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第3章 奪還
7 トリニティブラスト
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「ふたりとも、わたくしの攻撃に合わせてください」
太刀を振りかざし、結が走る。
ウルルペクがハァ~、と舌を出しながらそれを待ち受ける。
シャアン、という鈴の音とともに白い斬閃が描かれ、魔族の身体を両断──いや、ギリギリのところでかわしていた。
ヒュッ、と下からシッポの毒針。結もそれをかわす。さらに毒爪のひっかき攻撃を太刀で受け止め、前蹴り。
うごっ、と前のめりになったとこへみさきのデッドエンドチェーンソー。凶悪な回転刃がその首を狙う。
ギャリリリリリ、と火花が散る。毒爪でガードしたのだが、たまらず後ろへ跳ぶ。
ドッ、と体当たりするようなマルグリットの刺突。十字聖槍はウルルペクの腹を深く貫き、さらに横へ薙いだことによって大きく裂く。
「うへえっ、たまんねえな、こりゃ」
腰から上がもげそうになりながらもウルルペクの身体は再生をはじめていた。
「バラバラに攻撃してもダメです。同時に一点集中。ヤツが完全に再生する前に!」
神刀──鬼屠破斬魔ノ華叉丸の周りを白い破邪の気が覆う。
「本来、隊の指揮を取るのは我の役目だというのに……」
マルグリットは言いながら槍の形状をガンランスへと変化させる。
「まったく、エラソーにボクに指図しないでよ」
みさきは左腕を魔狼マーナガルムへと変えた。
「禍津祓極神明流奥義──」
結は太刀の切っ先をウルルペクへ向ける。
キイイイ、と破邪のエネルギーがそこに収束されていく。
「弍式、破魔の白羽矢」
ギュオッ、と白い光線が発射された。
マルグリットのガンランスからは砲弾、みさきのマーナガルムからは衝撃波。
三つの攻撃は一直線にウルルペクへ向かい、爆発──。
三戦姫同時攻撃。
凄まじい爆風に広範囲の建物が紙吹雪のように巻き上げられ、粉々に吹き飛ぶ。
今度こそこのビジネスホテルも無事では済まないと葵は覚悟したが、衝撃や揺れ、音すら伝わってこない。
「これは……」
シノと顔を見合わせると、奥の方からあー、疲れたという声。
退魔師、桐生カエデ。
さっきまでのミリタリーシャツにミニスカ姿ではない。正式な僧衣。そして手には五鈷杵が握られていた。
「祭壇作ったり、手間かかったけどさ~。十八道の結界張ったからもう安心だよ。霊的なモノ以外でも、ここに危害加えようとするヤツは近づけないからさ。……あり? なんかあったの?」
カエデはS級魔族の襲来のことを知らない。葵は一通り今までのいきさつを説明しながら、あることに気付く。
「まずい……召喚時間切れが近い。やっぱり4人召喚はまだ無理があったのか」
葵にだけわかる感覚。もしさっきの三戦姫同時攻撃で敵を倒せていなかったら……。
爆煙が次第に晴れてきた。
結、マルグリット、みさきの3人は無事だ。
S級魔族のウルルペク。胸から下が完全に消し飛んでいた。
両腕もヒジから下を失っている。首をもたげ、黒い体液を吐き出しながらそれでも動いている。
「クッソ、油断したぁ! 再生が追っつかねェよ! こりゃヤバい、俺っちピンチじゃん」
見た目に反してまだ余裕があるのか。誘い込むワナかもしれないと結とマルグリットは近付くのをためらっている。
「ゴチャゴチャうるさいなあ。早く死になよ。ボクらだってヒマじゃないんだから」
無造作に接近し、デッドエンドチェーンソーを振りかざすのは鴫野みさき。ウルルペクがちょっとタンマ、マジヤバいって、と止めるのも聞かず──。
ズギャアアアンッッ、と抉ったのは地面のみ。
ウルルペクの身体は宙に浮いていた。3人が見上げる中、その隣に貴族ふうの格好をしたヤギ角の美青年が姿を現す。
「これはまた手痛くやられたものだな、ウルルペク。だがいいものを見せてもらった。あの戦神八姫とかいう娘ども……ひとりふたりなら我らS級魔族には及ばないが、3人ともなるとかなりの脅威となる。それが確認できただけでも良い」
「テメェ、フォゼラム! 俺っちをダシに使ってヤツらの戦力を計りやがったな! フザけんなよ、こちとらもうちょっとで死ぬところだったぞ!」
騒ぐウルルペクを無視し、フォゼラムは3人の戦姫を見下ろしながら言った。
「せいぜいあがくがいい。戦うがいい。人ならざる創造の人物たちよ。希望などありはしない。お前たちはただ残された時間、あの御方……我らが主を退屈させぬだけの存在なのだからな」
フォゼラムとウルルペクは黒い球体に包まれ、宙に吸い込まれるように消えていった。
📖 📖 📖
S級魔族が去り、召喚時間切れが訪れたのはすぐあとだった。
4人の戦姫は魔導書へと戻り、葵は疲労のため、そのままビジネスホテルの一室で休むことにした。
カエデから聞いたことだが、このビジネスホテルには災害時のための大型発電機が備えつけられていた。
これなら電力がストップしているこの地域でも快適に電気を使うことができる。
オール電化のホテルなのでシャワーを浴びたり、調理も可能。発電機の燃料は近くのガソリンスタンドで調達できるので問題はない。
疲労と安心のためか、ベッドの上に横になるとすぐに眠気が襲ってきた。
1時間ほどの仮眠で起きるつもりだ。瑞希や生存者たちはまだ学校にいる。今日中にはここに全員移動しなくてはならない。
