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あの日のことは、僕が後になって兄本人から詳しく聞いた話から知りました。
僕は自室で待機していましたが、兄がどれほど動揺していたかは、もちろんその場にいない僕には分かりません。
しかし、兄の言葉を通してその時の情景や、兄の心情が鮮明に浮かび上がってきました。
「……あの日、……生徒会室で泣いていた後……」
兄は少し顔を伏せ、遠慮がちに話だします。
僕は静かに頷きました。兄を少しでも安心させて話しやすくさせたかったからです。
あのとき、僕は兄の涙に気づきながらも、背中を撫でることしかできずにいたのです。
控えめに見守るしかなかったあの日の自分が、今では少し悔やまれます。
「生徒会室で、転校生の話が出て、つい泣いてしまって……みんなの前で……」
僕はその言葉を聞きながら、胸がぎゅっと締め付けられるのを感じました。
普段の兄は、冷静で凛として、誰もが一目置く存在。
しかし、あの日はまるで幼い子供のように、心の揺れが表に出てしまったのだそうです。
兄が話すには、あの転校生の存在が、自らの弱さを露呈させる引き金だったそうです。
風紀委員長は、いつも穏やかに振る舞い、転校生と楽しそうに会話をします。
ーー自分と会話する時はあんなに楽しそうだったか?もっと笑顔が少なかった気がする。
その姿を見た会長は、胸の奥で小さな嫉妬が芽生え、心臓がどきどきと高鳴ったといいます。
「……もう諦めるしかないんじゃないかと思ってた……俺があの人に勝てる訳がないって……」
僕は黙って、兄の手を取りました。あのときの兄の心が、どれほど不安定で繊細だったかを、改めて理解した瞬間でした。
僕達生徒会役員がひたすら空気に徹して数十分以上経っていた頃、風紀委員長が生徒会室にやってきました。
風紀委員長は、すぐにその異様な空気感に気が付きます。
一人で泣いていた兄を見て、風紀委員長は一瞬、少し眉をひそめていました。
普段の凛とした兄の姿からは想像できない光景。
何があったかを目線で訴えられますが、皆で風紀委員長のことを一斉に指差ししたので、逆に怯まれました。
しかし、風紀委員長は迷うことなく静かに近づき、兄の手を取り、ただ優しい目で見つめました。
「会長……大丈夫か?」
その一言で、兄は一気に心が揺れ動き、さらに涙が滲んだといいます。
普段は絶対に見せない表情を、風紀委員長だけには見せてしまう――それが兄の心をより不安定にしていました。
そして、風紀委員長はふと提案しました。
「少し、外に出てみないか? 落ち着ける場所があると思うから」
兄は一瞬ためらったそうですが、心の奥で「このままでは自分を抑えられない」と思い、頷きました。
二人は廊下に出て、静かな場所へ向かいます。僕達も実はこっそり後をつけました。
校舎の中では、まだ生徒たちの声や足音が響いていましたが、兄と風紀委員長が通る際には、まるで時間が止まったかのような静けさがありました。
風紀委員長は、兄を寮の自室、風紀委員長の部屋へと連れて行きました。
僕達生徒会役員も、今日は解散しようということになり、各々の部屋に帰りました。
「……俺は……転校生のあの人に君を取られたような気がして……心がざわついてしまった……」
兄の言葉に、風紀委員長は軽く笑みを浮かべました。
しかしその笑みはからかいではなく、落ち着かせるためのものです。
「会長、僕はあなただけのものだ。他の人は誰も好きにならない」
その言葉を聞いた瞬間、兄の心拍数はさらに上がったといいます。
普段の冷静な自分が、こんなにも動揺する。
それを風紀委員長に見抜かれたと思うと、赤面し、息が詰まる思いになったそうです。
部屋に入り、リビングのソファに腰を下ろした二人。
兄は顔を伏せ、言葉を絞り出すように小さな声で呟きました。
「……俺は、普段は誰にも弱みを見せたくない。けれど、君の前では……どうしても……心が揺れてしまう……」
風紀委員長はその言葉をじっと聞き、少しだけ微笑みました。
腰に手を回され、身体と身体が密着したそうです。
「無理に強がる必要はないよ。会長のそのままの気持ちを、僕は受け止めたい。」
兄はその優しさに、思わず小さく涙をこぼしたと言います。
普段は誰も見ていないと信じていた心の奥を、風紀委員長だけが理解し、受け止めてくれる。そのことに、会長は心底安心したのだといいます。
その後、風紀委員長の顔がゆっくり近づき、キスをされたと言う兄はまだ顔を赤くしていましたが、心の内のもやもやが少しずつ解け、風紀委員長への気持ちの大きさを実感したといいます。
「……絋、あの日の風紀委員長の言葉と……はじめてのキスは、忘れられないものになった」
僕は頷き、そっと兄の表情を見ました。あの瞬間、兄の心が少しでも軽くなったことを知り、僕も安堵しました。
兄が後から語った通り、嫉妬に揺れる自分を認め、風紀委員長に心をさらけ出すことで、二人の間には確かな距離感の変化が生まれました。
それは、僕が後から聞いても、兄の表情や声の震えから生々しく伝わってきました。
