105 / 185
第1部 剣聖 羽鳴由佳
105 反撃
しおりを挟む
「シッ!」
至近距離からの太刀風。
バチイッ、と溢忌に命中。
威力が増している。ヤツを十数メートル先まで弾き飛ばした。
「カーラさん、大丈夫ですか」
膝をついているカーラさんは咳き込みながら答えた。
「え、ええ。わたしは大……丈夫。由佳ちゃん、それより早く《断ち斬る者》に」
それは分かっているが、わたしひとりで変化する方法が分からない。
黒由佳の願望の欠片……わたしの身体の中にあるが、これをどうするのか。
「黒由佳ちゃんは元々あなた心の奥底にあった願望。あなた自身なのよ。受け入れて」
わたしの願望……あの破天荒で凶悪で、○○○○な黒由佳に?……にわかには信じられない。
黒由佳は最期に、わたしみたいになりたいと言っていた。
わたしも黒由佳みたいになりたいと思っていたのか……まさか。
「考え事っスか。余裕っスね」
葉桜溢忌が近づいてくる。
納刀し、再び居合いの構え。
「シッ!」
太刀風。立て続けに四発放った。
溢忌は盾でゴゴゴガッ、と受けながら距離を詰める。
上段から斬りつけるが、やはり盾でガインッ、と弾かれた。
溢忌の右手が迫る。その五指がわたしの胸を貫く──前にバチイッ、と溢忌の動きが止まった。
カーラさんが右の手の平を溢忌に向けている。
グググ、と手を閉じようとすると溢忌の身体も締め付けられるように軋む音を立てる。
「由佳ちゃん、長くは持たないわ。早く……」
「いででで、カーラ。アンタ、矛盾してるっスよ。さっきの爆発で旧王都の人間大勢死んだっしょ? 俺を倒すためにやってるんなら、魔王倒すために殺しまくった俺と変わんねーっスよ」
「……どうかしら。決めつけるのはまだ早いと思うわ」
ギシッ、ギシッ、と溢忌の身体がさらに締め付けられる。カーラの右手がぶるぶると震える。
バシイッ、と破裂したような音。
葉桜溢忌の身体からか──いや、ピピッ、とわたしの顔に何かが飛んできた。
これは……血だ。カーラさんの。カーラさんの右手から鮮血が飛び散っている。
「無理しすぎっスよ。俺を力で抑え込もうとすればそうなるって分かってんでしょーに。前の戦いの影響で忘れっぽくなってるとは聞いてたっスけど、こりゃウケるっスね」
呻きながらカーラさんがうずくまる。わたしは斬りかかるが弾かれ、さらに腹に盾の殴打。
血をゴハッ、と吐いて膝をつく。
「あ~、終了っスね。さて、どちらから殺るか」
溢忌は剣を抜き、剣先を向けながらど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な、と最後にカーラさんに狙いを定めた。
そのにやけ顔を見て、わたしの腹の底からゴッ、と脳天まで熱い何かが突き抜けた。
ダダダダ、と頭の中に文字が打ち込まれる。
《剣聖》《断ち斬る者》羽鳴由佳。
ボロッ、と髪に挿した簪が砕けて落ちる。それでも変化は解除されない。
左目が燃えるように熱くなり、左腕、左足にゾゾゾ、と黒い紋様が浮かび上がる。溢忌に引き破られたブレザーと長衣も再生した。
「うううっ、ああっ!」
《断ち斬る者》に変化したのはいい──しかし、これは一番最初にヨハン相手に変化したときと同じだ。
暴走──するっ!
