62 / 185
第1部 剣聖 羽鳴由佳
62 神に仕えし者
しおりを挟む
「うは、疲れたあ~、もうダメ」
ナギサがその場で大の字になって寝そべる。
召喚の能力はかなり体力を消耗するようだ。ラーズグリーズとの戦いの後ということもある。
「あ、それと、たまたまうまくいったけど、余計なのを巻き込んじゃったかも。なんか問題起きたらゴメン」
顔を覆いながらナギサが言った。まあ、問題が起きたときは起きたときだ。ここは素直に召喚が成功したのを喜ぼう。
舞台上ではすでに副将戦の用意が出来ている。
「副将戦、チーム餓狼衆、《神託者》ヨハン・ランメルツ!」
その名を聞いてナギサが起き上がり、志求磨も驚いた顔をした。
「ヨハン・ランメルツだと……」
舞台へと上がるローブをまとった人物に、ナギサは釘付けとなる。なんだ、有名人なのか?
「ものすごく古い願望者って噂だよ。シエラ=イデアルの南方の大領主。覇王大戦のとき、戦わないで《覇王》に従ったけど、かなりの実力者らしいよ」
志求磨が説明。こっちに来たのは一緒の時期なのに、なんでも知ってんのな。
ローブを脱いだヨハンは痩せた男だった。
短い金髪に丸メガネ。やや神経質そうに見えるが、なかなかのイケメン。ただ、年がよくわからない。
20台前半にも見えるし、40といわれても不思議ではない。
黒い祭服に胸に十字架をかけている。見た目はまさに神父さんといった感じだが……。
頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《神託者》《裁きし者》ヨハン・ランメルツ。
紹介では代表的な二つ名しか呼ばれなかったが……超越者だ。次の出番は黒由佳だ。まだケガが治りきってなかったが、大丈夫なのか。
「チームナギサ、《魔剣士》羽鳴由佳!」
名を呼ばれた黒由佳はローブを脱いで、いくで~、と気合い十分だ。ああコイツ、なんにも考えてない。
舞台に上がった黒由佳は、なれなれしくヨハンに話しかけている。
「はは、またイケメンだね~。でも手加減しないよ。悪いけど」
「心配は無用ですよ。存分に力をお出しなさい。わたしはキミが思っているより、ずっと強いですよ」
「へえ、すごい自信。あんたも神器ってやつ、持ってんの?」
「いえいえ。あれは我が友、葉桜溢忌が気まぐれに未熟な願望者に与えたもの。間宮京一には嵐太くん。ラーズグリーズにはレーヴァテインといったふうにね。わたしには必要ありませんよ」
中指で丸メガネをクイと上げながらヨハンは笑った。
試合開始の太鼓がドドンッ、と鳴る。先に仕掛けたのは──やはり黒由佳。
二刀を出さずに突っ込む。素手だ。なに考えてんだ。
右の前蹴り、下段、そして後ろ回し蹴り。
あざやかな連続蹴りだが、ヨハンの意外な身のこなし。全てかわされた。
それにしても、わたしと同じ顔でスカートなのにポンポン足を上げないでほしい。なんであんなに足クセが悪いのか。
「鋭い蹴りですが、武器を出さないのですか? 心配は無用と言ったはずですよ」
後ろに手を組んだまま、軽やかに蹴りをかわしながらヨハンが話しかける。黒由佳は途端に機嫌が悪くなる。
「うるっせーな。おまえだって素手じゃんか。遅かれ早かれウチにブッ倒されるんだから、ごちゃごちゃ喚くなっ」
ローキック。ヨハンがブロックしようと身構えたところ、蹴りの軌道が変わった。パァンッ、
とまともに側頭部に命中。以前、わたしをダウンさせた蹴り技だ。
しかし、ヨハンは倒れない。いや、ガードしている。半透明の何かが身体からズズズとはみ出し、蹴りを防いでいた。
「これがわたしの分身であり、守護天使でもあるクシエル。神に反するあらゆる敵を裁き、討ち滅ぼす存在……キミに対してやや荒っぽい事をするかもしれないが、そこは了承してくれたまえ」
ヨハンは丁寧にお辞儀する。
半透明のクシエル。次第に姿形がはっきりしてきた。
絵画とかで見る天使とは違う。白い色で、全体的にロボット型というか、なんか変形して戦闘機とかになりそうなフォルムだ。
「あっそ。そんなん出すなら、ウチも刀出そ」
別段驚くわけでもなく、黒由佳は両手を振り回す。
ギィン、キィンッ、と刃を弾く音。
二刀を出現させると同時に斬りつけたようだ。クシエルとかいう分身にガードされてしまったが。
あのタイプの願望者は……わたしも戦ったことがある。
スタ○ドとか、ペル○ナとか、そんな感じの願望を具現化して分身を作り出して戦わせる。ああいうのは決まって攻略する方法はひとつ。
「黒由佳っ、本体を狙うんだ! その変なのにかまうな!」
指示を飛ばす。わたしがいて良かったな、黒由佳。
「そんなの知らない~っ、どっちもブッタ斬るだけ!」
「……………………」
ムダだったか。なんかカッカしてるみたいだし、おとなしく言うこと聞くヤツでもない。
クシエルの右手には鞭が握られている。手首がヒュッ、と動いた。
パシィンッ、と甲高い音が響き、舞台が直線上に抉られた。
「今のはわざと外しました。威力は見ての通り。まともに喰らえば肉を削ぎ、骨を砕く……痛みのあまり殺してくれと懇願するくらいに」
ヒュヒュッ、とクシエルの右手が動く。
脚をからめ取るような一撃をかわし、鞭が戻るタイミングで黒由佳は突っ込んでいく。
ナギサがその場で大の字になって寝そべる。
召喚の能力はかなり体力を消耗するようだ。ラーズグリーズとの戦いの後ということもある。
「あ、それと、たまたまうまくいったけど、余計なのを巻き込んじゃったかも。なんか問題起きたらゴメン」
顔を覆いながらナギサが言った。まあ、問題が起きたときは起きたときだ。ここは素直に召喚が成功したのを喜ぼう。
舞台上ではすでに副将戦の用意が出来ている。
「副将戦、チーム餓狼衆、《神託者》ヨハン・ランメルツ!」
その名を聞いてナギサが起き上がり、志求磨も驚いた顔をした。
「ヨハン・ランメルツだと……」
舞台へと上がるローブをまとった人物に、ナギサは釘付けとなる。なんだ、有名人なのか?
