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第3章 奪還
11 フレイア・グラムロック
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第2隊の戦姫リッカとS級魔族シャバが激戦を繰り広げている頃──。
第1隊の前に立ちはだかるテネスリードが取り出したのは試験管。
指を鳴らし、自分の足元にC級魔族を喚び出したテネスリードはその試験管の中身の液体をポタリと垂らす。
ジュワッ、と煙があがり、C級魔族はブルッと身体を震わせる。
「まだ実験段階なんだけどさー、面白いから使ってみるよ。死なないようにがんばってねー」
ネコヒゲをピンと弾きながらテネスリードは跳躍。電柱から近くのビルの屋上へと移動した。
「逃がすか──」
ツァイシーの矢がそちらへ向けられるが、ドンッ、という地響きによって体勢を崩す。
続けてドンドンドン、と激しい揺れ。葵たちは驚愕した。
さきほどのせいぜい2メートルほどのC級魔族。すでに3倍以上の背丈に。いや、まだ大きくなっている。
「葵様、お下がりください!」
雛形結がその突進を阻もうと立ちはだかる。
目の前に来たときにはすでに10メートルを超えていた。
「はあっ!」
結の斬撃が魔族の左足にヒット。そのままバランスを崩して倒れるかと思われたが、斬られた部分はたちまち再生。さらに全体が巨大化して葵、結、ツァイシーは吹き飛ばされる。
「おい、ウソだろ……」
倒れながら葵が見上げる中、魔族の身体はゴボゴボと膨れあがる。
響き渡る咆哮。足踏みによる揺れ。道路に大きな亀裂が入り、停車中の車が飲み込まれていく。
生存者たちは──なんとか無事だ。瑞希の誘導で亀裂のないところまで後退している。
「まだだっ、瑞希! もっと離れろっ!」
起き上がり、すぐに走る。魔族の膨張は止まらない。瑞希と生存者たちも走り出した。
「バケモノがっ! 喰らえ!」
ゴッ、と青いオーラをまとったツァイシーの弓射。結も突進、下からの斬撃。白い破邪の気が立ち昇る。
二戦姫同時攻撃──。ふたりの攻撃は魔族の左足首に命中。完全に吹き飛ばしたかに見えたが──。
「なにっ」
失われたと見えた足首はすでに復元され、そのまま蹴りあげるような動き。結とツァイシーは大きく飛び退いてかわした。
「ハハハッ、さすがにその巨体と再生力には打つ手ナシかな。戦神八姫もこれ以上召喚できるのかなあ。さあ、どうするんだい、創作者」
ビルの屋上でテネスリードがシッポをパタパタ動かしながら葵に向けて聞いてくる。もちろんそんな質問に答える余裕などないが、葵はすでに決断していた。
魔導書のマップには離れた位置の第2隊の様子が示されている。
さっきまでは戦姫の青いマーカーと生存者の白いマーカーだけだったが、今は大きな赤いマーカーが現れている。これは魔族を示すものだ。
第2隊も魔族と遭遇、戦闘に突入している。ここで時間をかけるわけにはいかない。
「5人目の召喚……やるしかない。召喚時間切れのリスクもあるけど、アイツなら」
魔族の身体はすでに80メートルまでに達している。まるで怪獣映画だ。だがこの巨大な敵に対して有効な戦姫は──いる。
「アンカルネ・イストワール、発動」
魔導書の表紙に描かれた魔法陣が光を放つ。
その回転する光の中から飛び出して着地したのは。
真っ赤な色に黒のストライプのパンツスーツ。胸元から見える黒いシャツに足元には黒のハイヒール。
赤と黒で構成された服装。長身で赤髪のストレートボブ。
一見、派手なビジネスウーマンに見えるこの女性こそ葵の戦神八姫最後のひとり、フレイア・グラムロックなのだった。
