111 / 185
第2部 消えた志求磨
3 再び異世界へ
しおりを挟む
「羽鳴……お前、A組の比嘉綾と親しかったよな。なんか最近、様子がおかしいところとかなかったか? 悩み事がありそうだとか」
蛯原の質問。綾……やっぱりただの欠席じゃなかったんだ。
だとしたら間違いない。異世界に行ったっきり帰ってきてないんだ。あっちで何かトラブルがあったのか。
「羽鳴、聞いてるのか」
「うるさい、黙ってろ」
それどころじゃない。綾を──志求磨を助けに行かなくては。わたしは席を立つ。
「お前っ、なんて口の利き方だっ」
体育教師の松中が近づいて手を伸ばす。
おい、その毛むくじゃらの手でわたしに少しでも触れてみろ。タダじゃ済まない──。
わたしは異世界の《剣聖》になったつもりで殺気を飛ばす。
松中はピタリと動きを止め、汗をだらだらと流している。蛯原が怪訝な顔で聞いた。
「ま、松中先生? どうしたんですか?」
「蛯原先生……とんだところでわたしの護身は完成してしまったようだ。真の達人は危機が訪れる前にそれを回避してしまう。わたしは気付いてしまったのだよ。この羽鳴……到底わたしの手に負える相手ではない」
松中はそのままペタンと尻もちをつく。
今度は社会科の教師、佐保が躍り出る。
「惑わされないでっ! すべては悪霊が原因なのです! わたしにははっきりと見える。羽鳴に取り憑いている子供の霊の姿がっ──」
わなわなとアルマを指さしながら叫ぶ。
いや、見えてるも何も実在してるから。座敷わらしと言ったのはわたしだが、マジで信じてるのか?
佐保はふにゃらむにゃらと呪文を唱えながらわたしの後ろへ回り込む。
「迷える魂よっ、この者から出ていくのですっ! 悪霊退散っ、ぃええいっ! ええいっ!」
バシバシとわたしの首や背中を叩く。
痛っ……ムカつくなぁ、このオバハン。
追い払おうとしているアルマは目の前にいるのに、なんでわたしをブッ叩くんだ。
佐保を押し退け、アルマの手を引いて生徒指導室を飛び出した。
「羽鳴っ、待てっ!」
蛯原の呼び止める声が聞こえたが、無視。
廊下を走り抜け、下駄箱で急いで靴を履き替えて校舎の外へ。
帰りのバス停。
いまかいまかとバスを待つ。
以前はバスに乗ろうとしたタイミングで異世界に行けた。なんらかの法則なのか──他に方法が分からないから、試すしかない。
まず、わたしが強く願うこと。それは綾のことを助けようと強く想ってるから問題ないはず。
あとは異世界の《召喚者》と波長が合えば──向こうもわたしを喚ぼうとしているなら、成功するはずだ。ナギサ、頼んだぞ。
バスが到着した。あ、その前にアルマにも確認しないと。
「アルマ。わたしはシエラ=イデアルに綾を探しにいくけど、アルマはどうする? 家で待っておく?」
両親なら何も言わずアルマの面倒を見てくれるだろう。アルマ自身も年齢の割にはかなりしっかりしているので、心配はない。
だがアルマは首をブンブンと横に振る。由佳と一緒に行く、とぎゅっと手に力を入れた。
「うん。分かったよ、アルマ。またわたしに力を貸してくれ」
わたしはアルマの頭を撫で、ふたりでバスに乗り込む。さあ、行くぞ、異世界シエラ=イデアルへ──。
…………………何も起こらない。乗降口で固まっているわたしに、運転手がどうしました? と話しかけてくる。
わたしはいえ、別に……とギクシャクした動きでいつものうしろの席へ向かう。
「おかしい。強く願ったのに。向こうでナギサがサボってんのか……」
綾(志求磨)はこっちの世界と異世界を行き来するのにナギサの《召喚者》の力を利用していた。
もし、綾の身に何かあれば知らないはずはない。
わたしにもどうにかして報せようとするし、そちらに喚ぼうともするはずだ。
「もしかしたら、ナギサにも何かあったのかも……」
アルマが不安げな眼差しで見上げてきた。
その可能性もある。だとしたら、わたしが異世界に行ける方法が無いという事になる。
どうしようかと思案しているうちに、家の近くのバス停まで着いてしまった。
降りるときも試してみたが、やはり同じだ。何も起きない。
家に帰る途中で綾に何度か電話をかけてみる……ダメだ。朝と同じく繋がらない。
「大丈夫、何か方法があるはず」
自分に言い聞かせ、アルマとともに家の中へ。そうだ、帰りに綾の家に行くつもりだったんだ。とりあえず荷物を置いてから行こう。
二階の自分の部屋へ。ドアを開けてから、フッ、と足元から落ちる感覚。
「由佳っ!」
アルマの声。手を伸ばすが──届かない。
周囲が闇に包まれ、一瞬のうちにトンネルを抜けるように光が見えた。
飛び出した先は──今にも雨が降りだしそうな薄暗い空。
草木が少なく地肌が見えた平地。
そして──ドドドド、とこちらに近づいてくる音。
大勢の兵士だ。鎧を身にまとい、槍や剣を手にこちらへ突進してくる。
ここはまさか……戦場か!
