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10.村人の祝福
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早々に修理を終わらせた村人皆は広場で楽しそうに集まって話をしていた。あれ?大きな木の伐採は?
「あんな面倒事の後にそんな繊細な仕事出来るか?延期延期!それよりリュも友達連れて帰ってきたんだし、楽しく飲み食いしようぜ!」
体と声と態度が村1番大きい父ちゃんが言ったら、皆もノリノリ。あちこちの家から寸胴で料理を持ち寄る者、酒の入った樽を転がしてくる者、その周りで走り回る子ども…
そんな中おばばは声を張り上げて言った。
「皆聞いとくれ!『エルフの祝福』についてこの子に教えてもいいかのぅ?」
驚いてざわつく大人たち。不安げな顔、声が広がるが意外にも強い反対意見はなさそうだ。
村長は
「おばばが良ければ…彼に口止めさえしてくれれば教えてもいいが。理由は?教えてあげないといけない理由を聞かせて欲しい」
と当たり前の疑問を投げかけた。
「この子もわしらとは別の『エルフの祝福』持ちなんじゃ。そのせいで皆もさっき見たような困った事に巻き込まれる事も多いようでな。何かの時に助けてやりたいんじゃ。それにはこちらの事を教えてあげた方がいいと思うのじゃがどうだろう?」
「…別の?」ルドルフから声が漏れた。
おばばの話を聞いた皆は一瞬の間の後
「あんなのにしょっちゅう追われてるんじゃ可哀想だよな。俺/私たちでよければ力になってあげよう」
と意見が一致した。お人好しばかりの村っていうか『お人好ししか住めない村』なのでこうなるだろうとは思ってたけど、今までの口外禁止は何だったんだ?と拍子抜けするほど簡単にOKが出た。
おばばはルドルフに向き合った。
「『エルフの祝福』の効果は『エルフの祝福』を持つ者には及ばないんだよ。だから皆は魅了されなかった。この村の住人は皆祝福持ちなんだ。お前さんのとは違う物だけどね。リュ!見せてやりな。お前が村1番祝福の力が強いだろう?」
「えーめっちゃ恥ずかしいんだけど。おばばか村長さんがやれば?」
「え?私お兄ちゃんのかっこいい所見た~い!」
我が愛しの妹マリアの声がした。そういう事なら話は別!やりましょう!
「じゃあ宴会の始めの景気付けで…」
ミンナアツマレ!
俺が声をあげると空気が動いてあちらこちらから翼の音と多種多様の鳴き声がした。かと思うと大量の鳥が集まって空を埋めるほどになり、少し遅れて森からは鹿やリス、ウサギなどの動物たちが広場に集合してきた。そしてあっという間に広場は人間より動物の数の方が多い状態になった。
「おー相変わらずすごいなあ。鳥だけでなくて動物も呼べるのか?」
村人たちは大喜び。ちょっとした見せ物気分のようだ。
これが村人全てが持っている『エルフの祝福』
動物と意思疎通出来るという力だ。
あまりにびっくりしてポカーンと口を開けているルドルフを尻目に俺は集まった動物たちに絡まれていた。
『何だよ!呼んどいて何も無しかよ!』
『そうだそうだ!食べ物寄越せよ!』
『そういやお前このとこ見かけなかったな?』
『町にいるんだろお前!追い出されたか?』
などなど勝手気ままに話しかけられて閉口する。意思疎通は出来ても相手をコントロール出来るわけではないのでいつもこんな感じになってしまうのが困り物だ。父ちゃんなら「黙れ」の一言で静かにさせられるのだが、どうやら俺は舐められているらしい。とりあえず、食べ物を差し上げて早々に帰ってもらった。
あとは皆で宴会騒ぎ!楽しく食べて飲んで歌って踊ってと大はしゃぎだ。いつもしかめっつらのおばばもワイン片手に顔がほころんでいる。
「おばばー、祝福って何で口外禁止だったんだ?」
「それはなー」ほろ酔いのおばばが教えてくれた。
だいぶ昔建国の森について調査が入った。この村にも研究者が何人もきた事があり、その時の村長が『うちの村人にはエルフの祝福があり動物と話せる』と伝えた…そうしたら冗談だと思われ大笑いされ『この村は嘘つきが多い』とまで言われたらしい。
「それ以来口外禁止になったんじゃ。まあそんな侮辱をされたら仕方ないかとは思うよ」
それは俺も仕方ないと思うけど証拠もなしに『動物としゃべれる!』とか言われたら眉つばに思うのも分かる。研究者さんもまずは証拠を見せてもらえばよかったのに…多分研究史に名前が残るくらいの発見だったはずなのにね。もったいない。
おばばの口は止まらない。
「おうそうじゃ忘れる所じゃった。アウクスの坊ちゃん、あの彼女は魅了にはかかってないぞ。見てもいない美しい顔にただ囚われているだけじゃ。だからおぬしが成人まで待ってもあの執着は止まらない。そこを踏まえて対策を練り直した方がええ」
ルドルフが可哀想になる爆弾発言がきた!
