異世界の剣聖女子

みくもっち

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第2部 消えた志求磨

24 2戦目はゲーム対決

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 わたしはそのあと5分間はあーだこーだとカメラの前で動いたが、結局いいねの数は8……。
 圧倒的大差でヒグマアイに負けてしまった。

「だから言ったじゃん。わたしにかなうはずないって☆ さ、この調子で2回戦いってみよー!」

 ま、待て。まだ精神的ダメージと心の準備が……。
 わたしが刀を杖がわりにしてヨロヨロしているうちにまたテンプルナイツ兵がガラガラと何かを運んでくる。

「こ、これは──」

 アーケードゲームの筐体である。見覚えがあるぞ、これは人気のスーパーストライクファイターデラックス3PW版だ。

 モニター内のヒグマアイも筐体に座り、スティックを握っている。まさか次の勝負とは。

「ふふーん。見てのとおりゲーム対決! ゲーム実況もVチューバーには人気のジャンルだからね☆ さあ、誰が相手になるの?」

 ヒグマアイがレバーをガチャガチャ動かしながら聞いてくる。

 これは……わたしはひそかにほくそ笑んだ。
 このゲーム……家庭用ゲーム版は持ってるし、地元のゲームセンターでもほぼ負けなしの強さを誇っていた。
 なけなしの小遣いで挑戦してくるガキどもをよく返り討ちにしたものだ。そう、わたしはこう呼ばれていた。《風斬りの由佳》と。

「わたしが出る。このゲームはやったことがある」

 控えめに言いながらわたしが筐体へ座る。アルマもヤンも異論はないようだ。

「由佳、頑張ってね」

羽鳴由佳はなりゆか、頼んだぞ」

 わたしは振り返って親指を立てる。まかせとけ。これはラッキーだ。わたしの得意分野でしかもこのゲームとは。いや、ここはあえて初心者のフリをして相手を油断させる作戦でいこう。

 さっそくキャラクターセレクト。
 ヒグマアイは鈴玉リンユーという中国拳法を使う女性キャラを選んだ。生意気にも上級者向けのキャラクターだ。
 わたしは持ちキャラのルーカスを選ぶ。
 濃い顔をしたアメリカの軍人さんだ。溜め技を使用するので人によっては扱いづらいが、わたしは長年このキャラを使っている。

 3ラウンド制で2ラウンド先取したほうの勝ちだ。  
 ファイッ、と対戦が開始──。
 わたしはルーカスを後退させる。対する鈴玉リンユーは前進。来るか、ならば喰らえ──。

『エアブレード!』

 ルーカスが空気を切り裂く衝撃波を飛ばす。この技はわたしの太刀風たちかぜのモデルになっているのだ。
 
 バシイッ、と鈴玉リンユーにヒット。幸先良し。
 もう一度エアブレードを放ち、次は飛び込みながらのキック、下段蹴り、立ち上がりざまのパンチ。さらにエアブレード。
 相手の体力ゲージをガシガシ削っていく。ヒグマアイがああ、あ~っ、と叫んでいる。

 鈴玉リンユーはたまらずジャンプ。そこから飛び蹴りを放つが──バカめ。
 
『フライングカッター!』

 ルーカスの対空回転蹴り。鈴玉リンユーにまともにヒット。
 ここでK・Oの文字が大きく出る。わたしの圧勝だ。おっと、いけない。初心者のフリをするはずが、つい本気を出してしまった。
 
 ヒグマアイがダン、と筐体を叩きながらわたしをにらむ。背後にはドドドドと演出の文字が浮かびあがっている。

羽鳴由佳はなりゆかっ、貴様このゲームやり込んでいるなッ!」

「答える必要はない」

 フッ、決まった。この勝負を選んだのはそっちなのだ。しかし弱い……素人丸出しじゃないか。そんな腕前でこの《風斬りの由佳》に勝つつもりでいたのか。

「すごい、由佳強い……」

「さっきまで自信を喪失して死にそうな顔をしていたのに……まるで別人だ」

 アルマと楊がわたしを称賛している。フフ、もっと褒めたまえ。このままストレートで勝利してみせよう。

 第2ラウンドの開始。やはり序盤からわたしが圧倒。早くも相手の体力ゲージを半分まで減らした。
 
「ビ、ビッーチ! ビーッチ! サノバビーッチ!」

 ヒグマアイがヒステリックに叫んだ。ガチャガチャとレバーを動かし、むちゃくちゃにボタンを押す。

 すると鈴玉リンユーの空中からの連続攻撃がヒット。さらにそこから超必殺技が発動。無数の蹴りにルーカスは画面端に張り付けにされる。

「ま、まずいっ」

 油断していた。大きなダメージを負ったルーカスは気絶状態に。完全な無防備──そこへまたヒグマアイのヒステリックなレバーガチャガチャ、ボタン連打。

 それがうまいこと偶然にコンボが繋がり、ルーカスはK・Oされてしまった。
 くそ、たまにある。素人のガチャ戦法……予測がつかない動きをするから不覚を取る場合があるのだ。
 だが、用心していればしょせんは素人。まぐれは2度も通じない。
 
「由佳っ、1勝1敗だよ」

「油断するからだ。最後まで気を抜くな」

 アルマと楊が心配そうな声を出しているが──大丈夫だ。もうお遊びはここまでだ。ここからはわたしは勝負の鬼となろう。

 そう、わたしには必勝の戦法がある。地元のゲーセンで数々のガキどもを泣かし、ヤンキーを逆上させた禁断の戦法が。

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