異世界騎士リリスの現代ごはん探訪記

炬燵ねる

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異世界騎士リリスの現代ごはん探訪記②

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 夜の冷たい風が頬を撫でるバイト終わりの帰り道。俺はいつものコンビニに寄った。

「ええと……リリスに頼まれたのは、たしか……」

 お菓子コーナーを見回しながら、スマホのメモを確認する。――「ぷっちんプリン」「ちょこっとチョコの詰め合わせ」「ほっこりまんじゅう」
 なんだこの可愛すぎるラインナップは。
 騎士をやっていた反動のせいか、はたまた元々可愛らしい物好きなのか。
 いや、リリスの場合どっちもな気がする。  
 リリスと出会って今日で一ヶ月。
 異世界転移なんて、まるでラノベのような話だと俺も思う。けれど、実際に甲冑を身に纏ったリリスを目の前にして、これが現実ということは疑う余地もなかった。
 仮に、その騎士様から『帰りにおやつ買ってきて😘』とLINEがくるカルチャーギャプに打ちのめされようともである。

 買い物を済ませて家に着くと、居間に明かりがついていた。
 玄関を開けると、ほわんとした暖かい空気と、ほのかに甘い匂いが漂ってくる。

「リリス、ただいまー」

 呼びかけると、こたつの向こうからピクリと銀髪が揺れた。

「……む、トモヤ。遅かったな」

 こたつに潜り込んでいたリリスが、半分眠そうな目をこすりつつ俺を見上げる。どうやら、俺の帰りを待っているうちに、ぬくもりに負けたらしい。

任務バイト、お疲れさま」
「ああ。疲れたけど、報酬は受け取ってきたぞ」「! はやく、はやく見せてくれ!」

 俺はコンビニの袋から、リリスに頼まれたお菓子を取り出す。すると、彼女の目がぱあっと輝いた。

「ぷっちんぷりん! ちいさなチョコ! ほっこりまんじゅう! よくやったぞ、トモヤ! 勝鬨を挙げよう!」
「いや、どんな喜び方だよ」

 リリスはまるで戦の勝利報告みたいに誇らしげな笑みを浮かべる。
 そして、さっそくプリンの蓋を開けようとして……。

「ぬう……!? この封印、固い……!」

 力任せに引っ張っているが、なかなか開かないらしい。

「くっ……これしき……!」「しょうがないな。貸してみろ」

 俺がそう言うと、リリスは不服そうに俺を見たあと、しぶしぶプリンを差し出す。
 こう、テコの原理を利用して、ほら、簡単に開いた。

「……むう、現代の食べ物は戦の知恵比べのようだな」
「いや、これ戦じゃないから。ただのプリンの蓋だから」

 リリスとの他愛もないやりとりをしているうちに、俺のバイト疲れも少し和らいでくる。  
 リリスが居候として住むようになってから、ここは賑やかになった。

「美味い! 美味いぞ、トモヤ! ぷるんぷるんがトロトロであまあまだ!」

 ぷっちんプリンを嬉しそうに食べるリリスを眺めつつ、思う。

「まったく、すこしは味わって食えよ」
「味わっているとも! これはまさしく、戦いの後にこそふさわしき勝利の甘味よ!」
「いや、こたつで寝落ちしてたよな?」

——たぶん、これが「幸せ」ってやつなんだろうな、って。

 
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