異世界の剣聖女子

みくもっち

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第2部 消えた志求磨

34 巨大ロボ対決

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 ゴンゴンゴン──巨大な扉が開き、中から姿を現したものを見てその場の全員が驚きの声をあげた。

 見上げるほどの赤い巨人。いや、これは……鉄で出来た人型のロボットか。左の肩に誰か乗っている。

「ふっ、わざわざそちらからここまで来るとはな。捕らえにいく手間が省けたというもの」

 おかしな格好をした男だ。目の部分を隠した仮面付きのヘルメットに赤い軍服。わたしの頭の中にダダダダ、と文字が打ち込まれる。

《赤いほうき星》ゾア大佐。
 
「認めたくはないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを」

 何を言っているかよく分からないが、おそらくコイツが塔の門番。
 コイツを倒さないと先へは進めなさそうだが。まさかこの鉄のバケモノと戦わなきゃいけないのか。

「フフ、この機体はな、上級魔物のサイクロプスを参考に設計された最新型のモビ○スーツなのだ。このサイクロプスZの性能を見て驚くがいい」

 ゾア大佐はそう言うとサイクロプスZのウイーン、と開いた胸の部分に颯爽と乗り込む。
 ギョイーンと機体の一つ目が赤く発光し、ズシン、と動きはじめた。

「げ、本当に動きはじめたぞ」

 あんなデカイ鉄の塊を動かすなんてどれほどの願望の力だ。
 グオオ、とサイクロプスZの巨大な足裏が迫る。
 わたし達は慌てて後退した。

「ハハハハハ! 手も足も出まい! お前たちに勝ち目はないぞ! おとなしく降伏するのだな」
 
 スピーカーでも搭載されているのか、コックピット内のヤツの声がここまで響く。くそ、いい気になるなよ。

「待て、ここはわたし達に任せるのだ」

 前に出たのは御手洗剛志みたらいつよし山中大吉やまなかだいきちだ。
 
 御手洗剛志は革ジャンからラクーンマスクを取り出す。山中大吉は胸の前で腕を交差させた。

「そおおぅうおおぉーーちゃっっく!」

「ガアアァーーマアアァーーゾオオォォーーンッッ!」

 ふたりはそれぞれ《アライグマッスル》と《ガマゾン》に変身。しかし、あのデカイの相手にどうするつもりだ。

「これを使う時がきたようだな。元の世界に帰る前、《レッサーパンダラー》間宮京一から託されたこれを」

 アライグマッスルが手に持っているのは1台のスマホ。いや、ただのスマホじゃない。あれは自立式レッサーパンダ型スマホ、嵐太らんたくんだ! 
 うわ、あんなバカになんてものを……。どうなっても知らんぞ。

「新マスター《アライグマッスル》御手洗剛志。指示をお願いします」と、嵐太くんがシブイ声で喋る。《アライグマッスル》はよし、と気分良さげに嵐太くんへ命じた。

「あのロボットに対抗できるメカが必要だ。アライグマシーンは壊れてしまったしな。どうだ、できるか?」

「善処します。わたしに願望の力を込めてください」嵐太くんの言葉に、《アライグマッスル》はスマホを掲げなから叫ぶ。
 
「むうっ、よく分からんが、こうかっ! 正義と筋肉の力を見せてやるっ!」
 
 嵐太くんがビカーッ、と光りだした。
 うわっと《アライグマッスル》が手をはなすと、なんと嵐太くんはズモモモ、と巨大化。

 おおお……マジか。戦隊モノに出てきそうな巨大ロボになったぞ。でも顔はアライグマ……いや、レッサーパンダ? ええい、どっちでもいい。ともかくあのサイクロプスZと同じくらいデカイ。

「正義のロボ、アライグレッサーロボの誕生だ! よし《ガマゾン》、わたしと一緒に搭乗するぞっ」

「ガウッ、わかった。由佳にイイトコ見せる」

《アライグマッスル》と《ガマゾン》はジャンプしてロボットに乗り込んだ。
 アライグレッサーロボの両目がギュイーンと光る。
 あのおっさん、いきなりあんなのを操縦できるのか……?

 ズシン、ズシン、とゾア大佐が乗るサイクロプスZが近づいてくる。

「ほう……見せてもらおうか。連邦のモビ○スーツの性能とやらを」

 サイクロプスZが攻撃をしかける。手には斧の形をした武器。いかん、あんなのが当たったら一発で壊れそうだ。

「ぬうんっ! アライグマッシャーロボバージョンッッ!」

《アライグマッスル》のバカでかい声が響く。
 縞模様のシッポを引き抜いて剣の代わりにするアライグレッサーロボ。
 斧の一撃をガシィーン、と受け止めた。その勢いは強く、サイクロプスZはうしろに数歩よろめく。

「なんと……連邦のモビ○スーツは化け物か!?」

 ゾア大佐の驚愕する声。いや、お前それ言いたいだけだろ。
 おっと、このバカどもが戦っているうちに塔の中に突入しよう。

 アルマとともに塔の中へ。外では2機のロボットが戦う音といちいち叫ぶバカどもの声が続いていた。

「アライグマッシャー、乱れ斬りぃっ!」

「当たらなければどうという事はないっ!」

「ガウッ、俺も動かしたいっ」

「《ガマゾン》、へんなスイッチを押すな。ほら、小さなアライグレッサーロボがたくさん出てきたぞ」

 どんな展開だ……スゴく気になるが先に進もう。
 塔の1階には何もない。2階へと続く階段があるだけだ。
 この先にはいったいどんな敵が……。
 
 

 
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