異世界の剣聖女子

みくもっち

文字の大きさ
78 / 185
第1部 剣聖 羽鳴由佳

78 山賊団からの回収 

しおりを挟む
 はじめての取り立ては、さほど問題なく成功した。
 あの戦士ふうの男は、神田敏次郎が呼んだ屈強な男たちによってどこかに連れていかれた。
 
 男たちから銀貨を受け取り、神田敏次郎はそれを懐にねじ込む。
 
「ほな、次々いきまっせ」

「……アイツはどこに連れていかれるんだ?」

「なんや、気になるんか? まあ、願望者デザイアでも音をあげるような肉体労働の現場やで。銭がなくても健康なヤツは、あれが手っ取り早いんや」

 おお、自業自得とはいえ……なんか憐れだ。

「同情しとる場合やないでえ。こっちが隙を見せたらそこにつけこまれるんや。働けんヤツは内臓売ってでもキッチリ返済してもらうさかい」

 まさに鬼の所業。わたしにはそこまで出来る自信がない……。

 こうして、街や村を渡り歩き、同じような事を繰り返して次々と回収を行った。
 もちろん抵抗する者もいるが、わたしとアルマがいればそこまで派手な立ち回りもなく、取り押さえられた。

 中には一時的に逃げおおせた者もいたが、アルマは追跡のスキルを持っている。
 わずかな痕跡からまるで猟犬のように逃亡者の匂いを嗅ぎ付け、追い詰める事ができた。

「アンタらと組んだのは正解やったでえ。最強や。最強のチームや。アンタら金貸しに向いとる。いっそこっちを本業にしたらええのに」

 いやあ、このままだと悪役が板についてしまう。アルマもすっかり裏社会の仕置き人みたいな感じだ。

「じゃがのお、次の相手はちっとばかし骨が折れそうやのお。さすがのアンタらでも」
 
 そう言いながら向かった先は蛇煮伊津じゃにいづ山と呼ばれる小さな山だった。

「ここにはたった五人で徒党を組んどる山賊がいるんや。あの医者、以前にここの連中を治療したようやな」

 神田敏次郎の客ではないらしい。しかし、あの日之影宵子という医者……以前は山賊まで治療していたのか。踏み倒されても不思議ではない相手だというのに。

 山へ入るとすぐに刺すような殺気。なるほど、これはなかなか手強そうだ。

「由佳、気をつけて。すぐ近くに二人いる」

 アルマが身を潜めている敵に気づいた。神田敏次郎をかばうようにして警戒──。

 ババッ、と木の上から飛び降りる二つの影。
 姿を見た瞬間、頭の中ダダダダ。二つ同時はさすがにイラッとくる。

 名も確認せず、わたしは居合いで斬りつける。
 ギィンッ、と空中で刃物と触れた。
 
 アルマのほうも敵と接触。牽制の一撃を加えつつ、わたしの側まで飛び退く。
 互いに二対二。山道の開けた場所で対峙する。

 相手の二人組──ずいぶん若い男。志求磨やナギサと同じくらいの十四、五歳ぐらいか。 
 むむ、しかしなんというか、あか抜けているというか、キラキラしているというか……やたら顔面偏差値が高い。いわゆる美少年だ。
 その格好もたしかに革鎧に毛皮を巻きつけてたりとワイルド。しかしどこか劇団の衣装っぽく見えてしまう。

「おまえ達、ここが我ら蛇煮伊津じゃにいづ山賊団のアジトと知って入ってきたのか」

 曲刀を振り上げ、一人の少年が脅すように聞いてきた。
 むう、声まで男前だ。もう一人がピイ~ッ、と口笛を吹いた。

 バ、ババッ、と木を素早く飛び移る音。
 ザザザ、と三人の仲間が新たに現れた。やはり男前。五人でフォーメーションを組み、ポーズを決めた。なんかのライブ見てるみたい。
 
 というか、新たに頭の中にダダダダ三連発──これはわたしにとってプッツンするのに十分な量だ。



 気がついたとき、周りはハゲ山のようになっていた。いかんな、ダダダダでブチ切れたのはこれで二度目だ。
 五人の美少年は全員倒れ、呻いている。

 見上げると、岩山の上にアルマが神田敏次郎を連れて避難していた。その手にはわたしの刀。
 もにょっ娘め。機転を利かしてわたしから刀を奪い取ったらしい。さすがだ。素手でなければ、斬り殺していたかもしれない。

 五人全員をふん縛り、治療代を踏み倒した件を問い詰める。

「違うんだ! 俺たちはちゃんと代金を払おうとしたんだ! だけどあの医者が、代金はいらないから服を脱げって……だから逃げ出したんだ!」

「………………」

 あの変態医者め。十分にあり得る話だ。どちらかといえばこの少年たちのほうが被害者のようだ。

 とりあえず蛇煮伊津じゃにいづ山賊団は治療代を全額払った。
 あと、山賊稼業もこれまでにすると誓ってくれた。よっぽど恐ろしい目にあったらしい。(わたしと宵子が原因)

 難しいと思われた山賊からの回収も無事に終了。
 その後も街や村でリストの債務者から順調に回収していった。
 
 志求磨たちと別れてから一ヶ月が過ぎようとしていた。残る債務者は一人。これでやっと帰れる。

 最後の一人の名を見ながら、神田敏次郎は何か考えているふうだった。わたしがどうかしたのか、と聞くとめずらしく小さな声でなんでもあらへん、と呟いた。
 
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

処理中です...