素手のまま掴みかかる。
両手を交差させて溢忌の襟を掴み、ドンッ、と身体を一気に沈める。
そこからブリッジ。
受け身不可能な投げ技。溢忌は脳天から地面に激突。
起き上がり、振り返る勢いでサッカーボールキック。
溢忌の身体が面白いように空中へ飛んだ。
そこから居合いの構え──抜刀。
太刀風。一気に百以上もの飛ぶ斬撃が溢忌に命中。
ボロ雑巾のようになった溢忌が落下していく。
そこへ向かって走った。走りながら腰の鞘を抜く。願望の力を込めて黒い刀へ変化。
二刀になったわたしは落下直前の溢忌の身体を捉えた。
右の刺突から左の袈裟懸け。右の払いから左の斬り上げ。
そこから怒涛の斬撃の嵐。数十、いや、数百ほども叩き込む。
回転しながら蹴りで打ち上げ。溢忌がまた空中へ。それを追ってわたしも跳ぶ。
溢忌よりもはるか上空へ。そこからボッ、と高速落下しながら二刀をぶちかます。
ギュドオンッ、と地面に撃突する溢忌。
まだだ。着地したわたしは二刀を地面に突き刺す。
「──むっ、ぬあああああっ!」
願望の力を地面に浸透させる。地面には崩れた宮殿の瓦礫や破片が無数に散らばっている。
その中でも細長いものをすべて刀へと変化。
数千、数万の刀。空中にブワアーーッ、と並ぶ。
わたしがわけの分からない叫びを上げると一斉に溢忌のもとへ飛んだ。
元の世界での工事現場。その何十倍もの騒音、地響き。
ズガガガガ、ドカカカカ、と無数の刀が飛来し、溢忌のいるであろう地点に次々と突き刺さっていく。
まだ──まだだ。わたしはさらに願望の力を込める。
ゴゴゴゴッ、と地響き。わたしの願望の力は地中深く眠る岩盤へ。それを刀の形にして地上へ──。
ボッゴオオオオン、と巨大な岩の刀が出現。その先端に葉桜溢忌が突き上げられている。
「ぐっ、ああっ! うああっ!」
極限まで願望の力を使っている。
わたしの耳や鼻から血がドロリと垂れた。
いや、まだ──まだだ。まだいける。
左の刀を鞘の形に戻し、腰に差す。そして納刀。
居合いの構え。そこから練気。全身から天を衝くような願望のオーラが立ち昇る。
一点集中。すべてを刀に──。
鍔と鞘の隙間から気の光が溢れ出る。眩しいほどに。
抜刀──山を越えるようなバカでかい剣閃が放たれた。わたしは反動で吹っ飛ばされる。
地面をギャリギャリ削りながら剣閃は巨大な岩の刀へ激突。凄まじい爆発が起き、さらにわたしは後方へ飛ばされた。
至近距離からの太刀風。
バチイッ、と溢忌に命中。
威力が増している。ヤツを十数メートル先まで弾き飛ばした。
「カーラさん、大丈夫ですか」
膝をついているカーラさんは咳き込みながら答えた。
「え、ええ。わたしは大……丈夫。由佳ちゃん、それより早く《断ち斬る者》に」
それは分かっているが、わたしひとりで変化する方法が分からない。
黒由佳の願望の欠片……わたしの身体の中にあるが、これをどうするのか。
「黒由佳ちゃんは元々あなた心の奥底にあった願望。あなた自身なのよ。受け入れて」
わたしの願望……あの破天荒で凶悪で、○○○○な黒由佳に?……にわかには信じられない。
黒由佳は最期に、わたしみたいになりたいと言っていた。
わたしも黒由佳みたいになりたいと思っていたのか……まさか。
「考え事っスか。余裕っスね」
葉桜溢忌が近づいてくる。
納刀し、再び居合いの構え。
「シッ!」
太刀風。立て続けに四発放った。
溢忌は盾でゴゴゴガッ、と受けながら距離を詰める。
上段から斬りつけるが、やはり盾でガインッ、と弾かれた。
溢忌の右手が迫る。その五指がわたしの胸を貫く──前にバチイッ、と溢忌の動きが止まった。
カーラさんが右の手の平を溢忌に向けている。
グググ、と手を閉じようとすると溢忌の身体も締め付けられるように軋む音を立てる。
「由佳ちゃん、長くは持たないわ。早く……」
「いででで、カーラ。アンタ、矛盾してるっスよ。さっきの爆発で旧王都の人間大勢死んだっしょ? 俺を倒すためにやってるんなら、魔王倒すために殺しまくった俺と変わんねーっスよ」
「……どうかしら。決めつけるのはまだ早いと思うわ」
ギシッ、ギシッ、と溢忌の身体がさらに締め付けられる。カーラの右手がぶるぶると震える。
バシイッ、と破裂したような音。
葉桜溢忌の身体からか──いや、ピピッ、とわたしの顔に何かが飛んできた。
これは……血だ。カーラさんの。カーラさんの右手から鮮血が飛び散っている。
「無理しすぎっスよ。俺を力で抑え込もうとすればそうなるって分かってんでしょーに。前の戦いの影響で忘れっぽくなってるとは聞いてたっスけど、こりゃウケるっスね」
呻きながらカーラさんがうずくまる。わたしは斬りかかるが弾かれ、さらに腹に盾の殴打。
血をゴハッ、と吐いて膝をつく。
「あ~、終了っスね。さて、どちらから殺るか」
溢忌は剣を抜き、剣先を向けながらど、ち、ら、に、し、よ、う、か、な、と最後にカーラさんに狙いを定めた。
そのにやけ顔を見て、わたしの腹の底からゴッ、と脳天まで熱い何かが突き抜けた。
ダダダダ、と頭の中に文字が打ち込まれる。
《剣聖》《断ち斬る者》羽鳴由佳。
ボロッ、と髪に挿した簪が砕けて落ちる。それでも変化は解除されない。
左目が燃えるように熱くなり、左腕、左足にゾゾゾ、と黒い紋様が浮かび上がる。溢忌に引き破られたブレザーと長衣も再生した。
「うううっ、ああっ!」
《断ち斬る者》に変化したのはいい──しかし、これは一番最初にヨハン相手に変化したときと同じだ。
暴走──するっ!
素手のまま掴みかかる。
両手を交差させて溢忌の襟を掴み、ドンッ、と身体を一気に沈める。
そこからブリッジ。
受け身不可能な投げ技。溢忌は脳天から地面に激突。
起き上がり、振り返る勢いでサッカーボールキック。
溢忌の身体が面白いように空中へ飛んだ。
そこから居合いの構え──抜刀。
太刀風。一気に百以上もの飛ぶ斬撃が溢忌に命中。
ボロ雑巾のようになった溢忌が落下していく。
そこへ向かって走った。走りながら腰の鞘を抜く。願望の力を込めて黒い刀へ変化。
二刀になったわたしは落下直前の溢忌の身体を捉えた。
右の刺突から左の袈裟懸け。右の払いから左の斬り上げ。
そこから怒涛の斬撃の嵐。数十、いや、数百ほども叩き込む。
回転しながら蹴りで打ち上げ。溢忌がまた空中へ。それを追ってわたしも跳ぶ。
溢忌よりもはるか上空へ。そこからボッ、と高速落下しながら二刀をぶちかます。
ギュドオンッ、と地面に撃突する溢忌。
まだだ。着地したわたしは二刀を地面に突き刺す。
「──むっ、ぬあああああっ!」
願望の力を地面に浸透させる。地面には崩れた宮殿の瓦礫や破片が無数に散らばっている。
その中でも細長いものをすべて刀へと変化。
数千、数万の刀。空中にブワアーーッ、と並ぶ。
わたしがわけの分からない叫びを上げると一斉に溢忌のもとへ飛んだ。
元の世界での工事現場。その何十倍もの騒音、地響き。
ズガガガガ、ドカカカカ、と無数の刀が飛来し、溢忌のいるであろう地点に次々と突き刺さっていく。
まだ──まだだ。わたしはさらに願望の力を込める。
ゴゴゴゴッ、と地響き。わたしの願望の力は地中深く眠る岩盤へ。それを刀の形にして地上へ──。
ボッゴオオオオン、と巨大な岩の刀が出現。その先端に葉桜溢忌が突き上げられている。
「ぐっ、ああっ! うああっ!」
極限まで願望の力を使っている。
わたしの耳や鼻から血がドロリと垂れた。
いや、まだ──まだだ。まだいける。
左の刀を鞘の形に戻し、腰に差す。そして納刀。
居合いの構え。そこから練気。全身から天を衝くような願望のオーラが立ち昇る。
一点集中。すべてを刀に──。
鍔と鞘の隙間から気の光が溢れ出る。眩しいほどに。
抜刀──山を越えるようなバカでかい剣閃が放たれた。わたしは反動で吹っ飛ばされる。
地面をギャリギャリ削りながら剣閃は巨大な岩の刀へ激突。凄まじい爆発が起き、さらにわたしは後方へ飛ばされた。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる