130 / 185
第2部 消えた志求磨
22 Vチューバー、ヒグマアイ
しおりを挟む
青の館。ノックしようとする前に、扉が勝手にギギィー、と開いた。そのまま入ってきていいという意味だろうか。
わたし達が屋敷の中に入ると、薄暗い通路の両側の灯りがボボボッ、とついた。
カーラさんの青の館……治療室以外はあまりよく見たことがなかった。
手前の広間にカーラさんの姿はない。大きなテーブルにソファー、壁紙、絨毯……やはり全てが青色で統一されている。
壁には干した薬草のようなものがたくさんぶら下がっている。
テーブルの上には開きっぱなしの本や理科の実験で使うような器具類。粉末状の薬っぽいもの、何かの骨片、スライム状の不気味な液体……そんなものが散乱している。
カーラさんはやはり奥の部屋か。
あの時はイカれガンマン……《クレイジーガンマン》クレイグと戦ったあとに志求磨に運びこまれたんだった。
ガチャリとドアを開ける。
その部屋は特に深い青色に包まれている。まるで海の底のようだ。
壁に埋め込まれた水槽で淡い照明に照らされた小魚がゆらゆらと泳いでいる。わたしがはじめてここに来たとき……もう3年前か。あの時と何も変わっていない。
ベッド横のサイドテーブルの横に座っているのは──青いウィッチハットにローブ、杖……間違いない。背を向けているが、カーラさんだ。
いや、なんかおかしい。表面積が……デカイ。
肉が座っている椅子から大きくはみ出ている。コイツはまさか──。
「おい、カーラさんはどこだ」
わたしがそう聞くと、偽カーラはびくっ、と反応してゆっくりとこちらを向いた。
「よ、よく見破ったわね。そうよ、アタシよ。カーラの友人、ウメコ・エキセントリックよ」
肉を揺らしながらウメコは答える。2回目の武道大会でもカーラさんの真似をしていた。コイツがいるということは、本物のカーラさんは不在なのか。
「察しの通り本物のカーラは外出中よ。あら、アンタ……カーラからもらった簪つけてないの? えっ、壊れた? でも簪なしで力を出せるようになったって……えっ、今度は急に出せなくなった? なんかややこしいわね、アンタ」
そう、このウメコがカーラさんから預かったという簪ではじめて《断ち斬る者》になれたんだった。
黒由佳の願望の欠片を取り込んでからは自力で変化できるようになったのだが……ナギサとの一戦以来、うまくいかない。というか、黒由佳を感じることができない。
そのことを説明すると、ウメコはう~ん、と唸りながら手招きする。
「アタシも多少は魔法の心得があるわ。アンタの身体の変化を調べることぐらいはできるはず。ほら、手を出してみて」
言われるがままに右手を出してみる。ウメコの分厚い両手が包み込んだ瞬間、うしろからアルマの声。
「いけない……いつの間にか囲まれている。ゴメン、由佳。油断してた」
敵か──こんなところまで。屋敷の周りを囲んでいるのか。アルマが敵意を持った相手をここまで近付けるとはめずらしい。それほどの使い手というわけか。
「羽鳴由佳。ここは敵を迎え撃つには不向きだ。こちらから外に出たほうがいい」
楊が冷静にうながす。
それはわたしも賛成だ。敵よりも敵の攻撃でこの館が傷つくほうが怖い。
「アンタはここで待ってろ。この部屋から出るんじゃないぞ」
ウメコにそう言い、わたし達3人は館の外へ。
外では黒いヘルメットにプロテクターの警備員のような姿の兵士、20人ほどが並んでいる。またテンプルナイツの連中か。ここから見えないところにも潜んでいるのだろう。
願望者はいないようだ、と思っていたらガラガラガラとテンプルナイツ兵の数人が何かを運んできた。
こ、これは……大きなテレビモニターだ。縦長で大人の身長ぐらいはある。こんなものを異世界によく出せたもんだな。ちゃんと映るのか?
モニターがヴンッ、と音を立てて明るくなる。
そこには16、7歳ぐらいのひとりの少女が映し出されていた。
熊のような耳のついた帽子に熊みたいな手袋。キラキラした瞳でイエーイ、とVサインをしてくる。これってCGってやつか。
どういうつもりだ……と思っていたら頭の中にダダダダ、がきた。
《元祖Vチューバー》ヒグマアイ。
こんなのが願望者なのか。
たまに人外の願望者にはお目にかかるが、まさかCGとは……もともとの人間は何考えてんだ。それにもうひとつ気になることがある。
「アルマ、Vチューバーってなに?」
「……バーチャルユーチューバー。あたしも詳しくは知らないけど、アニメやCGのキャラクターが動画配信するってやつ……」
「ふーん……でも異世界でこんなモニターの中で何が出来るんだ? わけが分からん」
ここでモニター内のヒグマアイがぶほぉっ、と吹き出す。
「いまどきVチューバー知らないなんて、あんたホントに現代人~? まじウケる☆ あ~、そのサムライっぽい格好だからかな? 頭ん中がえどじだいらへんで止まってたりして~☆」
モニターの中でわちゃわちゃ動きながらコイツ……セリフに☆が付くやつなんて初めて見た。
わたし達が屋敷の中に入ると、薄暗い通路の両側の灯りがボボボッ、とついた。
カーラさんの青の館……治療室以外はあまりよく見たことがなかった。
手前の広間にカーラさんの姿はない。大きなテーブルにソファー、壁紙、絨毯……やはり全てが青色で統一されている。
壁には干した薬草のようなものがたくさんぶら下がっている。
テーブルの上には開きっぱなしの本や理科の実験で使うような器具類。粉末状の薬っぽいもの、何かの骨片、スライム状の不気味な液体……そんなものが散乱している。
カーラさんはやはり奥の部屋か。
あの時はイカれガンマン……《クレイジーガンマン》クレイグと戦ったあとに志求磨に運びこまれたんだった。
ガチャリとドアを開ける。
その部屋は特に深い青色に包まれている。まるで海の底のようだ。
壁に埋め込まれた水槽で淡い照明に照らされた小魚がゆらゆらと泳いでいる。わたしがはじめてここに来たとき……もう3年前か。あの時と何も変わっていない。
ベッド横のサイドテーブルの横に座っているのは──青いウィッチハットにローブ、杖……間違いない。背を向けているが、カーラさんだ。
いや、なんかおかしい。表面積が……デカイ。
肉が座っている椅子から大きくはみ出ている。コイツはまさか──。
「おい、カーラさんはどこだ」
わたしがそう聞くと、偽カーラはびくっ、と反応してゆっくりとこちらを向いた。
「よ、よく見破ったわね。そうよ、アタシよ。カーラの友人、ウメコ・エキセントリックよ」
肉を揺らしながらウメコは答える。2回目の武道大会でもカーラさんの真似をしていた。コイツがいるということは、本物のカーラさんは不在なのか。
「察しの通り本物のカーラは外出中よ。あら、アンタ……カーラからもらった簪つけてないの? えっ、壊れた? でも簪なしで力を出せるようになったって……えっ、今度は急に出せなくなった? なんかややこしいわね、アンタ」
そう、このウメコがカーラさんから預かったという簪ではじめて《断ち斬る者》になれたんだった。
黒由佳の願望の欠片を取り込んでからは自力で変化できるようになったのだが……ナギサとの一戦以来、うまくいかない。というか、黒由佳を感じることができない。
そのことを説明すると、ウメコはう~ん、と唸りながら手招きする。
「アタシも多少は魔法の心得があるわ。アンタの身体の変化を調べることぐらいはできるはず。ほら、手を出してみて」
言われるがままに右手を出してみる。ウメコの分厚い両手が包み込んだ瞬間、うしろからアルマの声。
「いけない……いつの間にか囲まれている。ゴメン、由佳。油断してた」
敵か──こんなところまで。屋敷の周りを囲んでいるのか。アルマが敵意を持った相手をここまで近付けるとはめずらしい。それほどの使い手というわけか。
「羽鳴由佳。ここは敵を迎え撃つには不向きだ。こちらから外に出たほうがいい」
楊が冷静にうながす。
それはわたしも賛成だ。敵よりも敵の攻撃でこの館が傷つくほうが怖い。
「アンタはここで待ってろ。この部屋から出るんじゃないぞ」
ウメコにそう言い、わたし達3人は館の外へ。
外では黒いヘルメットにプロテクターの警備員のような姿の兵士、20人ほどが並んでいる。またテンプルナイツの連中か。ここから見えないところにも潜んでいるのだろう。
願望者はいないようだ、と思っていたらガラガラガラとテンプルナイツ兵の数人が何かを運んできた。
こ、これは……大きなテレビモニターだ。縦長で大人の身長ぐらいはある。こんなものを異世界によく出せたもんだな。ちゃんと映るのか?
モニターがヴンッ、と音を立てて明るくなる。
そこには16、7歳ぐらいのひとりの少女が映し出されていた。
熊のような耳のついた帽子に熊みたいな手袋。キラキラした瞳でイエーイ、とVサインをしてくる。これってCGってやつか。
どういうつもりだ……と思っていたら頭の中にダダダダ、がきた。
《元祖Vチューバー》ヒグマアイ。
こんなのが願望者なのか。
たまに人外の願望者にはお目にかかるが、まさかCGとは……もともとの人間は何考えてんだ。それにもうひとつ気になることがある。
「アルマ、Vチューバーってなに?」
「……バーチャルユーチューバー。あたしも詳しくは知らないけど、アニメやCGのキャラクターが動画配信するってやつ……」
「ふーん……でも異世界でこんなモニターの中で何が出来るんだ? わけが分からん」
ここでモニター内のヒグマアイがぶほぉっ、と吹き出す。
「いまどきVチューバー知らないなんて、あんたホントに現代人~? まじウケる☆ あ~、そのサムライっぽい格好だからかな? 頭ん中がえどじだいらへんで止まってたりして~☆」
モニターの中でわちゃわちゃ動きながらコイツ……セリフに☆が付くやつなんて初めて見た。
0
あなたにおすすめの小説
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
少し冷めた村人少年の冒険記 2
mizuno sei
ファンタジー
地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。
不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。
旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー
白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。
その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。
人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。
異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる