異世界の剣聖女子

みくもっち

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第1部 剣聖 羽鳴由佳

94 最強フォーム

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《アライグマッスル》は自らのシッポ、いや、アライグマッシャーを引き抜き、それを振り回す。

「ラスカーッル!」

 だが《レッサーパンダラー》の銃が剣にカシャカシャと変形。アライグマッシャーを巧みにさばき、反撃。
《アライグマッスル》はバシバシィッ、と斬りつけられて派手に倒れた。

「ありゃあ、弱いね。同じヒーローなのに。おいーっ、おっさん、ガンバレー!」

 黒由佳が倒れた《アライグマッスル》を指さし、ゲラゲラ笑いながら応援? している。
 日之影宵子はまったく興味なさそうにタバコをふかしている。

「これ、いつまでやんの? さっきの楊くんを探さないといけないのに。ああ、つまんない……」

 この医者……目的が変わっていやがる。助手のビノッコが憐れでならない。

 いや、今は《アライグマッスル》の戦いに集中せねば。
 どうにも格闘、剣技、その他もろもろ《アライグマッスル》に分が悪そうだ。ダメージがないとはいえ、このままではらちがあかない。

《レッサーパンダラー》もそれは分かっているはずだ。長々と特撮バトルを続けても決着はつかない。
 
《レッサーパンダラー》は左腕の嵐太くんを操作。「キャプチャーモード」と、嵐太くんの渋い声。
《レッサーパンダラー》はベルトのホルダーからカプセルを取り出して投げつけようとしている。
 やはり捕らえるつもりだ。倒しきれない相手にはそれしかないが──ああ、せっかく助け出したのに。

「あらら、仕方ないな。おい、腰の両側を強く叩いてみ!」

 どんよりした目で見ていた日之影宵子が《アライグマッスル》にそう指示する。
《アライグマッスル》は戸惑いながらもこうか、と両手で腰の両側をバン、と叩いた。

 キュオオオオ、と何かの駆動音。
 これは……《アライグマッスル》から聞こえてくる。

《アライグマッスル》の身体が変色。灰色からより濃い黒色へ。
 腕、脚の外側からシュカン、シュカンとエアロウィングが飛び出し、胸には排気ダクト、背中には推進装置スラスターが出現。
 
「こ、これはいったい……」 
 
 驚く《アライグマッスル》。日之影宵子はタバコの吸い殻をビッ、と投げ捨てながら言った。

「この前手術したときさあ、そのまま治したんじゃつまんないから、いろいろいじったんだよね。ま、強くなったから別にいいよね」

……この医者、やはり頭がおかしい。
 患者を勝手に性転換したり改造したり……。倫理観とか常識とかが致命的に欠如している。

「説明しよう!」

 うお、いきなりでビックリした。いつものナレーションか。

「新たな力を手に入れた《アライグマッスル》! その名もアライグマッハフォーム! これが最強形態なのだ! 今こそ悪を討て、《アライグマッスル》!」

「これが……わたしの新しい力……」

《アライグマッスル》は自分の両手を見つめている。
《レッサーパンダラー》がかまわず、カプセルを投げつけた。

 ボヒュッ、と背中の推進装置スラスターが火を吹く。
《アライグマッスル》が超高速でカプセルをかわし、《レッサーパンダラー》にパンチを叩きこんだ。

「な、なにぃっ!」

 よろめく《レッサーパンダラー》。あいかわらずダメージはないが、そのスピードは驚異的だ。

 剣から銃へ変形させ、《レッサーパンダラー》の銃撃。バシュバシュ、バシュン、と赤い光線が連続で飛ぶ。

 ギャギャ、ギャンッ、と高速移動でかわす《アライグマッスル》。光線はかすりもしない。

「いくぞ、必殺! アライグマッハアタック!」

 叫び、突進する《アライグマッスル》。
《レッサーパンダラー》も必殺技の鉤爪で迎え撃つ。

 激突する二大ヒーロー。鉤爪をかいくぐり、《アライグマッスル》の拳がヒットしていた。いや、ここからさらに技を決めるつもりだ。

「いくぞっ! ラスラスラスラスラスラスラスラスラスラスラスラス──」

  ハイスピードのパンチ連打。くるぞ、トドメの一撃。

「オオォゥスゥカーーーールッ!」
 
 最後の最後でかけ声を間違えたが……《アライグマッスル》のアッパーを喰らった《レッサーパンダラー》の左腕から嵐太くんが外れ、変身が解けて間宮京一の姿に。

 やった。まさかの《アライグマッスル》の勝利だ。
 同じく変身を解いた御手洗剛志。嵐太くんを拾い上げると、倒れている間宮京一に近づいてそれを手渡す。

「分かっただろう。悪の力では決して正義には勝てないと。さあ、お前もこの力を正義のために使うのだ」

 嵐太くんを受け取る間宮京一。唇を噛み、御手洗剛志をキッ、と睨んだ。

「なんで……なんでアンタは昔から変わらないんだ。俺がガキの頃からちっとも変わってねえ。周りはどんどん変わっていくのによ。自分だけ取り残されるのが恐くないのか?」

 間宮京一の問いに、御手洗剛志は胸を張って答える。

「たしかに時代も人も変わる。だがな、正義は、自分の信じる道だけは変わらないだろう。笑われようと、蔑まされようと。ただそれだけだ」

「……アンタはスゲエな。俺の負けだ。これを受け取ってくれ」
 
 間宮京一が卵型のカプセルを御手洗剛志へと渡す。
 これにて新旧二大ヒーローの戦いは完全決着がついた。
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