「何だと!おかしいとは思っていたんだ。魅了はちょっと見るだけでかかるけど、小1時間もすれば何事もなかったかのようにおさまるのが普通なのに、何故あんなにも長い事追ってくるのかと!そうかそれで合点がいった。よし、今度家族と相談しよう。おばば様ありがとうございます。この村に来て本当に良かった。リュもありがとう」彼は神に祈りを捧げた。
宴会の夜は更けていった。
「あんな面倒事の後にそんな繊細な仕事出来るか?延期延期!それよりリュも友達連れて帰ってきたんだし、楽しく飲み食いしようぜ!」
体と声と態度が村1番大きい父ちゃんが言ったら、皆もノリノリ。あちこちの家から寸胴で料理を持ち寄る者、酒の入った樽を転がしてくる者、その周りで走り回る子ども…
そんな中おばばは声を張り上げて言った。
「皆聞いとくれ!『エルフの祝福』についてこの子に教えてもいいかのぅ?」
驚いてざわつく大人たち。不安げな顔、声が広がるが意外にも強い反対意見はなさそうだ。
村長は
「おばばが良ければ…彼に口止めさえしてくれれば教えてもいいが。理由は?教えてあげないといけない理由を聞かせて欲しい」
と当たり前の疑問を投げかけた。
「この子もわしらとは別の『エルフの祝福』持ちなんじゃ。そのせいで皆もさっき見たような困った事に巻き込まれる事も多いようでな。何かの時に助けてやりたいんじゃ。それにはこちらの事を教えてあげた方がいいと思うのじゃがどうだろう?」
「…別の?」ルドルフから声が漏れた。
おばばの話を聞いた皆は一瞬の間の後
「あんなのにしょっちゅう追われてるんじゃ可哀想だよな。俺/私たちでよければ力になってあげよう」
と意見が一致した。お人好しばかりの村っていうか『お人好ししか住めない村』なのでこうなるだろうとは思ってたけど、今までの口外禁止は何だったんだ?と拍子抜けするほど簡単にOKが出た。
おばばはルドルフに向き合った。
「『エルフの祝福』の効果は『エルフの祝福』を持つ者には及ばないんだよ。だから皆は魅了されなかった。この村の住人は皆祝福持ちなんだ。お前さんのとは違う物だけどね。リュ!見せてやりな。お前が村1番祝福の力が強いだろう?」
「えーめっちゃ恥ずかしいんだけど。おばばか村長さんがやれば?」
「え?私お兄ちゃんのかっこいい所見た~い!」
我が愛しの妹マリアの声がした。そういう事なら話は別!やりましょう!
「じゃあ宴会の始めの景気付けで…」
ミンナアツマレ!
俺が声をあげると空気が動いてあちらこちらから翼の音と多種多様の鳴き声がした。かと思うと大量の鳥が集まって空を埋めるほどになり、少し遅れて森からは鹿やリス、ウサギなどの動物たちが広場に集合してきた。そしてあっという間に広場は人間より動物の数の方が多い状態になった。
「おー相変わらずすごいなあ。鳥だけでなくて動物も呼べるのか?」
村人たちは大喜び。ちょっとした見せ物気分のようだ。
これが村人全てが持っている『エルフの祝福』
動物と意思疎通出来るという力だ。
あまりにびっくりしてポカーンと口を開けているルドルフを尻目に俺は集まった動物たちに絡まれていた。
『何だよ!呼んどいて何も無しかよ!』
『そうだそうだ!食べ物寄越せよ!』
『そういやお前このとこ見かけなかったな?』
『町にいるんだろお前!追い出されたか?』
などなど勝手気ままに話しかけられて閉口する。意思疎通は出来ても相手をコントロール出来るわけではないのでいつもこんな感じになってしまうのが困り物だ。父ちゃんなら「黙れ」の一言で静かにさせられるのだが、どうやら俺は舐められているらしい。とりあえず、食べ物を差し上げて早々に帰ってもらった。
あとは皆で宴会騒ぎ!楽しく食べて飲んで歌って踊ってと大はしゃぎだ。いつもしかめっつらのおばばもワイン片手に顔がほころんでいる。
「おばばー、祝福って何で口外禁止だったんだ?」
「それはなー」ほろ酔いのおばばが教えてくれた。
だいぶ昔建国の森について調査が入った。この村にも研究者が何人もきた事があり、その時の村長が『うちの村人にはエルフの祝福があり動物と話せる』と伝えた…そうしたら冗談だと思われ大笑いされ『この村は嘘つきが多い』とまで言われたらしい。
「それ以来口外禁止になったんじゃ。まあそんな侮辱をされたら仕方ないかとは思うよ」
それは俺も仕方ないと思うけど証拠もなしに『動物としゃべれる!』とか言われたら眉つばに思うのも分かる。研究者さんもまずは証拠を見せてもらえばよかったのに…多分研究史に名前が残るくらいの発見だったはずなのにね。もったいない。
おばばの口は止まらない。
「おうそうじゃ忘れる所じゃった。アウクスの坊ちゃん、あの彼女は魅了にはかかってないぞ。見てもいない美しい顔にただ囚われているだけじゃ。だからおぬしが成人まで待ってもあの執着は止まらない。そこを踏まえて対策を練り直した方がええ」
ルドルフが可哀想になる爆弾発言がきた!
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