フェニックス・クロー抹殺作戦2031

ジェイムズ ハーパーDI5

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アフリカとアメリカで、、、。

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西アフリカのゾヌビア共和国の首都であるザンビーク市内を1台の軍用自動車が走行していた。軍用車は荒廃しきった道路を走行中で風が

やや強く、砂埃が舞い上がり車の前方の視界が悪く感じられた。その軍用車両の後部座席でケリー・カーソンは携帯電話を片手に会話をしていた。

「ええ、分かっています。 はい、会社のトップはそう指示しているわけですね はい、分かりました。 失礼します。」

 携帯電話での通話モードを終了し、カーソンはふーっと濃い息を吐いた。 「誰からの電話だったんですか?」この地の訛りがみられない良いアクセントの英語だった。

「上司のエイムズからです。バレワ大尉。残念ながら会話の内容までは話せません。 直接そちらの政府軍の責任者に伝えるようにとの指示でしたので」。

 

バレワという名の屈強な政府軍大尉はうなずいて答えた。「悪いニュースでないことを祈りますよ。」カーソンはそう聞いた後、何気なく視線を横に向けて市街を見渡した。いたる所にゴミなどの廃棄物が散乱していて、 建物の塗料も剥げ落ち、ひび割れがあちこちにあった。そして、目立つのは突撃銃などを手にして各所を巡回する政府軍兵士たちであり、迷彩服に戦闘用ヘルメットを被り警戒する姿にはカーソンも畏怖を覚えた。実のところ、カーソンはヨーロッパの防衛メーカー関係者で安全なオフィス街を歩くのには慣れていたが外国のこういった政情不安が丸出しの状況には不快感を覚えるしかなかった。軍用車は市街を抜け出すと郊外の草原が広がる平地に出た。かなりひどい悪路とまではいかないがそれでもガタガタと車体が揺れカーソンは軽いめまいと吐き気を味わった

 

 

一方のバレワはこういった土地に慣れているためか、不満を口にせずひたすら黙っていた。彼も一応は軍人として教育を受け生きてきた男である、分別が何かくらいは知っている。車がこの質の悪い地形を進み続けてから約40分。やっと整備が行き届いた道路に着くと建設途中と思われる工場プラントや化学工業施設が点々と見えてきた。鉄骨とパイプラインに、黒煙を吐き出す煙突、衛星通信用のパラボラアンテナがある光景は先ほどのさびれた首都や悪路と比べてひどく場違いのように思え、どう見ても文明形成の様子が感じ取れた。その工業などの建物群の付近をカーソン達の車が通り抜けると、この一行は検問所に行き着き停車した。

「このまま車内にいてください」バレワはそう言い残し、素早く車から降りると検問所のスタッフに敬礼して現地の公用語を使い出した。

 

バレワの話を聞きながら検問スタッフの方はクリップボードの書類に目を通して腰のベルトから小型無線機を取り出すと、ほんの数秒間交信を行った。それから、スタッフはバレワに敬礼を返してから別の検問所スタッフに指示してゲートを開けさせた。やがてバレワがカーソンの乗る車に戻り座席のシートにおさまると、事情を説明した。「秘密保全の措置からこの施設に入る者は厳重にチェックされているんですよ。オバンゾ将軍はその点に執念深い人ですから」。カーソンは納得したようにうなずいて、前方を見た。時刻が午後7時15分のためか薄い暗闇がたちこめていた。そのために暗闇を照らすつもりでサーチライトの光がまぶしく輝いていた。

 そして、カーソン達の車はようやく目的地に近いところまで行くとスピードを落とし始めた。バレワがカーソンに言った。

 

「5分くらい歩けばフェニックスクロー号の格納ドックに行けます。」「分かりました。では、降ります。」カーソンは車外に降り立つとブリーフケースを手に歩き出した。その後ろからバレワが追いついてきた。なぜか砂ぼこりが少なく空気がひんやりしていてカーソンは気味が悪かった。歩く中、行く先々で警備の兵士、それも重装備と一目で分かる者たちに何度も出くわした。その際バレワ大尉の存在が役立ち警備兵たちは彼にいんぎんに敬礼をして道を譲った。バレワはゾヌビア政府軍の幕僚付き将校であり、その証として軍司令部直属を意味する腕章を付けていた。カーソンは自分にも丁重に敬礼がされているようで少し妙な気持ちになったが無礼に扱われるよりはいいと内心でひそかに思った。

 

やがてこの外国のメーカーのスタッフと地元の軍人は巨大な鉄筋とコンクリートで構成された箱形の格納庫に到着した。カーソンたちから見て真正面の建物の一番先は海のようで水路も造られていた。バレワ大尉は建物のメインゲートで待機していた重武装の警備兵に敬礼すると自分のIDカードを渡し用件を伝えた。