蛯原の質問。綾……やっぱりただの欠席じゃなかったんだ。
だとしたら間違いない。異世界に行ったっきり帰ってきてないんだ。あっちで何かトラブルがあったのか。
「羽鳴、聞いてるのか」
「うるさい、黙ってろ」
それどころじゃない。綾を──志求磨を助けに行かなくては。わたしは席を立つ。
「お前っ、なんて口の利き方だっ」
体育教師の松中が近づいて手を伸ばす。
おい、その毛むくじゃらの手でわたしに少しでも触れてみろ。タダじゃ済まない──。
わたしは異世界の《剣聖》になったつもりで殺気を飛ばす。
松中はピタリと動きを止め、汗をだらだらと流している。蛯原が怪訝な顔で聞いた。
「ま、松中先生? どうしたんですか?」
「蛯原先生……とんだところでわたしの護身は完成してしまったようだ。真の達人は危機が訪れる前にそれを回避してしまう。わたしは気付いてしまったのだよ。この羽鳴……到底わたしの手に負える相手ではない」
松中はそのままペタンと尻もちをつく。
今度は社会科の教師、佐保が躍り出る。
「惑わされないでっ! すべては悪霊が原因なのです! わたしにははっきりと見える。羽鳴に取り憑いている子供の霊の姿がっ──」
わなわなとアルマを指さしながら叫ぶ。
いや、見えてるも何も実在してるから。座敷わらしと言ったのはわたしだが、マジで信じてるのか?
佐保はふにゃらむにゃらと呪文を唱えながらわたしの後ろへ回り込む。
「迷える魂よっ、この者から出ていくのですっ! 悪霊退散っ、ぃええいっ! ええいっ!」
バシバシとわたしの首や背中を叩く。
痛っ……ムカつくなぁ、このオバハン。
追い払おうとしているアルマは目の前にいるのに、なんでわたしをブッ叩くんだ。
佐保を押し退け、アルマの手を引いて生徒指導室を飛び出した。
「羽鳴っ、待てっ!」
蛯原の呼び止める声が聞こえたが、無視。
廊下を走り抜け、下駄箱で急いで靴を履き替えて校舎の外へ。
帰りのバス停。
いまかいまかとバスを待つ。
以前はバスに乗ろうとしたタイミングで異世界に行けた。なんらかの法則なのか──他に方法が分からないから、試すしかない。
まず、わたしが強く願うこと。それは綾のことを助けようと強く想ってるから問題ないはず。
あとは異世界の《召喚者》と波長が合えば──向こうもわたしを喚ぼうとしているなら、成功するはずだ。ナギサ、頼んだぞ。
バスが到着した。あ、その前にアルマにも確認しないと。
「アルマ。わたしはシエラ=イデアルに綾を探しにいくけど、アルマはどうする? 家で待っておく?」
両親なら何も言わずアルマの面倒を見てくれるだろう。アルマ自身も年齢の割にはかなりしっかりしているので、心配はない。
だがアルマは首をブンブンと横に振る。由佳と一緒に行く、とぎゅっと手に力を入れた。
「うん。分かったよ、アルマ。またわたしに力を貸してくれ」
わたしはアルマの頭を撫で、ふたりでバスに乗り込む。さあ、行くぞ、異世界シエラ=イデアルへ──。
…………………何も起こらない。乗降口で固まっているわたしに、運転手がどうしました? と話しかけてくる。
わたしはいえ、別に……とギクシャクした動きでいつものうしろの席へ向かう。
「おかしい。強く願ったのに。向こうでナギサがサボってんのか……」
綾(志求磨)はこっちの世界と異世界を行き来するのにナギサの《召喚者》の力を利用していた。
もし、綾の身に何かあれば知らないはずはない。
わたしにもどうにかして報せようとするし、そちらに喚ぼうともするはずだ。
「もしかしたら、ナギサにも何かあったのかも……」
アルマが不安げな眼差しで見上げてきた。
その可能性もある。だとしたら、わたしが異世界に行ける方法が無いという事になる。
どうしようかと思案しているうちに、家の近くのバス停まで着いてしまった。
降りるときも試してみたが、やはり同じだ。何も起きない。
家に帰る途中で綾に何度か電話をかけてみる……ダメだ。朝と同じく繋がらない。
「大丈夫、何か方法があるはず」
自分に言い聞かせ、アルマとともに家の中へ。そうだ、帰りに綾の家に行くつもりだったんだ。とりあえず荷物を置いてから行こう。
二階の自分の部屋へ。ドアを開けてから、フッ、と足元から落ちる感覚。
「由佳っ!」
アルマの声。手を伸ばすが──届かない。
周囲が闇に包まれ、一瞬のうちにトンネルを抜けるように光が見えた。
飛び出した先は──今にも雨が降りだしそうな薄暗い空。
草木が少なく地肌が見えた平地。
そして──ドドドド、とこちらに近づいてくる音。
大勢の兵士だ。鎧を身にまとい、槍や剣を手にこちらへ突進してくる。
ここはまさか……戦場か!
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる