呪いなんて怖くない!〜木こりの息子と仮面の少年

閑人

文字の大きさ
9 / 51

9.呪いと祝福

しおりを挟む
 誰も魅了にかからない村…

 「困ったらおばばだな。聞きに行こう」

 作業を中断してルドルフの手を取り占いおばばの所へ向かった。

 「そう言えばなぜ薬草庫に隠れた?他の場所もあるだろう?」

 あーあれね。

「前他の人を追ってきた奴らがいて、『知らない』って言ったら猟犬を村に放ったんだよ。アイツら鼻が効くんで村長の家に隠してたのがバレちゃって大変だったんだ。薬草庫なら薬草の匂いで隠れるから万が一猟犬来ても大丈夫かと」

 そこまでやる奴はあまりいないけど念の為

 「なるほど。確かにそうだな。…その見つかった人はどうした?」

 「隙を見て森に逃したよ。あの森は入った当人が善人か、村人と一緒に入るかすれば普通の森なんだ。後から追手が入って行ったけどその後はそいつら見てないや」

 そういや帰れたのかなアイツら?森の中は食べられる木の実も豊富だし、水もあるから命の心配はないけど。

 「怖い森だな。ひょっとして彼女たちを森にわざわざ追いやったのは…」

 「そう。村長のあの言葉で村から出て行ってくれても、帰り道で絶対待ち伏せされるだろ?だったら1週間くらい森で迷ってもらってるうちに学園に帰る方がいいかなーって。俺って賢い?」

 「賢い!最後の一言が無ければもっと賢く見える」

 2人顔を見合わせて大笑いした。素顔でこんな大笑いのルドルフ初めて見たかも。

 おばばの家は薬草庫の隣、村の1番端っこにある。

 「入るねー!おばばいる?」

 「帰って来たと思ったら大騒ぎだな、相変わらずうるさい奴じゃ」

いつも通りのおばばだ。

 「俺のせいじゃないし。あ、彼はルドルフ。学園で友達になったんだ。ちょっと聞きたい事があって来たんだけどいい?」

 「ルドルフです。よろしくお願いします」

きちんと足を揃えて美しいお辞儀をした。

 おばばはそんなルドルフを上から下までじろっと見て

 「アウクスの坊ちゃんか、いい友達が出来て良かったじゃないか。で、なんだ聞きたい事って」

 アウクス?何だ?

 俺が聞く前にルドルフがびっくりして大声を出した。

 「何故私の家名を?この素顔で分かったとでも?家族以外ほとんど見せた事がないのに?」

 アウクスってルドルフの家名なんだ、初めて聞いたよ。学園じゃ名乗らないからな。
 おばばはルドルフの驚きなんて気にもとめずにケッケッと高笑いして

 「まあ占いで知ったと思っといてくれ。それより知りたい事って何じゃ。はよ言え、ワシは暇じゃないぞ」

 そこで俺たちは今までの事を説明した。ルドルフの魅了の呪いの事、曽祖父の日記の中身、追われてた経緯、村人が誰も魅了されない不思議…
 おばばは相変わらず胡散臭そうな態度で、でも俺たちの話を遮らずに全て聞いてくれた。そして
 
 「お前の魅了は呪いじゃないからなぁ」とポツリ。

 「「呪いじゃない?じゃあ何なんだ?」」

 大騒ぎする俺らにおばばは分かりやすく説明してくれた。

 ルドルフの魅了は『呪い』じゃなくて『エルフの祝福』じゃ。多分エルフ的にはその祝福があれば子どものうちに捨てられたり、酷い目に合わなくて済むと思って与えた物なんだろう。だから子どものうちだけで、自分で独り立ちできる大人になると消えるのだよ。わしに言わせりゃそんな回りくどい祝福より『体が丈夫』とか『お金に困らない』とかの方がずっと良いと思うがな。人間と違うから考え方も違うんじゃろ。
 え?じゃあ何で『呪い』って言われてるかって?まあ代を経るごとに話が変わってくることなんざ普通にあるからねぇ…気になるなら自分の屋敷の書庫あさって昔の手記かなんか順々に読んでみたらどうだろう?
 曽祖父の日記の件はさすがにわしでも分からん。学園の先生に聞くのが1番手っ取り早いが、『エルフの祝福』自体を研究している奴がほとんどいないからねえ。ちょっと望み薄かな。仕方ないからこっちでも少し調べとくわい。
 あとは何じゃ?あぁ、うちの村人が魅了されない事な…これはわし1人ではちょっとなあ。皆に聞いてみるか。
 
 と俺たちを連れて皆が集まっている広場へ向かった。

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

さようなら、たったひとつの

あんど もあ
ファンタジー
メアリは、10年間婚約したディーゴから婚約解消される。 大人しく身を引いたメアリだが、ディーゴは翌日から寝込んでしまい…。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~

よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。 しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。 なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。 そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。 この機会を逃す手はない! ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。 よくある断罪劇からの反撃です。

処理中です...