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第2部 消えた志求磨
14 砂漠での再会
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「羽鳴由佳! 掴まれっ」
楊が上から身を乗りだし、棒を伸ばしてきた。
棒の先を左手一本で掴む。グンッ、と見た目とは意外な怪力で引き上げられた。わたしは無事に砂の穴から脱出。
ゴバアァッ、と穴から巨大な何かが顔を出す。またサンドワームだ。だが今度のはデカイ。さっきの10倍はある。
危なかった。楊の助けがもう少し遅かったらあの気味の悪い口に飲み込まれていたかもしれない。
大蛇のように鎌首をもたげてこちらに口を開けた。
「シッ!」
太刀風を放つ。大型サンドワームはその体躯に似合わない素早さでかわし、地面に潜った。
わたしは納刀──次に魔物が飛び出してきた時に備える。
辺りは静まりかえる。楊は地面に棒を突き刺し、そこに耳を当てた。何をしているのだろうか。
「楊……」
呼びかけると人差し指を口元にもっていく楊。
静かにしろというわけか。まさかあの棒から砂中にいる大型サンドワームの動きを探知しているのか。
急にザッ、と反転する楊。大型サンドワームが姿を現した。そこへ棒の連打。
ドドドドンッ、と縦一直線に打たれた大型サンドワーム。
ギアアッ、と叫びながらその巨体をよじらせ楊の真上へ。その口の牙で噛み砕こうとしている。
「危ないっ!」
神速で接近。そして名刀変化。
大太刀──名刀鋼牙。
ガチイッ、と刀で鋭い牙を防ぐ。
身体全体に大型サンドワームの重量。潰されそうになるが──片ヒザを曲げ、溜めながら柄をぐうっ、と握り直す。鋼牙の技、斬壊。
「せやあぁっっ!」
強引に振り抜く。大型サンドワームの頭部が吹っ飛び、胴体が真っ二つになった。
この鋼牙のフォーム独自の技、斬壊は斬撃、打撃とふたつの属性を持つ。さらに発動前後に多少のダメージを受けても怯まずにブッ放すことができる。
「すごい……この大きいほうの魔物は多分、上級魔物だ。それを一撃で」
楊がそうやって褒めるものだから、わたしはいやあ、ハハハと照れ笑い。鋼牙のフォームを解除した。
突然──衝撃。下から突き上げられた。
わたしは砂とともに宙に舞い上げられ、刀を落とす。下で待ち受けているのは倒したはずの大型サンドワーム。いや、はじめから2体いたのか。
くそっ、と空中で体勢を整える。落とした刀を探すが見当たらない。砂に埋もれてしまったか。
地上では楊が魔物を引き付けようと攻撃を加えている。
だが武器は竹串や木の棒。大型の魔物に致命傷は与えにくい。対人戦では滅法強いのに……これが楊の弱点か。
ドオオッ、と魔物が暴れだした。
楊が弾き飛ばされる。わたしの落下地点で待ち受ける大型サンドワームの口──。
その横っ面にドドドドッ、とナイフが突き刺さった。しかも刺さった部分がビキビキと凍結。このナイフはまさか。
ギャアアアッッ、と転がる魔物。わたしはそれを避けて無事に着地。そして名刀変化。
刀は手元に無い。しかし鞘に願望の力を集中させ、近くにあれば反応させる事ができる。
脇差──名刀燕雀。
飛剣の技を発動。砂中からボッ、と刀が飛び出した。
わたしの横をすれ違うようにヒュオッ、と駆け抜ける影。あれは──間違いない。
健康的な褐色の肌、丸みを帯びた銀髪のショートカット。ヘソ丸出しタンクトップにショートパンツにサンダル。
わたしと同い年くらいの少女は口元を隠したストールをなびかせ、跳躍。わたしは走りながら刀をキャッチ。
少女は回転しながら落下、大型サンドワームの頭部に二刀ダガーを深々と突き立てた。
