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それから暫くして兄から新たな報告がありました。
生徒会室で号泣していた兄を、風紀委員長がそっと連れ出した日の翌日のことです。
朝、兄が部屋を出た直後、風紀委員長と転校生が並んで歩いている所に遭遇してしまいました。
風紀委員長は、それに気が付き、静かに兄に声をかけました。
「会長、落ち着いて。大丈夫だから。」
その声だけで、兄は少し肩の力を抜き、うん、と無理矢理笑顔を作ろうとしました。本当は、この時まだ心の奥底では不安が渦巻いていたとのことです。
特に、転校生がまるで当てつけのように風紀委員長へ接近しているんじゃないかと思うことへの嫉妬心が消えず、悩んでいたのだと後で聞きました。
その後、二人は昼食を食べる約束しました。
昼休みになり、中庭のベンチに横並びになります。
僕はバレないように草陰に潜みながら観察を続けました。
「ごめん、やっぱり二人が仲良くしているのを見ると……どうしても胸が苦しくて……君は大丈夫って言ってくれてるけれど……」
兄の声は震え、言葉にならないほどでした。風紀委員長はその表情を静かに見つめながら、優しい笑みを浮かべて答えました。
「本当に心配することは何もないよ。僕は、会長のことが好きなんだから。」
その瞬間、兄の心にあった嫉妬や不安が、一気に溶けていったそうです。涙で滲んでいた瞳に、ほんの少し光が差し込み、兄は信じられないという表情を浮かべました。
「……俺のことを……そんな風に思ってくれて……」
風紀委員長は軽く頷き、穏やかに微笑みながら応えます。
「ずっと前から、僕の気持ちは一つだけ。凌だけが特別なんだ。好きだよ」
兄はその言葉に胸が熱くなり、照れくささと安堵で顔を赤くしました。普段は冷静で無表情な兄をこんなにも素直に心を見せるのは、風紀委員長にだけなのだと、僕は聞きながら思いました。
「……俺も、君のことを……ずっと……」
兄の言葉は途切れ、恥ずかしさと喜びが入り混じった表情で視線を逸らしました。風紀委員長は微笑みながら会長の手を取り、視線を合わせます。
「僕も凌がそう思ってくれることを、ずっと待っていた。ねぇ、名前で呼んで欲しい」
兄は少し照れながらも、手を委員長に差し出しました。指先が触れ合い、温もりが互いに伝わります。
「し、修哉……好きだ」
その瞬間、校舎の雑踏や遠くから聞こえる生徒たちの声が、まるで消えたかのように感じられ、二人の世界だけが存在するように見えたと、兄は後で語ってくれました。
風紀委員長はさらに言葉を続けます。
「幼馴染には一目惚れした想い人がいてね。今はちょっとまだ言えないけど僕はずっとその相談役をしてたんだ。……不安にさせてごめん」
兄はその言葉を聞き、涙が溢れ出すのを止められませんでした。悩みと不安でいっぱいだった胸が、ようやく整理され、安心と幸福で満たされたのです。
「……修哉……ありがとう……本当に……」
二人は中庭のベンチでしばらく黙って寄り添いました。
兄の身体はまだ少し震えていましたが、風紀委員長が手を優しく握り込むと、震えは次第に落ち着き、指が自然に深く絡み合っていました。
兄は小さく笑いながら、遠慮がちに言いました。
「……あの人のこと、もう気にならない……」
風紀委員長は安心したように頷き、手の温もりを強めます。
「うん。これからも不安なことがあったらすぐ言うんだよ」
その後、二人は校舎を歩きながら、学園生活や文化祭の時の話、体育祭の話、互いの些細な趣味や日常の話を交わし、自然に距離を縮めていったそうです。
兄は嫉妬や不安に振り回されていた自分を恥じながらも、風紀委員長の気持ちが真実であることを心から信じられるようになったのです。
さらに兄は、後から僕に語ってくれました。
「あのとき……し、修哉の言葉を聞いて、ようやく自分の気持ちが整理できたんだ。心はもう完全に修哉に向いていた。不安も、何もかも全部あの一言で消えたんだ」
僕はその話を聞きながら、兄がどれだけ風紀委員長を信頼しているかを感じました。
そして、あの日の二人の会話が、単なる告白以上の意味を持つことも理解しました。互いに心の奥底を曝け出し、相手の真意を確かめ合うという、信頼の証だったのです。
