異世界の剣聖女子

みくもっち

文字の大きさ
134 / 185
第2部 消えた志求磨

26 最終戦ダンス対決

しおりを挟む
「このままじゃ終われない。またわたしが出る」

 ゆらりと前に出る。次こそは不埒なネット民にわたしのスゴさを見せつけてやるのだ。

「待て、羽鳴由佳はなりゆか。もうあとがないんだぞ。お前は2敗してる。もうヤメておいたほうがいい」

 ヤンが止めようとする。
 アルマもうんうんと頷いている。コイツら……。

「でもダンス対決なんだぞ。わたしは地元で賞を取ったことがあるんだ。わたしが出るしかないだろ」
 
「賞ってなんの賞なんだ。生半可な腕前じゃ、あのヒグマアイのいいねの数は超えられないぞ」

 楊の質問にわたしはよくぞ聞いたと胸を張って答える。

「聞いて驚くなよ。わたしの地元で400年の歴史をほこる盆踊り大会で優秀賞をもらったんだ。町内会長に絶賛されたんだぞ。こう腕をぐるぐる回しながら腰をくねらせる動きはわたし以上の者を見たことがないってな……」

 わたしはその場で動きを再現してみせる。
 楊が頭を抱え、アルマも由佳やめて、恥ずかしいと顔を覆った。なんだ、この素晴らしい動きが分からんのか。

「やっぱりダメだ、羽鳴由佳。お前の為でもある。これ以上ネットに恥をさらすな」

「なっ、なんだその言い方! それはわたしと地元の伝統ある盆踊りを侮辱したことになるぞ」

「由佳、落ち着いて。あたしが……出るから」

 楊に詰め寄るわたしを止めながらアルマがもにょもにょと言った。驚いた。あの恥ずかしがりやのアルマがみんなの前でダンスだと……。

「ねえ、まだ決まんないの~? まだならこっちからはじめちゃうよ~☆ ミュージックスタートッ☆」

 しびれを切らしたヒグマアイがモニター内で合図。
 テンポの良いヒップホップが流れ出した。

 ぬう、今流行りの曲か。バーチャルなのにキレッキレな動き、リズム。敵ながら見事。
 うお、CGならではの演出か。背景が変わったり花火が上がったり。エフェクトというやつか。なんかアレずるくね?

「みんな~、応援ありがとー☆」

 最後の決めポーズ。画面にはヒグマアイを褒め称えるコメントが流れっぱなしだ。

「くそ、アイツのいいねは1万5千以上だ。あれを超えるなんて出来るのか、アルマ。やはりわたしが出たほうが……」

「いや、ここはアルマに任せたほうがいい。羽鳴由佳、この勝負は笑いを取る戦いじゃないんだぞ」

……楊め、コイツはわたしをお笑いキャラかなんかと勘違いしているんじゃないのか。この美少女をつかまえてなんて言いぐさだ。

「由佳、大丈夫。あたし、頑張るから……」

 おいおい、本当に大丈夫なのか、アルマ。カメラの前に立ったのはいいが、もう顔は真っ赤だし手足をくねらせてモジモジしている。

「由佳、ほら……朝の番組で踊ったことあるアレ……あの曲流して」

 朝の……ああ、子供番組で今人気の曲だ。学校に行く前に一緒に踊ったことがある。あんな幼稚なので勝てるのか。
 考えてもしょうがない。わたしはアルマを信じてパソコンを操作──曲を流す。曲名は【アフリカ】。

 テレビでは5人くらいの子供がライオンやシマウマの被り物で踊り狂うなんともシュールな映像なのだが……おお、なんともかわいらしい動きだ。恥ずかしがりながらもしっかり踊っている。

 最後の『不安はないさぁ~』のところもうまく踊れた。よくやった、アルマ。だが……だがやはりこの程度では勝てない。おそらくいいねの数はいっても10ぐらいだろう。わたしは目をつむって観念する。この勝負、わたし達の負けだ。
 
「スゴい! 見てみろ羽鳴由佳。このいいねの数を!」

 興奮した楊の声に目を開ける。いいねの数……このわたしが1桁だったんだ。万が一、100程度でも全然足りない……ええっ!?

 いいねの数は2万を超えていた。いや、まだまだ増えている。画面に流れるコメントもずっと止まらない。

『なに、この子超カワイイ』

『恥ずかしそうにしてるところがたまらん』

『特定班、早急にこの美少女の正体求む』

『最初のヤツがヒドかったから余計に良く見えるWW』

 わたしはパソコンの席からずり落ち、モニター内のヒグマアイが悲痛な声をあげた。

「ま、まさかわたしが負けるなんて……はっ、もしかしたらはじめの2戦はわざとかませ犬をしかけ、最後に秘密兵器を出してそのギャップでいいねの数を稼ごうという戦略だったの? ……流石ね。わたしの完全な負けだわ。でも覚えてなさい。あなた達は団長には絶対に勝てない」

 ヒグマアイの映っているモニターにザザッ、ザーとノイズが走り、ブツンと切れて真っ暗になった。
 テンプルナイツ兵達はモニターをガラガラと押しながら、あっという間に逃げていった。

 勝った……勝ったのだが、わたしはなんかひどく負けた気がする。
 わたしの肩にポン、と楊が手を置く。ヤメて。なんか泣きそう。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界と地球がダンジョンで繋がった ー異世界転移者の私ー

白木夏
ファンタジー
2040年の初春、突如として地球上の主要都市に謎のダンジョンが出現した。 その特異性は明らかで、人口密集地を中心に出現し、未開の地には一切現れないという法則性を帯びていた。 人々は恐怖に震えつつも、未知なる存在に対する好奇心を抑えきれなかった。 異世界転移した最強の主人公のほのぼのライフ

処理中です...