わたしは砂上を滑るように移動。魔物の胴体をビイーッ、と裂いた。
魔物は打ち上げられた魚のようにビタンビタンとのたうっていたが、少女がダガーを引き抜くと完全に沈黙した。
「──アルマッ!」
わたしはすぐに駆け寄る。
やはりこの世界に転移していた。《アサシン》アルマ・イルハム。
アルマも駆け寄ってきてわたしに抱きついた。
なんかストールの中でもにょもにょいっているが……とにかく無事でよかった。
アルマの説明によると、わたしと同じタイミングでこちらの転移に成功したが、アルマだけこの砂漠地帯に飛ばされたらしい。
「サーブルはあたしが転移したはじめての場所だったからかも……」
なるほど……ナギサの《召喚者》の能力も完璧ではないらしい。
アルマはサーブルの領都で魔物退治の仕事を引き受け、サンドワームを追ってここまで来たようだ。
「由佳、アイツ敵なのになんで一緒にいるの……?」
アルマの不機嫌な声。楊のことを言っているのか。
わたしはこれまでのいきさつを説明。ナギサのこと、華叉丸のこと、志求磨が《アライグマッスル》と一緒かもしれないこと……。
「……わかった。由佳がそう言うなら……アイツは今は仲間……」
渋々納得してくれたようだが、楊がよろしくと頭を下げるとアルマはわたしの後ろにヒョイと隠れてもにょもにょ呟いている。口元を隠しているのが自分と被ってるからキライだとかどうとか。
「アルマ。そのサーブルの領都にいたんなら、志求磨の噂は聞かなかったか?」
「……ううん、聞かない。《アライグマッスル》はたしかに一週間前にはいたらしいけど。志求磨が一緒だったかどうかは分からない」
「そうか。もう一緒に行動してないのかもしれないな。どうしようか……」
わたしが迷っていると、楊はこのままサーブルの領都には寄って情報を集めたほうがいいと提案した。
たしかにそうするしかないか。志求磨の情報は期待できないが、《アライグマッスル》の行き先ぐらいは分かるかもしれない。
楊が上から身を乗りだし、棒を伸ばしてきた。
棒の先を左手一本で掴む。グンッ、と見た目とは意外な怪力で引き上げられた。わたしは無事に砂の穴から脱出。
ゴバアァッ、と穴から巨大な何かが顔を出す。またサンドワームだ。だが今度のはデカイ。さっきの10倍はある。
危なかった。楊の助けがもう少し遅かったらあの気味の悪い口に飲み込まれていたかもしれない。
大蛇のように鎌首をもたげてこちらに口を開けた。
「シッ!」
太刀風を放つ。大型サンドワームはその体躯に似合わない素早さでかわし、地面に潜った。
わたしは納刀──次に魔物が飛び出してきた時に備える。
辺りは静まりかえる。楊は地面に棒を突き刺し、そこに耳を当てた。何をしているのだろうか。
「楊……」
呼びかけると人差し指を口元にもっていく楊。
静かにしろというわけか。まさかあの棒から砂中にいる大型サンドワームの動きを探知しているのか。
急にザッ、と反転する楊。大型サンドワームが姿を現した。そこへ棒の連打。
ドドドドンッ、と縦一直線に打たれた大型サンドワーム。
ギアアッ、と叫びながらその巨体をよじらせ楊の真上へ。その口の牙で噛み砕こうとしている。
「危ないっ!」
神速で接近。そして名刀変化。
大太刀──名刀鋼牙。
ガチイッ、と刀で鋭い牙を防ぐ。
身体全体に大型サンドワームの重量。潰されそうになるが──片ヒザを曲げ、溜めながら柄をぐうっ、と握り直す。鋼牙の技、斬壊。
「せやあぁっっ!」
強引に振り抜く。大型サンドワームの頭部が吹っ飛び、胴体が真っ二つになった。
この鋼牙のフォーム独自の技、斬壊は斬撃、打撃とふたつの属性を持つ。さらに発動前後に多少のダメージを受けても怯まずにブッ放すことができる。
