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第2部 消えた志求磨
35 意外な再会
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2階に上がると、1階と同じ広くて特に何も無い空間。
違ったのは壁沿いにずらっと扉が並んでいることか。
これが危険な願望者を閉じ込めている牢獄みたいなものか。
扉はブ厚く、とても頑丈そうだ。
こちらから開けられるか? いや、たとえできたとしても大変そうだし、出てきた願望者がわたし達の味方だとは限らない。
それにいっぺんに出てきてわたしの頭の中にたくさんダダダダがきても困る。悪いがここは上へ行くことが先決だ。
中央奥の階段を目指しアルマと走る。だが階段から下りてくるひとりの人間が見え、立ち止まった。
青い竜を模した鎧に身を包んだ男──。
《ドラグーン》レオンだ。
レオンは槍を手にこちらへ歩いてくる。
やるつもりか。コイツとはすでに2度も戦っているが……立ちはだかるなら何度でも倒してやる。
パッとレオンが何かを投げてよこした。
それを受けとる。これは……カギだ。
「俺はもうお前たちとは戦うつもりはない。それはお前の仲間がこの2階に閉じ込められている部屋のカギだ……これで借りは返したぞ」
レオンはそう言ってわたし達を通りすぎて1階への階段へ向かう。
「仲間って誰が!? こんなところに捕まってるなんて聞いてないぞ。おい、どこ行くつもりだ」
ここへ来たのはカーラさんに会うためだ。誰かを救出するつもりじゃない。
「自分の目で確かめてみろ。この塔は上に行くほど凶悪な願望者が捕らえられている。そしてそこを守るテンプルナイツも強力にな……。俺はお前らに協力した以上、ここにはいられん。さらばだ」
レオンは振り向きもせず、そう言って去っていった。
わたしの手には2ー5と書いてあるカギ。
多分、この2階の5番の扉のカギという意味だろうが……。
わたしはアルマにもカギを見せる。
「そんな凶悪な仲間なんていたっけ……? あ、無実の罪で捕まってるかもしれないけど」
「……どうするの由佳。開けてみるの? もしかしたらあの男のウソかも」
その可能性も否定できない。中からものすごくヤバいヤツが出てくるかも。
しかし、あのレオンという男……変人ぞろいのテンプルナイツの中ではまともだし、そんなウソはつきそうにない。
「わたしは開けてみる。今は仲間がひとりでも欲しいところだからな。いざというときは頼むぞ、アルマ」
「……うん。でもカギはあたしに開けさせて。危険を察知するのはあたしのほうが得意だから」
たしかにアルマのほうが安全かもしれない。
わたしはアルマにカギを渡し、少し離れた場所でいつでも太刀風を放てる構え──。
アルマが5と書いてある扉のカギ穴にカギを差し込む。
ガチャン、と重たい音。
ギギギと開いた隙間からアルマが中を覗きこみ──すぐに慌てて閉めた。
「ダメ、由佳……スゴい変態がいる。やっぱり罠だった」
「へ、変態だって? いったいどんなヤツが」
「凶悪犯みたいな顔で筋肉ムキムキ。だけどフリフリの女児服着てる……パンツ丸出しの変態」
「…………いや、待てアルマ。そいつはもしかしたら──」
今度はわたしが扉を開ける。そんな特徴を持つ願望者はこのシエラ=イデアルにひとりしかいない。
やはり。狭い部屋の奥でスクワットをしているゴツい男──《護法鬼神》ビノッコだ。
美少年好きの女医、日之影宵子の助手兼ボディーガードの男。
ふっ、ふっ、とスクワットを続け、身体からシュウウと湯気が出ている。
こちらに気付き、ぬうっ、と凶悪なツラを向けてきた。うわ、知り合いとはいえ怖ぇ……。
「おお、貴殿らは……! まさかそれがしを助けにここまで? ……くっ、持つべきものは友というが、このような危険な場所に」
感動しているのかビノッコは涙を流している。
助けたのは偶然というかレオンのおかげなんだが……。
アルマもビノッコのことを思い出したようだ。
たしかに脱獄した死刑囚みたいな顔をしているが、礼儀正しく正義感の強い男。なぜ捕まっていたのか。
理由を聞くと、宵子とビノッコはナギサ軍の一部に編成され、葉桜溢忌の残党を追う任務に就いていたそうだ。
ここまでは志求磨に聞いていた通りだ。もっとも宵子の目的は楊を見つけだすことだったらしいが。
しかし宵子は行く先々で美少年がらみの問題を起こし、ついにはテンプルナイツに目をつけられて捕まったらしい。
ビノッコはその時に抵抗したために同じく捕まったとのこと。
「どうか先生を助けるのに力を貸して頂けまいか。先生はさらに上の階に捕らえられているはず。それがしひとりでは力不足だが、おふたりの助力があれば……!」
宵子もここに捕まっていたのか。楊がいたら名前を聞いただけで逃げ出しただろう。まあ、ついでといったら失礼だが彼女も仲間には違いない。
