【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97

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夏休みの後半、生徒会と風紀委員会で親睦旅行が企画されました。
目的地は学校から車を一時間程走らせた場所の小さなプライベートビーチ。
そこは、葉山家の所有する別荘のうちの一つです。

普段は生徒会や風紀の仕事で緊張感の絶えない日々ですが、今日だけは全員が少しだけ肩の力を抜いて、高校生らしく夏の海を楽しむための時間です。

僕は荷物を整理しながら、兄の動向に注意を払いました。
普段の冷徹さと、風紀委員長の前での微細な動揺の差は、海という開放的な環境ではどうなるのか、興味深くもあり、少し心配でもありました。

迎えに来た車で移動する間も、兄は外の景色やスマホを確認しつつ、視線の端で風紀委員長の動きを追っています。
偶然を装ってちらっと見るその視線見ていてこちらが息を飲むほどのいじらしさです。
僕は横で眠るふりをしつつ、心の中で「今日は水着姿もあるから、兄の推し活はさらに過熱するだろう」と覚悟を決めました。


ビーチに到着すると、海の青さと潮風の匂いが一気に開放感をもたらします。
皆は歓声を上げながら準備を始め、パラソルを立てたりバーベキューの荷物を置いたりしています。

兄は荷物を手にしつつも、やはり視線は違う方に向いています。
僕はその視線の先に何が映っているのかを理解しつつ、そっとフォローの準備をしました。


そして事件は起こりました。
風紀委員長が無防備な格好――海パン一枚で歩いてくるのを、兄は視界に入れてしまったのです。
程よくついた筋肉。細身で引き締まった身体に汗が少し浮かんでいます。
普段は冷静で無表情の会長を装っていますが、その瞬間、思考が完全に停止されたように見えました。
視線が一点に固定され、呼吸も浅く、指先がわずかに震えています。
よく見れば、鼻血が出ていました。

僕は即座に反応し、パーカーを掛けて兄の顔を隠すように庇いながら、
「兄さん、大丈夫ですか」と声をかけました。
兄は耳まで真っ赤になり、視線を逸らしてわずかに震える声で
「……どうしよう。予想外すぎる」と呟いてます。
僕は心の中で苦笑しながらも、冷静に振る舞いつつ、周囲に怪しまれないよう、兄の挙動をカバーします。
幸いにも、他のみんなは気付くことなく無邪気に海を楽しんでいますが、僕には兄の動揺が手に取るようにわかりました。


午前中は水遊びやビーチフラッグで時間を過ごしました。
兄は冷静を装いながらも、風紀委員長が近くに来るたびにわずかに体が硬直し、目が泳ぎます。
僕はやタオルなどを巧妙に使って、兄の視線が風紀委員長に集中しすぎないよう調整しました。

例えば、風紀委員長が砂浜に座っているとき、タオルを持って兄の前に立ち、自然に視界を遮るといった具合です。
兄の肩がわずかに緊張で上がるのが見えますが、これ以上は推し活を妨げないよう、僕は慎重に立ち回ります。


昼食の時間、事前に用意していた食材達でバーベキューが始まりました。
兄は串に刺さった肉を手に取りつつ、やはり風紀委員長の動きを気にされています。
風紀委員長は楽しそうに風紀委員の後輩たちと会話しながらを食事をしていますが、兄の目はずっと追っており、焼けたお肉を手渡すタイミングに細心の注意を払っています。
僕は横で兄の動きをフォローしつつ、偶然を装って会話や行動の間を取り持ちます。


 午後、食後の一休みを挟みつつ海に入る時間になると、兄は一呼吸置き、冷静を装いながらも、風紀委員長の水着姿に釘付けです。
僕はさりげなく目線を隠すように立ち、兄の視線が風紀委員長に吸い込まれないようカバーしました。

「兄さん、興奮しすぎです」

兄の肩がわずかに震え、呼吸が浅くなるのが見えます。
耳まで赤くなった頬を隠すように、そっとタオルで覆います。


夕方になると、海辺での自由時間です。二人きりで話すチャンスが訪れ、兄は普段の冷徹さを保ちながらも、やはり目線が風紀委員長に向いてします。
というか、目線が定まらなすぎてもはや下半身ばかりみている気がするけれど僕は横で荷物を整理しつつ、もうこの際なので見守ります。口出しは野暮ですね。

風紀委員長が小さく笑うたび、兄の肩が微かに震え、自分の手を握る指先がわずかに白くなるのを見逃しません。
僕は補佐として、そして弟として、ただ静かに見守り続けるのです。

不意に、二人の肩が近づきました。兄は恐らくキャパオーバーで何が起こったのか分かっていないでしょう。
風紀委員長が柔らかい笑みを浮かべ兄の肩を抱きました。

背後では、生徒会役員達が悲鳴を上げていました。
流石に、この雰囲気に色々なことを察したのでしょう。
僕は内心小馬鹿にしながら宥めようと頑張りました。気が付くのが遅すぎです。


夜、ビーチの撤収が終わり、全員が別荘の中に入りました。兄は今日1日の写真を整理をしつつ、心の中ではあの時のことを反芻されているようです。
僕はベッドに座り、今日の出来事をメモに取りながら、兄の微細な心理変化を確認しました。

水着姿の風紀委員長を目の前にして思考停止する兄、赤く染まった耳、わずかに震える肩――全てが、挙動不審でした。しかしながら、良い方向に確実に向かっている、そんな確信を持てた日でもありました。

深夜、窓の外に波の音が響く中、兄は目を閉じ、静かに深呼吸されました。

「……今日は、皆の前で少々暴走してしまった」

僕は隣で微笑みながら答えました。

「兄さん、そこは僕がフォローさせていただきましたので、安心なさってください」

 兄はわずかに笑みを浮かべ、肩の力を抜かれます。

「……ありがとう。絋には本当助けられてばかりだ」

その夜、僕はベッドに横になり、この先のことを考えました。
兄と風紀委員長の関係をどう発展させるべきかどうか。どっちにしろ、本人が無自覚なままではどうしようもないのですが、悩んでいました。
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