異世界の剣聖女子

みくもっち

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第2部 消えた志求磨

66 ヒューゴとネヴィア(セプティミア・ヨーク視点)

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《剣聖》とその仲間は2階へ上がっていった。
 アイツらに協力するのはシャクだけど、あの《青の魔女》に睨まれるのも面倒。

 志求磨しぐまが剣に変えられてるってのはケッサクだけど。

「もうっ、ジャマしないでよ。わたしのオバケと相性が悪い……アンタの能力」

 赤ずきんみたいな格好の少女。《ファントムムーン》ネヴィア・ミルズ。
 操る亡霊がわたしに通用しないからイラついているみたい。

「お子ちゃま達はおとなしく家に帰んなさいよ。このわたしに勝てるわけないんだから」

「ムカつく……自分も子どものクセして。いいもん、だったらこの技使うから」

 ネヴィアの放つ無数の亡霊が学生服の男の子──《バーニングサン》ヒューゴへとまとわりつく。
 亡霊はゴッ、と青白い炎となってヒューゴの身体を包んだ。

「俺らが力を合わせればどんなヤツにも負けねえ……いくぞっ!」

 青白い炎をまといながらヒューゴが跳躍した。

「メテオストームッ!」

 横向きに回転しながら落下。トンファーを連続でサイラスに叩きつける。

「むうっ!」

 サイラスはハルバートで防御。だがその勢いを止められずによろめく。
 
「ビビったかよ! 俺とネヴィアのパワーによっ! ヴォルケーノフラッシュ!」

 今度はトンファーをサイラスの足元へ打ちつける。
 ゴバアッ、と火柱が噴出してサイラスの身体が宙に浮いた。

「サイラスッ!」
 
 下にいるヒューゴが青白く燃えながらトンファーの先を向けている。わたしは声の衝撃波を飛ばす──でもそれはネヴィアの亡霊の壁によって防がれた。

「っくらえ! ガトリングブラストッ!」

 ドドドドドッ、と連続で火炎弾が炸裂。空中で爆発が起きた。
 バラバラになったサイラスの破片が落ちてくる。 
 双子がそろって笑い声をあげた。

「ザマーみやがれっ! 粉々にしてやったぜ!」

「あとはアンタだけ……抵抗しないで降参すれば楽に殺してあげるけど」

 わたしは衣装をひるがえし、マイクスタンドを引き寄せながらふたりを睨みつける。

「わたしが誰だか分かってないようね。そしてわたしの信頼するサイラスのことも。やっぱりお子ちゃまにはお仕置きが必要みたい」

「強がり言ってんじゃねえっ!」
 
「そうよ、もう容赦しない……」

 ヒューゴは青白い炎をまといながら突進。ネヴィアも新たに亡霊を呼び出してこちらへ放つ。

──遅い。わたしの歌はもう始まっている。お気に入りのボカロ曲。【ギロチンクラッカー】。

 ヒューゴは前につんのめって転び、ネヴィアの亡霊は次々と消滅。彼女自身もぺたんと座り込む。

 様々な状態異常を引き起こした。ヤツらはもう動けない。

 今のうちに──。
 曲を切り替える。癒し系のバラード。
 バラバラになったサイラスの破片がズアアア、と集まってひとかたまりに。
 
 わたしの忠実な執事、サイラスが復活した。
 でもヒューゴとネヴィアも動けるようになっている。

「くそっ、ネヴィア! あれをやるぞっ!」

「……了解~」

 ネヴィアが今までとは比べものにならないほどの亡霊群を呼び集める。
 それがひとつになり巨大なドクロを形成。カタカタと歯を鳴らす。

 ヒューゴがそのうしろからトンファーをガシン、と押し当てた。

「死ぃねえぇっっ! スカルキャノンッッ!」

 パゴオオッッ、と炎をまとった巨大ドクロが向かってくる。

「セプティミア様っ!」

 サイラスがかばうように前へ。わたしは攻撃力増強のロック曲を歌う。
 サイラスの全身が黒い鎧に包まれた。

 ハルバートを突き出しながらサイラスの突撃チャージ

 巨大ドクロが大きく口を開け、その中に突っ込んでいく。
 爆発が起きた──空気を震わす衝撃がビリビリと伝わる。

 爆煙を突っ切って出てきたのはサイラス。
 身構える間もなかった双子にまともに衝突。
 ふたりはトラックにねられたように吹っ飛んだ。

 壁に叩きつけられ、床に落ちたふたりの姿は2本の剣へと戻っていた。微弱な願望の力しか感じない。この状態なら人にはなれないだろうし、華叉丸のところにも戻れないはず。

「ほんのちょっと手間取ったけど、まあこんなものよね」
 
 とは言うものの、こっちもそれなりに消耗した。
 立っているのが億劫おっくうになり、その場に座りこもうとするとサイラスがスッ、と手を差しのべてきた。

「お召し物が汚れてしまいます、セプティミア様。今すぐにテーブルと椅子を用意しますのでお待ちを」

 身体を包んでいる黒い鎧はボロボロと崩壊。美しく整った顔といつもの執事服が目の前に現れた。

「……そうね。ここでティータイムにしましょうか。サイラス、いつもわたしの為に働いてくれてありがとう」
 
「この虚ろな身体に生きる意味と使命を与えてくれたのはセプティミア様、あなたなのです。いつか朽ち果てる寸前までお仕えするのがわたしの存在理由──」

「ううん……あなたがいなくなればわたしが生きる意味も無くなってしまうの。わたしがこの世界にいる理由もね。わたし達は生きるも死ぬも一緒。これからも頼むわよ、サイラス」
 
 その端正な顔に触れながらわたしは微笑む。
 さて、ここまでやってあげたんだから《剣聖》……華叉丸になんて負けたら承知しないわよ。
 アンタと志求磨はいつかわたしとサイラスが倒すんだから。

 



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