僕は自室で待機していましたが、兄がどれほど動揺していたかは、もちろんその場にいない僕には分かりません。
しかし、兄の言葉を通してその時の情景や、兄の心情が鮮明に浮かび上がってきました。
「……あの日、……生徒会室で泣いていた後……」
兄は少し顔を伏せ、遠慮がちに話だします。
僕は静かに頷きました。兄を少しでも安心させて話しやすくさせたかったからです。
あのとき、僕は兄の涙に気づきながらも、背中を撫でることしかできずにいたのです。
控えめに見守るしかなかったあの日の自分が、今では少し悔やまれます。
「生徒会室で、転校生の話が出て、つい泣いてしまって……みんなの前で……」
僕はその言葉を聞きながら、胸がぎゅっと締め付けられるのを感じました。
普段の兄は、冷静で凛として、誰もが一目置く存在。
しかし、あの日はまるで幼い子供のように、心の揺れが表に出てしまったのだそうです。
兄が話すには、あの転校生の存在が、自らの弱さを露呈させる引き金だったそうです。
風紀委員長は、いつも穏やかに振る舞い、転校生と楽しそうに会話をします。
ーー自分と会話する時はあんなに楽しそうだったか?もっと笑顔が少なかった気がする。
その姿を見た会長は、胸の奥で小さな嫉妬が芽生え、心臓がどきどきと高鳴ったといいます。
「……もう諦めるしかないんじゃないかと思ってた……俺があの人に勝てる訳がないって……」
僕は黙って、兄の手を取りました。あのときの兄の心が、どれほど不安定で繊細だったかを、改めて理解した瞬間でした。
僕達生徒会役員がひたすら空気に徹して数十分以上経っていた頃、風紀委員長が生徒会室にやってきました。
風紀委員長は、すぐにその異様な空気感に気が付きます。
一人で泣いていた兄を見て、風紀委員長は一瞬、少し眉をひそめていました。
普段の凛とした兄の姿からは想像できない光景。
何があったかを目線で訴えられますが、皆で風紀委員長のことを一斉に指差ししたので、逆に怯まれました。
しかし、風紀委員長は迷うことなく静かに近づき、兄の手を取り、ただ優しい目で見つめました。
「会長……大丈夫か?」
その一言で、兄は一気に心が揺れ動き、さらに涙が滲んだといいます。
普段は絶対に見せない表情を、風紀委員長だけには見せてしまう――それが兄の心をより不安定にしていました。
そして、風紀委員長はふと提案しました。
「少し、外に出てみないか? 落ち着ける場所があると思うから」
兄は一瞬ためらったそうですが、心の奥で「このままでは自分を抑えられない」と思い、頷きました。
二人は廊下に出て、静かな場所へ向かいます。僕達も実はこっそり後をつけました。
校舎の中では、まだ生徒たちの声や足音が響いていましたが、兄と風紀委員長が通る際には、まるで時間が止まったかのような静けさがありました。
風紀委員長は、兄を寮の自室、風紀委員長の部屋へと連れて行きました。
僕達生徒会役員も、今日は解散しようということになり、各々の部屋に帰りました。
「……俺は……転校生のあの人に君を取られたような気がして……心がざわついてしまった……」
兄の言葉に、風紀委員長は軽く笑みを浮かべました。
しかしその笑みはからかいではなく、落ち着かせるためのものです。
「会長、僕はあなただけのものだ。他の人は誰も好きにならない」
その言葉を聞いた瞬間、兄の心拍数はさらに上がったといいます。
普段の冷静な自分が、こんなにも動揺する。
それを風紀委員長に見抜かれたと思うと、赤面し、息が詰まる思いになったそうです。
部屋に入り、リビングのソファに腰を下ろした二人。
兄は顔を伏せ、言葉を絞り出すように小さな声で呟きました。
「……俺は、普段は誰にも弱みを見せたくない。けれど、君の前では……どうしても……心が揺れてしまう……」
風紀委員長はその言葉をじっと聞き、少しだけ微笑みました。
腰に手を回され、身体と身体が密着したそうです。
「無理に強がる必要はないよ。会長のそのままの気持ちを、僕は受け止めたい。」
兄はその優しさに、思わず小さく涙をこぼしたと言います。
普段は誰も見ていないと信じていた心の奥を、風紀委員長だけが理解し、受け止めてくれる。そのことに、会長は心底安心したのだといいます。
その後、風紀委員長の顔がゆっくり近づき、キスをされたと言う兄はまだ顔を赤くしていましたが、心の内のもやもやが少しずつ解け、風紀委員長への気持ちの大きさを実感したといいます。
「……絋、あの日の風紀委員長の言葉と……はじめてのキスは、忘れられないものになった」
僕は頷き、そっと兄の表情を見ました。あの瞬間、兄の心が少しでも軽くなったことを知り、僕も安堵しました。
兄が後から語った通り、嫉妬に揺れる自分を認め、風紀委員長に心をさらけ出すことで、二人の間には確かな距離感の変化が生まれました。
それは、僕が後から聞いても、兄の表情や声の震えから生々しく伝わってきました。
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