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最終章 魔族の主
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一面焼け野原と化した大地に舞い上げられた戦姫たちが次々と着地する。
戦姫たちを覆っていた防御壁はいまの一撃で消えてしまった。
「ったく、なんて威力だよ。防御壁がなけりゃこっちまでお陀仏だぜ」
リッカが呆れたように言い、カエデがケラケラ笑いながらその肩を叩く。
「まー、いいじゃん。あーいうのをジャンジャン使ってくれればカエデたちが楽できるってわけだし。ほら、魔族はまだまだ向かってくるよー」
さっきのフレイアの攻撃で1000近くの魔族が消滅、まわりにいた敵も吹き飛んだのだが、またゾワゾワと包囲をせばめつつある。
「ほれ、退魔師はまた防御壁を張れ。竜女がさっきの技を2、3発出せばさすがに魔族どもも四散するじゃろ」
玉響がフワフワ浮いたまま指示を出す。
カエデは真言を唱えだし、皆の視線がフレイアに集まる。
だが肝心のフレイアの姿がない。長身で派手なスーツ姿なので見失うはずはないのだが。
やや視線を落としてみると、地面に転がっている3、4歳の幼女の姿が。
「んんー! ちくしょう! おい、おまえや。あたちが元にもどるやであたちを守えよっ」
手足をバタつかせてわめく幼女フレイア。一同はまたか、とため息をつく。
「まったく世話のやける」
再び押し寄せる魔族の大軍。空からも多くの飛行型が襲来。
幼女フレイアはリッカが拾い上げ、カエデの防御壁がまた戦姫たちを包んだ。
魔族の軍勢の奥からドドド、と大型の牛のような化け物が6体。
A級魔族。猛然と走りながらボコボコと黒い塊──新たな魔族を産み落としている。
空では大型の翼竜のような魔族が3体。
こちらも卵のような塊を落とし、魔族を続々と増やしている。
「これじゃキリがない! まずはあのA級魔族をどうにかしないと……!」
葵が叫び、戦姫たちはすぐにA級魔族撃破を目標に動きだすが──。
地面がボコボコボコと盛り上がりながら何かが近づいてくる。
十数メートル先で突然地中から飛び出すひとつの影。
上半身裸でおびただしいタトゥーが入っているスキンヘッドの男。爬虫類のような長いシッポがのたうっている。
「ハハハァ~ッ、お嬢ちゃんたち勢揃いしてるねー。俺っち嬉しいわ。さて、誰からおっ死んでくれるのかねぇ」
S級魔族ウルルペク。強敵の出現に葵は判断を迫られる。
8人の戦姫ならS級魔族と複数のA級魔族。そしてこの大軍勢を相手に勝てるかもしれない。だが時間までに市庁舎にたどり着くだろうか。
「葵殿。ここはわたしに任せて先に行くがいい。あとで必ず合流しよう」
乱戦の最中──そう名乗り出たのは伝説の傭兵、グォ・ツァイシーだ。
葵がしかし、とためらっている間にじゃあオレもと鉄拳豪腕娘、リッカ・ステアボルトが担いだ幼女フレイアを結へ渡す。
「大勢を相手にすんのは慣れてるからよー。ほら、さっさと行けよ。貧乳娘」
「……あなたとは決着がついていませんでしたね。こんなところで死んではいけませんよ。約束です」
「だーれに言ってんだよ。オレがやられるわけねーだろ。葵のことは頼んだぜ」
雛形結はうなずき、他の戦姫とともに葵を守りながら前進。
「待て、リッカ! ツァイシー!」
葵が叫ぶ。だがふたりの姿は魔族に阻まれてすぐに見えなくなった。
リッカとツァイシー。ふたりは背中合わせになりながら鉄拳飛環烈迅砲と弓射で敵を蹴散らしていく。
「おい、いーのかよ。弓使いのネーチャン。お前がいちばん葵の側にいたがってたろ?」
リッカの質問にツァイシーは苦しそうに、だが力強く答えた。
「葵殿の為を思えばこそ。ここでわたしたちが大半の敵を引き付けておけば、それだけ葵殿が安全になる」
「お~、ここは自分らに任せて先に行けって展開か~。俺っち感動したよ。お涙チョーダイの名シーンだねェ。これは」
ふたりの会話にS級魔族ウルルペクが割り込む。
ウルルペクは積極的に葵たちを追おうとはしない。どういうつもりだとリッカが聞くと、葵たちが進んだ方向を指さし、ゲラゲラと笑いだす。
「どっちにしろアイツらはよォ~、死ぬってわかってるからだよ! お嬢ちゃんふたりがここで命かけたってムダムダ。ただの犬死にさぁ~!」
「野郎っ……!」
リッカがローラーダッシュで突進。進路上のジャマな魔族はツァイシーが連射で倒していく。
「っっらあっっ!」
リッカの剛腕から繰り出される拳。
ウルルペクはにやけ顔で軽やかに跳躍してかわし、後方へ。
「おっとっと。俺っちは楽してーからよ。お嬢ちゃんたちの相手はコイツらに任せるよ。トドメは俺っちが刺すけどねー。まあ、せいぜいあがきなよ」
リッカとツァイシーに殺到する魔族の軍勢。
ツァイシーは弓射で周りの敵を倒しながらスキを見てウルルペクを狙う。だが矢は魔族数体が盾になってヤツまで届かない。
リッカも突進。行く手を阻む魔族をなぎ倒し、粉砕しながら進むが──あまりに多くの魔族の前にその拳が届かない。次々と伸びてくる異形の手に掴まれ、大型の魔族にのしかかられ、ついにヒザをつく。
