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第2部 消えた志求磨
53 断ち斬る者・凶
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再度名刀変化。
燕雀のフォームに。飛剣の技なら利き手をケガしている状態でも戦える。
ギャッ、と華叉丸に向けて刀が飛ぶ。
「愚かな……」
華叉丸はアイスブランドを一振り。剣から冷気が発せられ、わたしの刀はビキィッ、と空中で凍りついて落下。
「なにっ──」
床に落ちたわたしの刀はそれ以上動かない。飛ばすことも戻すこともできない。
「丁度いい。ここで試してみるか。凍獄魔剣アイスブランドの力……」
華叉丸が近づいてくる。ビシッ、ビシッと周りから音。大気が急速に冷やされている。
わたしは名刀変化を解除し、そばに落ちている半分折れた刀──黒由佳の刀を左手で拾い、身構えた。
願望の力を高め、黒由佳の刀に集中。
《剣聖》の能力で剣、もしくは剣らしきものを名刀に変えることができる。
だが……変わらない。刀は折れた状態のままだ。
「無駄だ、由佳殿。我の剣化の能力は我にしか解くことはできぬ。他者のいかなる能力でもその形を変えることはできない」
「だったら……元に戻してもらうぞ。お前の力で。この刀の状態から戻せば……黒由佳は生き返るんじゃないのか」
「言ったであろう。それは出来損ないのハンパな刀だと。わずかに残された願望の力でかろうじて剣化はしたものの、それ以上の変化はできぬ。もとより……一度死んだ者は甦らぬよ。たとえこの世界でも」
でも、これが黒由佳なのにはかわりない。
人の姿に戻らなくても、ちゃんとした刀にならなくても──。
「そなたができることはひとつ。我を倒せば剣化は解ける。そうすればその願望の力を取り込み、《断ち斬る者》に変化することはできよう。今のそなたには不可能だが」
「──このっ!」
折れた刀で斬りかかる。華叉丸はスッ、と剣先をこちらに向けた。
ビシビシッ、と刀が凍りつき、わたしの左手まで氷が這い上がってくる。まずい、刀を放さないと──。
突然ゴウッ、とこの地下空間に熱風が吹き荒れる。
熱いっ、火傷しそうだ。だが刀と手の凍結は防げた。この風はもしかして……。
「いい加減にしなさい──あなた達」
やはりカーラさんだ。その双眸が紅く輝き、凄まじい願望の力を放出。近くにいる双子はガタガタと震えてへたり込み、動けなくなっている。
「いかんな……退き時か。目的は果たした。由佳殿、命拾いしたな」
華叉丸はそう言って背を向けた。逃げるつもりか。そうはさせない。
右手の痛みも出血も気にしている場合じゃない。
わたしはその背に向かって飛びかかる。
「──戻れっ」
華叉丸が叫ぶ。ヤツの背にズアアアッ、と無数の刀剣が集まる。ショウや双子も剣になって飛んできたようだ。それらが扇状に並ぶ。
「そして再び行けっ、剣還人化っ!」
華叉丸の背から放たれた刀剣は空中で次々と人の形に変わっていく。
華叉丸が剣に変えていた願望者か。ヤバい、初見の連中が多い。わたしの頭の中に連続でダダダダが打ち込まれ──。
「そなたはいまだ刻印の興奮作用に慣れてないようだな。これだけの数を一度に見たらどうなるかは自明の理」
華叉丸はそう言って願望者達をまた剣に変えて背中へ吸い込むように回収した。
もう……わけがわからない。華叉丸に対する怒りと連続ダダダダのイラつきでおかしくなりそうだ。
わたしは何かを叫びながら折れた刀を振りかざし──。
「……そうだ。その状態で《断ち斬る者》になってはどうか。特別にその刀の剣化を解いて差し上げよう」
華叉丸が振り向きながらニヤリと笑った。
やめろ──なんて恐ろしいことを思いつくヤツだ。こんな状態で《断ち斬る者》なんかになったらきっと暴走する。仲間だろうと見境なく斬りかかるだろう。
左手に持った折れた刀が黒い霧状に変化。
ズウゥッ、と胸に吸い込まれたそれは間違いない。黒由佳の願望の欠片。
「ああァッ! ガアッッ!」
腹の底から脳天に衝撃。わたしの頭の中にダダダダと文字が打ち込まれた。
《剣聖》《断ち斬る者》羽鳴由佳。
左目が──熱い。左腕と左足にゾゾゾゾ、と刺青のような紋様が浮き出る。
右手の傷が一瞬で癒えた。ギャッ、と戻ってきた刀を掴む。
ここまでは今までの《断ち斬る者》と同じだが、髪がぐわっと勝手に持ち上がり、ポニーテールに。
上衣もずれ落ちるように下がり、腰のあたりでぎゅっと締め付けられた。
これは……黒由佳の部分が強く出ている。こんな変化をしたら一体どうなるのか。
ガタガタと歯が鳴り、腕が震える。やっぱり──ダメだ。抑えがきかない。衝動が全身を駆け巡る。
「うううぅあああっっ!」
横薙ぎの一閃。周囲にあった台座をいくつもブッタ斬るが、肝心の華叉丸はすでに姿を消していた。
意識ははっきりとしている。だけど身体が言うことをきかない。