「へえ、アタシを喚び出すなんてよほどのことがあったんだねぇ。で、葵さん、敵はどこ?」
「み、見てわかるだろっ、あのデカイやつだよっ! 早く結とツァイシーと協力して倒してくれ」
のんびりした口調のフレイアに葵は声を荒げる。
フレイアははあ、とため息をついて気だるそうに頭をボリボリかく。
「協力って、あんなザコ相手に? あんなのアタシひとりで十分だよ、他のは足手まとい」
「なんですって……」
「足手まといだと……」
殺気立つ結とツァイシーを無視してフレイアは背を向けて右手を上げる。
ボッ、と隕石のような勢いで落ちてきた背丈ほどの大剣を片手でつかむ。
ゴアッと熱い衝撃波がフレイアを中心に広がり、葵たちはたまらず顔を腕で隠す。
「葵さんたちはここで見てなよー、すぐに片付けるからサ」
大気がビリビリと震えるような咆哮をあげ、巨大な魔族が右足を上げる。
フレイアはどっこいしょ、といつの間にかその真下に。
「バッ……! フレイア! なにやってる! よけろっ!」
いくら巨体相手に戦い慣れているフレイアでもあのバケモノに踏み潰されれば──葵が叫び声をあげたときにはすでにズウウン、と右足が踏み下ろされていた。
「あらー、やけにあっさりやられちゃったね、新しい戦姫。強そうだったけど、見かけ倒しだったのかな?」
テネスリードが嬉しそうにケタケタ笑っていたが、その笑い声は突然止まる。
巨大なC級魔族がぐわあっ、とうしろへのけ反ったのだ。
足元ではフレイアが魔族の右足を片手で持ち上げている。
「意外と重た……。でも竜ほどの圧は感じないね。どれ、試してみるか」
左手でぐい、とさらに魔族の足を押す。
吼えながらうしろへゆっくり倒れる魔族。
あの巨体が倒れれば、相当な衝撃──いや、それだけでは済まないかもしれない。葵はもう一度瑞希に退がれと呼びかけ、結とツァイシーは葵をガードするために前面に立つ。
フレイアは右手に握った大剣──竜殺剣バルムンクを背負うような構えで跳躍した。
第1隊の前に立ちはだかるテネスリードが取り出したのは試験管。
指を鳴らし、自分の足元にC級魔族を喚び出したテネスリードはその試験管の中身の液体をポタリと垂らす。
ジュワッ、と煙があがり、C級魔族はブルッと身体を震わせる。
「まだ実験段階なんだけどさー、面白いから使ってみるよ。死なないようにがんばってねー」
ネコヒゲをピンと弾きながらテネスリードは跳躍。電柱から近くのビルの屋上へと移動した。
「逃がすか──」
ツァイシーの矢がそちらへ向けられるが、ドンッ、という地響きによって体勢を崩す。
続けてドンドンドン、と激しい揺れ。葵たちは驚愕した。
さきほどのせいぜい2メートルほどのC級魔族。すでに3倍以上の背丈に。いや、まだ大きくなっている。
「葵様、お下がりください!」
雛形結がその突進を阻もうと立ちはだかる。
目の前に来たときにはすでに10メートルを超えていた。
「はあっ!」
結の斬撃が魔族の左足にヒット。そのままバランスを崩して倒れるかと思われたが、斬られた部分はたちまち再生。さらに全体が巨大化して葵、結、ツァイシーは吹き飛ばされる。
「おい、ウソだろ……」
倒れながら葵が見上げる中、魔族の身体はゴボゴボと膨れあがる。
響き渡る咆哮。足踏みによる揺れ。道路に大きな亀裂が入り、停車中の車が飲み込まれていく。
生存者たちは──なんとか無事だ。瑞希の誘導で亀裂のないところまで後退している。
「まだだっ、瑞希! もっと離れろっ!」
起き上がり、すぐに走る。魔族の膨張は止まらない。瑞希と生存者たちも走り出した。
「バケモノがっ! 喰らえ!」
ゴッ、と青いオーラをまとったツァイシーの弓射。結も突進、下からの斬撃。白い破邪の気が立ち昇る。
