【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97

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その日、午後の日差しが、生徒会室の広い机や書類の山に柔らかく差し込んでいました。
普段は凛とした空気が漂うこの部屋が、今日はまるで異質な空間のように感じられました。
机に突っ伏し、肩を震わせる兄の背中だけが、部屋に確かな存在感を放っております。
普段の冷徹で無表情な生徒会長からは想像もできない、その弱さ。胸の奥が締め付けられるように痛みました。

僕はそっと兄の座っている会長席付近に立ち、息を呑みながらその背中を見守りました。
普段は誰も近づけないような存在の兄が、今は嗚咽を漏らしながら机に顔を埋めているのです。
心の奥で、守らなければならない衝動が溢れていました。

生徒会役員の皆、暗黙の了解で静かに存在感を消すことに徹しました。異様すぎる光景の誕生です。


きっかけは生徒会の仕事がひと段落つき、休憩を取ろうということで皆で紅茶を嗜んでいる時間、三島先輩が発した一言からでした。

「そういえば知ってますか? 転校生、奥沢悠里がとうとう風紀委員会に入ったらしいです」

単なる世間話の一貫といえばそうです。三島先輩は恐らく、他意はなく雑談として切り出したその話は僕のにとっては初耳でした。

幼馴染が風紀委員長のそばにいる、初日から親しげだった関係が急速に接近している――その情報に、兄の胸の奥で鋭い痛みが走ります。
兄の動揺は、もう隠しきれないものでした。

それを聞いて林先輩は、穏やかで柔らかな声で続けました。

「転校初日から、風紀委員長と仲良かったですよね。普段あんなに他人を近づかせないのに……」

松村も眉を寄せ、机の端に手を置きました。

「……会長、さすがにショックですよね」

僕はその言葉を聞き、兄の方を見ました。
机に突っ伏して肩を震わせる姿を。兄が手遅れなくらい号泣していました。


部屋の空気はさらに複雑でした。
三島先輩は普段は生真面目でツンデレ気質。
兄にはいつも従順で優しいですが、兄以外の周りには厳しい人です。
生徒会長、葉山凌の一番のファンと言っても過言ではない彼にとって、この姿は見ていて堪え難いものでした。

「どうして僕が支えられないのでしょうか……」と歯噛みしながらも、口には出せず、ただ机の上で拳を握っておりました。

林先輩はいつも穏やかで爽やか。明るい雰囲気を保つことを意識しておりました。
しかし今は、目の前で号泣する兄に、普段のように落ち着いた声をかけることすらためらっておりました。

「会長、こんなに弱い姿を見せるなんて……」と動揺を隠せません。

松村は、僕と同級生、クラスメイトです。後輩であるだけに、よりいっそう冷静さを保とうと必死でした。
けれど、会長が嗚咽を漏らす度に胸が締め付けられ、思わず視線を逸らしてしまいます。
「こんな姿、誰にも見せたくないだろうに……」と葛藤してました。

僕はそっと兄の肩に手を置き、震える背中を支えながら声をかけました。

「兄さん……泣いても大丈夫ですよ。僕がここにおりますから」

しかし、兄は顔を上げず、かすれた声でつぶやきました。

「……もう、二人は恋人同士なんだろうか」
普段
は冷静で感情を押し殺す兄が、こんなにも弱さを見せるとは。
胸の奥が痛み、守らなければならない衝動が溢れました。

部屋には微かな風が入り込み、書類の端を揺らします。
僕はその揺れに合わせて、兄の肩に手を置いたまま呼吸を合わせます。
嗚咽が止まるまで、ただそばにいることしかできません。

「……どうして俺じゃ駄目だったんだ……」

ぽつりと漏れた声に、僕は胸が締め付けられました。
嫉妬、自己否定、そして何より、兄は風紀委員長を「推し」ではなく恋愛として、感情を持っているのだと、はっきり理解した瞬間です。

兄の手は机に置かれ、指先が微かに震えております。
普段の兄なら素の顔を見せることに慎重で冷静なのに、今は表面上すら取り繕えておりませんでした。

僕は兄の手を握り、そっと支えながら思いました。――兄は、僕がそばにいなければ、今この場でどうなっていたか分からない、と。

「……兄さん、僕、分かってますます。本当は風紀委員長のこと……推しとかでなく、好きなんでしょう?」

兄は小さく頷き、嗚咽混じりに手を握りしめました。
部屋の空気はさらに重く、時間が止まったかのように感じられました。

三島先輩は葛藤しておりました。「こんな姿、誰も見たくないでしょうに……でも、見てしまった以上、僕は何をしてあげられるでしょうか?」と自問しています。
林先輩は、「会長、僕たちが支えなければ……でもどうすれば?」と考えながら、静かにソファへと腰掛けました。
松村も「ここで動くべきなのか……でも今は弟の方の葉山が支えてるし」と悩んでおります。

僕は兄の背中をそっと撫でました。嗚咽の合間に、兄は微かに息を整え、僕の方を見ました。
その瞳には、恥ずかしさと安堵、そして信頼が混ざっております。

「……ありがとう……こんな俺を、支えてくれて……」

僕はただ頷き、手を肩に添えたまま、心の中で誓いました。どんなときも、兄の支えになる、と。
やがて、兄はゆっくりと椅子に座り直し、髪を整えながら微かに笑みを浮かべました。
その笑みは、号泣した直後の人間とは思えないほど儚く、しかし確かな安心感を与えるものでございました。
我が兄ながら容姿が良いです。
他の役員からも感嘆の声が上がりました。
僕は頷き、手を背中に置いたまま、心の中で思いました。絶対に兄の方が風紀委員長には相応しいのに、と。

午後の陽光が差し込む中、僕はその誓いを胸に刻んだのでございます。兄の涙は、嫉妬や不安だけではなく、尊敬、愛情、そして自分の未熟さへの悔しさが交錯したもの。僕はその全てを受け止めました。
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