 「了解しました。大尉殿、どうぞお入りください」。警備兵はゲートの電子ロックを解除しバレワ大尉とカーソンを中に引き入れた二人は白いクリーム色の狭い通路を突き進んでいくとやがて水路で浮かんでいる整備中の黒い船体を目にした。

葉巻型のような形状とせり出す艦橋、艦尾にスクリューが取り付けられているその姿は海中要塞である潜水艦そのものだった。「いやいや全くこの潜水艦の譲渡には感謝しています

 

この兵器のおかげでゾヌビアは一級の国家へと成長することになるわけですから」漆黒の艦船を見上げてバレワ大尉は感慨深げにカーソンに礼を述べた。カーソンはゆっくり振り向いてバレワ大尉を見つめた。「ありがとうございます。大尉、フライトレング社としては可能な範囲でゾヌビア政府を援助します。しかし、まだまだクリアすべき問題がありますよ。」「努力しましょう。」もう一度カーソンはその海水に上に浮かぶ超兵器を直視して胸の高鳴りを覚えた。そして黒い潜水艦の船体上部にあるハッチにクレーン等の装置から高性能ミサイル本体が積み込まれ始めた。

 

 

アメリカ合衆国のバージニア州でジョナサン・ワイズは州内の道路で自家用車を走らせていた。車はグ

レーのセダンで、海軍時代に得た給与を貯金して、購入したものである。彼は腕時計をチラリと見

て、深呼吸した。時刻は7時34分、勤務開始が、8時30分だから、少し急げば、間に合う。渋滞や信

号待ちを心配することはあまりない。この付近は少し奥深い森林地帯が広がり、しかも大部分が政

府の所有地だからである。「まったく政府機関ではなぜこういったミスが繰り返されるのでしょうか?マクナズ教授はどう思いますか?」

 

カーラジオでの番組から司会者のそんな声が聞こえてきてワイズは眉をひそめた。「いくつもの原因が絡みますが主に考えられるのが、、、」

ワイズはつい「クソ、、」と呟き舌打ちをした。多くの米国の政府職員と同様、彼はマスコミの事が嫌いだった。連中は政府が何をしようと軽蔑しかしない。それが正しい事であるかのように振る舞い一種の娯楽にさえしている輩までいる。この若者は現代でマスコミが賞賛するのはアスリート、ノーベル賞科学者、ハリウッド映画俳優ばかりで地道に祖国のために尽くす自分やその他の政府機関員と軍関係者のような人間は無視されるのがいつものパターンだと見ていた。そしてパターンでいえばこの出勤中の時間帯はカーラジオで天気予報とスポーツニュースを聴くのがワイズの決まった習慣であるが、タイミングが悪いと、こんな胃のむかつきを感じるようなラジオ番組を聴いてしまい、思わず苛立つのである。そこまで考えてワイズはラジオの電源を切った。

 

ジョナサンは一見、どこにでもいるような会社員か銀行員のような地味な風格をした若者である。

今年で31歳になる、彼は高校卒業後、進路に悩んだ末、学費支援プログラムを実施していた海軍に

入隊した。専門は各国の駆逐艦や空母、潜水艦のデータ分析であった。それだけでなくMUVと呼ばれる新種の兵器の情報分析も担当した。

 MUVは人型から昆虫型といった様々な形態に設計できる大型の多目的メカである。

軍用から民間用と幅広く普及したのが20世紀末からで一見SF作品に登場するロボットを想起させるタイプもあるがフィクション作品のように奥深い人間ドラマが伴う事は無い。

 

ワイズの仕事内容はそれらの兵器を実戦投入した場合、シミュレーション上ではどういった結果になるかという研究が主であった。難しい仕事ではあったが高性能の軍

用表計算ソフトと面倒見の良い上官の指導で、確実に成果を出すことができた。ジョナサンの軍務への献身ぶりを認めた、上官はこの若者を海軍と連携している、大学への入学を上層部に進言した。そして、ジョナサン ワイズは自分でも予想しなかった、大学生活に入り込み、国際政治学と情報系の専門分野を学んだ。大学卒業後、ジョナサンはCIA傘下のある情報機関の仕事につき、それが現在の拠り所となっている。

 

車が森林を抜けると、ある看板が目に入った。(国防省機密センター無断侵入厳禁)

その看板を通り越すと厳重なフェンスで、守られた近代的なオフィスビルの一部が出現した。ジョナサンは車を保安要員

がチェックしているゲートに近付けると、自分のIDを保安員によく見せるように出し、進むのを許され

た。彼は車で職員用駐車場へと乗り込むと、車内からバックパックを掴み車から降りてから、セキュリティ

ロックをセダンにかけ、オフィスビルへと歩み出した。

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