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魔法使いと役目
老人の話[1]
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今日は朝から雨が降っている。天気が悪いと買い出しに行く気にならないなと、空っぽのいちごジャムの瓶を手に取り、アデレードはため息をついた。でも、いつお客様が来るか分からないのだからあまり出歩かない方がいいのだが。
それでも、ずっと家にいては体がなまってしまうし、少し息苦しくも感じてしまう。
「アデレードは雨が嫌いなの?」
ユリスがアデレードの脳内に直接話しかけてきた。
アデレードは少し天井を見上げる。
「…好きではないわ。」
「ふふっなにそれ。嫌いでもないの?」
「ほら、雨漏りは嫌だけど、雨が降らないと作物が育たないでしょう?…そんな感じ…かな。」
「え!雨漏りしてるの!?」
「…してないわ。」
「…アデレードったら!」
この日の雨は好きかもしれないと、アデレードは思った。
昨日の事が嘘のように、温かな時間がながれていく。
友達がいるのは本当にいいことだ
そう。アデレードはユリスの事が本当に大好きだ。それなのに…
『僕は怒ってなんてないよ。』
『アデレード…大好きだよ。』
『死んでもずっとそばにいてあげるからね。だから…』
ーーー僕から視線を離さないでねーーー
「っ!!」
引っ張られたように体を起こす。
夢を…見ていたのだ。
「大丈夫?アデレード。うなされてたけど。」
脳内に響く幻影の声。
全身に鳥肌がたっていた。
あれは、十年前の夢だ…よく覚えてる…忘れることなんてできない…
「アデレード?」
「ユリス!」
自分でもびっくりするようなはっきりとした声を発していた。
目をかっぴらき、服の袖を強く掴む。
「あな…たは……」
キイイ…
ドアの開く音
「アデレード、お客様だよ。」
はっとして寝ていたソファから立ち上がった。
「いやぁ…雨は本当に嫌ですね…。せっかくの服もしわくちゃになってしまう…。」
白髪に白い豊かな髭。大分年のいってそうなしわの多い顔だが、背がしっかりとのびている。ベージュ色のスーツに、やたら色とりどりの花のついた帽子をかぶっていた。
さっきまで着ていたであろう、濡れた黒いコートを玄関で絞り、ドアを締め、コート掛けに掛けた。
「悪い魔法使い。なんていうから、おぞましいものを想像していましたが…。可愛らしいお嬢さんですな。」
老人がにこりと微笑む。
「どうぞ、こちらに…。」
老人をソファに座らせ、向かいに自分も座る。
「上品で優しそうな人だね。憎しみを持っているとは思えないなぁ。」
ユリスが脳内に語り掛けてくる。もちろん老人には聞こえないので、不審に思われるため反応はしない。
とはいえ、アデレードもそう思っていた。こんな温厚そうな人が一体どんな依頼を受けに来たのか。
「私はルバート・ハルモンディーナといいます。」
「うわっ長いな。」
「…では、ハルモンディーナさん。どのような依頼でこちらに?」
「ルバートでいいですよ。そうですね…出来れば魔法使いさんの事を名前で呼びたいのですが。」
「すみませんが、私情はお答えしかねます。」
「ははっそうですか、それは残念ですね。」
全然依頼の話をしない。
本当にどうしてここに来たのかと問おうとした時。
「…私は、私に呪いをかけてほしいんだよ。」
最近はよく頭の悪い人が来るなと思った。
それでも、ずっと家にいては体がなまってしまうし、少し息苦しくも感じてしまう。
「アデレードは雨が嫌いなの?」
ユリスがアデレードの脳内に直接話しかけてきた。
アデレードは少し天井を見上げる。
「…好きではないわ。」
「ふふっなにそれ。嫌いでもないの?」
「ほら、雨漏りは嫌だけど、雨が降らないと作物が育たないでしょう?…そんな感じ…かな。」
「え!雨漏りしてるの!?」
「…してないわ。」
「…アデレードったら!」
この日の雨は好きかもしれないと、アデレードは思った。
昨日の事が嘘のように、温かな時間がながれていく。
友達がいるのは本当にいいことだ
そう。アデレードはユリスの事が本当に大好きだ。それなのに…
『僕は怒ってなんてないよ。』
『アデレード…大好きだよ。』
『死んでもずっとそばにいてあげるからね。だから…』
ーーー僕から視線を離さないでねーーー
「っ!!」
引っ張られたように体を起こす。
夢を…見ていたのだ。
「大丈夫?アデレード。うなされてたけど。」
脳内に響く幻影の声。
全身に鳥肌がたっていた。
あれは、十年前の夢だ…よく覚えてる…忘れることなんてできない…
「アデレード?」
「ユリス!」
自分でもびっくりするようなはっきりとした声を発していた。
目をかっぴらき、服の袖を強く掴む。
「あな…たは……」
キイイ…
ドアの開く音
「アデレード、お客様だよ。」
はっとして寝ていたソファから立ち上がった。
「いやぁ…雨は本当に嫌ですね…。せっかくの服もしわくちゃになってしまう…。」
白髪に白い豊かな髭。大分年のいってそうなしわの多い顔だが、背がしっかりとのびている。ベージュ色のスーツに、やたら色とりどりの花のついた帽子をかぶっていた。
さっきまで着ていたであろう、濡れた黒いコートを玄関で絞り、ドアを締め、コート掛けに掛けた。
「悪い魔法使い。なんていうから、おぞましいものを想像していましたが…。可愛らしいお嬢さんですな。」
老人がにこりと微笑む。
「どうぞ、こちらに…。」
老人をソファに座らせ、向かいに自分も座る。
「上品で優しそうな人だね。憎しみを持っているとは思えないなぁ。」
ユリスが脳内に語り掛けてくる。もちろん老人には聞こえないので、不審に思われるため反応はしない。
とはいえ、アデレードもそう思っていた。こんな温厚そうな人が一体どんな依頼を受けに来たのか。
「私はルバート・ハルモンディーナといいます。」
「うわっ長いな。」
「…では、ハルモンディーナさん。どのような依頼でこちらに?」
「ルバートでいいですよ。そうですね…出来れば魔法使いさんの事を名前で呼びたいのですが。」
「すみませんが、私情はお答えしかねます。」
「ははっそうですか、それは残念ですね。」
全然依頼の話をしない。
本当にどうしてここに来たのかと問おうとした時。
「…私は、私に呪いをかけてほしいんだよ。」
最近はよく頭の悪い人が来るなと思った。
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