異世界の剣聖女子

みくもっち

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第2部 消えた志求磨

31 復活のフジータ

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 岩山の上──カンカンッ、という効果音とともにアップになる。
 そこにはとんでもないツンツン頭におなじみの戦闘スーツを着た男。あ、あの男は──。

「ふっふっふ。久しぶりだな、《剣聖》。待っていたぞ」

 偉そうに腕組みをしながら見下ろしている。
 たしかあの男は3年前のセペノイアの武道大会で、はじめてわたしと戦った(実際は戦ってもいない)フジータという男だ。
《憤怒僧》岩秀がんしゅうによって造られた人工の願望者デザイア。本来は藤田というらしいが……弱っちいくせによくまだ生きてたな。

「貴様に倒された多くの藤田は復讐を忘れ、もはや戦いを放棄したが俺は違うぞ。宿敵パカロットとの戦いを経てさらにパワーアップした俺の力と新しい仲間を見て驚くがいい」

 フジータの背後からひとりの男が現れた。
 丈の短いジャケットに剣を背負った青い髪の青年。わたしの頭の中にダダダダと文字が打ち込まれた。

《未来から来た戦士》チョナンクス。

……もはや出オチだ。フジータと同じくブサイクな顔……こちらは純粋な願望者デザイアなんだろうが、たいてい成りたい願望が具体的すぎるとこういう失敗が多い。

 チョナンクスは背中の剣に手をかけ、一歩前に出る。

「父さん、ここは僕に任せてください。あの人造人間たちは僕が倒す」

 誰が人造人間だ。それに親子というのもウソだろ。願望者デザイアなんだから。よくあんなキャラ見つけてきたな……。

 わたしとアルマはふたりを無視して行くことにした。
 
「おいっ、無視をするな! 俺は以前のフジータじゃないぞ。見るがいい、このスーパーフジータの姿をっ」

 たしかに若干、見た目は変わってる。顔にゴーグルは付けてないし、戦闘スーツの形状もちょっと変わってる。
 だがそれ以外は……やっぱりコスプレに失敗した感じの残念な人でしかない。

「はあああああっっ!」

 フジータが気合いを入れながら叫ぶと、身体の周りが黄金色のオーラに包まれた。
 いや、それだけじゃない。髪の色も黒から金色に変化。おお、スゴい。立っている岩山もグラグラと揺れている。本当にパワーアップしたのかも。

「そしてこの技を受ける勇気が貴様にあるかっ!? 無いだろうなぁ~! 貴様はただの臆病者だ! ションベンたれのクソッたれのド貧乳女だっ!」

 フジータは手足を大の字に開き、それから両手を突き出す構え。

「じ、人造人間を挑発している……! 攻撃を避けさせないために」

 チョナンクスがワナワナ震えている。だから誰が人造人間だ。にしても、あのフジータのヤツ……ボロクソに言いやがって。
 無視しようと思ったが、気が変わった。いいだろう。その挑発に乗って技を受けてやる。

「ぬううううっっ!」

 両手にエネルギーを集中するフジータ。BGMが緊迫したものに変わった。

「い、いけない父さん! その技は……この世界そのものが消えてしまうっ!」
 
 チョナンクスの怯えた声。ウソつけ。そのアホの願望の力は多分《アライグマッスル》と同じで、見た目の演出に大部分を使っている。
 今から使う技も派手なだけで威力なんて無いだろう。
 
「オーーラスッッ、スパァーークッッ!」

 フジータの叫びとともに両手から強烈なエネルギー波が……出てない。ちょろっ、と線香花火ぐらいの火花が出ただけだ。

「うわあーーっ! この世界がぁーっ、この世界そのものがぁーっ! 父さーんっ、と、父さーんっ!」

 チョナンクスが岩山の上で転げ回っている……。もう原作のキャラ設定とか関係なくなってる。ひどいな、コイツらのドラゴ○ボールごっこは……。
 
 突然、グオオオオッ、と巨大な咆哮。
 なんだ、何事だ──。
 岩山の陰から毛むくじゃらの生物がドドッ、ドッ、と飛び出した。

 デカい……魔物か。4人も願望者デザイアがかたまっているせいだろうが、くしくも大猿の化け物。見た目もサイズも例のやつにそっくりだ。

 大猿の魔物が拳をふるい、フジータとチョナンクスが乗っている岩山を破壊した。
 ああ……カッコつけて高い所にいるからだ。あれで死んだかもしれない。

 大猿は興奮したように雄叫びをあげ、今度はこちらに向かってきた。
 
「由佳、あれ上級魔物……気を付けて」

 アルマが飛び出す。上級……前に戦った大サソリとかグリフォンぐらいの強さか。たしかに油断はできない。

 ドドドドッ、と地を揺るがしながら突進。
 ボッ、と振り下ろした拳をアルマが横に跳んでかわす。
 かわしながら投げナイフ。顔を狙ったものだが、大猿はなんとシッポではたき落とした。

 ボッ、ボボッ、とそこらの岩をつかんで投げつけてくる。
 あんなもの喰らったらひとたまりもない。
 アルマは軽やかに跳躍、わたしは神速で滑るように移動。岩の砲弾をかわした。

 ガアアァーッ、とイラついたように大猿が天に向かって吼えた。
 岩山の隙間からチョロチョロと現れたのは小型の魔物。見た目は大猿にそっくりだ。

 牙をむき出し、ギャアギャアと喚きながら襲いかかってきた。

 
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