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第1部 剣聖 羽鳴由佳
61 召喚者の力
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ボッ、ボッ、ボッ、とショウの気弾が次々命中するが、志求磨のまとう白銀色のオーラにかき消される。
そう、あの状態になった志求磨には、あらゆる願望の力が通じない。
いわばスーパー○リオの無敵状態なのだ。今まで見てきたところ、ほんのわずかな時間でしか使えないようだが。
まとう光を爆発させるように志求磨はダッシュ。やはり決着を急いでいる。
迎え撃つショウは低い体勢──あれはヤツの超必殺技の構えだ。飛び込みを予測してのカウンター。いかん、誘いだ。
「焔撃鳳拳!」
ゴッ、と炎をまとった超アッパーカット。舞台上に火柱が立ち昇る。
炎の渦に巻き込まれ、上空に打ち上げられる志求磨。これが五禍将、焼の将のショウ(なんか早口言葉みたいだ)と呼ばれていた所以のようだ。
落ち着いて見てる場合ではない。さっきのも願望の力を無効化出来たのだろうか。
ブスブスと焼け焦げたように煙を出して、志求磨が落下してくる。
「志求磨ぁっ!」
呼びかけるが、ぐったりしているようだ。白銀色の光も消えている。気を失っているのか。
舞台上のショウが妙な動きを見せた。前後、下、また前……あれは──まさか、ある条件を満たせば発動できる隠し超必殺技!
「喰らえ、獄炎鬼砲拳!」
モーションは気翔拳と同じだが、願望の力が炎と化し、背後からゴワッ、と集まる。それが渦を巻いて突き出した両掌から放たれた。
ゴオオオオッ、と巨大な炎の気弾が飛ぶ。空中から舞台へと落ちる志求磨へ向かって。
このままでは落下の衝撃と気弾のダブルダメージだ。
舞台へと衝突する瞬間、カッ、と志求磨の身体が光った。
再び白銀の光をまとい、落下地点で弾けるように跳ぶ。炎の気弾へと突っ込んだ。
「せやあああぁっ!」
気弾を拳で貫く。突っ切った先には、大技を放った反動で無防備のショウ。
──激突。ショウの腹に志求磨の拳がめり込む。
「ぬ、ぐうぁっ!」
二人は舞台端までもつれるように転がった。
起きあがろうとするショウ。その身体からは白い煙がシュウシュウと出てきている。
「これが消失の力が……さすがだ、《解放の騎士》」
ダメージ自体はあまり無さそうだが、自分の身に何が起きたか理解しているようだ。立ち上がったあと、志求磨に握手を求める。
「俺の負けだ。まだまだ俺も修行不足のようだ。修行を積み直し、いつかまた再戦したいが……そうもいかないようだな」
「ショウ……」
握手しながら、志求磨の瞳、身体は白銀色から元に戻った。
ショウから噴き出していた白い煙も収まる。
そこに現れた姿はなんと──アーケードスティックタイプのコントローラーを持った、メガネにヘッドホンのヒョロガリ男だった。
「だが俺に悔いはない。最後にあれだけの戦いが出来たのだからな」
あのいかにも剛健な求道者といったショウの本当の姿が……市民税を払ってなさそうな二ート全開の青年だったとは。
しかし、その態度や口調はショウのままだ。
フッ、とその姿が消えた。元の世界に送られたのだろう。試合終了の太鼓の音がなる。ふう、これでやっと一勝か。
だが、何やら審判やら副審が舞台上に集まってゴニョゴニョ協議しだした。なんだ、なにか問題発生か?
「あの~、ショウ選手はどちらに行かれたのでしょうか」
副審の一人が聞いてくる。志求磨が一通り消失の説明をするが……うまく伝わっただろうか。
「それは、死亡したということでは?」
審判が聞き返す。マズイ、たしかに願望者にとっては死んだも同然だが……ここで死んだと認められればわたし達チームの負けが確定する。どうにかしなければ。
「このままじゃ失格だ……そうだ! ナギサ、《召喚者》だ。その力でショウを喚び戻すんだ!」
「ええっ! 急に言われてもなあ。僕、まだあの力を使いこなせないんだ。オヤジにも、むやみに使うなって言われたし」
「そんなこと言ってる場合じゃない。ここをどうにか出来るのはナギサしかいない」
わたしが説得する。ナギサは分かったと頷いた。
「でも、上手くいくかは分からないぞ。しかもこの場所に限定して喚び出すなんて……」
言いながらナギサは目を閉じ、二本指を額に当てて集中する。あれ? どこかで見たことあるポーズだが。
ナギサの周囲で願望の力が高まる。気圧されるほどの力。まるであの《覇王》が側にいるような……。
「いた! 戻ったばかりだから、すぐに分かった! あとは、アイツがこっちに戻りたいってまた願えば……」
ナギサが叫ぶ。舞台上では、先ほどショウが消えた場所で、黒い球体の空間がバチバチと広がりながら現れた。
審判たちが慌てて舞台から降りる。バシュウッ、と黒い球体から何かが飛び出し、空間はすぐに閉じた。
飛び出てきたのは、《拳聖》ショウだ。シエラ=イデアルでの願望の姿──孤高の武道家として現れた。
「なんだ、俺は一体……元の世界に戻ったはず……」
ショウは座りこんだまま、呆然としている。微笑みながら志求磨が手を差しのべた。
「これで文句ないだろ」
わたしが審判に確認。ここでようやく、中堅戦は志求磨の勝ちと認められた。
そう、あの状態になった志求磨には、あらゆる願望の力が通じない。
いわばスーパー○リオの無敵状態なのだ。今まで見てきたところ、ほんのわずかな時間でしか使えないようだが。
まとう光を爆発させるように志求磨はダッシュ。やはり決着を急いでいる。
迎え撃つショウは低い体勢──あれはヤツの超必殺技の構えだ。飛び込みを予測してのカウンター。いかん、誘いだ。
「焔撃鳳拳!」
ゴッ、と炎をまとった超アッパーカット。舞台上に火柱が立ち昇る。
炎の渦に巻き込まれ、上空に打ち上げられる志求磨。これが五禍将、焼の将のショウ(なんか早口言葉みたいだ)と呼ばれていた所以のようだ。
落ち着いて見てる場合ではない。さっきのも願望の力を無効化出来たのだろうか。
ブスブスと焼け焦げたように煙を出して、志求磨が落下してくる。
「志求磨ぁっ!」
呼びかけるが、ぐったりしているようだ。白銀色の光も消えている。気を失っているのか。
舞台上のショウが妙な動きを見せた。前後、下、また前……あれは──まさか、ある条件を満たせば発動できる隠し超必殺技!