二戦姫同時攻撃──。ふたりの攻撃は魔族の左足首に命中。完全に吹き飛ばしたかに見えたが──。
「なにっ」
失われたと見えた足首はすでに復元され、そのまま蹴りあげるような動き。結とツァイシーは大きく飛び退いてかわした。
「ハハハッ、さすがにその巨体と再生力には打つ手ナシかな。戦神八姫もこれ以上召喚できるのかなあ。さあ、どうするんだい、創作者」
ビルの屋上でテネスリードがシッポをパタパタ動かしながら葵に向けて聞いてくる。もちろんそんな質問に答える余裕などないが、葵はすでに決断していた。
魔導書のマップには離れた位置の第2隊の様子が示されている。
さっきまでは戦姫の青いマーカーと生存者の白いマーカーだけだったが、今は大きな赤いマーカーが現れている。これは魔族を示すものだ。
第2隊も魔族と遭遇、戦闘に突入している。ここで時間をかけるわけにはいかない。
「5人目の召喚……やるしかない。召喚時間切れのリスクもあるけど、アイツなら」
魔族の身体はすでに80メートルまでに達している。まるで怪獣映画だ。だがこの巨大な敵に対して有効な戦姫は──いる。
「アンカルネ・イストワール、発動」
魔導書の表紙に描かれた魔法陣が光を放つ。
その回転する光の中から飛び出して着地したのは。
真っ赤な色に黒のストライプのパンツスーツ。胸元から見える黒いシャツに足元には黒のハイヒール。
赤と黒で構成された服装。長身で赤髪のストレートボブ。
一見、派手なビジネスウーマンに見えるこの女性こそ葵の戦神八姫最後のひとり、フレイア・グラムロックなのだった。
「へえ、アタシを喚び出すなんてよほどのことがあったんだねぇ。で、葵さん、敵はどこ?」
「み、見てわかるだろっ、あのデカイやつだよっ! 早く結とツァイシーと協力して倒してくれ」
のんびりした口調のフレイアに葵は声を荒げる。
フレイアははあ、とため息をついて気だるそうに頭をボリボリかく。
「協力って、あんなザコ相手に? あんなのアタシひとりで十分だよ、他のは足手まとい」
「なんですって……」
「足手まといだと……」
殺気立つ結とツァイシーを無視してフレイアは背を向けて右手を上げる。
ボッ、と隕石のような勢いで落ちてきた背丈ほどの大剣を片手でつかむ。
ゴアッと熱い衝撃波がフレイアを中心に広がり、葵たちはたまらず顔を腕で隠す。
「葵さんたちはここで見てなよー、すぐに片付けるからサ」
大気がビリビリと震えるような咆哮をあげ、巨大な魔族が右足を上げる。
フレイアはどっこいしょ、といつの間にかその真下に。
「バッ……! フレイア! なにやってる! よけろっ!」
いくら巨体相手に戦い慣れているフレイアでもあのバケモノに踏み潰されれば──葵が叫び声をあげたときにはすでにズウウン、と右足が踏み下ろされていた。
「あらー、やけにあっさりやられちゃったね、新しい戦姫。強そうだったけど、見かけ倒しだったのかな?」
テネスリードが嬉しそうにケタケタ笑っていたが、その笑い声は突然止まる。
巨大なC級魔族がぐわあっ、とうしろへのけ反ったのだ。
足元ではフレイアが魔族の右足を片手で持ち上げている。
「意外と重た……。でも竜ほどの圧は感じないね。どれ、試してみるか」
左手でぐい、とさらに魔族の足を押す。
吼えながらうしろへゆっくり倒れる魔族。
あの巨体が倒れれば、相当な衝撃──いや、それだけでは済まないかもしれない。葵はもう一度瑞希に退がれと呼びかけ、結とツァイシーは葵をガードするために前面に立つ。
フレイアは右手に握った大剣──竜殺剣バルムンクを背負うような構えで跳躍した。
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