初恋の人が親衛隊になるなんて聞いてない!

tomoe97

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生徒会室は、いつもと違う静けさに包まれていた。
 行事もない今の時期は生徒会の仕事もほとんどなく、放課後は相変わらず僕と会長だけが顔を出している。
 窓から差し込む夕陽が、机や床に柔らかい光を落とし、普段の冷たく整然とした空間が、どこか温かみを帯びて見えた。

 「嶺……」

 その声に、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。
 いつも完璧な会長が、僕の名前を、こんなにも優しく呼ぶなんて、想像すらしていなかった。
 一言二言だけの呼びかけが、今はまるで心の奥まで届くような響きを持っている。
 呼吸が乱れ、手のひらがじっとりと汗ばんでいるのがわかる。
 心臓はまるで太鼓のように早鐘を打ち、胸の奥で跳ね回っている。
 会長の眼差しが、普段の冷徹さ僅かにを失い、僕をまっすぐに見つめている。
 その視線に、思わず目を逸らしそうになるけど、同時に逃げられない自分もいる。

 「……会長」

 小さく答えるだけで、声は震えてしまった。
 言葉にならない感情が、胸の中で暴れ、頭の中は真っ白になる。
 何を考えていいのかわからない。嬉しい、信じられない、でも胸が熱くて苦しい──。
 会長は少し間を置き、息を整えるように肩を揺らした。
 そして、低く、はっきりした声で言った。

 「ずっと、伝えたかった」

 その瞬間、胸の奥で何かが弾けた。
 え、ずっと……?
 もしかして、僕のことをずっと……。
 思わず心臓が一段と早く打ち、耳まで熱くなる。

 「……え……あの……」

 声がかすれて、どうしても言葉が出てこない。
 頬が熱くなり、手で顔を覆ってしまう。
 会長が、僕の前でこうして真剣な表情を見せること自体、信じられなかった。
 会長は、静かに前に一歩踏み出す。
 その距離が、僕の心をさらに揺さぶる。
 手を伸ばせば届きそうで届かない、絶妙な距離感。
 胸が張り裂けそうで、息が詰まるような感覚だ。

 「俺は……嶺のことが、好きだ。俺のことを選んでほしい」

 その言葉は、まっすぐで、ためらいがなく、重みがあった。
 頭の中が一瞬で真っ白になる。
 嬉しいという気持ちと、でも信じられないという気持ちが交互に迫ってきていて、でも胸の奥が熱かった。


 思わず後ずさる。心臓が限界まで跳ねるのが分かった。
 頬は赤く、体は自然に硬直していて、平静ではいられなかった。
 思い出すのはあの日、会長に押し倒されたときのこと。

 あの瞬間の熱と重み、息遣い、心臓の速さ……すべてが蘇り、胸を締め付ける。
 会長は、我慢できずに僕に触れたと言っていた。
 そして今、こうして告白してくれる。

 「……はい……」

 震える声で、やっと頷く。
 言葉は震え、声はかすれているけど、心の中では喜びが溢れそうだ。
 会長の目が一瞬大きく見開かれる。

 そして、微笑んだ。

 その笑顔に、さらに胸がぎゅっと締め付けられる。
 頬の熱さに耐えられず、手で顔を覆う。
 どうしよう、こんなに心が高鳴るのは初めてだ。
 頭の中が混乱し、心臓の音だけが鮮明に響く。

 「顔、赤いぞ」

 その一言で、思わず目を逸らす。
 でも、恥ずかしいだけじゃない。胸の奥が幸せで溢れて、息が止まりそうになる。
 会長がそっと近づき、肩に手を置いた。
 温かく柔らかい手の感触。
 触れられるたびに、胸が跳ね、心が震える。
 手を握る勇気はまだ出ないけど、距離が近いだけで胸がいっぱいだ。

 「昔からずっと嶺のことが好きだった」

 その一言は、冷静なのに情熱がこもり、心の奥にまで響く。
 胸の奥の不安も、嫉妬も、すべて溶けていく。
 不安も切なさも、今、この瞬間に報われた気がする。
 心が震え、頬がさらに赤くなる。
 息を整えようとしても、胸の高鳴りは収まらない。
 会長が笑い、目を細めるたびに、心が跳ねる。
 静かに、でも確実に、二人の世界ができあがる。
 言葉は少なくても、触れるだけで心が通じる。
 両思いになれたことを実感する、幸福な瞬間。

 「……会長……僕……嬉しい……」

 震える声で、ようやく口にする。
 会長は微笑みながら、頷く。
 お互いの気持ちが確かに伝わったことを確認する。
 静寂の中で、息遣いが聞こえる距離に立つ二人。
 言葉少なくても、互いの心は通じている。

 僕達は、目を合わせて笑い合った。
 これから二人で歩いていける、そんな希望で胸がいっぱいだった。
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