ベッドに備え付けてあるタイマーをセットし、葵は気を失うように眠りに落ちた。
太刀を振りかざし、結が走る。
ウルルペクがハァ~、と舌を出しながらそれを待ち受ける。
シャアン、という鈴の音とともに白い斬閃が描かれ、魔族の身体を両断──いや、ギリギリのところでかわしていた。
ヒュッ、と下からシッポの毒針。結もそれをかわす。さらに毒爪のひっかき攻撃を太刀で受け止め、前蹴り。
うごっ、と前のめりになったとこへみさきのデッドエンドチェーンソー。凶悪な回転刃がその首を狙う。
ギャリリリリリ、と火花が散る。毒爪でガードしたのだが、たまらず後ろへ跳ぶ。
ドッ、と体当たりするようなマルグリットの刺突。十字聖槍はウルルペクの腹を深く貫き、さらに横へ薙いだことによって大きく裂く。
「うへえっ、たまんねえな、こりゃ」
腰から上がもげそうになりながらもウルルペクの身体は再生をはじめていた。
「バラバラに攻撃してもダメです。同時に一点集中。ヤツが完全に再生する前に!」
神刀──鬼屠破斬魔ノ華叉丸の周りを白い破邪の気が覆う。
「本来、隊の指揮を取るのは我の役目だというのに……」
マルグリットは言いながら槍の形状をガンランスへと変化させる。
「まったく、エラソーにボクに指図しないでよ」
みさきは左腕を魔狼マーナガルムへと変えた。
「禍津祓極神明流奥義──」
結は太刀の切っ先をウルルペクへ向ける。
キイイイ、と破邪のエネルギーがそこに収束されていく。
「弍式、破魔の白羽矢」
ギュオッ、と白い光線が発射された。
マルグリットのガンランスからは砲弾、みさきのマーナガルムからは衝撃波。
三つの攻撃は一直線にウルルペクへ向かい、爆発──。
三戦姫同時攻撃。
凄まじい爆風に広範囲の建物が紙吹雪のように巻き上げられ、粉々に吹き飛ぶ。
今度こそこのビジネスホテルも無事では済まないと葵は覚悟したが、衝撃や揺れ、音すら伝わってこない。
「これは……」
シノと顔を見合わせると、奥の方からあー、疲れたという声。
退魔師、桐生カエデ。
さっきまでのミリタリーシャツにミニスカ姿ではない。正式な僧衣。そして手には五鈷杵が握られていた。
「祭壇作ったり、手間かかったけどさ~。十八道の結界張ったからもう安心だよ。霊的なモノ以外でも、ここに危害加えようとするヤツは近づけないからさ。……あり? なんかあったの?」
カエデはS級魔族の襲来のことを知らない。葵は一通り今までのいきさつを説明しながら、あることに気付く。
「まずい……召喚時間切れが近い。やっぱり4人召喚はまだ無理があったのか」
葵にだけわかる感覚。もしさっきの三戦姫同時攻撃で敵を倒せていなかったら……。
爆煙が次第に晴れてきた。
結、マルグリット、みさきの3人は無事だ。
S級魔族のウルルペク。胸から下が完全に消し飛んでいた。
両腕もヒジから下を失っている。首をもたげ、黒い体液を吐き出しながらそれでも動いている。
「クッソ、油断したぁ! 再生が追っつかねェよ! こりゃヤバい、俺っちピンチじゃん」
見た目に反してまだ余裕があるのか。誘い込むワナかもしれないと結とマルグリットは近付くのをためらっている。
「ゴチャゴチャうるさいなあ。早く死になよ。ボクらだってヒマじゃないんだから」
無造作に接近し、デッドエンドチェーンソーを振りかざすのは鴫野みさき。ウルルペクがちょっとタンマ、マジヤバいって、と止めるのも聞かず──。
ズギャアアアンッッ、と抉ったのは地面のみ。
ウルルペクの身体は宙に浮いていた。3人が見上げる中、その隣に貴族ふうの格好をしたヤギ角の美青年が姿を現す。
「これはまた手痛くやられたものだな、ウルルペク。だがいいものを見せてもらった。あの戦神八姫とかいう娘ども……ひとりふたりなら我らS級魔族には及ばないが、3人ともなるとかなりの脅威となる。それが確認できただけでも良い」
「テメェ、フォゼラム! 俺っちをダシに使ってヤツらの戦力を計りやがったな! フザけんなよ、こちとらもうちょっとで死ぬところだったぞ!」
騒ぐウルルペクを無視し、フォゼラムは3人の戦姫を見下ろしながら言った。
「せいぜいあがくがいい。戦うがいい。人ならざる創造の人物たちよ。希望などありはしない。お前たちはただ残された時間、あの御方……我らが主を退屈させぬだけの存在なのだからな」
フォゼラムとウルルペクは黒い球体に包まれ、宙に吸い込まれるように消えていった。
📖 📖 📖
S級魔族が去り、召喚時間切れが訪れたのはすぐあとだった。
4人の戦姫は魔導書へと戻り、葵は疲労のため、そのままビジネスホテルの一室で休むことにした。
カエデから聞いたことだが、このビジネスホテルには災害時のための大型発電機が備えつけられていた。
これなら電力がストップしているこの地域でも快適に電気を使うことができる。
オール電化のホテルなのでシャワーを浴びたり、調理も可能。発電機の燃料は近くのガソリンスタンドで調達できるので問題はない。
疲労と安心のためか、ベッドの上に横になるとすぐに眠気が襲ってきた。
1時間ほどの仮眠で起きるつもりだ。瑞希や生存者たちはまだ学校にいる。今日中にはここに全員移動しなくてはならない。
ベッドに備え付けてあるタイマーをセットし、葵は気を失うように眠りに落ちた。
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