説書くなんていつ以来だよ。なんで俺がこんなこと……」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる