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第1部 剣聖 羽鳴由佳
81 疾走
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《アライグマッスル》が用意したアライグマシーン。最高速度500キロを誇るという、ハイテクモンスターマシンだが、その正体は御手洗剛志手製のボロ自転車だ。
走ってる途中で分解しないだろうか、と心配になったが、あの《レッサーパンダラー》のスポーツカーに追いつく手段はこれしかない。
御手洗剛志にうながされるまま、アルマとともに乗り込むが三人乗りになってしまう。よい子はマネしてはならない。
ボッ、と急発進。最後尾のわたしは振り落とされそうになり、必死でアルマの腰にしがみつく。
もにょっ娘アルマがあふぅ、とヘンな声を出した。
風を切って猛追。
砂塵を巻き上げながら疾走するスポーツカーの姿を捉えた。しっかし、舗装もされてない道をよくもあんなスピードで走れるもんだ。
なんだ、車の後部がなんか開いた。うお、発射されたのは──ミサイルではないのか。しかも追尾するタイプの。
アルマの投げナイフが飛んだ。三発のミサイルを撃ち落とす。おお、ナイスだ、もにょっ娘。
「ふ、次はこっちの番だっ」
《アライグマッスル》の自信ありげな声。なんだ、なにするつもりだ?
《アライグマッスル》はハンドル中央のかわいいアライグマの顔をした鼻のスイッチをポチッと押した。
前部ライトの両横側から機関銃の銃身がニョイ~と出てくる。お、スゲエ。それで蜂の巣にするのだな。
「ラアァスカーッル!」
機関銃が火を吹く。バババババッ、と発射された銃弾がスポーツカーを穴だらけに──しない。
ドチャドチャドチャッ、とアライグマの縞模様みたいな黒と灰色の塗装が塗りたくられただけだ。
期待したわたしがバカだった。この期に及んでペイント弾とは……。
「ふ、自慢の愛車を汚されて、さぞ悔しがっているだろう」
勝ち誇ったような《アライグマッスル》。いや、そういうのいらないから。相手、なんのダメージも受けてないから。
「由佳、あれ見てっ」
アルマの緊迫した声。なんだ、と身体を傾けて前方を見ると、彼方に小さな人影。
あれは──次第に近づいて姿がはっきりとわかった。
《ヴァルキリー》ラーズグリーズ。
武道大会でナギサと激戦を繰り広げた、隠れデカパイ女だ。
槍に変形したレーヴァテインの先をこちらに向けている。マズイ、これは──罠か。
槍の先端が光を増す。ヤバい、《アライグマッスル》はアレの威力を知らない。
前方のスポーツカーが急ハンドル。右へ大きく曲がり、ギャギャギャと旋回する。
キュドッ、と槍から放たれたレーザー光線。わたしとアルマで強引に体勢を傾けた。
「うおっ!」
バランスを崩し、その場で横転。光線はかわせたが──《アライグマッスル》は派手に地面を転がった。
ああ、アイツの能力でダメージ無効だった。無理にかわさなくてもよかったかしれない。
わたしはなんとか受け身を取り、アルマも問題なく着地。
アライグマシーンは無惨に大破したが、元がボロ自転車なので惜しくはない。多分。
「あっ!」
アルマの悲鳴。その場でうずくまった。
「由佳、気をつけてっ」
とっさに居合い。バラバラッ、と地面に何かが落ちた。これは……竹串。こんなものを投げつけてきたのか。
猿面──手にジャラアッ、と何本も持っている。
「う、動けない……」
竹串に刺されたアルマは動けなくなっている。麻痺の効果でもあるのだろうか。見た目よりずっと厄介な武器のようだ。
飛んでくる竹串。斬り払いつつ、神速で猿面に接近。
猿面は逃げもせず、さほど長くもない木の棒で応戦。そんな棒切れ、叩っ斬ってやる。
わたしの薙ぎ払いからの連続斬り──だが、その木の棒でカカカカンッ、と弾かれた。こいつは……。
刀の刃のほうに触れず、腹や峰を叩いて軌道を変えている。
あの速さの太刀筋を……コイツ、アルマの攻撃もこうやって防いだのか。とんでもない高等技術だ。
「キャプチャーモード。カプセルを対象に向けて投擲してください」嵐太くんの声。
よし、と《レッサーパンダラー》が腰からカプセルを取り出すと、《アライグマッスル》とアルマに投げつけた。
いかん、この猿面にかまっている間に……くそ、二人はマモノンゲットだぜ、みたいにカプセルに閉じ込められてしまった。
「《剣聖》、投降するのだ。葉桜溢忌さまは貴様の力に興味がおありのようだ」
ラーズグリーズが槍を向けながら勧告。くそ、誰が投降なんてするか。だが──三対一。しかも相手は餓狼衆。
《レッサーパンダラー》の銃弾をかわし、猿面に斬りかかり、ラーズグリーズの攻撃を防いだ。
しかし、最後には取り囲まれ、猿面の木の棒でドドドッ、と身体の数ヶ所を突かれて動けなくなった。
「カプセルはもう無いからちょうどいいな。楊の点穴で、しばらくは動けないだろう」
「いや、油断は出来ない。生きて戻ったとはいえ、あのヨハンが廃人のようになっていた。ミリアムによると魂を断ち斬られた、と。念のために縛っていたほうがいい」
変身を解いた間宮京一とラーズグリーズが話し合い、わたしをロープでぐるぐる巻きにした。
あと、あの猿面は楊というのか。どうやら中国武術の達人らしいが……覚えてろよ。
仲間が全員つかまり、わたしも囚われの身。
スポーツカーの助手席に乱暴に放り込まれ、わたしはメチャクソに文句を飛ばす。手足は動かずとも口は動くぞ。
クソデカパイ、ナルシスパンダ、チビ猿、ムダパイパイ、キモイケメン、ムッツリエテ公、まだまだ言い足りない。
苦虫を噛み潰したような顔のラーズグリーズに猿ぐつわをされてしまった……くそ、こんなとき、あのヨハンを倒したときの力があれば……。
走ってる途中で分解しないだろうか、と心配になったが、あの《レッサーパンダラー》のスポーツカーに追いつく手段はこれしかない。
御手洗剛志にうながされるまま、アルマとともに乗り込むが三人乗りになってしまう。よい子はマネしてはならない。
ボッ、と急発進。最後尾のわたしは振り落とされそうになり、必死でアルマの腰にしがみつく。
もにょっ娘アルマがあふぅ、とヘンな声を出した。
風を切って猛追。
砂塵を巻き上げながら疾走するスポーツカーの姿を捉えた。しっかし、舗装もされてない道をよくもあんなスピードで走れるもんだ。
なんだ、車の後部がなんか開いた。うお、発射されたのは──ミサイルではないのか。しかも追尾するタイプの。
アルマの投げナイフが飛んだ。三発のミサイルを撃ち落とす。おお、ナイスだ、もにょっ娘。
「ふ、次はこっちの番だっ」
《アライグマッスル》の自信ありげな声。なんだ、なにするつもりだ?
《アライグマッスル》はハンドル中央のかわいいアライグマの顔をした鼻のスイッチをポチッと押した。
前部ライトの両横側から機関銃の銃身がニョイ~と出てくる。お、スゲエ。それで蜂の巣にするのだな。
「ラアァスカーッル!」
機関銃が火を吹く。バババババッ、と発射された銃弾がスポーツカーを穴だらけに──しない。
ドチャドチャドチャッ、とアライグマの縞模様みたいな黒と灰色の塗装が塗りたくられただけだ。
期待したわたしがバカだった。この期に及んでペイント弾とは……。
「ふ、自慢の愛車を汚されて、さぞ悔しがっているだろう」
勝ち誇ったような《アライグマッスル》。いや、そういうのいらないから。相手、なんのダメージも受けてないから。
「由佳、あれ見てっ」
アルマの緊迫した声。なんだ、と身体を傾けて前方を見ると、彼方に小さな人影。
あれは──次第に近づいて姿がはっきりとわかった。
《ヴァルキリー》ラーズグリーズ。
武道大会でナギサと激戦を繰り広げた、隠れデカパイ女だ。
槍に変形したレーヴァテインの先をこちらに向けている。マズイ、これは──罠か。
槍の先端が光を増す。ヤバい、《アライグマッスル》はアレの威力を知らない。
前方のスポーツカーが急ハンドル。右へ大きく曲がり、ギャギャギャと旋回する。
キュドッ、と槍から放たれたレーザー光線。わたしとアルマで強引に体勢を傾けた。
「うおっ!」
バランスを崩し、その場で横転。光線はかわせたが──《アライグマッスル》は派手に地面を転がった。
ああ、アイツの能力でダメージ無効だった。無理にかわさなくてもよかったかしれない。
わたしはなんとか受け身を取り、アルマも問題なく着地。
アライグマシーンは無惨に大破したが、元がボロ自転車なので惜しくはない。多分。
「あっ!」
アルマの悲鳴。その場でうずくまった。
「由佳、気をつけてっ」
とっさに居合い。バラバラッ、と地面に何かが落ちた。これは……竹串。こんなものを投げつけてきたのか。
猿面──手にジャラアッ、と何本も持っている。
「う、動けない……」
竹串に刺されたアルマは動けなくなっている。麻痺の効果でもあるのだろうか。見た目よりずっと厄介な武器のようだ。
飛んでくる竹串。斬り払いつつ、神速で猿面に接近。
猿面は逃げもせず、さほど長くもない木の棒で応戦。そんな棒切れ、叩っ斬ってやる。
わたしの薙ぎ払いからの連続斬り──だが、その木の棒でカカカカンッ、と弾かれた。こいつは……。
刀の刃のほうに触れず、腹や峰を叩いて軌道を変えている。
あの速さの太刀筋を……コイツ、アルマの攻撃もこうやって防いだのか。とんでもない高等技術だ。
「キャプチャーモード。カプセルを対象に向けて投擲してください」嵐太くんの声。
よし、と《レッサーパンダラー》が腰からカプセルを取り出すと、《アライグマッスル》とアルマに投げつけた。
いかん、この猿面にかまっている間に……くそ、二人はマモノンゲットだぜ、みたいにカプセルに閉じ込められてしまった。
「《剣聖》、投降するのだ。葉桜溢忌さまは貴様の力に興味がおありのようだ」
ラーズグリーズが槍を向けながら勧告。くそ、誰が投降なんてするか。だが──三対一。しかも相手は餓狼衆。
《レッサーパンダラー》の銃弾をかわし、猿面に斬りかかり、ラーズグリーズの攻撃を防いだ。
しかし、最後には取り囲まれ、猿面の木の棒でドドドッ、と身体の数ヶ所を突かれて動けなくなった。
「カプセルはもう無いからちょうどいいな。楊の点穴で、しばらくは動けないだろう」
「いや、油断は出来ない。生きて戻ったとはいえ、あのヨハンが廃人のようになっていた。ミリアムによると魂を断ち斬られた、と。念のために縛っていたほうがいい」
変身を解いた間宮京一とラーズグリーズが話し合い、わたしをロープでぐるぐる巻きにした。
あと、あの猿面は楊というのか。どうやら中国武術の達人らしいが……覚えてろよ。
仲間が全員つかまり、わたしも囚われの身。
スポーツカーの助手席に乱暴に放り込まれ、わたしはメチャクソに文句を飛ばす。手足は動かずとも口は動くぞ。
クソデカパイ、ナルシスパンダ、チビ猿、ムダパイパイ、キモイケメン、ムッツリエテ公、まだまだ言い足りない。
苦虫を噛み潰したような顔のラーズグリーズに猿ぐつわをされてしまった……くそ、こんなとき、あのヨハンを倒したときの力があれば……。
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