「喰らえ、獄炎鬼砲拳!」
モーションは気翔拳と同じだが、願望の力が炎と化し、背後からゴワッ、と集まる。それが渦を巻いて突き出した両掌から放たれた。
ゴオオオオッ、と巨大な炎の気弾が飛ぶ。空中から舞台へと落ちる志求磨へ向かって。
このままでは落下の衝撃と気弾のダブルダメージだ。
舞台へと衝突する瞬間、カッ、と志求磨の身体が光った。
再び白銀の光をまとい、落下地点で弾けるように跳ぶ。炎の気弾へと突っ込んだ。
「せやあああぁっ!」
気弾を拳で貫く。突っ切った先には、大技を放った反動で無防備のショウ。
──激突。ショウの腹に志求磨の拳がめり込む。
「ぬ、ぐうぁっ!」
二人は舞台端までもつれるように転がった。
起きあがろうとするショウ。その身体からは白い煙がシュウシュウと出てきている。
「これが消失の力が……さすがだ、《解放の騎士》」
ダメージ自体はあまり無さそうだが、自分の身に何が起きたか理解しているようだ。立ち上がったあと、志求磨に握手を求める。
「俺の負けだ。まだまだ俺も修行不足のようだ。修行を積み直し、いつかまた再戦したいが……そうもいかないようだな」
「ショウ……」
握手しながら、志求磨の瞳、身体は白銀色から元に戻った。
ショウから噴き出していた白い煙も収まる。
そこに現れた姿はなんと──アーケードスティックタイプのコントローラーを持った、メガネにヘッドホンのヒョロガリ男だった。
「だが俺に悔いはない。最後にあれだけの戦いが出来たのだからな」
あのいかにも剛健な求道者といったショウの本当の姿が……市民税を払ってなさそうな二ート全開の青年だったとは。
しかし、その態度や口調はショウのままだ。
フッ、とその姿が消えた。元の世界に送られたのだろう。試合終了の太鼓の音がなる。ふう、これでやっと一勝か。
だが、何やら審判やら副審が舞台上に集まってゴニョゴニョ協議しだした。なんだ、なにか問題発生か?
「あの~、ショウ選手はどちらに行かれたのでしょうか」
副審の一人が聞いてくる。志求磨が一通り消失の説明をするが……うまく伝わっただろうか。
「それは、死亡したということでは?」
審判が聞き返す。マズイ、たしかに願望者にとっては死んだも同然だが……ここで死んだと認められればわたし達チームの負けが確定する。どうにかしなければ。
「このままじゃ失格だ……そうだ! ナギサ、《召喚者》だ。その力でショウを喚び戻すんだ!」
「ええっ! 急に言われてもなあ。僕、まだあの力を使いこなせないんだ。オヤジにも、むやみに使うなって言われたし」
「そんなこと言ってる場合じゃない。ここをどうにか出来るのはナギサしかいない」
わたしが説得する。ナギサは分かったと頷いた。
「でも、上手くいくかは分からないぞ。しかもこの場所に限定して喚び出すなんて……」
言いながらナギサは目を閉じ、二本指を額に当てて集中する。あれ? どこかで見たことあるポーズだが。
ナギサの周囲で願望の力が高まる。気圧されるほどの力。まるであの《覇王》が側にいるような……。
「いた! 戻ったばかりだから、すぐに分かった! あとは、アイツがこっちに戻りたいってまた願えば……」
ナギサが叫ぶ。舞台上では、先ほどショウが消えた場所で、黒い球体の空間がバチバチと広がりながら現れた。
審判たちが慌てて舞台から降りる。バシュウッ、と黒い球体から何かが飛び出し、空間はすぐに閉じた。
飛び出てきたのは、《拳聖》ショウだ。シエラ=イデアルでの願望の姿──孤高の武道家として現れた。
「なんだ、俺は一体……元の世界に戻ったはず……」
ショウは座りこんだまま、呆然としている。微笑みながら志求磨が手を差しのべた。
「これで文句ないだろ」
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