カエデの張った防御壁もすでに効力を失っていた。
戦姫たちを覆っていた防御壁はいまの一撃で消えてしまった。
「ったく、なんて威力だよ。防御壁がなけりゃこっちまでお陀仏だぜ」
リッカが呆れたように言い、カエデがケラケラ笑いながらその肩を叩く。
「まー、いいじゃん。あーいうのをジャンジャン使ってくれればカエデたちが楽できるってわけだし。ほら、魔族はまだまだ向かってくるよー」
さっきのフレイアの攻撃で1000近くの魔族が消滅、まわりにいた敵も吹き飛んだのだが、またゾワゾワと包囲をせばめつつある。
「ほれ、退魔師はまた防御壁を張れ。竜女がさっきの技を2、3発出せばさすがに魔族どもも四散するじゃろ」
玉響がフワフワ浮いたまま指示を出す。
カエデは真言を唱えだし、皆の視線がフレイアに集まる。
だが肝心のフレイアの姿がない。長身で派手なスーツ姿なので見失うはずはないのだが。
やや視線を落としてみると、地面に転がっている3、4歳の幼女の姿が。
「んんー! ちくしょう! おい、おまえや。あたちが元にもどるやであたちを守えよっ」
手足をバタつかせてわめく幼女フレイア。一同はまたか、とため息をつく。
「まったく世話のやける」
再び押し寄せる魔族の大軍。空からも多くの飛行型が襲来。
幼女フレイアはリッカが拾い上げ、カエデの防御壁がまた戦姫たちを包んだ。
魔族の軍勢の奥からドドド、と大型の牛のような化け物が6体。
A級魔族。猛然と走りながらボコボコと黒い塊──新たな魔族を産み落としている。
空では大型の翼竜のような魔族が3体。
こちらも卵のような塊を落とし、魔族を続々と増やしている。
「これじゃキリがない! まずはあのA級魔族をどうにかしないと……!」
葵が叫び、戦姫たちはすぐにA級魔族撃破を目標に動きだすが──。
地面がボコボコボコと盛り上がりながら何かが近づいてくる。
十数メートル先で突然地中から飛び出すひとつの影。
上半身裸でおびただしいタトゥーが入っているスキンヘッドの男。爬虫類のような長いシッポがのたうっている。
「ハハハァ~ッ、お嬢ちゃんたち勢揃いしてるねー。俺っち嬉しいわ。さて、誰からおっ死んでくれるのかねぇ」
S級魔族ウルルペク。強敵の出現に葵は判断を迫られる。
8人の戦姫ならS級魔族と複数のA級魔族。そしてこの大軍勢を相手に勝てるかもしれない。だが時間までに市庁舎にたどり着くだろうか。
「葵殿。ここはわたしに任せて先に行くがいい。あとで必ず合流しよう」
乱戦の最中──そう名乗り出たのは伝説の傭兵、グォ・ツァイシーだ。
葵がしかし、とためらっている間にじゃあオレもと鉄拳豪腕娘、リッカ・ステアボルトが担いだ幼女フレイアを結へ渡す。
「大勢を相手にすんのは慣れてるからよー。ほら、さっさと行けよ。貧乳娘」
「……あなたとは決着がついていませんでしたね。こんなところで死んではいけませんよ。約束です」
「だーれに言ってんだよ。オレがやられるわけねーだろ。葵のことは頼んだぜ」
雛形結はうなずき、他の戦姫とともに葵を守りながら前進。
「待て、リッカ! ツァイシー!」
葵が叫ぶ。だがふたりの姿は魔族に阻まれてすぐに見えなくなった。
リッカとツァイシー。ふたりは背中合わせになりながら鉄拳飛環烈迅砲と弓射で敵を蹴散らしていく。
「おい、いーのかよ。弓使いのネーチャン。お前がいちばん葵の側にいたがってたろ?」
リッカの質問にツァイシーは苦しそうに、だが力強く答えた。
「葵殿の為を思えばこそ。ここでわたしたちが大半の敵を引き付けておけば、それだけ葵殿が安全になる」
「お~、ここは自分らに任せて先に行けって展開か~。俺っち感動したよ。お涙チョーダイの名シーンだねェ。これは」
ふたりの会話にS級魔族ウルルペクが割り込む。
ウルルペクは積極的に葵たちを追おうとはしない。どういうつもりだとリッカが聞くと、葵たちが進んだ方向を指さし、ゲラゲラと笑いだす。
「どっちにしろアイツらはよォ~、死ぬってわかってるからだよ! お嬢ちゃんふたりがここで命かけたってムダムダ。ただの犬死にさぁ~!」
「野郎っ……!」
リッカがローラーダッシュで突進。進路上のジャマな魔族はツァイシーが連射で倒していく。
「っっらあっっ!」
リッカの剛腕から繰り出される拳。
ウルルペクはにやけ顔で軽やかに跳躍してかわし、後方へ。
「おっとっと。俺っちは楽してーからよ。お嬢ちゃんたちの相手はコイツらに任せるよ。トドメは俺っちが刺すけどねー。まあ、せいぜいあがきなよ」
リッカとツァイシーに殺到する魔族の軍勢。
ツァイシーは弓射で周りの敵を倒しながらスキを見てウルルペクを狙う。だが矢は魔族数体が盾になってヤツまで届かない。
リッカも突進。行く手を阻む魔族をなぎ倒し、粉砕しながら進むが──あまりに多くの魔族の前にその拳が届かない。次々と伸びてくる異形の手に掴まれ、大型の魔族にのしかかられ、ついにヒザをつく。
カエデの張った防御壁もすでに効力を失っていた。
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