わたしの刀の切っ先はぶるぶる震えながらカーラさんに向けられた。くそ、ヤメろ、その人は敵じゃない──。
燕雀のフォームに。飛剣の技なら利き手をケガしている状態でも戦える。
ギャッ、と華叉丸に向けて刀が飛ぶ。
「愚かな……」
華叉丸はアイスブランドを一振り。剣から冷気が発せられ、わたしの刀はビキィッ、と空中で凍りついて落下。
「なにっ──」
床に落ちたわたしの刀はそれ以上動かない。飛ばすことも戻すこともできない。
「丁度いい。ここで試してみるか。凍獄魔剣アイスブランドの力……」
華叉丸が近づいてくる。ビシッ、ビシッと周りから音。大気が急速に冷やされている。
わたしは名刀変化を解除し、そばに落ちている半分折れた刀──黒由佳の刀を左手で拾い、身構えた。
願望の力を高め、黒由佳の刀に集中。
《剣聖》の能力で剣、もしくは剣らしきものを名刀に変えることができる。
だが……変わらない。刀は折れた状態のままだ。
「無駄だ、由佳殿。我の剣化の能力は我にしか解くことはできぬ。他者のいかなる能力でもその形を変えることはできない」
「だったら……元に戻してもらうぞ。お前の力で。この刀の状態から戻せば……黒由佳は生き返るんじゃないのか」
「言ったであろう。それは出来損ないのハンパな刀だと。わずかに残された願望の力でかろうじて剣化はしたものの、それ以上の変化はできぬ。もとより……一度死んだ者は甦らぬよ。たとえこの世界でも」
でも、これが黒由佳なのにはかわりない。
人の姿に戻らなくても、ちゃんとした刀にならなくても──。
「そなたができることはひとつ。我を倒せば剣化は解ける。そうすればその願望の力を取り込み、《断ち斬る者》に変化することはできよう。今のそなたには不可能だが」
「──このっ!」
折れた刀で斬りかかる。華叉丸はスッ、と剣先をこちらに向けた。
ビシビシッ、と刀が凍りつき、わたしの左手まで氷が這い上がってくる。まずい、刀を放さないと──。
突然ゴウッ、とこの地下空間に熱風が吹き荒れる。
熱いっ、火傷しそうだ。だが刀と手の凍結は防げた。この風はもしかして……。
「いい加減にしなさい──あなた達」
やはりカーラさんだ。その双眸が紅く輝き、凄まじい願望の力を放出。近くにいる双子はガタガタと震えてへたり込み、動けなくなっている。
「いかんな……退き時か。目的は果たした。由佳殿、命拾いしたな」
華叉丸はそう言って背を向けた。逃げるつもりか。そうはさせない。
右手の痛みも出血も気にしている場合じゃない。
わたしはその背に向かって飛びかかる。
「──戻れっ」
華叉丸が叫ぶ。ヤツの背にズアアアッ、と無数の刀剣が集まる。ショウや双子も剣になって飛んできたようだ。それらが扇状に並ぶ。
「そして再び行けっ、剣還人化っ!」
華叉丸の背から放たれた刀剣は空中で次々と人の形に変わっていく。
華叉丸が剣に変えていた願望者か。ヤバい、初見の連中が多い。わたしの頭の中に連続でダダダダが打ち込まれ──。
「そなたはいまだ刻印の興奮作用に慣れてないようだな。これだけの数を一度に見たらどうなるかは自明の理」
華叉丸はそう言って願望者達をまた剣に変えて背中へ吸い込むように回収した。
もう……わけがわからない。華叉丸に対する怒りと連続ダダダダのイラつきでおかしくなりそうだ。
わたしは何かを叫びながら折れた刀を振りかざし──。
「……そうだ。その状態で《断ち斬る者》になってはどうか。特別にその刀の剣化を解いて差し上げよう」
華叉丸が振り向きながらニヤリと笑った。
やめろ──なんて恐ろしいことを思いつくヤツだ。こんな状態で《断ち斬る者》なんかになったらきっと暴走する。仲間だろうと見境なく斬りかかるだろう。
左手に持った折れた刀が黒い霧状に変化。
ズウゥッ、と胸に吸い込まれたそれは間違いない。黒由佳の願望の欠片。
「ああァッ! ガアッッ!」
腹の底から脳天に衝撃。わたしの頭の中にダダダダと文字が打ち込まれた。
《剣聖》《断ち斬る者》羽鳴由佳。
左目が──熱い。左腕と左足にゾゾゾゾ、と刺青のような紋様が浮き出る。
右手の傷が一瞬で癒えた。ギャッ、と戻ってきた刀を掴む。
ここまでは今までの《断ち斬る者》と同じだが、髪がぐわっと勝手に持ち上がり、ポニーテールに。
上衣もずれ落ちるように下がり、腰のあたりでぎゅっと締め付けられた。
これは……黒由佳の部分が強く出ている。こんな変化をしたら一体どうなるのか。
ガタガタと歯が鳴り、腕が震える。やっぱり──ダメだ。抑えがきかない。衝動が全身を駆け巡る。
「うううぅあああっっ!」
横薙ぎの一閃。周囲にあった台座をいくつもブッタ斬るが、肝心の華叉丸はすでに姿を消していた。
意識ははっきりとしている。だけど身体が言うことをきかない。
わたしの刀の切っ先はぶるぶる震えながらカーラさんに向けられた。くそ、ヤメろ、その人は敵じゃない──。
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