「ものすごく古い願望者って噂だよ。シエラ=イデアルの南方の大領主。覇王大戦のとき、戦わないで《覇王》に従ったけど、かなりの実力者らしいよ」
志求磨が説明。こっちに来たのは一緒の時期なのに、なんでも知ってんのな。
ローブを脱いだヨハンは痩せた男だった。
短い金髪に丸メガネ。やや神経質そうに見えるが、なかなかのイケメン。ただ、年がよくわからない。
20台前半にも見えるし、40といわれても不思議ではない。
黒い祭服に胸に十字架をかけている。見た目はまさに神父さんといった感じだが……。
頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれた。
《神託者》《裁きし者》ヨハン・ランメルツ。
紹介では代表的な二つ名しか呼ばれなかったが……超越者だ。次の出番は黒由佳だ。まだケガが治りきってなかったが、大丈夫なのか。
「チームナギサ、《魔剣士》羽鳴由佳!」
名を呼ばれた黒由佳はローブを脱いで、いくで~、と気合い十分だ。ああコイツ、なんにも考えてない。
舞台に上がった黒由佳は、なれなれしくヨハンに話しかけている。
「はは、またイケメンだね~。でも手加減しないよ。悪いけど」
「心配は無用ですよ。存分に力をお出しなさい。わたしはキミが思っているより、ずっと強いですよ」
「へえ、すごい自信。あんたも神器ってやつ、持ってんの?」
「いえいえ。あれは我が友、葉桜溢忌が気まぐれに未熟な願望者に与えたもの。間宮京一には嵐太くん。ラーズグリーズにはレーヴァテインといったふうにね。わたしには必要ありませんよ」
中指で丸メガネをクイと上げながらヨハンは笑った。
試合開始の太鼓がドドンッ、と鳴る。先に仕掛けたのは──やはり黒由佳。
二刀を出さずに突っ込む。素手だ。なに考えてんだ。
右の前蹴り、下段、そして後ろ回し蹴り。
あざやかな連続蹴りだが、ヨハンの意外な身のこなし。全てかわされた。
それにしても、わたしと同じ顔でスカートなのにポンポン足を上げないでほしい。なんであんなに足クセが悪いのか。
「鋭い蹴りですが、武器を出さないのですか? 心配は無用と言ったはずですよ」
後ろに手を組んだまま、軽やかに蹴りをかわしながらヨハンが話しかける。黒由佳は途端に機嫌が悪くなる。
「うるっせーな。おまえだって素手じゃんか。遅かれ早かれウチにブッ倒されるんだから、ごちゃごちゃ喚くなっ」
ローキック。ヨハンがブロックしようと身構えたところ、蹴りの軌道が変わった。パァンッ、
とまともに側頭部に命中。以前、わたしをダウンさせた蹴り技だ。
しかし、ヨハンは倒れない。いや、ガードしている。半透明の何かが身体からズズズとはみ出し、蹴りを防いでいた。
「これがわたしの分身であり、守護天使でもあるクシエル。神に反するあらゆる敵を裁き、討ち滅ぼす存在……キミに対してやや荒っぽい事をするかもしれないが、そこは了承してくれたまえ」
ヨハンは丁寧にお辞儀する。
半透明のクシエル。次第に姿形がはっきりしてきた。
絵画とかで見る天使とは違う。白い色で、全体的にロボット型というか、なんか変形して戦闘機とかになりそうなフォルムだ。
「あっそ。そんなん出すなら、ウチも刀出そ」
別段驚くわけでもなく、黒由佳は両手を振り回す。
ギィン、キィンッ、と刃を弾く音。
二刀を出現させると同時に斬りつけたようだ。クシエルとかいう分身にガードされてしまったが。
あのタイプの願望者は……わたしも戦ったことがある。
スタ○ドとか、ペル○ナとか、そんな感じの願望を具現化して分身を作り出して戦わせる。ああいうのは決まって攻略する方法はひとつ。
「黒由佳っ、本体を狙うんだ! その変なのにかまうな!」
指示を飛ばす。わたしがいて良かったな、黒由佳。
「そんなの知らない~っ、どっちもブッタ斬るだけ!」
「……………………」
ムダだったか。なんかカッカしてるみたいだし、おとなしく言うこと聞くヤツでもない。
クシエルの右手には鞭が握られている。手首がヒュッ、と動いた。
パシィンッ、と甲高い音が響き、舞台が直線上に抉られた。
「今のはわざと外しました。威力は見ての通り。まともに喰らえば肉を削ぎ、骨を砕く……痛みのあまり殺してくれと懇願するくらいに」
ヒュヒュッ、とクシエルの右手が動く。
脚をからめ取るような一撃をかわし、鞭が戻るタイミングで黒由佳は突っ込んでいく。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる