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第1部 剣聖 羽鳴由佳
18 アルマVSショウ
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アルマとショウの試合が始まった。
さっきの試合でフラストレーションが溜まっていた観客たちは、五禍将同士の戦いという好カードに興奮し会場は熱気に包まれている。
大歓声の中、はじめに動いたのはショウだった。
腰のあたりで両掌の中に気の流れを溜める。おお、格ゲーと同じモーション。
「気翔拳!」
突き出した両掌からボッ、と気弾が放たれる。そしてアルマに向かい、自らもダッシュした。
放射系の技で牽制し、接近。セオリー通りの攻撃。
アルマは二刀ダガーを十字に構え、気弾をガード。一瞬の硬直を狙い、ショウの下段回し蹴り。バックステップでかわしたが、危ない。着地点でよろついている。
「むんっ」
ショウが追撃。連続して突きを繰り出す。アルマは柔軟な上体の動きでかわすが、たまらず後退。その後ろはもう場外だ。おかしい、あきらかに動きが鈍い。わたしは舞台の外から近づき、アルマに話しかける。
「おい、どうした? 調子悪いのか」
「…………しい」
「え、なに?」
「……たくさん人が見てるから……恥ずかしい」
ええ~、今頃? あの控え室で見せたやる気はどこいったんだ。
「跳虎連脚!」
ショウが空中へ飛び上がり、連続蹴り。アルマは側転でかわす。危ねぇ、ショウの足がわたしの鼻先をかすめた。
「逃げるだけかっ! どうした!」
追いすがろうとするショウの足下にナイフを投げ、バク転で距離をとるアルマ。
なおも接近しようとするショウだったが、ピタリと動きを止めた。
「これは……」
先ほど投げたナイフが凍結し、ショウの右足を舞台に張り付けにしていた。おお、氷属性のナイフとはやるな。
アルマはその隙にわたしの側に近づいてきた。おいおい、いまのうちに攻撃しろよ。
「……由佳、あたしが……ったら……」
モジモジしながらなにか一生懸命伝えようとしている。なんだ、トイレにでも行きたくなったのか。
「……あたしが勝ったら、またギュッ、てしてっ」
顔を真っ赤にして小さく叫ぶ。
は? なにを言ってるんだこんなときに。それにいつギュッ、なんかしたっけ?
「約束……して」
冗談で言っているようには見えない。わたしが分かったと頷くと、アルマは背を向けて力強く言った。
「だったら、恥ずかしいけど頑張る」
身動き出来ないショウに向かっていった。
「小細工を……ナメるなっ! 気翔拳!」
ショウは気弾を凍結部分に撃ち込み、脱出。正面からアルマを迎え撃った。
アルマの二刀ダガー連続斬り。速い。わたしの目でも軌道を追いきれない。
「ぬううっ」
ショウはたまらずガード。わたしの練気と同じ原理で防御力を高めているが、腕や肩の切り傷から見て防ぎきれていない。
ひゅっ、とガードの隙間からアルマの蹴りが滑り込み、ショウのアゴを打ち抜いた。すごい、体術もかなりのものだ。
たたらを踏むショウ。間髪いれず、アルマの投げナイフ。今度は両足を凍結した。決まった。ここまできたらアルマの勝ちは動かない。
アルマのダガーが赤く光る。跳躍したときにはゴッ、と炎をまとった。最大火力からの回転落下斬り。あれくらったら死ぬぞ──と思ったが、格ゲー通りなら、ショウには反撃の手段があった。
「アルマ、危ないっ!」
叫んだが間に合わない。アルマのダガーが届く前に、ショウの身体がゴッと燃えた。
「焔撃鳳拳!」
ショウの炎をまとった必殺対空技だ。舞台上に火柱が立ち昇り、アルマが巻き込まれる。
「アルマッ!」
アルマが場外に落下する──わたしは全身を使ってアルマを受け止めた。
「アルマ、アルマッ、無事か?」
呼びかけると、アルマはうっすらと目を開けた。
「……ごめ……あたし……負け」
「いいんだ、無理して喋るな。いま医療室に運んでやる」
「負け……たのに、ギュッ、て……してもらって……る」
「いいから。そんなもん、いくらでもしてやる」
わたしは急いで医療室へ運ぶ。アルマ──驚くほど軽い。願望者とはいえ、女の子なのだ。それがこんな火傷まで負って……。
わたしはアルマを医療スタッフに任せると、会場へと戻る。
──許せない。鞘を握る手に力が入る。
ショウは舞台の上で待っていた。審判からしばらく休憩を、との打診を受けたが断ったらしい。すぐにでも優勝決定戦を始めたいそうだ。こちらとしても望むところだ。
「……目が変わったな。いい勝負が出来そうだ」
ショウは満足したように声をかけてくる。わたしは怒りながらも冷静に相手を見据えた。
「御託はいい。さっさとやるぞ」
腰を沈め、居合いの構えに入る。
ドドンッ、と試合開始の太鼓が打ち鳴らされた。
さっきの試合でフラストレーションが溜まっていた観客たちは、五禍将同士の戦いという好カードに興奮し会場は熱気に包まれている。
大歓声の中、はじめに動いたのはショウだった。
腰のあたりで両掌の中に気の流れを溜める。おお、格ゲーと同じモーション。
「気翔拳!」
突き出した両掌からボッ、と気弾が放たれる。そしてアルマに向かい、自らもダッシュした。
放射系の技で牽制し、接近。セオリー通りの攻撃。
アルマは二刀ダガーを十字に構え、気弾をガード。一瞬の硬直を狙い、ショウの下段回し蹴り。バックステップでかわしたが、危ない。着地点でよろついている。
「むんっ」
ショウが追撃。連続して突きを繰り出す。アルマは柔軟な上体の動きでかわすが、たまらず後退。その後ろはもう場外だ。おかしい、あきらかに動きが鈍い。わたしは舞台の外から近づき、アルマに話しかける。
「おい、どうした? 調子悪いのか」
「…………しい」
「え、なに?」
「……たくさん人が見てるから……恥ずかしい」
ええ~、今頃? あの控え室で見せたやる気はどこいったんだ。
「跳虎連脚!」
ショウが空中へ飛び上がり、連続蹴り。アルマは側転でかわす。危ねぇ、ショウの足がわたしの鼻先をかすめた。
「逃げるだけかっ! どうした!」
追いすがろうとするショウの足下にナイフを投げ、バク転で距離をとるアルマ。
なおも接近しようとするショウだったが、ピタリと動きを止めた。
「これは……」
先ほど投げたナイフが凍結し、ショウの右足を舞台に張り付けにしていた。おお、氷属性のナイフとはやるな。
アルマはその隙にわたしの側に近づいてきた。おいおい、いまのうちに攻撃しろよ。
「……由佳、あたしが……ったら……」
モジモジしながらなにか一生懸命伝えようとしている。なんだ、トイレにでも行きたくなったのか。
「……あたしが勝ったら、またギュッ、てしてっ」
顔を真っ赤にして小さく叫ぶ。
は? なにを言ってるんだこんなときに。それにいつギュッ、なんかしたっけ?
「約束……して」
冗談で言っているようには見えない。わたしが分かったと頷くと、アルマは背を向けて力強く言った。
「だったら、恥ずかしいけど頑張る」
身動き出来ないショウに向かっていった。
「小細工を……ナメるなっ! 気翔拳!」
ショウは気弾を凍結部分に撃ち込み、脱出。正面からアルマを迎え撃った。
アルマの二刀ダガー連続斬り。速い。わたしの目でも軌道を追いきれない。
「ぬううっ」
ショウはたまらずガード。わたしの練気と同じ原理で防御力を高めているが、腕や肩の切り傷から見て防ぎきれていない。
ひゅっ、とガードの隙間からアルマの蹴りが滑り込み、ショウのアゴを打ち抜いた。すごい、体術もかなりのものだ。
たたらを踏むショウ。間髪いれず、アルマの投げナイフ。今度は両足を凍結した。決まった。ここまできたらアルマの勝ちは動かない。
アルマのダガーが赤く光る。跳躍したときにはゴッ、と炎をまとった。最大火力からの回転落下斬り。あれくらったら死ぬぞ──と思ったが、格ゲー通りなら、ショウには反撃の手段があった。
「アルマ、危ないっ!」
叫んだが間に合わない。アルマのダガーが届く前に、ショウの身体がゴッと燃えた。
「焔撃鳳拳!」
ショウの炎をまとった必殺対空技だ。舞台上に火柱が立ち昇り、アルマが巻き込まれる。
「アルマッ!」
アルマが場外に落下する──わたしは全身を使ってアルマを受け止めた。
「アルマ、アルマッ、無事か?」
呼びかけると、アルマはうっすらと目を開けた。
「……ごめ……あたし……負け」
「いいんだ、無理して喋るな。いま医療室に運んでやる」
「負け……たのに、ギュッ、て……してもらって……る」
「いいから。そんなもん、いくらでもしてやる」
わたしは急いで医療室へ運ぶ。アルマ──驚くほど軽い。願望者とはいえ、女の子なのだ。それがこんな火傷まで負って……。
わたしはアルマを医療スタッフに任せると、会場へと戻る。
──許せない。鞘を握る手に力が入る。
ショウは舞台の上で待っていた。審判からしばらく休憩を、との打診を受けたが断ったらしい。すぐにでも優勝決定戦を始めたいそうだ。こちらとしても望むところだ。
「……目が変わったな。いい勝負が出来そうだ」
ショウは満足したように声をかけてくる。わたしは怒りながらも冷静に相手を見据えた。
「御託はいい。さっさとやるぞ」
腰を沈め、居合いの構えに入る。
ドドンッ、と試合開始の太鼓が打ち鳴らされた。
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