わたしとアルマは宵子救出に手を貸すことを約束。ビノッコはかたじけない、とヒザをつき、わたしの手をとって大粒の涙を流した。
違ったのは壁沿いにずらっと扉が並んでいることか。
これが危険な願望者を閉じ込めている牢獄みたいなものか。
扉はブ厚く、とても頑丈そうだ。
こちらから開けられるか? いや、たとえできたとしても大変そうだし、出てきた願望者がわたし達の味方だとは限らない。
それにいっぺんに出てきてわたしの頭の中にたくさんダダダダがきても困る。悪いがここは上へ行くことが先決だ。
中央奥の階段を目指しアルマと走る。だが階段から下りてくるひとりの人間が見え、立ち止まった。
青い竜を模した鎧に身を包んだ男──。
《ドラグーン》レオンだ。
レオンは槍を手にこちらへ歩いてくる。
やるつもりか。コイツとはすでに2度も戦っているが……立ちはだかるなら何度でも倒してやる。
パッとレオンが何かを投げてよこした。
それを受けとる。これは……カギだ。
「俺はもうお前たちとは戦うつもりはない。それはお前の仲間がこの2階に閉じ込められている部屋のカギだ……これで借りは返したぞ」
レオンはそう言ってわたし達を通りすぎて1階への階段へ向かう。
「仲間って誰が!? こんなところに捕まってるなんて聞いてないぞ。おい、どこ行くつもりだ」
ここへ来たのはカーラさんに会うためだ。誰かを救出するつもりじゃない。
「自分の目で確かめてみろ。この塔は上に行くほど凶悪な願望者が捕らえられている。そしてそこを守るテンプルナイツも強力にな……。俺はお前らに協力した以上、ここにはいられん。さらばだ」
レオンは振り向きもせず、そう言って去っていった。
わたしの手には2ー5と書いてあるカギ。
多分、この2階の5番の扉のカギという意味だろうが……。
わたしはアルマにもカギを見せる。
「そんな凶悪な仲間なんていたっけ……? あ、無実の罪で捕まってるかもしれないけど」
「……どうするの由佳。開けてみるの? もしかしたらあの男のウソかも」
その可能性も否定できない。中からものすごくヤバいヤツが出てくるかも。
しかし、あのレオンという男……変人ぞろいのテンプルナイツの中ではまともだし、そんなウソはつきそうにない。
「わたしは開けてみる。今は仲間がひとりでも欲しいところだからな。いざというときは頼むぞ、アルマ」
「……うん。でもカギはあたしに開けさせて。危険を察知するのはあたしのほうが得意だから」
たしかにアルマのほうが安全かもしれない。
わたしはアルマにカギを渡し、少し離れた場所でいつでも太刀風を放てる構え──。
アルマが5と書いてある扉のカギ穴にカギを差し込む。
ガチャン、と重たい音。
ギギギと開いた隙間からアルマが中を覗きこみ──すぐに慌てて閉めた。
「ダメ、由佳……スゴい変態がいる。やっぱり罠だった」
「へ、変態だって? いったいどんなヤツが」
「凶悪犯みたいな顔で筋肉ムキムキ。だけどフリフリの女児服着てる……パンツ丸出しの変態」
「…………いや、待てアルマ。そいつはもしかしたら──」
今度はわたしが扉を開ける。そんな特徴を持つ願望者はこのシエラ=イデアルにひとりしかいない。
やはり。狭い部屋の奥でスクワットをしているゴツい男──《護法鬼神》ビノッコだ。
美少年好きの女医、日之影宵子の助手兼ボディーガードの男。
ふっ、ふっ、とスクワットを続け、身体からシュウウと湯気が出ている。
こちらに気付き、ぬうっ、と凶悪なツラを向けてきた。うわ、知り合いとはいえ怖ぇ……。
「おお、貴殿らは……! まさかそれがしを助けにここまで? ……くっ、持つべきものは友というが、このような危険な場所に」
感動しているのかビノッコは涙を流している。
助けたのは偶然というかレオンのおかげなんだが……。
アルマもビノッコのことを思い出したようだ。
たしかに脱獄した死刑囚みたいな顔をしているが、礼儀正しく正義感の強い男。なぜ捕まっていたのか。
理由を聞くと、宵子とビノッコはナギサ軍の一部に編成され、葉桜溢忌の残党を追う任務に就いていたそうだ。
ここまでは志求磨に聞いていた通りだ。もっとも宵子の目的は楊を見つけだすことだったらしいが。
しかし宵子は行く先々で美少年がらみの問題を起こし、ついにはテンプルナイツに目をつけられて捕まったらしい。
ビノッコはその時に抵抗したために同じく捕まったとのこと。
「どうか先生を助けるのに力を貸して頂けまいか。先生はさらに上の階に捕らえられているはず。それがしひとりでは力不足だが、おふたりの助力があれば……!」
宵子もここに捕まっていたのか。楊がいたら名前を聞いただけで逃げ出しただろう。まあ、ついでといったら失礼だが彼女も仲間には違いない。
わたしとアルマは宵子救出に手を貸すことを約束。ビノッコはかたじけない、とヒザをつき、わたしの手をとって大粒の涙を流した。
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