「すごい……この大きいほうの魔物は多分、上級魔物だ。それを一撃で」
楊がそうやって褒めるものだから、わたしはいやあ、ハハハと照れ笑い。鋼牙のフォームを解除した。
突然──衝撃。下から突き上げられた。
わたしは砂とともに宙に舞い上げられ、刀を落とす。下で待ち受けているのは倒したはずの大型サンドワーム。いや、はじめから2体いたのか。
くそっ、と空中で体勢を整える。落とした刀を探すが見当たらない。砂に埋もれてしまったか。
地上では楊が魔物を引き付けようと攻撃を加えている。
だが武器は竹串や木の棒。大型の魔物に致命傷は与えにくい。対人戦では滅法強いのに……これが楊の弱点か。
ドオオッ、と魔物が暴れだした。
楊が弾き飛ばされる。わたしの落下地点で待ち受ける大型サンドワームの口──。
その横っ面にドドドドッ、とナイフが突き刺さった。しかも刺さった部分がビキビキと凍結。このナイフはまさか。
ギャアアアッッ、と転がる魔物。わたしはそれを避けて無事に着地。そして名刀変化。
刀は手元に無い。しかし鞘に願望の力を集中させ、近くにあれば反応させる事ができる。
脇差──名刀燕雀。
飛剣の技を発動。砂中からボッ、と刀が飛び出した。
わたしの横をすれ違うようにヒュオッ、と駆け抜ける影。あれは──間違いない。
健康的な褐色の肌、丸みを帯びた銀髪のショートカット。ヘソ丸出しタンクトップにショートパンツにサンダル。
わたしと同い年くらいの少女は口元を隠したストールをなびかせ、跳躍。わたしは走りながら刀をキャッチ。
少女は回転しながら落下、大型サンドワームの頭部に二刀ダガーを深々と突き立てた。
わたしは砂上を滑るように移動。魔物の胴体をビイーッ、と裂いた。
魔物は打ち上げられた魚のようにビタンビタンとのたうっていたが、少女がダガーを引き抜くと完全に沈黙した。
「──アルマッ!」
わたしはすぐに駆け寄る。
やはりこの世界に転移していた。《アサシン》アルマ・イルハム。
アルマも駆け寄ってきてわたしに抱きついた。
なんかストールの中でもにょもにょいっているが……とにかく無事でよかった。
アルマの説明によると、わたしと同じタイミングでこちらの転移に成功したが、アルマだけこの砂漠地帯に飛ばされたらしい。
「サーブルはあたしが転移したはじめての場所だったからかも……」
なるほど……ナギサの《召喚者》の能力も完璧ではないらしい。
アルマはサーブルの領都で魔物退治の仕事を引き受け、サンドワームを追ってここまで来たようだ。
「由佳、アイツ敵なのになんで一緒にいるの……?」
アルマの不機嫌な声。楊のことを言っているのか。
わたしはこれまでのいきさつを説明。ナギサのこと、華叉丸のこと、志求磨が《アライグマッスル》と一緒かもしれないこと……。
「……わかった。由佳がそう言うなら……アイツは今は仲間……」
渋々納得してくれたようだが、楊がよろしくと頭を下げるとアルマはわたしの後ろにヒョイと隠れてもにょもにょ呟いている。口元を隠しているのが自分と被ってるからキライだとかどうとか。
「アルマ。そのサーブルの領都にいたんなら、志求磨の噂は聞かなかったか?」
「……ううん、聞かない。《アライグマッスル》はたしかに一週間前にはいたらしいけど。志求磨が一緒だったかどうかは分からない」
「そうか。もう一緒に行動してないのかもしれないな。どうしようか……」
わたしが迷っていると、楊はこのままサーブルの領都には寄って情報を集めたほうがいいと提案した。
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