生徒会室で号泣していた兄を、風紀委員長がそっと連れ出した日の翌日のことです。
朝、兄が部屋を出た直後、風紀委員長と転校生が並んで歩いている所に遭遇してしまいました。
風紀委員長は、それに気が付き、静かに兄に声をかけました。
「会長、落ち着いて。大丈夫だから。」
その声だけで、兄は少し肩の力を抜き、うん、と無理矢理笑顔を作ろうとしました。本当は、この時まだ心の奥底では不安が渦巻いていたとのことです。
特に、転校生がまるで当てつけのように風紀委員長へ接近しているんじゃないかと思うことへの嫉妬心が消えず、悩んでいたのだと後で聞きました。
その後、二人は昼食を食べる約束しました。
昼休みになり、中庭のベンチに横並びになります。
僕はバレないように草陰に潜みながら観察を続けました。
「ごめん、やっぱり二人が仲良くしているのを見ると……どうしても胸が苦しくて……君は大丈夫って言ってくれてるけれど……」
兄の声は震え、言葉にならないほどでした。風紀委員長はその表情を静かに見つめながら、優しい笑みを浮かべて答えました。
「本当に心配することは何もないよ。僕は、会長のことが好きなんだから。」
その瞬間、兄の心にあった嫉妬や不安が、一気に溶けていったそうです。涙で滲んでいた瞳に、ほんの少し光が差し込み、兄は信じられないという表情を浮かべました。
「……俺のことを……そんな風に思ってくれて……」
風紀委員長は軽く頷き、穏やかに微笑みながら応えます。
「ずっと前から、僕の気持ちは一つだけ。凌だけが特別なんだ。好きだよ」
兄はその言葉に胸が熱くなり、照れくささと安堵で顔を赤くしました。普段は冷静で無表情な兄をこんなにも素直に心を見せるのは、風紀委員長にだけなのだと、僕は聞きながら思いました。
「……俺も、君のことを……ずっと……」
兄の言葉は途切れ、恥ずかしさと喜びが入り混じった表情で視線を逸らしました。風紀委員長は微笑みながら会長の手を取り、視線を合わせます。
「僕も凌がそう思ってくれることを、ずっと待っていた。ねぇ、名前で呼んで欲しい」
兄は少し照れながらも、手を委員長に差し出しました。指先が触れ合い、温もりが互いに伝わります。
「し、修哉……好きだ」
その瞬間、校舎の雑踏や遠くから聞こえる生徒たちの声が、まるで消えたかのように感じられ、二人の世界だけが存在するように見えたと、兄は後で語ってくれました。
風紀委員長はさらに言葉を続けます。
「幼馴染には一目惚れした想い人がいてね。今はちょっとまだ言えないけど僕はずっとその相談役をしてたんだ。……不安にさせてごめん」
兄はその言葉を聞き、涙が溢れ出すのを止められませんでした。悩みと不安でいっぱいだった胸が、ようやく整理され、安心と幸福で満たされたのです。
「……修哉……ありがとう……本当に……」
二人は中庭のベンチでしばらく黙って寄り添いました。
兄の身体はまだ少し震えていましたが、風紀委員長が手を優しく握り込むと、震えは次第に落ち着き、指が自然に深く絡み合っていました。
兄は小さく笑いながら、遠慮がちに言いました。
「……あの人のこと、もう気にならない……」
風紀委員長は安心したように頷き、手の温もりを強めます。
「うん。これからも不安なことがあったらすぐ言うんだよ」
その後、二人は校舎を歩きながら、学園生活や文化祭の時の話、体育祭の話、互いの些細な趣味や日常の話を交わし、自然に距離を縮めていったそうです。
兄は嫉妬や不安に振り回されていた自分を恥じながらも、風紀委員長の気持ちが真実であることを心から信じられるようになったのです。
さらに兄は、後から僕に語ってくれました。
「あのとき……し、修哉の言葉を聞いて、ようやく自分の気持ちが整理できたんだ。心はもう完全に修哉に向いていた。不安も、何もかも全部あの一言で消えたんだ」
僕はその話を聞きながら、兄がどれだけ風紀委員長を信頼しているかを感じました。
そして、あの日の二人の会話が、単なる告白以上の意味を持つことも理解しました。互いに心の奥底を曝け出し、相手の真意を確かめ合うという、信頼の証だったのです。
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