異世界の剣聖女子

みくもっち

文字の大きさ
127 / 185
第2部 消えた志求磨

19 追跡者

しおりを挟む
 サボテンの魔物たちを倒し、変身を解く山中大吉やまなかだいきち
 いや、足元から1体飛び出してきた。隠れていたのか。 
 不意をつかれ、ひっくり返る山中大吉。上から襲いかかるサボテンの魔物。
 
「シッ!」

 居合いからの抜刀。飛ぶ斬撃、太刀風たちかぜが魔物を吹っ飛ばした。

 ふう、なんとか間に合った。
 刀を鞘に納めると、山中大吉が獣のようにダダダと近寄ってくる。な、なんだよ……助けてやったのになんか文句あるのか。

 山中大吉はすっ、と人差し指をこちらに近づけてきた。それを見た御手洗剛志みたらいつよしがおお、と声をあげる。

「それは彼の友好の印なのだよ。キミは彼に認められたのだ。さあ、彼の指に君の指を合わせたまえ」

 なんだかよく分からないが、言われるがままに山中大吉の指にわたしの人差し指を近づけた。
 なんかハリウッドの有名なSF映画のBGMが聞こえてきたぞ。指どうしが触れると、ピカーッ、と光を放つ。

「オマエ、オレのトモダチ」

 山中大吉がどこか照れたような笑みをみせる。わたしはどう反応していいか分からずハハ、と愛想笑いで返した。



 魔物たちの襲撃を受けながらも順調に砂漠の移動を続け一週間。
 なんのトラブルもなく砂漠を移動できているのはアルマのおかげだ。
 元々はこの砂漠地帯に住んでいただけのことはある。
 どこも同じような景色でも迷わないし、あのサボテンみたいな植物系の魔物以外ならすぐに探知する。
 野営の準備もお手のものだし、どこぞのアライグマ男よりずっと頼りになる。

 もうすぐサーブルの西の国境が近いというところで野営。
 この辺りはもう固い土の地面だし、背丈の低い植物も多い。気温的にもだいぶ過ごしやすくなっている。もう夕方ということもあるだろうが。

 夕食の用意をしようとして異変に気付いたのはやはりアルマだった。
 
「何か──来る……」

 上のほうを見上げている。わたし達が来た方向の空だ。
 夕焼け空をバックにこちらに向かってくる無数の影……鳥か? いや、鳥にしてはデカイ……あれは──。

「飛竜だ。飛竜の群れ……待て、先頭に誰か乗っている」

 ヤンが指さし、わたしも目をこらす。
 たしかに先頭の飛竜の上には人間が乗っていた。この魔物の群れを操っているのか。

 いや、近づいてくるにつれ、その姿に見覚えがある。あの青い鎧……たしかノレストの森で戦ったヤツだ。

「《ドラグーン》レオン・ハミルトンだ。テンプルナイツの追跡者……厄介だぞ」

 楊が棒を取り出して構える。他の仲間も戦闘態勢に。
 30体ほどの飛竜の群れ。その飛竜の口が開きカアアア、と赤く発光──まずいっ!

 ドカドカドカアッ、と火の球が発射されて地面に激突。みんなはなんとかかわして無事だが……くそ、まずいぞ。

「シッ!」

 太刀風を放つ。1体に命中し、地面へ落下させたが──他の飛竜の反撃。かわすので精一杯だ。これ以上反撃は難しい。アルマも投げナイフで1体は撃墜できたが、同じ状況に。他の仲間たちは上空の敵に対する攻撃方法がない。

《ドラグーン》レオンが槍をばっ、とこちらに向ける。やばい、今度は完全に囲まれている。
 飛竜の一斉攻撃──。
 ドドドドドンッ、と先ほどよりも強力な攻撃。わたし達は避けられず、爆撃を受けたように粉々に──なっていなかった。無傷だ。これは……?

「ぬう、空からの攻撃とは卑怯な! 正々堂々、降りてきて勝負しろっ!」

 御手洗剛志の声。いや、あのアライグマのマスクにマッチョなボディー。《アライグマッスル》に変身済みだ。ということはこの辺りはダメージ無効というわけだ。いいタイミングだぞ、おっさん。

《アライグマッスル》御手洗剛志の能力は、その場の戦闘を全て【特撮番組で起きた演出】に変えることができる。
 いかに相手にダメージを与えようとしても、見た目が派手なだけの火花が散ったり爆発が起きるだけだ。もちろんこちらからの攻撃も無効化されてしまうわけだが。

「がううっ、がうっ!」

「む、どうした? 《ガマゾン》よ、何か策があるのか」

「があうっ、あるっ。オレにまかせろ!」

 すでに山中大吉も《ガマゾン》に変身している。口からベロォ~と長い舌を出して《アライグマッスル》に巻きつける。

「むおっ、気持ち悪いぞ《ガマゾン》! 何を……うおおおぉぉぉっっ!」

 ブンブンと舌で《アライグマッスル》をぶん回しはじめる《ガマゾン》。まさか……いや、そのまさかだ。

 ボンッ、と空中へ投げられた《アライグマッスル》。ドドドッ、と飛竜たちに激突していく。そして落下。落下地点で《アマゾン》が舌でキャッチ。再びぶん回して空へと投げる。

 飛竜たちは次々地面へと落ちていく。死んだわけではない。すぐに起き上がって空へ羽ばたくが、レオンの指示を無視してどんどん飛び去っていく。
 そう、これが《アライグマッスル》のもうひとつの能力、魔物鎮静化だ。《アライグマッスル》に攻撃された魔物はどんな凶暴なヤツでも急におとなしくなり、去っていく。

 度重なる人間ロケットに《アライグマッスル》は目を回して変身が解けた。だが、残す敵はレオンと飛竜が6体。これならなんとかなりそうだ。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

処理中です...